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164 こ、これでも女性ですしおすし

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「はー凄いわね、この調度品なんて高そう。何で出来てるのかしら」

 細く装飾されたガラス瓶を眺めている。

「あわわわ、エルンおじょうさま。あのそんな乱暴に触っては壊れますっ」
「誰でも手に取れるんだし安いわよ。はいノエも見てみたら」


 ノエに手渡すと、ノエは、本当に綺麗ですね。と目を輝かせてみてはじめてる。
 嬉しそうだし、連れて来て良かったわ。
 城を案内してくれるカインが、小ビンの説明をしはじめた。
 なんでも、どこかの貴族からの贈り物らしく、繁栄を願ってのやつとかなんとか。


「高そうね」
「…………その辺は安い。……白金貨二十枚ほどだ」
「ほら、やす……はっ!?」
「ふえっ!?」


 ノエの手からガラスビンが落ちて、床に砕ける。


「「「「…………」」」」
「ご、ごめんなさい! ごめんなさい!」
「ちょ、ノエ泣かないで。ほ、ほら手渡した私が悪いんだし。で、でも二十枚って高くない? せいぜい金貨一枚ぐらいよ!」
「カインに切れてもしょうがないだろ。おい、俺の給料から引いとけ」
「うっわ、男らしい」


 試合に勝った・・・・・・ガルドが、太っ腹を見せる。


「…………別に請求はしない」
「あっ本当? よかった。一応雇い主として弁償とか請求されたらどうしようかとおもったし」


 それにしても、無駄に広いわね。
 その分、兵士以外の人間も多くメイド姿の女性も沢山みかけた。


「こんだけ人の出入りが多かったら暗殺とかすぐ起こりそうね」
「げっほげほ」
「あら、カイン風邪?」
「…………違う」
「はぁ、お嬢様」
「何よガルド」


 人の出入りが多くみえるが、チームで動いておりチーム以外の人間を見かけると即上に報告されるのが城だ。
 と教えてくれた。

 なるほど。


「あと、城の中でいきなり不穏な言葉を言うな」
「ごっめーん」


 城の中を見学し終わる。
 見学っても、さすがに重要な部分は見せてもらえないので部屋数は少ない。
 待合室に通されて近くの椅子に座った。


「こう、王族がよなよな行く秘密のピンクの部屋とかないの?」
「…………ないよ」
「ピンクとか可愛いですね」


 一人だけわかってないノエが、楽しそうな声を出す。
 何か言いたそうなガルドの視線を受け流して、運ばれてきたお茶を飲む。


「…………本当に見学だけにきたのか」
「ん、そうよ。見学は二の次なんだけど、一番はガルドの就職の話よ。
 これでも皆の事を考えて行動してるのよ、肩だってこるんだし」


 なぜか落ち込んだカインがため息をつく。

 私の肩が突然に揉まれる。
 気持ちいい……カインは私を見て何も言わないって事はガルドが揉んでくれるのかな。
 ん?
 ノエとガルドも私の視界にいる。


「え。じゃぁ誰!?」
「ワシじゃ」


 王様が私の肩を揉んでいて、目が会った。


「のあああああああああああ」


 手を振りほどいて、椅子から離れた場所に。
 ドン!
 痛っ。

 背後を見ると壁があり、今の音は壁に当たった音だった。


「お、王様!?」
「そう王様じゃ」


 ガルドはすでに方ひざを立てて頭を伏せていて、ノエはあわてて土下座をしている。


「よいよい、表をあげよ。そんなに他人行儀されると王様悲しくて涙がでちゃう。公務じゃないし」
「えっだって、他人だし。はっ! 思わず思った事を」


 それではと、ガルドも立ち上がり、ノエもガルドの影に隠れながら立ち上がった。


「…………父上、何用で」


 一人だけ、平伏もしてないカインが、王へとたずねはじめた。
 やっぱ、頼りないと思っても、カインも王族なのよね。こういう正々堂々がすごい。

 なんだろ、他の人はまだそうでもないけど。
 王だけは拒絶反応でるのよね、やっぱ殺される未来しってるからかしら……。


「おお、そうじゃった。城にエルンちゃんが来てると知らせ入ってのう。ちょっと耳をかしてくれんかのう」


 ちょいちょい手招きされたので、王様の近くに行く。
 内緒話っぽいけど、私のほかにも何人もいるのに内緒話もおかしな話だ。
 人払いでもすればいいのに。


「どうぞ」
「ふぅーーーーーーーう」
「きゃっ!」


 耳に息をかけられて思わず悲鳴が出た。
 全身に電気が走ったようか感覚が襲ってくる。


「ななななにするんのよ!」
「ふぉっふぉっふぉ」
「エルンおじょうさま可愛い悲鳴です」
「そんな声でるんだな」
「赤い顔…………俺は何も言わない」


 ………………ふう。なるほどなるほど。
 自分でも顔が赤いんだろうなって自覚が出てきた。



「ノエ、ちょっと扉の外誰か居ないか見てくれる?」
「え? はい。わかりました!」


 ノエはピョコピョコと歩き扉へ向かう、一歩遅れて私もノエの後をついていく。
 扉を開けたノエをそのまま、廊下へ締め出すと、私は無言でメガボムを取り出した。


 護身用でナナからもらった物だ。

 消す!


「ま、まて!」
「ふぉっふぉっ…………ふぉ!?」
「…………っエル……」


 こいつらの記憶、いや。存在を消す!
 紐を引っ張り男たちのほうへ放り投げた。


「死ねばもろ共よ!!」


 私は床にメガボムを投げつけた。



 ◇◇◇ 

 164.5 ほぼ同時刻:ある兵士と囚人の話。


 俺はこのグラン王国で牢番をしている。
 この国はいたって平和だ。囚人がほとんど居ない。といっても悲しい事に殺人事件や強盗はまぁまぁある。
 その場合の罰は素早く決まるので牢に入る人間が少ない。

 その少ないはずの牢にいる常連の囚人に話しかけた。


「よう。今度は何をしたんだ? 以前は下着を盗んだとか、その前はスカートめくりだったな」
「ぶひひ、コレっすよコレ」


 囚人は一枚のカードを俺に見せる。
 カードにはメイド長が背中を見せメイド服に着替えている姿が映し出されていた。


「こ、これは!!」
「ぶっひひ、声が大きいでござるよ、牢番殿」


 馬鹿な……コレが捕まったのは三日前、転写のカードの有効はもって二日なはず……。


「欲しいでござるか?」


 気づいたら唾を飲み込んでいた。
 メイド長のフランシスさんは、切れ目が美しい女性だ。
 美人ランキング上位五名にはいる人で、年は二十八を過ぎたあたり。
 第二王子であるカイン様の教育係りとして去年まで勤めていたはずだ。


「実はこれ、いつもと違う薬品が使われており二週間はもったりするでござる」
「に、二週間もか」
「ぶひひ色々没収されたっすけど、これだけは隠し通したでござるよ」
「ま、まぁお前は何故か上からの評判はいいからな」
「何故か女性には持てないのわからないでござる」


 囚人はぽよっとしたお腹を揉みながら話している。
 あれでいて、実は女性兵士や一部のメイドには人気なのは黙っておこう、差し入れと気配りがマメな男だからな。

 少々の……いやかなりキワドイセクハラでも終身刑に成ってないのがその証拠だ。
 コレがモテるのに、なぜ俺がモテないのが、逆にこっちが聞きたい。
 

「そういえば、学生の恋人はどうした」
「そうでござるよ。余りにも多いのでホテルに呼んで平等に愛すると言ったら振られてたでござるよ……」
「全員をか?」
「そうでござるよ、裸で待っていたでござる」


 そうなのだ、こいつは一人の女性より百人の女性と関係を持ちたい男の中の男だ。
 中にはそれでもいいという奴もいたかもしれんが、全員呼んだらそうだろうな……。


「いくらだ」


 一本の指を出される。


「白金貨か?」
「ぶひひ、常連なので金貨でござるよ」
「安い! 本当かっ!」
「その代わり、城で変わった話をきい――――」


 ドドドドドドッド。
 床が揺れる。
 牢がキシキシと鳴り出してあちらこちらから警報が鳴る。


「何でござるかっ!」
「爆発音……か……? まぁそれより商談だ。俺は交代制の牢番だからな上は上に任せるのが一番だ」
「ぶひひ、わかるでござるよ。実はこんな物も」
「なっ、それは転写カードに写っているメイド長愛用下着……しかもガラス板で挟んである!」
「さすが牢番殿でござる、すぐに誰のかわかったでござるね。
 こっちは白金貨でござるけど、どうするでござる?」
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