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146 ばれた
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ランチの時間も終わっているはずの酒場へ二人で行く。
もちろん何時もの熊の手だ。
看板は休憩時間とかかれており、扉は開いている。
顔を覗きこむと、ブルックスは居なく、若奥さんのソフィーネさんが掃除をしていた。
「いらっしゃい」
「どうも、開いて……はいないけど入っていい?」
「この時間は少し閉めるけど、お得意様だし中を勝手に使っていいわよー、代金は貰うけど」
「それはもちっ」
「あら、それ何?」
私の右手にもっている豪華な皮袋を指差された。
中に入っているのなんて、いえ……あっ。
ソフィーネさんが私から皮袋を取るとさっと紐を解いた。
ちょっと酸っぱい匂いがあふれる。
「「………………」」
キュっと紐をしばって私を見てきた。
うん、言いたい事はわかる。
「ええっと、そういう趣味でもあるの? ウチは酒場もかねてるから、こういうのは良く見るけど、それとも最近の若い子ってこういうのを持ち歩くファッションとか? おねーさん分けわからないわよ」
「ない、まったくない! 捨てる場所無くて……」
そう、だって城からここまで人も多いのよ。
そこらに置いていく事も出来ないし、袋が立派な分、捨てる場所もない。
「はぁまったく、若い子が大事に持ってるから何かと思ったら……こっちで処理するわよ?」
「お願いします」
ペコリと頭を下げると、じゃぁ火だけは気をつけてねというと、ソフィーネさんも夜のために買出しへ出て行った。
残ったのは私とリオ。
好きに使って良いといわれたので、何時もの奥の席へいく。
お店全体が見渡せる席にリオを先にいかせて適当に料理を拝借する。
切り分けてあった肉とワインを持ってテーブルへと置いた。
「適当なのでいい? で、何で帰るのよ」
「まったく……あの娘の顔を見たか?」
「娘ってシンシア?」
「ああ……ソレだ。あんな幸せそうな顔をしているんだ、それにな」
言葉を止めると、ワインを一気に飲んでテーブルにグラスを叩いた。
うおっと、反動でビクっとなった。
「っと、少しでもアタシに似ていた奴が嫁なら、アイツを魔界に連れてこうかとも思ったけどな。あんなちんちくりんを愛してるとわかったし、アタシの入る隙なんてない。いや入ったらだめだろ」
リオは照れくさそうに言うと肉を食べ始めた。
かっこいい…………。
私が男だったら惚れるわね。
だから会わないほうがいいだろ。と言うと、続けてわかったか? と聞いてきた。
「うん、わかった」
「結局、お前の顔を潰す事になったな……アタシは人間社会に詳しくないが、城に入るの大変だったんだろ」
別に嘘を言ってもしょうがない。
「まぁそこそこには」
「何か礼をしないとな」
「いや、そこはいいわよ……別にこっちもお礼が欲しくてやってるんじゃないんだし」
私が言うと、リオは黙って私を見てくる。
ちょっと前の、単眼メイドさんの言葉が蘇る、リオ様は女性もいけるって話を……。
「さ、さきに言うけどそういう趣味はないわよ」
「なんの事だ……さっきのノリスの言葉かっ! アタシも無い!」
よかった、行き成り求婚されたら、どうしようかと思うし。
リオはまったく、どいつもコイツもと体を背もたれに預けてぐったりモードだ。
私のほうも、睡眠不足で体調不良なのでぐったりだ。
さっき吐いたし。
「すぐに帰るの?」
天井を見ながらリオに質問する。
リオのほうも天井を見ているはずだ。
「ノリスを先に帰したからな、時間には余裕がある」
「北にある、アトラスの町って知ってる? そこに温泉があるんだけど気持ちいいわよ」
「そうか、検討する」
なんだろ。
リオと会話してると、すっごい安心するようになってきた。
ナナやノエは妹みたいな感じだし、同年代の友達と言う間隔だ。
「前に会った時にも言ったが、エルン……お前混ざってるだろ?」
「ああ、言っていたわね、魂とかなんとかって」
両親とも人間だ。
混ざってるといわれても。
「例えば……この世界じゃない記憶とかあるんじゃないか?」
ズドン。
背中を打った。
痛ったあああああああああああ。
背もたれに背中をあずけてそのまま、後ろに倒れた。
「ちょ、ななななななに」
今まで誰もその事を聞いてこなかったのに、こうもあっさり聞いてくるとかっ。
ってか、なんでバレタし!
私がそういう事を言わないのは、言ったら頭がおかしい人扱いされるからよ。
前世では私はこういう人間でしたって周りに居たら、即入院を勧める。
倒れた椅子を戻してリオに向き直る。
リオの顔は至って真面目だ。
「たまに居るんだそういう人間が。魂の色がちょっと違うんだ。
お前は他の奴とまとっている色が違うからな」
「色ってわかるの?」
「お前の魂は、赤と黒と混ざっているからな」
なんとも、嫌な色ね。
「そういう人間は周りと上手くいかずに最後は不幸な事が多い。どうだ、魔界に来ないか?」
「と、とりあえず。そんな事全然無いし! 魔界には住まないわよ。いや、魔界が嫌いとかじゃなくてね、こっちの生活だってあるし」
「…………勘違いしたか。まぁなんだ人間の場所が嫌になったら言え、アタシに出来る礼はそれぐらいだな」
「どうも」
そんな未来は絶対に来て欲しくないけど。
私が座りなおそうとしていると、大きく扉が開いた。
「エルンちゃん!」
「はい? あっおかえりなさいソフィーネさん」
「はい、ただいまっじゃなくて。すぐに外に!」
ソフィーネさんが私の手を引っ張るのでそのまま外にだされた。
後ろからリオも、ゆっくりとついてくる。
「ごほっ、何この匂い……何か燃えるような」
「火事よ火事!」
「なんて迷惑な……何所の建物が燃えてるのよ」
「どこって、エルンちゃんが使う予定の冒険者ギルドの建物よっ!」
ふぁい!?
もちろん何時もの熊の手だ。
看板は休憩時間とかかれており、扉は開いている。
顔を覗きこむと、ブルックスは居なく、若奥さんのソフィーネさんが掃除をしていた。
「いらっしゃい」
「どうも、開いて……はいないけど入っていい?」
「この時間は少し閉めるけど、お得意様だし中を勝手に使っていいわよー、代金は貰うけど」
「それはもちっ」
「あら、それ何?」
私の右手にもっている豪華な皮袋を指差された。
中に入っているのなんて、いえ……あっ。
ソフィーネさんが私から皮袋を取るとさっと紐を解いた。
ちょっと酸っぱい匂いがあふれる。
「「………………」」
キュっと紐をしばって私を見てきた。
うん、言いたい事はわかる。
「ええっと、そういう趣味でもあるの? ウチは酒場もかねてるから、こういうのは良く見るけど、それとも最近の若い子ってこういうのを持ち歩くファッションとか? おねーさん分けわからないわよ」
「ない、まったくない! 捨てる場所無くて……」
そう、だって城からここまで人も多いのよ。
そこらに置いていく事も出来ないし、袋が立派な分、捨てる場所もない。
「はぁまったく、若い子が大事に持ってるから何かと思ったら……こっちで処理するわよ?」
「お願いします」
ペコリと頭を下げると、じゃぁ火だけは気をつけてねというと、ソフィーネさんも夜のために買出しへ出て行った。
残ったのは私とリオ。
好きに使って良いといわれたので、何時もの奥の席へいく。
お店全体が見渡せる席にリオを先にいかせて適当に料理を拝借する。
切り分けてあった肉とワインを持ってテーブルへと置いた。
「適当なのでいい? で、何で帰るのよ」
「まったく……あの娘の顔を見たか?」
「娘ってシンシア?」
「ああ……ソレだ。あんな幸せそうな顔をしているんだ、それにな」
言葉を止めると、ワインを一気に飲んでテーブルにグラスを叩いた。
うおっと、反動でビクっとなった。
「っと、少しでもアタシに似ていた奴が嫁なら、アイツを魔界に連れてこうかとも思ったけどな。あんなちんちくりんを愛してるとわかったし、アタシの入る隙なんてない。いや入ったらだめだろ」
リオは照れくさそうに言うと肉を食べ始めた。
かっこいい…………。
私が男だったら惚れるわね。
だから会わないほうがいいだろ。と言うと、続けてわかったか? と聞いてきた。
「うん、わかった」
「結局、お前の顔を潰す事になったな……アタシは人間社会に詳しくないが、城に入るの大変だったんだろ」
別に嘘を言ってもしょうがない。
「まぁそこそこには」
「何か礼をしないとな」
「いや、そこはいいわよ……別にこっちもお礼が欲しくてやってるんじゃないんだし」
私が言うと、リオは黙って私を見てくる。
ちょっと前の、単眼メイドさんの言葉が蘇る、リオ様は女性もいけるって話を……。
「さ、さきに言うけどそういう趣味はないわよ」
「なんの事だ……さっきのノリスの言葉かっ! アタシも無い!」
よかった、行き成り求婚されたら、どうしようかと思うし。
リオはまったく、どいつもコイツもと体を背もたれに預けてぐったりモードだ。
私のほうも、睡眠不足で体調不良なのでぐったりだ。
さっき吐いたし。
「すぐに帰るの?」
天井を見ながらリオに質問する。
リオのほうも天井を見ているはずだ。
「ノリスを先に帰したからな、時間には余裕がある」
「北にある、アトラスの町って知ってる? そこに温泉があるんだけど気持ちいいわよ」
「そうか、検討する」
なんだろ。
リオと会話してると、すっごい安心するようになってきた。
ナナやノエは妹みたいな感じだし、同年代の友達と言う間隔だ。
「前に会った時にも言ったが、エルン……お前混ざってるだろ?」
「ああ、言っていたわね、魂とかなんとかって」
両親とも人間だ。
混ざってるといわれても。
「例えば……この世界じゃない記憶とかあるんじゃないか?」
ズドン。
背中を打った。
痛ったあああああああああああ。
背もたれに背中をあずけてそのまま、後ろに倒れた。
「ちょ、ななななななに」
今まで誰もその事を聞いてこなかったのに、こうもあっさり聞いてくるとかっ。
ってか、なんでバレタし!
私がそういう事を言わないのは、言ったら頭がおかしい人扱いされるからよ。
前世では私はこういう人間でしたって周りに居たら、即入院を勧める。
倒れた椅子を戻してリオに向き直る。
リオの顔は至って真面目だ。
「たまに居るんだそういう人間が。魂の色がちょっと違うんだ。
お前は他の奴とまとっている色が違うからな」
「色ってわかるの?」
「お前の魂は、赤と黒と混ざっているからな」
なんとも、嫌な色ね。
「そういう人間は周りと上手くいかずに最後は不幸な事が多い。どうだ、魔界に来ないか?」
「と、とりあえず。そんな事全然無いし! 魔界には住まないわよ。いや、魔界が嫌いとかじゃなくてね、こっちの生活だってあるし」
「…………勘違いしたか。まぁなんだ人間の場所が嫌になったら言え、アタシに出来る礼はそれぐらいだな」
「どうも」
そんな未来は絶対に来て欲しくないけど。
私が座りなおそうとしていると、大きく扉が開いた。
「エルンちゃん!」
「はい? あっおかえりなさいソフィーネさん」
「はい、ただいまっじゃなくて。すぐに外に!」
ソフィーネさんが私の手を引っ張るのでそのまま外にだされた。
後ろからリオも、ゆっくりとついてくる。
「ごほっ、何この匂い……何か燃えるような」
「火事よ火事!」
「なんて迷惑な……何所の建物が燃えてるのよ」
「どこって、エルンちゃんが使う予定の冒険者ギルドの建物よっ!」
ふぁい!?
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