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177 リバーシゲームの新のルール

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 王国暦何年、私は人類が今だ把握していない魔界へと降り立った。

 …………とまぁ、特番みたいな感じで脳内ナレーション入れたけどグラン王国の正式な年数知らないし、そこはしょうがない。
 とにかく私は復活したミーナと共に三度目の魔界へと来た。
 後ろには欠伸をして緊張感も一切ないミーナが私をみてくる。


「エルンちゃんが飛び込まなくて日が暮れるかと思っちゃった……」
「しょうがないじゃない。逆に良く冬の、さらに水の流れが速い川にちゅうちょなく飛び込めるわね。着いたんだから文句言わない」


 辺りを見回す。
 場所はリオの塔の前であるのがわかる。
 ケケケケケと、野鳥? が鳴くと塔の出入り口が開いて、リオが右手を上げて歩いてくる。


「よう、魔力が乱れたからな。もうそろそろ来ると思った」
「その何かごめん。私が欲しいのにミーナがご迷惑を、あっこれ手土産」


 私は持参してきたワインセットをリオに手渡した。
 魔族が好きそうなのってわからないけど、こないだ一緒に飲んでいたし大丈夫よね。
 なぜかミーナがニヤニヤと笑っている。


「何?」
「いや、エルンちゃんお母さんみたいって。よし、今度からお母さんって呼ぶね!」
「却下。いやよミーナみたいな…………大きい子の親とか。最低でもナナやノエね。それでも姉が限界よ」


 思わず、変な子と言いそうになったのを、大きい子と言いなおす。


「じゃあれ。親戚のおばちゃんって呼……いったっ! 痛いよエルンちゃん! 叩かなくてもいいじゃない……」
「だーれが、おばちゃんだ。まったくミーナは嫌な事とかないの?」
「餓死」


 いや、私が聞いたのは他人から呼ばれて嫌な事だったんだけど、ミーナは餓死と即答で答えてきた。
 目も何か虚ろで怖いんですけど。


「ゴホン。調子狂うだろ? コイツは昔っから変な奴でな……さてノリスが管理してる。先ずは塔に来い」


 くるっと反転して塔に向かうリオ。相変わらず男勝りな感じがかっこいい。


「男勝りがかっこいいと思ってますね」
「ひいっ!」


 真後ろから声が聞こえて振り返ると、大きな単眼をギラギラさせたメイド事、ノリスさんが立っている。


「突然声かけないでよ、心臓止まるかとおもったわ」
「それはそれは申し訳ありません。止まりましたらこちらで処置しますでご安心を」


 何一つ安心できない言葉を貰う。


「あーごめん、ノリスにも何か持ってくれば」
「ノーサンキューです。ノリスはあの馬鹿、もとい主人様が喜べばそれでいいのです。
 なので今度はお酒ではなく、手ごろで活きの良い男性を手土産にお願いします」
「それはちょっと……相手のほうも都合あるでしょうし」
「なるほど、残念です」


 ってか、仮に活きのいい男性を連れてきたとしてリオが納得しそうにないんだけど。
 前を歩いていたリオが振り返り、どうした? と大きな声で私達を呼ぶ。


「なんでもない、直ぐ行くわ」


 塔に入り、軽く食事を振舞われた。
 食堂には、リオ、ミーナ、私と三人だけだ。

 顔が爬虫類の男性と単眼メイドさんは
 いつも悪いわね。と言うと、気にするな。と返ってくる。男気がいいわね。


「エルンちゃんの場合、男気よりもオカン力だもんね」
「散々人の家に居候してるのに一言多くない?」
「えーでも、呼ばれたから来てるのに」
「う……そこは、そのごめん」


 そういえばそうだった。
 ミーナは勝手に居候してるのではなくて、惚れ薬作ってもらいたいから呼んだのを思い出した。
 なんだったら魔界にいるのもその材料取りだったわ、忙しすぎて一瞬、本当に一瞬だけ忘れてたわ。

 食事休憩も終わりデザートを食べていると、かろうじてわかる単眼メイドさんが入ってくる。
 かろうじてと言うのは、ゴーグルに手袋、マスクをして体には厚手の革装備をしているからだ。


「何か凄い重装備なんだけど……」
「行けばわかる、さて私は遠慮しておく。ノリス案内してやれ」
「あっエルンちゃんアタシもパスー、リオっちとリバーシで遊ぶから」


 リオは立ち上がると何所からかリバーシを取り出して、テーブルに置いた。
 珍しい……ミーナとリオが大人しい遊びをするだなんて。


「いやな。コイツと遊ぶと毎回あちこち壊れてな。いい加減ノリスから大人しく勝負する事は出来ないんですか? 出来ないんでしょうね? まで言われて」
「そうそう、だから今度はオセ…………リバーシで勝負しよって、言っておいたの」
「なるほど」


 いつも爆風だもんね、いい加減直すほうは大変よね。
 そういう事ならし方がない、単眼メイドさんをちらっとみると大きく頷いてくれた。


「安心してください。キノコ……でしたよね、別室に集めてありますので」
「ありがとう! じゃぁミーナちょっと取ってくるから」
「いってらっしゃーい、リオっちリバーシってわかる?」
「馬鹿にするな……殺すぞ。最後取った枚数を数えて殴りあうゲームだろ?」
「違うよ……取った枚数を数えるだけだよ」
「そうか、ちょっとおかしいなって思っていたんだ。おい! ノリスっ!」



 何やら怪しい会話が聞こえてくると同時に、単眼メイドさんは私の手を引っ張る。


「お仕事してきますので、御用はリードンにでも」


 一言いうと、私を強引に廊下へと連れ出した。


「ささ、人間のエルン様こちらです」
「いいの? 怒っていたみたいだけど」
「遊びの一種ですのですので、ご主人はバ……大らかな魔族なので大丈夫でしょう」


 別室に連れられて、厚手の革装備とゴーグルとマスクを着けてと言われたので借りる。

「そんな危険なの?」
「いいえ、臭いだけですので」
「えっキノコって臭いの?」
「いいえ?」


 じゃぁ何が臭いのよって言おうとすると、こちらですって通された。

 ウーー。

 アーー。

 ナアアアーーー。

 などの呻き声? が聞こえてくる。
 通された部屋にはキノコを生やしたゾンビが、うーだの、あーだの、何十体もいる。
 急いでゴーグルと鼻マスクをした。


「死体から生えるキノコが欲しいとの事でしたので、キノコ持ちのゾンビを集めました」
「そ、そう……」
「どうぞ。好きなだけ取ってください」


 そうか、そうよね……グロイ。
 正直触りたくない。


「安心してください、噛まれなければ安心ですので」
「噛まれたら?」
「……ご武運を、隣の部屋にいますので」


 一言いうと、単眼メイドさんは扉を閉めた。
 ちょ! 開けて開けなさいよ!
 私の後ろには、アーだのウーだのゾンビが迫ってきていた。
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