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143 正論男

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 眠くない。
 時間は午前二時を回った所だ。

 場所は学園内の保健室、念のためにもう一泊しろといわれての事だ。
 眠れなさ過ぎて、保健室を出て散歩をする。

 普段昼しか見た事ない学園は静かで別世界のようだ。

 昼間に事情を色々と聞いた所、ミーナが『エルンちゃんは十日ほどねるけど、後遺症だから心配しないでね! あと、これこないだの借金返済と、こっちはエルンちゃんに渡してあげて、あっ半分はももっりゃうけどいいよね? うん、いいに決まってる』とかなんとかディーオに言って消えたそうな。

 すぐに私の部屋に入ったディーオは眠っている私を見つけたそうな。

 すぐに早馬を使って王都まで帰って来て、医者にみせても寝ているだけでしょうと診断され、そのまま寝かされたと。


 万が一、十日で起きなかったら、ディーオとナナは錬金術のアイテムを色々使う所だったまで、話を聞いた。

 でだ。

 ディーオ曰く、十日も寝たのだから三日ぐらいは寝れないだろう。と、いうありがたいお言葉を頂いた。

 ポケットから金のジャガイモを取り出す。
 賢者の石を使って出来た固まりだ。

 中庭のベンチにすわりテーブルに転がした。
 二つで十日間寝込んだ。
 って事は、一個で五日間で済むのね、ええっとこれを売れば半月は暮らせるとして、いい商売じゃ。


 私は胸元から賢者の石を取り出す。
 そして、ベンチの下にある小石を拾うと、手の中に押さえ込んだ。

 金になれ、金になれ、金になれ、金になれ。

 なんだろう、最初に受けた脱力感がない。
 ちらっと目を開けてみても小石は小石のままだ。


「念じが足りないのかしら、金金金かねかねカネキンキンキンキン――」
「何をしてるんだ何を……」
「何って、ぶほディーオい、いつから」
「中庭に人影がいるから、良く見たら君だった。なるほどな…………それが賢者の石か」
「ぶっは、なななななんでっ」


 なんで名前を知っているのよ! と口から出る前にディーオは口を開く。


「ボクはアレと同期だぞ、話ぐらいは知ってる。
 なるほどな……今回のはその後遺症と言う奴か、少し見せてもらっていいか」
「え、別にいいわよ。はい」


 私は首のチェーンを外してディーオに渡した。
 渡したらディーオが不機嫌な顔になる、解せぬ。


「なんで、そんな嫌そうな顔なのよ。その位置からだったら……そうねぇ、どこぞの物語りの主人公なら、女性の谷間も見えてのラッキーイベントよ! もしかして貧乳のほうが好きとか」
「色々と話を飛ばすなっ! 信頼してくれるのは嬉しいが、見せてと言ったらすぐ見せるエルン君に注意使用とおもっただけだ。
 噂通りのアイテムなら、これで国が滅ぶぞ」
「そんなわけ無いじゃない、たかが金を作れ……」


 金だけじゃない。
 擬似精霊を作れるとも聞いたし、未完成品でゾンビを発生させた未来も知ってる。


「もしかしてヤバイアイテム?」
「もしかしなくても、そういうアイテムだろう。中の魔力が少ないな……連続使用が出来ない仕組みらしい。返す」


 ディーオは直に返してくれたので逆にこっちが戸惑う。


「もういいの?」
「ああ、構造を見たかっただけだ。大体わかった」
「はー凄いわね」


 ディーオは天才だからなと、ブツブツ言い出したので聞き流す。
 こういうのは話半分聞いていればいいのよ。


「――――と、いうわけだ」
「はいはい」


 うん、話まったく聞いてなかった。
 適当にあわせておこう。


「君聞いてないだろ……」
「やだ、聞いていたわよ、あれよね朝食の相談よね、目玉焼きでいいんじゃない?」
「違う! ヘルン王子とシンシア姫の婚約パーティーは既に終わった。
 四日後にはハネムーンに出かけるそうだ、実質一日しかないぞ」
「げ、まじで?」
「ああ……羽は明後日の昼に献上する。君は早く魔界にいけ」
「そういう事はもっと早くいいなさいよ!」
「昏睡していただろう……」


 うぐ……正論男め……。
 確かになんだかんだで羽を取りにいって一月近くは掛かっている。
 指を折って数える、十二月が終わろうとしていてもうすぐ新年だって所。


「さて。元気そうならボクは戻る」
「ん。私はもう暫くここにいるわ」
「そうか、風邪を引かないようにな……おっと……君には無用だったな」
「あら、心配してくれるの? ありがと」


 ディーオが、一瞬変な顔をして帰っていった。
 星を見ながら酒ってのも良かったわよね。
 お酒持ってないけど。

 でもまぁ、ディーオでも心配してくれるとは、風邪を引かないようにって……。

 あれ。

 馬鹿は風邪引かない……。
 『君には無用だったな』

 あんのやろおおおおおおおおおお!

 ドン!

 私は無意識にテーブルを叩く。


「…………痛い」


 骨折でもしたら慰謝料請求するんだから!

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