150 / 209
146 ばれた
しおりを挟む
ランチの時間も終わっているはずの酒場へ二人で行く。
もちろん何時もの熊の手だ。
看板は休憩時間とかかれており、扉は開いている。
顔を覗きこむと、ブルックスは居なく、若奥さんのソフィーネさんが掃除をしていた。
「いらっしゃい」
「どうも、開いて……はいないけど入っていい?」
「この時間は少し閉めるけど、お得意様だし中を勝手に使っていいわよー、代金は貰うけど」
「それはもちっ」
「あら、それ何?」
私の右手にもっている豪華な皮袋を指差された。
中に入っているのなんて、いえ……あっ。
ソフィーネさんが私から皮袋を取るとさっと紐を解いた。
ちょっと酸っぱい匂いがあふれる。
「「………………」」
キュっと紐をしばって私を見てきた。
うん、言いたい事はわかる。
「ええっと、そういう趣味でもあるの? ウチは酒場もかねてるから、こういうのは良く見るけど、それとも最近の若い子ってこういうのを持ち歩くファッションとか? おねーさん分けわからないわよ」
「ない、まったくない! 捨てる場所無くて……」
そう、だって城からここまで人も多いのよ。
そこらに置いていく事も出来ないし、袋が立派な分、捨てる場所もない。
「はぁまったく、若い子が大事に持ってるから何かと思ったら……こっちで処理するわよ?」
「お願いします」
ペコリと頭を下げると、じゃぁ火だけは気をつけてねというと、ソフィーネさんも夜のために買出しへ出て行った。
残ったのは私とリオ。
好きに使って良いといわれたので、何時もの奥の席へいく。
お店全体が見渡せる席にリオを先にいかせて適当に料理を拝借する。
切り分けてあった肉とワインを持ってテーブルへと置いた。
「適当なのでいい? で、何で帰るのよ」
「まったく……あの娘の顔を見たか?」
「娘ってシンシア?」
「ああ……ソレだ。あんな幸せそうな顔をしているんだ、それにな」
言葉を止めると、ワインを一気に飲んでテーブルにグラスを叩いた。
うおっと、反動でビクっとなった。
「っと、少しでもアタシに似ていた奴が嫁なら、アイツを魔界に連れてこうかとも思ったけどな。あんなちんちくりんを愛してるとわかったし、アタシの入る隙なんてない。いや入ったらだめだろ」
リオは照れくさそうに言うと肉を食べ始めた。
かっこいい…………。
私が男だったら惚れるわね。
だから会わないほうがいいだろ。と言うと、続けてわかったか? と聞いてきた。
「うん、わかった」
「結局、お前の顔を潰す事になったな……アタシは人間社会に詳しくないが、城に入るの大変だったんだろ」
別に嘘を言ってもしょうがない。
「まぁそこそこには」
「何か礼をしないとな」
「いや、そこはいいわよ……別にこっちもお礼が欲しくてやってるんじゃないんだし」
私が言うと、リオは黙って私を見てくる。
ちょっと前の、単眼メイドさんの言葉が蘇る、リオ様は女性もいけるって話を……。
「さ、さきに言うけどそういう趣味はないわよ」
「なんの事だ……さっきのノリスの言葉かっ! アタシも無い!」
よかった、行き成り求婚されたら、どうしようかと思うし。
リオはまったく、どいつもコイツもと体を背もたれに預けてぐったりモードだ。
私のほうも、睡眠不足で体調不良なのでぐったりだ。
さっき吐いたし。
「すぐに帰るの?」
天井を見ながらリオに質問する。
リオのほうも天井を見ているはずだ。
「ノリスを先に帰したからな、時間には余裕がある」
「北にある、アトラスの町って知ってる? そこに温泉があるんだけど気持ちいいわよ」
「そうか、検討する」
なんだろ。
リオと会話してると、すっごい安心するようになってきた。
ナナやノエは妹みたいな感じだし、同年代の友達と言う間隔だ。
「前に会った時にも言ったが、エルン……お前混ざってるだろ?」
「ああ、言っていたわね、魂とかなんとかって」
両親とも人間だ。
混ざってるといわれても。
「例えば……この世界じゃない記憶とかあるんじゃないか?」
ズドン。
背中を打った。
痛ったあああああああああああ。
背もたれに背中をあずけてそのまま、後ろに倒れた。
「ちょ、ななななななに」
今まで誰もその事を聞いてこなかったのに、こうもあっさり聞いてくるとかっ。
ってか、なんでバレタし!
私がそういう事を言わないのは、言ったら頭がおかしい人扱いされるからよ。
前世では私はこういう人間でしたって周りに居たら、即入院を勧める。
倒れた椅子を戻してリオに向き直る。
リオの顔は至って真面目だ。
「たまに居るんだそういう人間が。魂の色がちょっと違うんだ。
お前は他の奴とまとっている色が違うからな」
「色ってわかるの?」
「お前の魂は、赤と黒と混ざっているからな」
なんとも、嫌な色ね。
「そういう人間は周りと上手くいかずに最後は不幸な事が多い。どうだ、魔界に来ないか?」
「と、とりあえず。そんな事全然無いし! 魔界には住まないわよ。いや、魔界が嫌いとかじゃなくてね、こっちの生活だってあるし」
「…………勘違いしたか。まぁなんだ人間の場所が嫌になったら言え、アタシに出来る礼はそれぐらいだな」
「どうも」
そんな未来は絶対に来て欲しくないけど。
私が座りなおそうとしていると、大きく扉が開いた。
「エルンちゃん!」
「はい? あっおかえりなさいソフィーネさん」
「はい、ただいまっじゃなくて。すぐに外に!」
ソフィーネさんが私の手を引っ張るのでそのまま外にだされた。
後ろからリオも、ゆっくりとついてくる。
「ごほっ、何この匂い……何か燃えるような」
「火事よ火事!」
「なんて迷惑な……何所の建物が燃えてるのよ」
「どこって、エルンちゃんが使う予定の冒険者ギルドの建物よっ!」
ふぁい!?
もちろん何時もの熊の手だ。
看板は休憩時間とかかれており、扉は開いている。
顔を覗きこむと、ブルックスは居なく、若奥さんのソフィーネさんが掃除をしていた。
「いらっしゃい」
「どうも、開いて……はいないけど入っていい?」
「この時間は少し閉めるけど、お得意様だし中を勝手に使っていいわよー、代金は貰うけど」
「それはもちっ」
「あら、それ何?」
私の右手にもっている豪華な皮袋を指差された。
中に入っているのなんて、いえ……あっ。
ソフィーネさんが私から皮袋を取るとさっと紐を解いた。
ちょっと酸っぱい匂いがあふれる。
「「………………」」
キュっと紐をしばって私を見てきた。
うん、言いたい事はわかる。
「ええっと、そういう趣味でもあるの? ウチは酒場もかねてるから、こういうのは良く見るけど、それとも最近の若い子ってこういうのを持ち歩くファッションとか? おねーさん分けわからないわよ」
「ない、まったくない! 捨てる場所無くて……」
そう、だって城からここまで人も多いのよ。
そこらに置いていく事も出来ないし、袋が立派な分、捨てる場所もない。
「はぁまったく、若い子が大事に持ってるから何かと思ったら……こっちで処理するわよ?」
「お願いします」
ペコリと頭を下げると、じゃぁ火だけは気をつけてねというと、ソフィーネさんも夜のために買出しへ出て行った。
残ったのは私とリオ。
好きに使って良いといわれたので、何時もの奥の席へいく。
お店全体が見渡せる席にリオを先にいかせて適当に料理を拝借する。
切り分けてあった肉とワインを持ってテーブルへと置いた。
「適当なのでいい? で、何で帰るのよ」
「まったく……あの娘の顔を見たか?」
「娘ってシンシア?」
「ああ……ソレだ。あんな幸せそうな顔をしているんだ、それにな」
言葉を止めると、ワインを一気に飲んでテーブルにグラスを叩いた。
うおっと、反動でビクっとなった。
「っと、少しでもアタシに似ていた奴が嫁なら、アイツを魔界に連れてこうかとも思ったけどな。あんなちんちくりんを愛してるとわかったし、アタシの入る隙なんてない。いや入ったらだめだろ」
リオは照れくさそうに言うと肉を食べ始めた。
かっこいい…………。
私が男だったら惚れるわね。
だから会わないほうがいいだろ。と言うと、続けてわかったか? と聞いてきた。
「うん、わかった」
「結局、お前の顔を潰す事になったな……アタシは人間社会に詳しくないが、城に入るの大変だったんだろ」
別に嘘を言ってもしょうがない。
「まぁそこそこには」
「何か礼をしないとな」
「いや、そこはいいわよ……別にこっちもお礼が欲しくてやってるんじゃないんだし」
私が言うと、リオは黙って私を見てくる。
ちょっと前の、単眼メイドさんの言葉が蘇る、リオ様は女性もいけるって話を……。
「さ、さきに言うけどそういう趣味はないわよ」
「なんの事だ……さっきのノリスの言葉かっ! アタシも無い!」
よかった、行き成り求婚されたら、どうしようかと思うし。
リオはまったく、どいつもコイツもと体を背もたれに預けてぐったりモードだ。
私のほうも、睡眠不足で体調不良なのでぐったりだ。
さっき吐いたし。
「すぐに帰るの?」
天井を見ながらリオに質問する。
リオのほうも天井を見ているはずだ。
「ノリスを先に帰したからな、時間には余裕がある」
「北にある、アトラスの町って知ってる? そこに温泉があるんだけど気持ちいいわよ」
「そうか、検討する」
なんだろ。
リオと会話してると、すっごい安心するようになってきた。
ナナやノエは妹みたいな感じだし、同年代の友達と言う間隔だ。
「前に会った時にも言ったが、エルン……お前混ざってるだろ?」
「ああ、言っていたわね、魂とかなんとかって」
両親とも人間だ。
混ざってるといわれても。
「例えば……この世界じゃない記憶とかあるんじゃないか?」
ズドン。
背中を打った。
痛ったあああああああああああ。
背もたれに背中をあずけてそのまま、後ろに倒れた。
「ちょ、ななななななに」
今まで誰もその事を聞いてこなかったのに、こうもあっさり聞いてくるとかっ。
ってか、なんでバレタし!
私がそういう事を言わないのは、言ったら頭がおかしい人扱いされるからよ。
前世では私はこういう人間でしたって周りに居たら、即入院を勧める。
倒れた椅子を戻してリオに向き直る。
リオの顔は至って真面目だ。
「たまに居るんだそういう人間が。魂の色がちょっと違うんだ。
お前は他の奴とまとっている色が違うからな」
「色ってわかるの?」
「お前の魂は、赤と黒と混ざっているからな」
なんとも、嫌な色ね。
「そういう人間は周りと上手くいかずに最後は不幸な事が多い。どうだ、魔界に来ないか?」
「と、とりあえず。そんな事全然無いし! 魔界には住まないわよ。いや、魔界が嫌いとかじゃなくてね、こっちの生活だってあるし」
「…………勘違いしたか。まぁなんだ人間の場所が嫌になったら言え、アタシに出来る礼はそれぐらいだな」
「どうも」
そんな未来は絶対に来て欲しくないけど。
私が座りなおそうとしていると、大きく扉が開いた。
「エルンちゃん!」
「はい? あっおかえりなさいソフィーネさん」
「はい、ただいまっじゃなくて。すぐに外に!」
ソフィーネさんが私の手を引っ張るのでそのまま外にだされた。
後ろからリオも、ゆっくりとついてくる。
「ごほっ、何この匂い……何か燃えるような」
「火事よ火事!」
「なんて迷惑な……何所の建物が燃えてるのよ」
「どこって、エルンちゃんが使う予定の冒険者ギルドの建物よっ!」
ふぁい!?
0
お気に入りに追加
69
あなたにおすすめの小説

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

公爵令嬢を虐げた自称ヒロインの末路
八代奏多
恋愛
公爵令嬢のレシアはヒロインを自称する伯爵令嬢のセラフィから毎日のように嫌がらせを受けていた。
王子殿下の婚約者はレシアではなく私が相応しいとセラフィは言うが……
……そんなこと、絶対にさせませんわよ?
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

優しく微笑んでくれる婚約者を手放した後悔
しゃーりん
恋愛
エルネストは12歳の時、2歳年下のオリビアと婚約した。
彼女は大人しく、エルネストの話をニコニコと聞いて相槌をうってくれる優しい子だった。
そんな彼女との穏やかな時間が好きだった。
なのに、学園に入ってからの俺は周りに影響されてしまったり、令嬢と親しくなってしまった。
その令嬢と結婚するためにオリビアとの婚約を解消してしまったことを後悔する男のお話です。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

出て行ってほしいと旦那様から言われたのでその通りにしたら、今になって後悔の手紙がもたらされました
新野乃花(大舟)
恋愛
コルト第一王子と婚約者の関係にあったエミリア。しかし彼女はある日、コルトが自分の家出を望んでいる事を知ってしまう。エミリアはそれを叶える形で、静かに屋敷を去って家出をしてしまう…。コルトは最初こそその状況に喜ぶのだったが、エミリアの事を可愛がっていた国王の逆鱗に触れるところとなり、急いでエミリアを呼び戻すべく行動するのであったが…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる