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134 彼の困った横顔…………を見て私は握り拳を(略

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 自称鳳凰のひよこの後をついて寝床へといく、表から見えなかった木の陰に穴が掘られており、さらに地下に入れるようになっていた。

「鳳凰の羽の部屋ピヨ」

 ひよこが器用に手で扉をあける。
 扉と言っても巨大なひよこがあけるので、その高さはすさまじい。
 どうやっても人間一人の力じゃあかないわね。
 
 部屋の中には、 小さい羽から大きい羽まで羽毛布団が作れるぐらいに羽が散らばっていた。


「うわー、これだけあると有難味まったくないわね」


 私の言葉にカルロスが注意をしてくる。

「まぁ一人五枚までだけどな」
「そうなの?」
「じゃないと、価値が下がる、その辺は先代鳳凰も決めていたはずだ」
「そうピヨ、うっすらと覚えてるピヨ」
「記憶あるんじゃないの?」


 うるさいピヨ。とひよこが文句を言ってくる。
 なんでも、記憶といっても生活の仕方や仕来り、あとは重要人物とかその辺の記憶だけで、一から百まで全部を受け付いてるわけじゃないみたい。

 何か、引継ぎが出来ていない中小企業の社員みたい。


「まぁ羽は後でいいとして卵は? 卵欲しいんだけど。恐竜みたいな卵なんでしょうね」
「ここまで強欲な人間も珍しいピヨ」
「羽むしるわよ」
「怖いピヨ!」


 伝説の鳳凰だから、ちょっとは期待したのに人語を話すひよこと来たもんだ。
 大きすぎて可愛げも無い。
 いや、まぁ襲われたら多分私なんて、クチバシで突かれたら終わりなんだろうけど……怖さもあまりないのよね。

 まって……私、いままで怖いって感じた事が無いかもしれない。

 崖から落ちたとき。まぁこれは怖いというより驚きだった。あと前世だし。
 飛んでるホウキで飛んだとき、気持ちよさが勝った。
 ディーオゾンビに襲われた時、怒りのほうが先にあった。
 魔族のリオに会ったとき、なんとなく友達に慣れそうな気がした。


「もしかして、人として何か欠落してるんじゃ……はっ!」


 前を見ると、カルロスとヒヨコが顔を近づけている。

「今頃気づいたか……」
「本当のヤバイ人間は自分では気づかないっていうピヨ」
「じゃぁ、大丈夫なのか?」

 イラ。

「そこ、ガーラに言いつけるし、焼き鳥にするわよ!」
「「かんべん」」してくれ」ピヨ」


 ひよこに連れられて、卵の部屋に入った。
 持ち運びをどうするか考えていると、これは意外。スーパーでみた卵と同じサイズだ。
 それが何十個も並べられている。

 これが万能薬の元になるのね。
 私は丁寧に卵をもつと、次々にポケットに入れていく。


「ピヨピヨピヨピヨ!」
「なに?」
「表の看板見てないピヨ?」
「見たわよ、予備卵室って書かれていたわよね」
「この卵達は、ピヨが成鳥前に万が一死んだら一匹だけふ化するぴよ!」
「へえ」


 私は再度どんどん卵をポケットに入れていく。


「だから一人一個ピヨ!」
「羽もだめ、卵もだめ、けっちくさい鳥ね」
「鳳凰だピヨ! 人間、ルールはまもるピヨ!」
「はいはい、一個よね一個、じゃっもう会う事ないとおもうけど、カルロス帰るわよ」
「さっさと帰れピヨ」
「…………手土産ちょーだい」


 私は可愛くお願いをする。


「こ、これ以上ピヨ!?」
「いやだって、これはここに来た人が貰える物よね、私は個人的に何か頂戴って、帰って欲しいらならそれ相応の物よ! そうだ、友達の錬金術師に渡すから珍しいの頂戴」


 まぁただの嫌がらせなんだけど、人を悪魔だ鬼だというし、さっさと帰れとか。
 そりゃ突然来たのは私達だけど、もう少し何かあってもいいじゃない。
 私としては、大きな火の鳥がいて、カルロスが盾になりながらも必死で卵と羽をとって帰るってイメージだったのに。

 ちょーっと大きいからって可愛いひよこが出迎えて、羽でも卵でもどうぞって、話が違う。


「となるとピヨ……しょうがないピヨ。木の下でちょっとまつピヨ」


 ひよこがテクテクと歩いていく。あ、くれるんだ……思ったより良いひよこなのかもしれない。そうなると、罪悪感がでるわね。
 私とカルロスは顔を見合わせて外に出た。


「にしても、すげーな……ポンポンポンと」
「まぁ断られたら、それはそれで帰ったわよ。言ってみるもんね」


 大きな木の下で時間を潰す。
 カルロスは装備の点検をしているので、私は膝をかかえてぼーっとする。
 いやする事ないし。
 とりあえず、貰った卵を割って生のまま飲ませるのが一番いいと説明を受けた。

 割れていないか確認する、卵といっても殻は厚くちょっとしたトンカチを使って割るとかなんとか。


「待たせたピヨ」

 小さい包み器用に持ってくると私に手渡してくれた。
 良い匂いが包みからしてくる、食べ物かしら? ちょっとだけ中を見ようとすると、待ったが掛かった。


「絶対に帰るまで開けちゃだめピヨ!」
「なんで」
「この状況でよく文句がいえるピヨ……」
「わかったわよっ……ありがとう、良い匂いだし喜ぶと思うわ」
「べ、べつに感謝されてピヨピヨピヨピヨ――――」


 ピヨピヨ煩いからカルロスの肩を叩いて帰ることにした。
 グレート皇帝ペンキンのきぐるみを再び装備しながらカルロスに聞いてみる。


「帰りって洞窟を一人で通ったらふもとに戻されるのよね、それで帰るの?」
「お前いい所に気づくな、冒険者のほうが似合ってるんじゃないか?」
「それはどうも、でも、命のやり取りはしたくないわ」
「そうか、でも普通に下山だな。ふもとっても出る洞窟はランダムだ。バラバラの場所に放り出されて遭難しても困るだろ」
「なるほど、融通はきかないのね」
「そんなもんだろ」


 仕方がなく、グレート皇帝ペンギン、カルロス装備に仕様を変更した。
 背中のカルロスが俺は装備品じゃねえぞって言っているけど、私からしたら装備品である。
 背中のナビで一気に下山をした。


 アトラスの町について、ペンギンのまま町へ入る手続きをして、カルロスをガーラに預けて私は走った。
 あ、ガーラなんだけど毎日、門の所まで訓練だ! って来てた見たい。後ろで私を呼んでいた気がするけど、とりあえず後にしよう。

 宿に着いて、私の姿を見て武器を持つ宿の主人をペンキンチョップで吹っ飛ばす。
 きぐるみを脱いで、私の顔を見せると納得したらしい。

 部屋の横にあるホウキが邪魔と思いつつ扉を開けた。


「やっほー、エルンちゃん、お疲れ様!」
「そのなんだ……」


 私は元気よく返事をするミーナと、ばつの悪そうなディーオの顔を見て固まった。
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