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188 王の悩み
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ノエの美味しい朝食を食べ何時もの応接室へ行く。
テーブルの上には最近週一で更新される新聞があり私はそれを広げる。
広げるといっても紙が二枚しかない。
「ええっと、バレンタイン効果で町はカップルだらけに!」
ふむふむ、先日のバレンタインで王都にはカップルが多くなったと。
でも、どうせ直ぐに別れるわよ。
「ええっと、次は……ヒュンケル王御病気か、ヘルン王子の政治的決断!
む、これは気になるわね」
王とは惚れ薬の時に会ったきりであるけど、あの時は元気そうだった。
新聞の見出しを読むと人の気配がする、顔を上げるとノエが近くにいた。
「エルンおじょうさま朝食後の紅茶です」
「ありがとう、ガルドは居る?」
「はい、呼んで来ますね」
私は門番の居なくなった外を見る。
王都が比較的安全な事がわかり、パパと相談して門番は解雇した。
比較的というのは、金持ちが住むこの辺だけだけど……一応三年契約だったらしく、残りの賃金も計算して渡したら泣いて喜んでいた。
付き合いの長い門番は、ここまで良くしてくれてありがとうございます。と。
付き合いの短い門番は、小さい声で魔王城から開放される。と泣いていた。
もちろん後者の奴にはにらみ付けたら逃げていった。
ぜんっぜん魔王城とかじゃなく普通の、ごく普通の貴族の家なんだから!
付き合いの長い門番は汗を拭きながら、いい評判を流しますよ。と言ってくれたけど頼むわよ本当に……解せぬ。
「どうした、エルンお嬢様」
おっと。
まだ二月というのに腕まくりをしたガルドが応接室に入ってきた。
おそらく薪割りなどをしてくれてたのだろう。
「仕事中悪いわね、王が病気って本当?」
「……俺に聞かれてもな、兵士の間ではそういう噂になっている。とうとう反逆をするのか? 亡命先にガーランドだけは行かないでくれ面倒が増える」
「私がそういう人間に見える?」
思わず即答すると、同じく即、口を開いてくる。
「むしろ、そういう人間にしか見えないな。主人の命令であれば城内の抜け道を教える事は出来る」
「あるの!? ってか知ってるの!?」
「…………俺も不本意ながら城務めが長かったからな、抜け道を作る場所となると検討はつく。であのカインって奴を暗殺するのか?」
「なんでカインなのよ!」
「次期王候補が二人いると派閥がある、片方がいなくなると派閥は綺麗になるな。
問題は残ったほうも死んだ時であるが……」
「ないないないないないない!」
色々と真顔で言ってくるけど、そんな事は一切ない。
まったく本来は召使いで雇ってる人間がこんな口聞いて来たら即首なんだけど……縁というかクビにしたくないのよね。
他の場所では完璧だし、さりげなく守ってもくれてるし。
後、一番なのはノエもガルドも一緒にいて肩が凝らない。
ちょーっと距離あるけど二人とも私の軽口に付き合ってくれるのよね。
なにより中の上以上というイケメンに命令できるのが楽しい。
これがコタロウだったら私も口の前に手が出そう。
…………アイツだったら手だしたら喜びそうで余計にストレスが溜まる。
そうよ、あのバレンタインの日わざわざチョコ貰いに来たってノエから聞いて目玉出るかと思ったわよ。
あんな男は鳳凰の排泄物でも渡してといっておけばよかったわ、あれだったら甘い匂いするしチョコそっくり――。
「――でもノエが漬物渡したって言って笑ったけど」
「…………何の話だ?」
「だから、漬物…………の話はしてないわね。ごめんなさいねー」
「ふう、何時もの病気か」
イラっ!
「病気でも何でもないわよ! ちょっと考え事しただけって言うの。
そう、それで王がもし病気が本当ならお見舞い持って言ったほうがいいかなって」
「なるほど……悪役令嬢らしからなぬ考えだな。直接行くのはまずい俺のほうから聞いておこう」
「直接はだめって?」
悪役令嬢の部分を突っ込むと、また話が脱線しそうなので今回は理由を聞く。
ガルドの指はまっすぐに新聞を指差す。
この新聞が書いてる通り最近王の姿は見かけられてなく、病気と思った貴族などが探りを入れて見舞いなど押しかけてる。と、兵士が教えてくれた。
「そこに正面からお嬢様が行けば混乱がさらに広がるだろう」
「じゃ、お城は任せるわ。一応は世話になってるでしょ? 本当に病気だったらこっそりお見舞い行くし、あの王様って学園長もしてるでしょ? ディーオにも聞いてみるわ」
「そうだな……あの教師なら信頼も出来るだろう」
お。ガルドが他の人を褒めるなんて珍しいわね。
「軍人だった時にああいう人間をよく見てる」
「…………まだ何も聞いてないんですけどー……」
「聞きたい事が顔に書いてあったからな」
私の文句を、用件はそれで終わりか? と聞いてくるので、頷くと仕事に戻る。と、戻っていった。
相変わらずな男め。
「と、いう事で私の暇つぶし……もとい午後の予定が決まったわ。ノエ色々とよろしく」
「はい!」
ノエは別に文句もいう事なくお願い通り動いてくれる。
◇◇◇ 188.5 ノエの呟き
ノエです! エルンおじょうさまは学園にいきました。
今日も熱心です。
「行ったのか?」
「はい、ガルドさん、もう少し柔らかい口調のほうがですね」
「善処しようノエ先輩」
「わかってくれればいいです」
「所で……そのエルンお嬢様は友達いないのか? 男の所に行くのは構わないが遊ぶ相手は少ない、貴族たるものもう少し周りの関係を――――」
「…………も、もくひします!」
お母さんが教わりました。
困った事があった使える魔法の言葉です!
ガルドさんの心配事がまだ続いていますが、ガルドさんもガルドさんでエルンおじょうさまの事が心配なんでしょう。
嬉しい限りです。
テーブルの上には最近週一で更新される新聞があり私はそれを広げる。
広げるといっても紙が二枚しかない。
「ええっと、バレンタイン効果で町はカップルだらけに!」
ふむふむ、先日のバレンタインで王都にはカップルが多くなったと。
でも、どうせ直ぐに別れるわよ。
「ええっと、次は……ヒュンケル王御病気か、ヘルン王子の政治的決断!
む、これは気になるわね」
王とは惚れ薬の時に会ったきりであるけど、あの時は元気そうだった。
新聞の見出しを読むと人の気配がする、顔を上げるとノエが近くにいた。
「エルンおじょうさま朝食後の紅茶です」
「ありがとう、ガルドは居る?」
「はい、呼んで来ますね」
私は門番の居なくなった外を見る。
王都が比較的安全な事がわかり、パパと相談して門番は解雇した。
比較的というのは、金持ちが住むこの辺だけだけど……一応三年契約だったらしく、残りの賃金も計算して渡したら泣いて喜んでいた。
付き合いの長い門番は、ここまで良くしてくれてありがとうございます。と。
付き合いの短い門番は、小さい声で魔王城から開放される。と泣いていた。
もちろん後者の奴にはにらみ付けたら逃げていった。
ぜんっぜん魔王城とかじゃなく普通の、ごく普通の貴族の家なんだから!
付き合いの長い門番は汗を拭きながら、いい評判を流しますよ。と言ってくれたけど頼むわよ本当に……解せぬ。
「どうした、エルンお嬢様」
おっと。
まだ二月というのに腕まくりをしたガルドが応接室に入ってきた。
おそらく薪割りなどをしてくれてたのだろう。
「仕事中悪いわね、王が病気って本当?」
「……俺に聞かれてもな、兵士の間ではそういう噂になっている。とうとう反逆をするのか? 亡命先にガーランドだけは行かないでくれ面倒が増える」
「私がそういう人間に見える?」
思わず即答すると、同じく即、口を開いてくる。
「むしろ、そういう人間にしか見えないな。主人の命令であれば城内の抜け道を教える事は出来る」
「あるの!? ってか知ってるの!?」
「…………俺も不本意ながら城務めが長かったからな、抜け道を作る場所となると検討はつく。であのカインって奴を暗殺するのか?」
「なんでカインなのよ!」
「次期王候補が二人いると派閥がある、片方がいなくなると派閥は綺麗になるな。
問題は残ったほうも死んだ時であるが……」
「ないないないないないない!」
色々と真顔で言ってくるけど、そんな事は一切ない。
まったく本来は召使いで雇ってる人間がこんな口聞いて来たら即首なんだけど……縁というかクビにしたくないのよね。
他の場所では完璧だし、さりげなく守ってもくれてるし。
後、一番なのはノエもガルドも一緒にいて肩が凝らない。
ちょーっと距離あるけど二人とも私の軽口に付き合ってくれるのよね。
なにより中の上以上というイケメンに命令できるのが楽しい。
これがコタロウだったら私も口の前に手が出そう。
…………アイツだったら手だしたら喜びそうで余計にストレスが溜まる。
そうよ、あのバレンタインの日わざわざチョコ貰いに来たってノエから聞いて目玉出るかと思ったわよ。
あんな男は鳳凰の排泄物でも渡してといっておけばよかったわ、あれだったら甘い匂いするしチョコそっくり――。
「――でもノエが漬物渡したって言って笑ったけど」
「…………何の話だ?」
「だから、漬物…………の話はしてないわね。ごめんなさいねー」
「ふう、何時もの病気か」
イラっ!
「病気でも何でもないわよ! ちょっと考え事しただけって言うの。
そう、それで王がもし病気が本当ならお見舞い持って言ったほうがいいかなって」
「なるほど……悪役令嬢らしからなぬ考えだな。直接行くのはまずい俺のほうから聞いておこう」
「直接はだめって?」
悪役令嬢の部分を突っ込むと、また話が脱線しそうなので今回は理由を聞く。
ガルドの指はまっすぐに新聞を指差す。
この新聞が書いてる通り最近王の姿は見かけられてなく、病気と思った貴族などが探りを入れて見舞いなど押しかけてる。と、兵士が教えてくれた。
「そこに正面からお嬢様が行けば混乱がさらに広がるだろう」
「じゃ、お城は任せるわ。一応は世話になってるでしょ? 本当に病気だったらこっそりお見舞い行くし、あの王様って学園長もしてるでしょ? ディーオにも聞いてみるわ」
「そうだな……あの教師なら信頼も出来るだろう」
お。ガルドが他の人を褒めるなんて珍しいわね。
「軍人だった時にああいう人間をよく見てる」
「…………まだ何も聞いてないんですけどー……」
「聞きたい事が顔に書いてあったからな」
私の文句を、用件はそれで終わりか? と聞いてくるので、頷くと仕事に戻る。と、戻っていった。
相変わらずな男め。
「と、いう事で私の暇つぶし……もとい午後の予定が決まったわ。ノエ色々とよろしく」
「はい!」
ノエは別に文句もいう事なくお願い通り動いてくれる。
◇◇◇ 188.5 ノエの呟き
ノエです! エルンおじょうさまは学園にいきました。
今日も熱心です。
「行ったのか?」
「はい、ガルドさん、もう少し柔らかい口調のほうがですね」
「善処しようノエ先輩」
「わかってくれればいいです」
「所で……そのエルンお嬢様は友達いないのか? 男の所に行くのは構わないが遊ぶ相手は少ない、貴族たるものもう少し周りの関係を――――」
「…………も、もくひします!」
お母さんが教わりました。
困った事があった使える魔法の言葉です!
ガルドさんの心配事がまだ続いていますが、ガルドさんもガルドさんでエルンおじょうさまの事が心配なんでしょう。
嬉しい限りです。
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