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128 馬車は続くよ目的地まで

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 もう一泊するのかと思った。
 飯場で、最初に言われた言葉がそれだ。
 もちろん言ったのはディーオである。

「起してくれてもいいじゃない!」
「君が今日は寝坊しないっていうから、ボクは待っていたんだ」

 怒るわけでもなく事実を淡々といわれると辛いわね。

「それはその……こっちにおいておいて」


 ディーオが無言でいるので、仕方が無く横に置いた話をディーオの前にもって言って、謝る。


「ごめん」
「ふぅ……起しに行かなかったボクも多少の責任はある。午後の便でいこうじゃないか」
「カルロスは?」
「朝便に乗っていった、君によろしくと伝えてくれと」


 いっちゃったかー、どうせ北の町いくなら一緒のほうが良かったのに。


「出発までまだ時間がある、昼を食べてからでも大丈夫だ」


 朝から何も食べていないというディーオの昼を奢る。
 いや、奢らせてください。まじで。

 ディーオとともに昼食を取ると暇になる。
 馬車まではまだ一時間ぐらいあるとの事、往復便なのでそれも大雑把だ。
 仕方が無く、旅馬車が着たら連絡してくれという伝言を頼み、一階の飯場の部分でドライフルーツを摘んでは口にいれる。


「そういえば昨日の話って」
「どの話だ」
「死霊のなんちゃら」
「ああ、懐かしい話だったな。例によって馬鹿が一人暴走して連れて行かれた。
 死んだボクの両親を復活させようという趣味の悪い考えを言い出してな、当時丁度出てきたアンデットの塔へと突貫した話だ。他にも冒険者が多数きていたな、カルロスもその一人だろう」
「へー……でも、優しい? のかしらね」
「どうかな、復活してもそれはもう魔物になる、全てが終わった後から一月ぐらいかな口を聞かなかった」
「ぷっ」


 私が小さく笑うと、なぜだ。という顔をしてきた。


「いやだって、子供みたいだなって」
「…………まったく同じ事をソフィーネにも言われたよ」



 さて、話はおしまいだとディーオが言い出した。
 別に悔しくはないけど、ディーオが過去の話するときって表情が和らぐのね。

 鼻がむずむずしだす。

「へっくしゅん」


 思わずクシャミがでると、ディーオがもうそろそろかと言い出した。
 何がもうそろそろなんだろう。


「何が?」
「いや、冬用の装備がいるな」
「次の街で最後なんでしょ、そこで買うわよ、ディーオもそうなんでしょ?」
「こっちはレンタルだ」
「へぇレンタルもあるんだ」


 でも、知らない人が来た服を着るのは出来れば避けたいわね。
 宝石を換金してお金を作って自分用のが欲しいきがする。
 するじゃなくて欲しい。


「こっちはそこまで余裕ないんでな」
「は! 口に」
「出してない、そう思っただけだ」
「ぐぬぬ……所で私は仕送りとなんだかんだで、なぜか、お金増えてるからいいけど、ディーオって、お金どうしてるの?」
「前にも伝えた。特に貴族といっても領地は返した。名も返したがそれは拒否されたから使っているだけだ。金銭面は教師の給金と、これでも一応は錬金術で稼いでる。一人で食べる分には困らんさ」
「へえええ、ちゃんと考えているのね」
「…………君が能天気すぎるだけだな。馬車が着たみたいだな」


 ディーオの言うとおりに外を見ると馬車が入ってきた。
 乗っていた客が降りると、空になったので私達はその馬車に乗り込んだ。

 旅は順調に進んでいく。
 小さい宿場やちょっとした街をぬけ足早に移動した。


 ◇◇◇


「そして順調な旅はいよいよ佳境に迫った! 十三日目の朝である!」
「…………」
「ちょっと、そこは相槌をいれてほしんだけど、っくしゅん」
「入れるも何も、ずっと一緒だっただろ。次の街で最後だ」


 現在は最後の馬車に乗っている。
 客は私とディーオだけ。
 旅馬車もしっかりした箱物になっており寒さを少しでもやわらげる作りに成っていた。

 道は既に雪道になっている、知らない間に山を数個越えていたらしくこの辺は雪が少し積もる出そうな。
 で、霊山と呼ばれているほうをみると、見事に雪。
 前世でみた富士山を思い出す。

 日本人って山に雪が載っていれば全部富士山よね。と、いう私の意見を昔会社の上司に言った事がある。
 そしたら、もうネチネチネチネチと五時間、いや上司はネチネチ言っているつもりも無かったんでしょうけど、山の魅力をたっぷりと教えてくれた。

 今となっては何一つ覚えてないですけどね。

「ヘックッシュン!」
「大丈夫か? やはり大事をとって数日寝てたほうがいいか」
「へあ? ああ、大丈夫よ」


 どうも、ここ数日クシャミがでる。
 軽い風邪と思うけど、ディーオがやたらに心配してくるのよね。
 まぁ前もそうだったけど、この世界内科系に弱いし。
 ポケットからハンカチを取ると鼻をかむ。

 ずずずー。

「鼻水は透明だし…………みる?」
「見ないっ!」
「現役女学生の貴重な鼻水なのに」
「…………君はもう少しだな」
「はいはい」


 なぜか怒られた。
 解せぬ。
 山道の向こう側に建物が見えて来た、最終目的のアトラスの町だ。

「へっくちょい。あーもう、鼻水がでるわね」

 ディーオが何か言いたそうな顔でこちらを見ていた。
 ったく、心配性なんだから。


「大丈夫だって、なんだったらあっつーいお風呂でも入って酒でも飲めば治るわよ。
 それより不死鳥がだめだったらどうするの?」
「不死鳥は卵を数十個産んで、その中から一つだけ選んで育てるらしい。
 仮に今の不死鳥が死んで居なくなっていれば……残った卵を頂こうか」
「おっふ、あんがいシビアな鳥なのね」


 こればっかりは、人間の常識を押し付けてもしょうがないとディーオは言う。
 あ、ほら街の入り口が見えて来たわ。
 
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