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142 賢者の石の使い方

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 アトラスの町の前で旅馬車を待つ。
 ディーオの乱。
 私がそう呼んでるだけだけど、温泉にも入ったしディーオの体調もよくなり後は帰るだけ。

「悪いわね見送って貰って」
「こちらこそ、その羽をありがとうございます」


 まぶしい笑顔でガーラがお礼を言ってくる。
 温泉で聞いた所、カルロスは道案内だけをして羽を貰ってこなかった。
 それを聞いた私は手持ちの五枚から一枚をプレゼントした。

 ほんっと、気がきかないわよね……カルロスを睨むと、俺とガーラはそんな仲じゃねえよと、言うけど、どうみてもそういう仲でしょうに。


「結局ボクは何もしなかったな」
「あーアトラスの町まできて寝込んで温泉入って終わったわね」
「すまない」
「はいはい、暗い顔しないの、馬車来たわよ」


 こんど王都に行ったら、案内お願いしますとガーラにいわれ馬車に乗り込んだ。
 なんでも、暖かくなると王都に遊びに来るのだ。
 その時に、カルロスは宿の心配をしていたので私の家を紹介した。

 だって、カルロスの提案する宿って一泊銀貨数枚の安宿だったから。
 そんな所に女性を泊まらせてどうする。


「じゃぁ、また」
「ああ、またな」
「また会いましょう」


 ディーオは無言で手を上げて別れを告げる。
 旅馬車に乗り込んでカッポカッポと雪道を下っていった。
 

 馬車には他にも人が乗っているので、今回はお喋りが出来ない。
 だって、どの人も静かに乗っているし。
 仕方が無いから次の宿場につくまで、外の景色を楽しむ……楽しむ……たの……。


「ついたぞ」
「ふぁ!?」


 耳元で声がして、目をあける。
 よだれをふいて周りを見ると、夕暮れだし、宿場についていた。
 どうやら寝ていたらしい、ディーオに礼を言って飯屋にいく。

 一度来た事があるので、適当に注文するとディーオが話しかけてくる。


「で、羽は手に入れたが……すぐ城にいくのか?」
「どうしよう、魔界にも行かないといけないし」
「城のほうの手続きは任せてもらおう、それぐらいしか出来ないからな」


 自虐が痛々しいディーオは置いておいて、となると魔界担当は私か。
 たしか魔界にいける指輪貰ったのよね。
 テーブルの上にコロンと転がしてディーオをみる。

「確か三人まで行けるのよね? 一緒に行かない?」
「魔界か……あまりいい思いもないからな。今の君なら一人でもいけるだろう、心配なら護衛でもつれていけ」
「どういう意味よ! まぁでも、そうするわ」


 食事をおえて、二階で一泊する。
 私の手持ちが無いので、この辺は全部ディーオの奢りだ。
 だから二人部屋でも最悪仕方がないとおもったけど、一人部屋を取ってくれた。律儀な男ね……。

 部屋でする事もないので、日記を書いて酒飲んで寝ることした。もちろん酒代も貸し手といったらくれた。
 本当こっちの人って暇を埋めるのが得意よね。
 ガーラに聞いたらガーラは剣の鍛錬だっていうし、逆に剣をしない人は手芸や内職などをする人も多いって。

 しかしまぁ、賢者の石ねぇ……まさか一年未満で材料が揃うとは思わなかったわ……。

「結局あのゲーム、賢者の石を作った! で終わって、その後の使い道とかまったくでないのよね」
「その辺に落ちている石から宝石とか作れるよー?」
「まっ!? となると、一生お金に困らないじゃない」
「他には精霊ちゃんみたいに生命を作り出す事も出来るよ」
「まじで! やりたい放題じゃない!」


 …………。

 ………………まて、私はいま誰と会話してるんだ?
 振り向くと見知った顔がそこにある。


「ミ、ミーナっ!」
「やほほーエルンちゃん」
「ちょ、どこから」


 私が驚くと、開いた窓を指差した。


「いやー、ディーオっちを見かてね。入ろうとしたらバレちゃって窓閉められたの!
 でね、隣を覗いたらエルンちゃんがいるじゃん! って」
「いるじゃんって入ってきたら駄目でしょうがっ!」
「駄目なの?」
「そりゃそうよ……」
「それよりエルンちゃんお腹減った! 何か奢って!」


 こいつは……。


「生憎だけど、手持ちが無いわよ……」
「えーお金持ちだけがステータスのエルンちゃんがお金持ってないとか……いひゃいひょうだんだってばー」


 気づいたらミーナの頬を両手で摘んでいた。ってか、三十手前なはずなのに何でこんなにもっちもちの肌なのよ。どうみても十代、それも前半にしか見得ない。


「何でこれを賢者の石って知ってるかとか、色々聞きたいけど、それが本当なら貸し手あげるから自分でお金でも宝石でも作ればいいじゃないのよ、それで買ったら?」
「わーエルンちゃん頭い……いひゃい、じょうはん、じょうはんだから、いたい」


 私は再びつかんだミーナの顔から手を退ける。
 顔が餅になった……と言うミーナが私の酒を勝手に飲む。


「じゃぁエルンちゃん使った事ないんだソレ」
「あるわけ無いじゃない……使い方も知らないのに」


 失くさないためと健康に良さそうだから首にかけてるとはいえない。


「磁気ネックレスみたい、ぷぷぷおばあちゃ……いひゃい」
「つ、か、い、か、た!」


 ディーオが締め出す理由がよくわかる。
 元気すぎるというか、話が通じないというか、でも変な所で頼りになったりと……。


「じゃぁうーんと…………どれを変えようか」
「ほ、本当に出来る!?」
「エルンちゃん次第だけどね」


 む、なんだこの馬鹿にされてる気分は。


「喧嘩売ってるの?」
「ぜんぜん? じゃぁここに最後の食事に取っていたジャガイモが二つあるから、これを変えようよ。目を閉じて、そうそう。
 目の前に大きな石版、なかったらノートでもいいやそれを思い浮かべて」


 注文が多いわね。
 でもまぁ、言われるとおり大きな石版を思い浮かべる。


「でね、次はさっきの石ころが光ってる様子を思い浮かべるの。
 浮かべながら石版に宝石にしてくださいって書くの」
「書くのって……そんな――」
「目を開けたら駄目!!」


 くっ。怒られたので目を閉じたままにする。


「一応なんで?」
「失敗作が出来るから、宝石じゃなくてガラス玉になっちゃうよ?」
「それは困るわね」


 私は心の中で石版へ、石を金塊にと書く。
 ほら、万が一宝石にしたとしよう、目を閉じている間にミーナが宝石と石をすり替えるって事も…………無いわね。
 そんな事出来るなら宝石売ってるだろうし。

 でも、私しか知らない物に変化させる実験だ。
 これで変化したら、本物の賢者の石という事になる。

「もっと、強く念じて!」
「してるんだけどー」
「もっと! もっと!」
「はいはい」
「もっと――――」


 念じる。
 念じて念じる。
 こころの中の石版にも書いた。
 ってか、ミーナが煩い。


「だーーもう煩いんですけど! …………?」


 目が覚めるとナナとディーオが居た。
 なんだったら、ノエもいるし部屋が宿じゃない?


「エルンさーーーーーーんーーーーー」
「ごふっ。ちょっとナナ行き成り抱きついて痛いって、あれここ何所?」
「ふう…………あの馬鹿の言う通りとはな……学園だ」
「学園ってどこの」
「グラム王国に決まってる、君は十日間も眠っていた」

 ほわっつ!?

 

 
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