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150 エルンさんちの懐事情

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「で! 何て答えたんですかっ!?」

 そう食い気味に聞いてくるのはナナ。
 場所は私の家の応接室で、ディーオ先生との相談どうでした? と尋ねてきたナナに一連の事を伝えた後だ。

 なんでナナがいるのかと言うと、石鹸を届けて貰ったから。
 自分で作るよりナナのほうが香も泡立ちもいいから。

 既に数日たっており、書類や近所に配る見舞金も全て終わって一段落した所である。


「別に、興味はありません。で返したわよ」
「えええ、もったいないですよ! 王宮錬金術師になれるチャンスですよ!」
「あのね、あの校長は王宮に興味がないか? って聞いただけで錬金術師として迎え入れるとは言って無いわよ」


 だって、私の錬金術師としての腕がないもん。
 じゃぁ何をって言ったら、無いとは思うけど女性しかできないような体を使う奴だったら、ノーセンキューだ!

 それが違うとしたら、次の候補はというとカインの妻。
 まぁこれはカインに断ったから、無いとしてよ。王様の愛人? 後妻とかに選ばれたら終わってる。
 ヘルンやカインに向かってママでちゅよーっていえる訳ないじゃないのよ。
 ちょっとだけ、シンシア相手ならいいかなって思ったのは内緒である。

 なんだろ……男性より可愛い女の子が好きかも知れない。

 
「でもでもー」
「私の事はいいから、ナナはどうなのよ……冬イベ、もといデートとかないの?」


 十二月はたしかクリスマスにちなんだイベントがあったはず。
 なおこの世界、なぜかクリスマスの風習だけはイベントに組み込まれていた。
 あれって転生前での話は神様の誕生日とかだったような……その辺を一切説明ないまま十二月二十五日はサンタがプレゼントを配るというイベントだ。


「ありません!」

 力強くいうナナに私は溜め息をつく。
 本当ならリュートやカインとか選び放題だっただろうに……私が改心したばっかりに。
 
 いや選び放題じゃないか古いゲームだから選択支が少ないのが悲しいわね。
 恋愛ENDなんて男二つだけだし。
 でも、私から見ると二人とも高物件なのよ? 私が興味ないだけで。


「さんーーエルンさんーー」
「はっ!」
「よかったです、エルンさん考え事が多くなって……あ、ガルドさんも帰ってきましたね」


 ナナの言うとおり窓の外を見ると、ガルドが新聞を持って帰ってきたのが見えた。
 定期購読はしないけど、今回の事が書かれた新聞が発行されたと聞いて買って来てもらったのだ。

「それじゃ私も一度帰ります」
「あ、石鹸ありがとうね」
「いいえ! いつでも頼ってくださいっ」


 ナナがコートを羽織って帰っていく。
 入れ替わりに帰ってきたガルドが新聞を手渡してくれた。


「どれどれ」

 
 見出しを目で追い心の中で朗読する。

 某貴族令嬢、冒険者ギルドの設立を断念。
 先日火災があった冒険者ギルドの建物、その所有者であった貴族令嬢が、事件をうけてギルドマスターを辞退する事がわかった。

 一部で数々の恨みを持った令嬢であるが、今回の事をきっかけに権利を城に譲渡した。
 グラン王国はギルド発足に意欲があり、後任はカイン第二王子を筆頭に王国手動で行くもよう。


 私は、新聞の見出しを読み終わってテーブルの上へと放り投げる。

「なんで『恨みを持った令嬢』よ! そんなの一つも無いわよ! …………ないわよね?」


 私は着替えてきたガルドに文句を言う。
 ギルドマスター予定だったのを返上して、周りに見舞金を送りやああっと、平穏になったと思ったら、この新聞である。


「俺に言われてもな」
「これじゃ、私がただたんに恨みを持つ人間だからで終わるんですけどー! お金だって配ったのよ!?」
「配った割には増えてるな」
「うっ……それはまぁ」


 配りはした。
 配りはしたけど、今回の見舞金として城から白金貨三十枚ほど貰った。
 簡単にいえば口止め料込みだ。
 私が使った金額は白金貨二十枚なので、なぜか十枚儲けた事になる。


「ってか、私のお金なんだし好きに使っていいじゃない」
「執事として帳簿管理を任されているから言ったまでだ」
「はいはい、でそういえば……いまどれぐらいあるの?」
「使える現金が白金貨四十二枚、予備として保管してる宝石類で白金貨二十二枚という所だな」


 と、いう事は日本円で六百四十万って所か。
 仕送りが毎月白金貨六枚なのに凄い増えたわね……その六枚のうち三枚は賃金として支払って二枚は生活費でノエに渡している。
 残った一枚が私のお小遣いだ。

 一応なぜ増えているかというと、私が最初に作ったアイテム。もっと魔よけの香のお陰である。
 商人のミーティアに任せたら、こないだ売れた分があるからとお金を持って来た。


「ふぁあっと、欠伸がでるわね……こう定期的にお金が空から落ちてこないかしら」


 そんな事が起きたら国が崩壊するな。と、言うガルドを無視すると玄関の開く音が聞こえる。
 ノエも、ただいま戻りましたーと、帰ってきた。


「おじょうさま、雪です! 雪が降ってます!」


 興奮したノエがいうので窓から外をみると確かに降っている。
 うしろから、金じゃなくて残念だったなって聞こえるけど、シカトする。
 すぐに、おじょうさまをあまり悪く言わないで下さい! とノエがガルトを叱る声が聞こえてきたので、不問にしよう。

 私にはガミガミいうけど、あれでいてノエのいう事はちゃんと聞くし。


「雪つもるといいなぁ」
「あら、ノエってば雪が好きなの?」
「はい、雪だるま作ってみたくて」


 笑顔がまぶしい、もっと早く知っていればアトラスの町に行く時連れて行けばよかった……もう飽きるほど雪を見てきた。
 ガルドが何か言いたそうな顔をしているけど、空気を読んで言わない。

「あれ? ディーオじゃない?」
「あ、本当ですね」


 窓から外を見ているとディーオが歩いてくる。
 私に気づくと小さく手を上げたので、私の家に用があるのだろう。
 ノエが小走りに玄関へ向かっていった。

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