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180 出来る人がやればそれでいい
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一般市民が住む区画へ私とミーナは馬車で来た。
魔界から帰った私達は、その足でナナの工房へと足を運んだのだ。
いつものようにドアノッカーを鳴らす。
普段通りならクマの精霊が出迎えてくれる。にもかかわらず、場違いなロリっ子な声が聞こえてた。
「はい、こちらナナのアトリエでございます。ご用の方は……なっ! エルン・カミュラーヌ! なんで貴方がここに!」
「こっちが聞きたいわよ。確かリュートの親戚のマ……リモッコリ!」
「マギカですわ、マギカ!」
「冗談よ、なんでナナの工房にいるのよ」
マギカ、リュートの親戚の子でお兄ちゃん大好きっこ。ぶりっ子で近づいて私へ攻撃してきた。
そんなに根にもってないけどねー、ええちっとも。
「顔が怖いですわ、エルン・カミュラーヌ! はっもしやお師匠様に嫌がらせに来たのです!」
「なわけないでしょうに……ナナは?」
私が文句を言うと、ナナがパタパタと走ってきた。
「エルンさん! それにミーナさんも! どどどど、どうしよう。
マギカさんっ! 直ぐに御もてなしのお酒買ってきますのでっ」
「ごほん、お師匠様慌てなくてもマギカか買ってきます。お客様どれぐらい飲みますか?」
マギカは言葉は丁寧なんだけど、ちょっと私を睨み付けている。
はぁ? 喧嘩売ってるわけ? 別に私だって喧嘩はしたくないけど、理不尽ににらまれる。リュートを盗った元婚約者ってだけで、この子は私の事嫌いなのよね。
別にリュートはお返ししたわよ? なのに……。
「でも、そこまでにらまれる事もなくない?」
「…………頭の中で何を思ったが知りませんけど、お酒はどれぐらい飲みますか? と聞いたんです」
ふむ。
よし、ちょっとからかってみようかしら。
「じゃぁ、三樽ほど」
「なっ!」
「うわーエルンちゃんの意地悪が大人げないー…………アタシでもそんな事言わないよ」
ミーナがマギカの肩を持つけど、無視よ。
にらんで来たのはそっちが先だし。
「別に持てないなら、いいわよ」
「それでは、お師匠様ちょっと買い物にでかけますので」
マギカは優雅に礼をすると、寒空の中外に出て行った。
残されたのは、私とミーナと、アワアワしてるナナだ。
「入っていいからしら?」
「は、はいっ! お二人ともどうぞ」
ナナに何時もの工房へと入れてもらう。
クマのぬいぐるみ精霊がパタパタと動き椅子を引いてくれたりお茶を用意してれたりと、至れり尽くせりだ。
椅子に座ってビスケットを一枚食べてナナに向き直る。
「で。何であの子が居て、お師匠様って呼ばれてるのよ」
「あのですね、マギカさんは四月から学校らしく錬金科にはいるらしいんです。
で、ですね。話せば長くなるんですけど、わたしの内弟子な感じで――」
――なんでも、リュートお兄様、結婚してしてーというマギカ。
今年に学園に入学するも予定としては一般科の予定だった。しかし、元婚約者の私が錬金科なのか引っかかったみたい。
リュートの義母であるエレファントさんも錬金術師だし、習うのは賛成。
で、人に教えるのも自身の勉強です。と、エレファントさんはナナを推薦して弟子入りさせたとの事。
「わたし自身も未熟なんですけど、断りきれなくてですね」
「へええええ、すごいじゃない!」
「え、そんな喜んでくれると、あの照れます」
「喜ぶわよ。合法のパシリよパシリ」
「あの、さすがにそういう使い方は」
なんて優しいのかしらね。
「あの、所で本日は」
「あ、そうだったわね」
私はここに来た理由を伝える。
とある人の依頼で惚れ薬を作って欲しいと仕事を請けたのと、その材料を持ってきた事。
そして工房を借りたいという事を仕事として頼みに来たと。
「す、すごいです……」
「何がよ」
「惚れ薬はSランクのアイテムですよ! それを作る依頼を受けるとかさすがエルンさんです!」
「いやいやいや、ナナちゃん。エルンちゃんに作れるはずないじゃない」
ミーナの言葉にグウネの言葉も出ない。
「その通りよ! 私に作れるないじゃない!」
「ええ…………」
ナナが引いてる。
そこまで引かなくてもってぐらい引いてる。
「私の記憶によれば材料を一定の温度で煮込むだけなんですけど」
「私に出来ると思う?」
「「出来」ます!」ない!」
二人の言葉が重なったけど、意見が真っ二つに割れた。
短い付き合いであるミーナのほうが私の性格を把握してるらしい、面倒なのよ……。
そんな一定で煮込むとか、しようと思えば出来るわよ? これでも料理はしてたんだし。
でも面倒過ぎ。
何時間も何日もぐるぐるぐるぐる鍋の中をかき回す。
二人とも良く出来るわね。
「いい、ナナ。世の中には出来る人がやればいいのよ」
「あの、錬金術師として……」
私はナナの肩を掴むとまっすぐに見つめる。
「はわわわ……エルンさんの顔が近いです……」
「だからお願い、代わりに作って」
「あの、でも、依頼はエルンさんが」
私はナナの視線にあわせる。
「お願い」
「は、はい…………あのっお茶持ってきます!」
赤面したナナは急いで立ち上がり奥へと消えていった。
横にいたミーナが、悪女だー。と、言ってくる。
「こんなので悪女なら世界の半分は悪女よ。それよりもミーナもよろしくね」
「あいあい、クッキー一年分よろしくね」
「月一で取りに来てよね」
ふう、これで今回も楽が出来そう。
だって惚れ薬持ってきてと言われたけど手段問われてないしー。
魔界から帰った私達は、その足でナナの工房へと足を運んだのだ。
いつものようにドアノッカーを鳴らす。
普段通りならクマの精霊が出迎えてくれる。にもかかわらず、場違いなロリっ子な声が聞こえてた。
「はい、こちらナナのアトリエでございます。ご用の方は……なっ! エルン・カミュラーヌ! なんで貴方がここに!」
「こっちが聞きたいわよ。確かリュートの親戚のマ……リモッコリ!」
「マギカですわ、マギカ!」
「冗談よ、なんでナナの工房にいるのよ」
マギカ、リュートの親戚の子でお兄ちゃん大好きっこ。ぶりっ子で近づいて私へ攻撃してきた。
そんなに根にもってないけどねー、ええちっとも。
「顔が怖いですわ、エルン・カミュラーヌ! はっもしやお師匠様に嫌がらせに来たのです!」
「なわけないでしょうに……ナナは?」
私が文句を言うと、ナナがパタパタと走ってきた。
「エルンさん! それにミーナさんも! どどどど、どうしよう。
マギカさんっ! 直ぐに御もてなしのお酒買ってきますのでっ」
「ごほん、お師匠様慌てなくてもマギカか買ってきます。お客様どれぐらい飲みますか?」
マギカは言葉は丁寧なんだけど、ちょっと私を睨み付けている。
はぁ? 喧嘩売ってるわけ? 別に私だって喧嘩はしたくないけど、理不尽ににらまれる。リュートを盗った元婚約者ってだけで、この子は私の事嫌いなのよね。
別にリュートはお返ししたわよ? なのに……。
「でも、そこまでにらまれる事もなくない?」
「…………頭の中で何を思ったが知りませんけど、お酒はどれぐらい飲みますか? と聞いたんです」
ふむ。
よし、ちょっとからかってみようかしら。
「じゃぁ、三樽ほど」
「なっ!」
「うわーエルンちゃんの意地悪が大人げないー…………アタシでもそんな事言わないよ」
ミーナがマギカの肩を持つけど、無視よ。
にらんで来たのはそっちが先だし。
「別に持てないなら、いいわよ」
「それでは、お師匠様ちょっと買い物にでかけますので」
マギカは優雅に礼をすると、寒空の中外に出て行った。
残されたのは、私とミーナと、アワアワしてるナナだ。
「入っていいからしら?」
「は、はいっ! お二人ともどうぞ」
ナナに何時もの工房へと入れてもらう。
クマのぬいぐるみ精霊がパタパタと動き椅子を引いてくれたりお茶を用意してれたりと、至れり尽くせりだ。
椅子に座ってビスケットを一枚食べてナナに向き直る。
「で。何であの子が居て、お師匠様って呼ばれてるのよ」
「あのですね、マギカさんは四月から学校らしく錬金科にはいるらしいんです。
で、ですね。話せば長くなるんですけど、わたしの内弟子な感じで――」
――なんでも、リュートお兄様、結婚してしてーというマギカ。
今年に学園に入学するも予定としては一般科の予定だった。しかし、元婚約者の私が錬金科なのか引っかかったみたい。
リュートの義母であるエレファントさんも錬金術師だし、習うのは賛成。
で、人に教えるのも自身の勉強です。と、エレファントさんはナナを推薦して弟子入りさせたとの事。
「わたし自身も未熟なんですけど、断りきれなくてですね」
「へええええ、すごいじゃない!」
「え、そんな喜んでくれると、あの照れます」
「喜ぶわよ。合法のパシリよパシリ」
「あの、さすがにそういう使い方は」
なんて優しいのかしらね。
「あの、所で本日は」
「あ、そうだったわね」
私はここに来た理由を伝える。
とある人の依頼で惚れ薬を作って欲しいと仕事を請けたのと、その材料を持ってきた事。
そして工房を借りたいという事を仕事として頼みに来たと。
「す、すごいです……」
「何がよ」
「惚れ薬はSランクのアイテムですよ! それを作る依頼を受けるとかさすがエルンさんです!」
「いやいやいや、ナナちゃん。エルンちゃんに作れるはずないじゃない」
ミーナの言葉にグウネの言葉も出ない。
「その通りよ! 私に作れるないじゃない!」
「ええ…………」
ナナが引いてる。
そこまで引かなくてもってぐらい引いてる。
「私の記憶によれば材料を一定の温度で煮込むだけなんですけど」
「私に出来ると思う?」
「「出来」ます!」ない!」
二人の言葉が重なったけど、意見が真っ二つに割れた。
短い付き合いであるミーナのほうが私の性格を把握してるらしい、面倒なのよ……。
そんな一定で煮込むとか、しようと思えば出来るわよ? これでも料理はしてたんだし。
でも面倒過ぎ。
何時間も何日もぐるぐるぐるぐる鍋の中をかき回す。
二人とも良く出来るわね。
「いい、ナナ。世の中には出来る人がやればいいのよ」
「あの、錬金術師として……」
私はナナの肩を掴むとまっすぐに見つめる。
「はわわわ……エルンさんの顔が近いです……」
「だからお願い、代わりに作って」
「あの、でも、依頼はエルンさんが」
私はナナの視線にあわせる。
「お願い」
「は、はい…………あのっお茶持ってきます!」
赤面したナナは急いで立ち上がり奥へと消えていった。
横にいたミーナが、悪女だー。と、言ってくる。
「こんなので悪女なら世界の半分は悪女よ。それよりもミーナもよろしくね」
「あいあい、クッキー一年分よろしくね」
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ふう、これで今回も楽が出来そう。
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