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127 旅の話はお酒に限る

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「ってなぐあいでよ、俺の剣がハイオークの首を捕らえたのよ」
「すごいわね、話半分でも英雄じゃない」
「はっはっは、正直な嬢ちゃんだ。安心しろ、話は相当盛ってる」
「もうっ」

 馬車の中、中年冒険者カルロスの自慢話を聞いて楽しむ。
 思ったよりこの人話が面白いのよ、ディーオは馬車に乗り込むとそうそうと横になるし。
 暇だと呟いた私を見かねたカルロスが、暇そうだなって声をかけてくれてくれたのだ。

 話は平凡なんだけど、カルロスが身振り手振りで話してくれるのが臨場感あって面白い。

「じゃぁ、カルロスは北国で隠居するの?」
「ああ、この歳だろ? 色んな国から騎士の師範代にさそわれたけどよー、ゆっくりと過ごすさ」


 照れ隠しなのか、欠伸をしはじめる。
 その欠伸がこっちにも移って来た。


「っと、わりいな。寝不足でよ」
「いいのよ、私も眠くなって来たし」
「こういう時は一人は起きていたほうがいいんだがよ……」
「ボクが起きてよう」
「「うお」」


 私もカルロスも驚いた。ディーオが目を開けていて提案するからだ。


「起きてたの?」
「まぁな」


 わりい、起してしまったか? というカルロスを手で制し、今起きた所だとディーオはいう。
 もう少し静にしておいたほうがよかったわね。


「じゃぁ、お言葉に甘えて」
「そうだな……たのまぁ」


 馬車の端でごろんと横になる。
 毛布を渡されてそれに包まる、すぐに睡魔が襲ってきた。

 ディーオに起されて次の宿場にきた。

 酷い悪夢を見た気がするけど、黙っていると心配そうな顔をディーオは向けてきた。


 この辺は魔物もまだ多く人も多いらしく、前のところより人が多かった。
 最近では本格的に村にするかしないかを話し合っていると説明されたが。


「私にはあんまり関係ないけどねー」
「何の話だ」
「ううん。気にしないでそれよりも、ドンドン食べて、ほらカルロスも」


 カルロスはわりいなと言いながら、奢りの肉をほおばる。
 一軒しかない飯場で別れて食べるのも味気ない。
 カルロスも一緒に食べましょうと誘ったら、腹は減ってないからと断った後に腹を鳴らしたのだ。

 なんでも、成るべく節約しておきたいという事だったので、昼間の話代として飯ぐらい奢る事になった。


「なるほどな、二人は親友のために鳳凰の羽を取りにか」
「そう、二人でないと鳳凰に会えないって聞いたから」
「おう、俺も若い頃取りに行ったぜ」
「え、カルロスと組むような女性居たの!?」


 ……。

 あれ? 場が静になった。

「エルン君それはさすがに」
「おう、俺も泣きそうだ」
「ご、ごめん。ほら二人とも飲んで飲んで飲んで」


 私はカウンターへ酒とつまみの追加を頼む。


「しかし、鳳凰か、早くしたほうがいいかもしれんな」
「なんで」
「恐らくは死期の事だろう」
「流石は錬金術師の先生だな」


 関心するカルロスにディーオの目が細くなる。


「錬金術師見習いと紹介したはずだが?」
「おっと、どうも酒は口を軽くしてダメだな、その歳で見習いしてる奴なんてごまんといるが、その小剣は見覚えあるからな」


 私は言われてディーオの腰をみると、何時ぞやの小剣が腰につるされていた。
 この男、ひょろっとして簡単に折れそうな体系なのに、実は強いのよね。
 本人は生き残る為に必死だったって言うけど。


「ふう……周りには伏せてくれ。あの時はとっさに見習いと言ったが。教師となると絡んでくる奴が多い。
 天才であるボク一人ならいいが、連れもいるんでな」


 ディーオは追加された酒を少し口にいれると、思わずかっこいいわねと呟きたくなった。


「ふう、かっけなぁ。だからもてるのか、あの時も、女をとっかえひっかえだったもんな。狭いテントで三人でおっぱじめた時はさすが爆ぜろと思ったわ」
「ぶうううううう」
「うわ、きったなっ!!」


 ディーオが酒を、昔見たプロレスラーみたく口からだすので周りの目を引く。
 咳き込んで咳き込んで、息を整えたディーオの顔は驚きと怒りなのか頬が赤い、もしかしたら酔ってるのかもしれない。


「突然何を言うんだ。ボクはそんな事は一度もない!」
「いやいや、死霊の砦ってあったろ? その時に赤毛のちんちくりんな女性と、緑髪のムチを使う女性と一緒だったろ?」
「あの時に居たのか……赤毛はミーナと言ってただの知り合いだ。緑髪はソフィーネ、もちろん知り合いであるが彼女に居たっては、別な男性と結婚してる」


 あーなるほど。
 多分前作のイベでの話ね。


「おーし、そこまではわかった。じゃぁテントの話は?」
「あれはバラバラで一夜を過ごしたら危険だったのを知っているだろ。
 各チームのテントに結界を張ったから仕方が無くだな、君が思っているような事は一切ない」
「おうよ、こっちなんて小さいテントに美青年とおっさん二人だぞ」
「はいはいはいー、その美青年ってだれ」
「もちろん俺だ」
「なわけないでしょうかっー!」


 私は笑いながら突っ込むと、カルロスもそりゃねえよと答えてくれた。
 お酒が美味しい。


「とにかく、鳳凰の死期に関しては考えても仕方が無い、仮に死んだとしたら別な贈り物を考えるとしよう」
「そうだな、それがいい」


 褒められたディーオは常識だ。と真顔で言う。
 あんまり嬉しくないのかしら? ほどほどにお腹も満たされると、再び睡魔が襲ってきた。

 早めに部屋を取ろうという事で、私達はそれぞれの部屋にはいる。
 流石に今回は早く寝て次の日に備える。
 夜酒を飲んでから寝るとしましょう。

 今回は派手に寝坊した……ってか、一人で起きられるから起しに来なくていいって言ったけどさ、昼過ぎまで寝かせる事ないじゃないっ! ディーオの馬鹿野郎め。
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