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125 馬車内のハプニング

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 朝早く起されて着替えをさせてもらう。
 口にパンを押し込まれ、次に水分を流し込まれた辺りで完全に目が覚めた。
 ごくんとパンを流し込んで挨拶をする。


「おはようノエ」
「おはようございます、おじょうさま」
「…………何か言いたそうねガルド」
「なに。その自堕落な生活で旅が出きるのかと思ってな」
「失礼ね、現に旅してガーランドまで行ったじゃない」
「それは失礼した」
「もう、昨日ちょっと、ノエとガルドの分も羽がいる? って聞いただけじゃない、朝から嫌味言わないでよ」
「それが余計なお世話だっていうんだ」
「ノエは一生エルンおじょうさまに使えます!」


 それぞれの意見と、追加でノエはふんす! と鼻息を荒くして訴える。
 まぁただ、ガルドには内緒にしてるけど、昨日ノエ個人にガルドの印象を聞いたら、顔を赤くしていたので、まんざらでもない感じはした。

「何に感動してるかしらないが、時間が近いぞ」


 大時計をみると約束の時間まで三十分もない。
 慌てて口の中のモノを飲み込むと、冬物のコートをガルドから手渡された。
 こういう気配りが出きるのがまた憎たらしいのよね。


「うおっと。それじゃ。例によって後の事は全部任せたわ」
「任されました!」
「よろしい」


 玄関をあけると既に街馬車が止まっていた。
 さすが、うちのメイド達やるわね。

 馬車の御者に二十分でお願いというと、かしこまりましたと頭を下げてくる。
 カッポカッポというよりは、凄い勢いで街馬車が走る。
 結構時間立っていたのね。

 北門広場前に着くと、馬車を降りる。
 あたりを見回すと、端のほうで目を閉じて待っているのディーオが見えた、うーんキザな奴め。

 とことことこと、近づくと目を開けて、そのふて腐れた顔をみせる。

「ってか、遅れてないのに怒んないでよ」
「…………一応言っておくが怒ってはいない、遅刻もしてないし一時間ぐらいなら平気で待つ」
「…………そなの?」
「ああ、逆に今の言葉で怒りそうだ。そんなに気の短い男と思われていたとは……こっちは出発の手続きは終った、君も書いてくるといい。暫くは馬車で行く」
「はいはいのはいっと」


 馬車は旅馬車と言う奴で、基本相乗りだ。
 といっても、私達以外に乗せる客は居なく日が暮れる前には簡易宿場につくと教えてくれた。

 私は馬車に乗りながらディーオに話しかける。
 いやだって、話しかける相手いないんだもん。

「こう、空飛ぶホウキとかでいっきにいけないの?」
「いけなくも無いが、ボクは乗れない」
「え。そうなの!?」
「正確には乗った事が無い。元々流通してるような物じゃないからな、それと吹雪の中それで突っ込むのか?」
「そう考えるとダメね」
「「………………」」


 会話が止まった。
 暇である。


「そ、その二人でいると、夏の事件思い出すわね」

 突然ディーオが咳き込みだした。

「突然なんだ」
「いや、話す事なかったし……」
「無理に話さなくてもいい」
「あ、もしかして、キス迫った事を……」
「だから話さなくていいって言ってるだろ」
「もう、そんな怒らないでよ、でも鉄道とかあれば楽なのにね」


 ディーオが私の顔を見て目を見開いてる。
 なんだろ、朝の食べかすでもついていたかしら、手鏡を出して顔をみても、私の綺麗な顔しか映っていない。

「よし、綺麗な顔ね」
「その自信はどこからくるんだ、いや、その話じゃない。さっきの事をもう一度言ってくれ」
「もう一度って、夏のゾンビ騒ぎは……」
「そこじゃない」
「その夜のキスのはな――」
「違うっ!」
「じゃあなによ……」
「鉄道の話だ」
「ああ、なら最初から言ってよ、グラン国ではひかないの?」
「君から鉄道の話が出るとは思わなかった……数年前に一人の錬金術師が同じ事を言った」
「ふむふむ」
「その鉄道の欠点は何と思う?」


 欠点ってなんだろ、流石に現代の鉄道はどう動いているかはさすがのエルンさんでもわからないけど、一昔前の石炭を燃料にするのであれば若干わかるわよ。
 石炭の熱で水を沸騰させて、ほにゃららするのよね。
 肝心のほにゃららがわからないけど、まぁそれは現場が考えるって事で。

「石炭を燃やすので周りが黒くなる?」
「魔物だ。君も最初の言った錬金術師も、魔物の事が抜け落ちている事が多い、線路と呼ばれている物が魔物の攻撃で壊れた時、その上を通った車はどうなると思う」
「落ちるわね」
「案は素晴らしい、他の案を聞かせてくれないかっ! あるはずだろう」


 眼鏡越しにディーオの目がギラギラしているのがみえる。
 怖い。
 そうよね、ディーオってなんだかんだで錬金術馬鹿なのよね。地雷を踏んだきがする。

「えっと、そういうのはホラ学園のテストの時に」
「どうせテストしても今日の事を報告すれば受かる、他にもあるんだろ」
「ちかい、ちかいって」


 私の体が一瞬上空に浮いた。
 馬車が大きな石を踏んで跳ねたっぽい、身を守るのに腕を組んでいた。

 までは良かったんだけど…………。

 私の胸の谷間にディーオの頭がすっぽりと挟まっている。
 そっと腕を外すと眼鏡がとれ眉を潜めたディーオが申し訳なさそうな顔で私を見ていた。


「ええっと、落ち着いた?」
「すまん」
「いや、事故だし」
「新しい技術と聞いて我を失った……もういっそ殺してくれ」
「いやいやいや、殺したらどこかの雪山の道案内いないでしょうかっ」
「聞いてくれ、ボクは別にラッキースケベを狙っているわけじゃなく。
 教え子に……何度も……案内はする。案内はするから帰り埋めてくれ」

 大げさねー、男なんだから私の胸に顔を埋めれてラッキーぐらい言えばいいのに。
 言ったら言ったらで叩くとは思うけど。
 
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