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139 かっぽんかっぽん

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 結局どうしようもないので、ゆきぽよぽよを掃除して帰った。
 ダンさんは町に被害が来ないように小屋で見張るというので、ガーラと私はアトラスの町へと帰る。

 二人の邪魔をしたら悪いと思って、ガーラとカルロスが住んでいる家の前へと別れ宿に着く。


「と、いうわけだったわよ、ディーエもん」
「…………ディーオだ」


 いまだベッドから出れないディーオに説明すると、腕を組んで考えはじめた。
 私は近くのカゴに入った果物セットから、りんご手に取るとそのままかじる。
 
「何かわかりそ?」
「まぁ……鳳凰だろうな。一つ聞きに行くか幸い道はボクも知ってる」
「行くってその体で?」


 ディーオのベッドの脇には松葉杖がある。


「そこは不本意ながら担いで貰おう、ペンキンに背負って貰えば早いと聞いた」


 イラ。


「不本意なら別にいいわよ、カルロスといくから」
「なら、ボクも錬金術師として特に言う事はないな、頑張って解決してくれ」
「ぐぬぬぬぬぬ……足元みて卑怯な、わかったわよ!
 まったく、錬金術師ってのはろくなもんじゃないわね」


 頭が筋肉のカルロスといってもなぁ。
 頭脳担当と一緒のほうが助かる。
 
 ぜんは急げという事で、ペンギンスーツを着込んで、町をでる。
 少し離れた場所でディーオを背負って再び鳳凰の巣まで走った。
 
 相変わらず、巣は夏のように暑くスーツを脱いで丘の上へいく。
 ぐるっと見渡してもヒヨコがいないので大声で叫ぶ。


「馬鹿ひよこ!」
「ぴっ!」


 木の裏にある巣穴から声と共にぴょこと顔を出した。
 ディーオが一歩前にでると挨拶をしだす。


「ヒナの時には、お初にお目にかかる。グラン王国の錬金術師ディーオ・クライマ」
「前に来た事あるぴよね? 記憶はあるぴよ!」
「私の自己紹介はいるかしら?」
「うわ、鬼がいるピヨ!」
「だれが、鬼よ! どういう事が説明してもらうのに来たのよ!」
「ここに来たって事は、わかってるピヨ、ちょっと待つピヨ」


 ひよこの鳳凰、鳳凰のひよこ? まぁどっちにしろひよこが巣に帰っていく。
 ディーオは近くの岩に座って体を休めて、私はする事がない。



「何だ、話が早いわね」
「元々賢明な鳥だ、全て知っているんだろう」



 思ったより早くひよこが戻ってきた。
 その両手の羽には見た事のある包みがぶら下げてある。


「はいぴよ、鳳凰の羽と、こないだの……お土産ぴよ!」
「いらないわよっ!」


 私が包みを地面に落とすと、ひよこが悲しい顔になった。
 辺りが静かになって、ディーオもエルン……と小さく言う。


「いやいやいや、まってまってまった! この私が悪い流れはない。
 だって、これの中身って、鳳凰の……排泄物でしょ!?」


 指をさしていうと、ひよこが慌て始める。


「ぴっ! ばれてるピヨ! 人間はピヨのうんこを見ると、食べ物と思って口に入れるイタズラがばれたぴよ! 口に入れたぴよ?」
「ほらやっぱり! ちょっとまってなさい! ペンギンスーツ着て蹴飛ばすから!」
「く、そっちの男助けるぴよ!」
「うわ、助けとか卑怯よ!」
「とりあえず、二人とも静かにっ!」


 ディーオが突然叫ぶから、私もひよこも黙った。


「えっと、怒ってる?」
「いや? 話が進まないし、ボクが代わりに喋ろう。間違えている所があれば後で訂正を頼む」
「うん」


 ひよこも、若干引きつりながら、わかったぴよと静かになった。


「今回は羽や卵ではなく、どうも鳳凰様の排泄場所がなんらかの原因で、外の温泉と繋がり、その温泉周りのゆきぽよぽよが大量発生している」
「ふむぴよ」
「低級魔物が大量発生した場合の危険性は鳳凰様もわかるだろう、原因を探りに来た。何か変わった事はないだろうか?」
「こんなひよこタメ口でいいのに……」


 私の言葉を無視して、ひよこが腕を組む。
 羽が小さいから組めてないけど。

 もう一度ちょっとまつピヨと巣へ帰って行った。

 お腹が減った。
 今日の晩御飯をどうしようかと考えていると、土の中の巣が騒がしい。
 ディーオと顔を見合わせると、ゆきぽよぽよが巣からはい出てくる。


「ちょ!」
「エルン君離れてろ!」


 振り返ると、既に剣を抜いたディーオがヨロヨロと前にでる。
 言葉は【まだ】かっこいいのに、情けないわね……。


 グレート皇帝ペンギンスーツが無くたって、これぐらい平気なのに。
 偶然……偶然? 落ちている木の棒を拾う、野球のフルスイングような感じでゆきぽよぽよに攻撃をする。

 ゆきぽよぽよの表面が一瞬で白く氷になる。


「かったあああああああああああいい」


 それでも、コアを打ち抜くと私は振り返る!


「どうよ!」
「…………そうだな」


 何がそうだなか、知らないけどディーオの回りには沢山の氷、いえゆきぽよぽよ塊があった。
 ふーん…………やるじゃない。


 体感数十分で全部を倒す。
 倒した所で、巣穴からひよこが戻ってきた。


「ちょっと!」
「わかってるピヨ。タイヘンな事になったピヨ」

 ひよこの後ろから、もとい、ひよこの地面にある巣穴けん住宅から何十匹以上のゆきぽよぽよが出てくる。

 キモ。

「出て来る以上倒さなければ駄目だろうな」
「頼むピヨ!」
「ええっと、グレート皇帝ペンギン装備してきたほうがいい? あっちに置いて来たけど」


 あっちとは、三百メートルぐらい先の出入り口。
 そこで脱いできた。

「着ると暑いといっていなかったか?」
「そりゃまぁ、稽古後の相撲部屋に押し込まれたぐらい暑いわね」
「……例えが解からないが、この数なら大丈夫だろう」


 お優しいディーオの助言で私は一歩後ろに下がる。
 ディーオが三、ひよこが七ぐらいで殲滅していく、病み上がりでも結構強いのね。
 せん滅し終わった所で私は二人? 一匹とディーオの側に駆け寄る。


「で、何があったのよ」
「詰まっていたピヨ」
「何が?」
「お、乙女の口から言わせるピヨ!?」
「乙女って誰よ」
「ウチピヨ!」
「えええええ、メスだったの!」


 ずーっとオスかと思ってた、いやまって卵産むんだし、そういえばそうか……。
 オスと思ってちょっと態度きつく当りすぎたかな。


「……鳳凰に性別はない。単独で成長し単独で卵を産む。何故そうなのかかは不明だ。
 で、鳳凰よ」
「ピッ! いつも使っているトイレが詰まっていたピヨ。困ったピヨ」
「詰まったって、かっぽん使えばいいんじゃないの?」


 私の言葉にディーオとひよこは信じられないという顔を向けてきた。
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