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152 ブルックス(酒場店主)の悪巧み

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 二人で住宅街ついた。
 雪がちらつく中、ナナの工房前まで歩いてきた。
 馬車でも使えばいいのに、ディーオが歩くからコッチもくたくただ。
 だって、ついていく方が馬車使いましょ? って流石に言いにくいじゃない。

 ドアノッカーを鳴らすと、扉が開いて熊のヌイグルミがお辞儀する。
 その後ろの工房では、色違いの熊のヌイグルミが忙しそうに乳鉢で何かを練ったりしていた。
 他にも掃除する熊のヌイグルミが見えたりする。


「ほう、精霊が増えたな……」
「凄いわね、私の所なんてカー助一匹よ。それすらも持て余してるのに。
 って、それは置いておいて、ナナ帰って来てる?」


 熊のヌイグルミに尋ねると、小さくお辞儀して、奥の階段を走っていく。
 私とディーオは玄関の扉を開けたまま待つ事にした。

 そして見てしまった、精霊である熊のヌイグルミが石けんを作っている事に、さっきまでナナの手作りと思っていたら精霊が作った量産品だったのか。


「あれ、エルンさん! にディーオ先生……? 何か用事で」



 ナナが私と石けんを作っている熊の精霊を交互にみて慌てはじめた。


「あっエルンさん違いますからね! エルンさんの家に持っていったのはわたしが作った奴です!」
「え、そうなのっ!?」
「はいっ。大事な人にはわたしが作っています、この子たちのはその依頼される数が多いので……それでもいいって人にはこちらを」


 ふふんっ。
 そうよ私は特別なのよ!
 おっと、これじゃ悪役令嬢そのものね。


「ディーオが何か面白い事するからって、ナナを誘いに来たんだけど忙しかったら辞めとくわ」
「ボクは何もしない、ブルックスに呼ばれてるだけだ」
「もういないわよ」
「ぐっ」

 私がそういうのは、すぐに用意しますとナナが二階へと消えたからだ。
 あと、先生ぐらいつけろとぼやいてるのを、聞いてないふりをする。
 
 そう、エルンさん最近聞いてない振りを覚えたのだ。
 ほら、良く考え事をしてると、周りから聞いてます? って聞かれてるあれ。
 聞いているのよ、でも聞いてない振りをすれば、やり過ごせると知ってしまって――……なに視界が動くんだけど。

 気づけばいつの間にか着替えたナナが私の手を引っ張っていた。


「エルンさーん、戻ってきて……あっ戻ってきましたね」
「く……本当に聞いてなかったわ。あれ? ディーオは?」
「ディーオ先生なら先に、エルン君は何時もの発作だろう。治まったら連れて来てくれって」
「失礼な、ぼーっどするのは病気じゃないわよ!」
「あの……今度お薬の調合探してみます」
「いや、病気じゃないからね?」


 ナナに確認するようにいうと、ナナは笑顔を返してくれた。
 なんだろ、不安になるわね。
 ともあれ、外出中と札を玄関にかけたナナとともに熊の手へと歩く、雪が少し積もり始め人の姿も居なくなっていった。

 ナナの家からなら徒歩数十分で熊の手へと着く。
 休日中と書かれた札を見て一応酒場の扉をノックして入った。


「お、来たか」
「来たわよーってアレ……」


 ブルックスの顔が何時もより笑顔だ。

「どうした?」
「いや、いつも営業スマイルじゃない? でも、何か今日は企んでるような笑顔に見えて」
「ひでえな。まぁ適当に座れ。酒でいいか?」


 私が適当に座ると、ナナも近くに座る。
 テーブルには、ワインとソーセージにチーズまで出てきた。


「何時もより過剰なサービスね……」
「馬鹿いうな、いつもサービスいいだろ!」
「そうかな……?」


 ナナを見ると、ナナは頷く。


「そうですよ、こっちに来た当初毎日ご飯食べさせて貰いました」
「えっ! そうなの!? 言ってくれれば……」


 そういえば、ゲームでも序盤は金欠だ。
 それにナナは錬金術が第一で他の生活能力ないし。


「あっええっと、今は大丈夫です。石けんも売れてますので」
「ならいいけど、ご飯ぐらいはこっちにきてくれればご馳走するわよ。ノエが」
「お前じゃないんかーいー」


 ブルックスの突っ込みに私は手をパタパタと振る。


「別に簡単なものなら作れるけど、私が厨房に入るとノエがいい顔しないから」
「お前の所の主人とメイドの関係はどうなってるんだ……」
「基本私が上だけど、家は全部任せてるのでノエね」


 どこかで話が進まんなって言葉が聞こえてきた、ディーオしかいないけど。
 ブルックスが、ソフィーネの言うとおりにディーオに声をかけて良かったぜ。と、言い出した。


「ソフィーネって、奥さんのソフィーネさんよね?」
「おうよ、ディーオに声をかければ、エルンが釣れるだろうって、エルンが釣れればナナやリュートもどっちが釣れるだろうなて」
「「どういう意味」だ!」よ!」」
「ボクが必要ないなら帰る事にしよう」


 うわ、すこし不機嫌になったディーオが席を立ち始める。


「まてまてまて、ディーオも大事な戦力だ」
「戦力って何と戦うつもりなのよ」
「子供だ!」


 席を立ったディーオもナナも私もその言葉に体が止まる。
 ドヤ顔で、子供だ! と言われても、何がなんだかわからないし。


「子供……魔物の子でも殺せというのか?」


 ディーオが一番ありそうな答えを言った。
 なるほど、それなら何となく理解もできる、でも、その場合私は戦力外だなぁ。


「ちがうちがう、殺すなっ」
「ええっと、もしかして旧地区の教会の子でしょうか?」


 旧地区の教会。
 一応名前は知ってる、伊達に一年近くもグラン王国に住んでないし。たしか身寄りが無い子供を引き取って育てている場所。

「おお、流石はナナだな」
「え、教会って名前だけの孤児院経営の場所よね、そこの子供を間引くの!?」
「ちがうちがうちがう、間引くな! 殺すな! 俺がそうだって言ったらお前らどうするんだ」
「通報します」
「そうだな、ソフィーネに伝えて様子を見る」
「殺される前に殺せば……教会の子に武器を渡して様子を見る」
「おい、一人だけおかしい答えの奴いねーか?」
「もう、どうでもいいからその教会がなんなのよ」


 まぁいいと言い出してブルックスは私たちを見てきた。


「プレゼントだ。その……子供達にプレゼントを渡したい」
「渡せば?」
「即答かよ」


 ナナが申し訳無さそうに私の顔を見てきた。
 なんだろ。


「あの、エルンさん。多分そういう事ではなく……低予算で皆が喜ぶような、あの、多分ですけど物じゃなくてもいいのかな? 私達錬金術師を頼ってきたという事は思い出にも残るような物をブルックスさんが言っていると思います」
「しらな……ごほん。なるほど、ディーオとナナで知恵を出して金は私って事か」
「平たくいえばそうなるが……三人には謝礼の代わりに、ここの飲み食いを」
「え! 一生無料」
「ちげーよ! 七日ほど無料にって話だ」


 なんだ、ケチくさいわね。
 ってか、私もディーオもそんなに熊の手に来ないしなぁ、実質使うとしたらナナぐらいな物よね。
 まぁそれでナナが喜ぶならいいか。

「別にそれでいいわよ」
「ボクも手伝おう」
「わたしも、喜んで手伝います!」


 私達が頷くと、扉が開いてソフィーネさんが帰ってきた。
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