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148 他人の噂
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朝から体を揺らされる。
やっと賢者の石の後遺症から抜け出した私は、昨夜から寝ていたのだ。
その睡眠を邪魔するのは、王様だって許さない。
例えだからね、本当に王様だったらこっちが土下座するわ。
「あわわわ、そのあの、すみませんおじょうさま」
私はノエの体を掴むと、そのままベッドに引き込む。
全力で抱きしめベッドの上で転がった。小さい悲鳴とともにノエが目を回しているのが面白い。
「おはようノエ」
「あわわわ、お、おはようございます」
超至近距離のノエの体を解放して起き上がる。
こうして起しに着たという事は何か用事があるのだろう。
「誰か来たの?」
「はっはい、ナナさまが朝一番で」
「珍しいわね、すぐ行くって伝えておいて」
髪をまとめて軽く身だしなみをして階段を降りる。
応接室にナナが座っているので、おはようと声をかけた。
「エ、エルンさん。大丈夫です! わたしはエルンさんの味方ですから!」
「はぁ……」
なんだろ、朝から鬼気迫る勢いで突然の告白をされた。
味方なのは嬉しいけど……なにやらゴソゴソと荷物を取り出している。
良く見ると大きな箱がある。
ナナはそこからホウキを取り出した。
中心部分にクッションがついている、見間違いないそ、とんでるホウキだ。
自由自在に空を飛べるホウキで作れるのは私が知っている限り、ナナとミーナ。
なんでこんな便利な物が普及しないのかというと、危ないから。
両手離したら落ちるし。
実際に私が落ちた。
なんでも、アレをみた人間が思ったよりも多く、さらにはリュート親戚のマギカが、飛んでるホウキから私が落ちた事を回りに話したらしく、余計に人気が無い。
次にゴーグルを取り出した。
これは、以前改良点はどこでしょう? と聞いて来た時に私がゴーグルがあったほうがいいわねと言ったから。
「ええっと……ピクニックでもいくの?」
いやだって、それしか考えられないし。
「違います! 捕まる前に逃げてください!」
「誰に?」
乱暴なドアノッカーの音が応接室まで聞こえてきた。
私はナナとの会話を切って、そちらのほうをみる。
ナナは、もう顔面が蒼白になっているけど、なんなんだ。
「ちょっとまってねナナ。ノエー玄関見てきてー」
ノエに声をかけると、ノエが動く前に玄関の扉が開いた。
複数の足音が聞こえると、ガルドとリュートが入ってくる。
「あら、おはよう」
「玄関前に居たから連れて来たぞ」
「よかったエルンここにいたか、罪を償おう。前々からいつかするとは思っていたが」
「リュートさん! エルンさんだって魔がさしたんだと思います! ここは捕まる前に逃げたほうがっ!」
まてまてまてまて、一体何の話だ。
リュートとナナが言い争いをしているのを止める。
「ちょっとまった、何の話?」
「「なんのって」」
私はナナに喋らせる。
「わたしは、エルンさんがギルド予定の建物に火をつけたって、なので、嫌な事があったとはいえほとぼりが冷めるまで逃げましょうと」
次にリュートに喋らせる。
「俺のほうは放火した犯人を捕まえたが、表に出す事なく殺して埋めたと。
いくら貴族でも殺人は不味いからな……有利な証言を約束するから出頭しようと」
…………。
「なるほど、二人はそういう人間と思っていたわけだ! そんなわけないじゃない!
被害者よ、被害者」
「え、エルンさん顔が」
「まて、俺は有利な証言をしとうとな……違うのか?」
◇◇◇
応接室のソファーに座り足を組む。
目の前ではナナとリュートが、朝食代わりのパンを一緒に食べている所だ。
誤解を解いた私も一緒にそのパンを食べては、甘めのカフェオレで口の中を満たす。
「まったく……」
「ごめんなさい、わたしはその近所の人からそういう話を」
「俺はいつも宅配にくる人間からな、そういう噂を聞いて飛んできた」
「そりゃどうもご丁寧に、友達思いで助かるわ」
トントントン!
ドアノッカーの音が聞こえてきた。
嫌な予感しかしない、一応ガルドに頼んで私の事を知っている人間に事情を説明しに言って貰ったけど……。
別室にいたのノエがパタパタと玄関を開けにいく。
すぐにお客をつれてきた。
「よう……」
熊のようなブルックスは部屋をきょろきょろしながら私に挨拶をしてくる。
「今度はなに?」
「貴族の家ってのも珍しいからな、態度が変ですまねえ」
「あっそうか……ブルックスってこの家来るの初めてだっけ?」
「ああ、比較的庶民的と思っていたが、やっぱ貴族だな……こんな汚ねえ服でもうしわけねえ」
「別に汚くは無いわよ……」
「そうですよ、わたしも普段着ですよ!」
ナナも恐縮するブルックスに助け舟を出してくる。
「とりあえず、座ったら?」
「いいのか?」
ブルックスは椅子の端に小さくすわりだす。
案外気を使う人間なのね、見かけによらず優しいし。
「じゃなくて! 何か用あったんでしょ?」
「っと、そうだったな……昨日の火事あっただろ? あれでお前さんが犯人グループを実家の金山へ輸送したって噂が流れてきてな、一応それをいった人間には否定しておいたが」
「…………本当、私の事を思ってくれてる人がこんなにもいて幸せだわ……」
思わず天井を見上げて呟くと、ブルックスが違うのか? と聞いてくる。
「違うわっ! ボッ…………違いますわよ、おほほほ」
貴族らしからぬ言葉がでそうになったので止めた。
「じゃぁわたし帰りにミーティアさんの所いって新聞発行を止めてきます」
「ん? ミーティアってナナの幼馴染で商人のミーティアよね?」
「はい、その……今回の情報ってミーティアさんでして、グラン新聞の編集部員でもあるんです」
「逆に良かったわ……裏取ってくれるような人物で」
「はい、その…………裏を取らないで記事書く人もいるんですけど、ミーティアさんはちゃんと取るんです」
本人が来るって所を、ナナが私が取るからと断ってきたらしい。
そして、ナナは私を逃がそうとした、涙ぐましいわね。
これはそうそうに犯人を見つけないと、私の評判が悪くなっていくし。
つらたん。
べ、べつに評判なんていいんですけどー、これが元で冤罪で捕まりましたっていったら、これまでの苦労が水の泡よ。
やっと賢者の石の後遺症から抜け出した私は、昨夜から寝ていたのだ。
その睡眠を邪魔するのは、王様だって許さない。
例えだからね、本当に王様だったらこっちが土下座するわ。
「あわわわ、そのあの、すみませんおじょうさま」
私はノエの体を掴むと、そのままベッドに引き込む。
全力で抱きしめベッドの上で転がった。小さい悲鳴とともにノエが目を回しているのが面白い。
「おはようノエ」
「あわわわ、お、おはようございます」
超至近距離のノエの体を解放して起き上がる。
こうして起しに着たという事は何か用事があるのだろう。
「誰か来たの?」
「はっはい、ナナさまが朝一番で」
「珍しいわね、すぐ行くって伝えておいて」
髪をまとめて軽く身だしなみをして階段を降りる。
応接室にナナが座っているので、おはようと声をかけた。
「エ、エルンさん。大丈夫です! わたしはエルンさんの味方ですから!」
「はぁ……」
なんだろ、朝から鬼気迫る勢いで突然の告白をされた。
味方なのは嬉しいけど……なにやらゴソゴソと荷物を取り出している。
良く見ると大きな箱がある。
ナナはそこからホウキを取り出した。
中心部分にクッションがついている、見間違いないそ、とんでるホウキだ。
自由自在に空を飛べるホウキで作れるのは私が知っている限り、ナナとミーナ。
なんでこんな便利な物が普及しないのかというと、危ないから。
両手離したら落ちるし。
実際に私が落ちた。
なんでも、アレをみた人間が思ったよりも多く、さらにはリュート親戚のマギカが、飛んでるホウキから私が落ちた事を回りに話したらしく、余計に人気が無い。
次にゴーグルを取り出した。
これは、以前改良点はどこでしょう? と聞いて来た時に私がゴーグルがあったほうがいいわねと言ったから。
「ええっと……ピクニックでもいくの?」
いやだって、それしか考えられないし。
「違います! 捕まる前に逃げてください!」
「誰に?」
乱暴なドアノッカーの音が応接室まで聞こえてきた。
私はナナとの会話を切って、そちらのほうをみる。
ナナは、もう顔面が蒼白になっているけど、なんなんだ。
「ちょっとまってねナナ。ノエー玄関見てきてー」
ノエに声をかけると、ノエが動く前に玄関の扉が開いた。
複数の足音が聞こえると、ガルドとリュートが入ってくる。
「あら、おはよう」
「玄関前に居たから連れて来たぞ」
「よかったエルンここにいたか、罪を償おう。前々からいつかするとは思っていたが」
「リュートさん! エルンさんだって魔がさしたんだと思います! ここは捕まる前に逃げたほうがっ!」
まてまてまてまて、一体何の話だ。
リュートとナナが言い争いをしているのを止める。
「ちょっとまった、何の話?」
「「なんのって」」
私はナナに喋らせる。
「わたしは、エルンさんがギルド予定の建物に火をつけたって、なので、嫌な事があったとはいえほとぼりが冷めるまで逃げましょうと」
次にリュートに喋らせる。
「俺のほうは放火した犯人を捕まえたが、表に出す事なく殺して埋めたと。
いくら貴族でも殺人は不味いからな……有利な証言を約束するから出頭しようと」
…………。
「なるほど、二人はそういう人間と思っていたわけだ! そんなわけないじゃない!
被害者よ、被害者」
「え、エルンさん顔が」
「まて、俺は有利な証言をしとうとな……違うのか?」
◇◇◇
応接室のソファーに座り足を組む。
目の前ではナナとリュートが、朝食代わりのパンを一緒に食べている所だ。
誤解を解いた私も一緒にそのパンを食べては、甘めのカフェオレで口の中を満たす。
「まったく……」
「ごめんなさい、わたしはその近所の人からそういう話を」
「俺はいつも宅配にくる人間からな、そういう噂を聞いて飛んできた」
「そりゃどうもご丁寧に、友達思いで助かるわ」
トントントン!
ドアノッカーの音が聞こえてきた。
嫌な予感しかしない、一応ガルドに頼んで私の事を知っている人間に事情を説明しに言って貰ったけど……。
別室にいたのノエがパタパタと玄関を開けにいく。
すぐにお客をつれてきた。
「よう……」
熊のようなブルックスは部屋をきょろきょろしながら私に挨拶をしてくる。
「今度はなに?」
「貴族の家ってのも珍しいからな、態度が変ですまねえ」
「あっそうか……ブルックスってこの家来るの初めてだっけ?」
「ああ、比較的庶民的と思っていたが、やっぱ貴族だな……こんな汚ねえ服でもうしわけねえ」
「別に汚くは無いわよ……」
「そうですよ、わたしも普段着ですよ!」
ナナも恐縮するブルックスに助け舟を出してくる。
「とりあえず、座ったら?」
「いいのか?」
ブルックスは椅子の端に小さくすわりだす。
案外気を使う人間なのね、見かけによらず優しいし。
「じゃなくて! 何か用あったんでしょ?」
「っと、そうだったな……昨日の火事あっただろ? あれでお前さんが犯人グループを実家の金山へ輸送したって噂が流れてきてな、一応それをいった人間には否定しておいたが」
「…………本当、私の事を思ってくれてる人がこんなにもいて幸せだわ……」
思わず天井を見上げて呟くと、ブルックスが違うのか? と聞いてくる。
「違うわっ! ボッ…………違いますわよ、おほほほ」
貴族らしからぬ言葉がでそうになったので止めた。
「じゃぁわたし帰りにミーティアさんの所いって新聞発行を止めてきます」
「ん? ミーティアってナナの幼馴染で商人のミーティアよね?」
「はい、その……今回の情報ってミーティアさんでして、グラン新聞の編集部員でもあるんです」
「逆に良かったわ……裏取ってくれるような人物で」
「はい、その…………裏を取らないで記事書く人もいるんですけど、ミーティアさんはちゃんと取るんです」
本人が来るって所を、ナナが私が取るからと断ってきたらしい。
そして、ナナは私を逃がそうとした、涙ぐましいわね。
これはそうそうに犯人を見つけないと、私の評判が悪くなっていくし。
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