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122 一先ず解決?
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チョッキン。
「こっちは終ったわよ!」
「わかった」
場所はナナの工房、ディーオがサミダレを押さえている間に、ナナとサミダレの運命の赤い糸を、縁切りのハサミで切る事に成功した。
私に抱きついていたナナは、そっと力を抜いて数歩下がる。
「あの、その、この度はなんていったらいいか」
「大丈夫よ。問題は糸をつけた人の責任だし」
「うう、ごめんなさい……買い物にいって気づいたらサミダレさんが大好きになっていて」
「こっちも同じ……」
ディーオの拘束から解けたサミダレもその場で正座をして小さくなっていく。
「ってか、サミダレもこっちに来てたのね」
「コタロウの手伝い、出張。あと……出番がない……」
「本当にお疲れ様……」
「にしても。喉でも渇いたわね」
「っわたし、入れます!」
「あ、別に強制じゃなくてね」
大丈夫ですから! とノエは厨房にいって直に戻ってくる。
私達は一階のテーブルで待っていると、精霊のくまたんが人数分お茶を入れてきた。
「エルンさんが東方の食べ物が好きと聞いて仕入れたお茶です」
「あら、懐かしいわね煎茶じゃない。でも、そこまで好きじゃ……」
「エルン君、少しは考えて喋れ」
ディーオに注意されてナナを見ると、好きじゃなかったんだ……と呟きながら小さくなっていく。
「いいえ! 好きよ。あっつ!」
「慌てて飲むからだ……。
で、後は何件だ?」
「え。知らない」
「…………そうか」
ディーオは静にお茶をすする。
え、なにこの沈黙私が悪いってわけ? だってノリスが何件悪戯したとかわかるわけ無いじゃない、聞いてないんだし。
「さて、ナナ君。要らないハサミがあれば買い取らせてくれ」
「はぁ……余っているのがあるので、どうぞ使ってください」
ナナは言われるままにハサミをディーオに渡した。
私もナナもディーオの行動をみまもる、そのまま釜を少し借りるというと、小鉢に中和剤やよくわからない粉を入れ滑らかになるまで錬りだした。
最後にハサミの刃をつけると、そのハサミをポケットにしまいこんだ。
「ええっと?」
「ああ、縁切りのハサミだ。一応町中を回ろうと思って」
「すごい、錬金術師みたい」
「見たいじゃなくて、錬金術師だ、君も! 彼女も! ボクもだ!」
「あらごめん、そんな力強く言わなくてもいいのに」
ディーオは溜め息をつくと、椅子に腰掛ける。
「もっとも君は錬金術師以外の道もあるのだろうがな」
「なによそれ」
「冒険者ギルドの設立だ」
「あ、そうだ、その事で聞きたかったけど思ったより反対が無くて驚いているというか」
「元々他の国にはあったからな」
「へぇ、そういえば冒険者もしてたのよね。そういう話を聞かせてよ」
ディーオは私達を見た後に席をたった。
「それよりも、いまは町を回る」
「あ、だったら手伝うわよ。眼鏡もっているの私だし、ハサミもあるから」
◇◇◇
噴水前で私達二人はぐったりしていた。
十組以上の偽赤い糸を切った気がする。中には本当の赤い糸の人もいてその糸は切れないなど。
しかもだ。
こっそり近づいて切る作業なので神経も使うし。
で、糸を切った後のカップルは喧嘩になったり半笑いで別れたりして消えていく。
「この辺でいいだろう……事が大きくなる前でよかった」
「大きくなったらどうなっていたのよ」
「関係者はひっ捕らえれて尋問だろうな」
「やだこわい、冗談よね」
「半分はな」
ディーオはポケットから小さい小瓶を取り出した。
中身が虹色に光っている不思議な液体だ。
私のほうへ、その小瓶を手渡してくる。
「え、くれるの? でもなにこれ」
「七色の中和剤といった所か、君が襲われたレアモンスターから取れた素材だ」
「はあ……くれるなら貰うけどなんで?」
「迷惑料と思ってくれていい、君の所は生活には困ってなさそうだしな」
「ありがと」
儲かった。
「さて、ボクは帰る」
「そう? よかったらご飯でも奢るわよ」
「一応は城に報告書も出さないといけないのでな」
クソ真面目なディーオは、疲れた顔で帰って行った。
そんなに嫌ならやめちゃえばいいのに、って辞められても困るわよね。
ディーオじゃないと私卒業出来そうにないし。
ってか、なんで私、退学されないのかしら。
試験もなんだかんで通ってるのよね。
実技のほうはさっぱりだし、なんだったら最近はレシピの記憶すら怪しい。
毎回赤点のはずなのに。
一人でぼーっとすると、元気そうなコタロウが歩いている。
黙ってみていると、向こうから走ってきた。
「おやおやおやおやでござる。
なんで声をかけてこないでござるか」
「いや、面倒だったし……随分と元気そうね、ってかサミダレも一緒に来たのなら紹介しておきなさいよ」
「ほえ……着いたのは昨日でござるな、一応ナナ殿には紹介しておいた出ござるよ」
「こっちにもって昨日? もしかして」
「あのロリコン王子も帰って来てるでござるね」
あ、本当? だったらリオと会った事と会わせる事もしないといけないわね。
城にやっほーって遊びに行ける仲じゃないからなぁ。
せめて冒険者ヘルンとして会えればいいんだけど。
「どうやって城にいこうかしら」
「ほむ、エルン殿城に行きたいでござるか?」
「ええ、ヘルンにあって伝えたい事あるのよねぇ」
「拙者にまかせるでござる」
「え、いやよ。何あるかわからないじゃないの」
私だって馬鹿じゃない。
コタロウの案件は変なのが多いのだ。
しょんぼりしたコタロウと別れて私は家に帰った。
「こっちは終ったわよ!」
「わかった」
場所はナナの工房、ディーオがサミダレを押さえている間に、ナナとサミダレの運命の赤い糸を、縁切りのハサミで切る事に成功した。
私に抱きついていたナナは、そっと力を抜いて数歩下がる。
「あの、その、この度はなんていったらいいか」
「大丈夫よ。問題は糸をつけた人の責任だし」
「うう、ごめんなさい……買い物にいって気づいたらサミダレさんが大好きになっていて」
「こっちも同じ……」
ディーオの拘束から解けたサミダレもその場で正座をして小さくなっていく。
「ってか、サミダレもこっちに来てたのね」
「コタロウの手伝い、出張。あと……出番がない……」
「本当にお疲れ様……」
「にしても。喉でも渇いたわね」
「っわたし、入れます!」
「あ、別に強制じゃなくてね」
大丈夫ですから! とノエは厨房にいって直に戻ってくる。
私達は一階のテーブルで待っていると、精霊のくまたんが人数分お茶を入れてきた。
「エルンさんが東方の食べ物が好きと聞いて仕入れたお茶です」
「あら、懐かしいわね煎茶じゃない。でも、そこまで好きじゃ……」
「エルン君、少しは考えて喋れ」
ディーオに注意されてナナを見ると、好きじゃなかったんだ……と呟きながら小さくなっていく。
「いいえ! 好きよ。あっつ!」
「慌てて飲むからだ……。
で、後は何件だ?」
「え。知らない」
「…………そうか」
ディーオは静にお茶をすする。
え、なにこの沈黙私が悪いってわけ? だってノリスが何件悪戯したとかわかるわけ無いじゃない、聞いてないんだし。
「さて、ナナ君。要らないハサミがあれば買い取らせてくれ」
「はぁ……余っているのがあるので、どうぞ使ってください」
ナナは言われるままにハサミをディーオに渡した。
私もナナもディーオの行動をみまもる、そのまま釜を少し借りるというと、小鉢に中和剤やよくわからない粉を入れ滑らかになるまで錬りだした。
最後にハサミの刃をつけると、そのハサミをポケットにしまいこんだ。
「ええっと?」
「ああ、縁切りのハサミだ。一応町中を回ろうと思って」
「すごい、錬金術師みたい」
「見たいじゃなくて、錬金術師だ、君も! 彼女も! ボクもだ!」
「あらごめん、そんな力強く言わなくてもいいのに」
ディーオは溜め息をつくと、椅子に腰掛ける。
「もっとも君は錬金術師以外の道もあるのだろうがな」
「なによそれ」
「冒険者ギルドの設立だ」
「あ、そうだ、その事で聞きたかったけど思ったより反対が無くて驚いているというか」
「元々他の国にはあったからな」
「へぇ、そういえば冒険者もしてたのよね。そういう話を聞かせてよ」
ディーオは私達を見た後に席をたった。
「それよりも、いまは町を回る」
「あ、だったら手伝うわよ。眼鏡もっているの私だし、ハサミもあるから」
◇◇◇
噴水前で私達二人はぐったりしていた。
十組以上の偽赤い糸を切った気がする。中には本当の赤い糸の人もいてその糸は切れないなど。
しかもだ。
こっそり近づいて切る作業なので神経も使うし。
で、糸を切った後のカップルは喧嘩になったり半笑いで別れたりして消えていく。
「この辺でいいだろう……事が大きくなる前でよかった」
「大きくなったらどうなっていたのよ」
「関係者はひっ捕らえれて尋問だろうな」
「やだこわい、冗談よね」
「半分はな」
ディーオはポケットから小さい小瓶を取り出した。
中身が虹色に光っている不思議な液体だ。
私のほうへ、その小瓶を手渡してくる。
「え、くれるの? でもなにこれ」
「七色の中和剤といった所か、君が襲われたレアモンスターから取れた素材だ」
「はあ……くれるなら貰うけどなんで?」
「迷惑料と思ってくれていい、君の所は生活には困ってなさそうだしな」
「ありがと」
儲かった。
「さて、ボクは帰る」
「そう? よかったらご飯でも奢るわよ」
「一応は城に報告書も出さないといけないのでな」
クソ真面目なディーオは、疲れた顔で帰って行った。
そんなに嫌ならやめちゃえばいいのに、って辞められても困るわよね。
ディーオじゃないと私卒業出来そうにないし。
ってか、なんで私、退学されないのかしら。
試験もなんだかんで通ってるのよね。
実技のほうはさっぱりだし、なんだったら最近はレシピの記憶すら怪しい。
毎回赤点のはずなのに。
一人でぼーっとすると、元気そうなコタロウが歩いている。
黙ってみていると、向こうから走ってきた。
「おやおやおやおやでござる。
なんで声をかけてこないでござるか」
「いや、面倒だったし……随分と元気そうね、ってかサミダレも一緒に来たのなら紹介しておきなさいよ」
「ほえ……着いたのは昨日でござるな、一応ナナ殿には紹介しておいた出ござるよ」
「こっちにもって昨日? もしかして」
「あのロリコン王子も帰って来てるでござるね」
あ、本当? だったらリオと会った事と会わせる事もしないといけないわね。
城にやっほーって遊びに行ける仲じゃないからなぁ。
せめて冒険者ヘルンとして会えればいいんだけど。
「どうやって城にいこうかしら」
「ほむ、エルン殿城に行きたいでござるか?」
「ええ、ヘルンにあって伝えたい事あるのよねぇ」
「拙者にまかせるでござる」
「え、いやよ。何あるかわからないじゃないの」
私だって馬鹿じゃない。
コタロウの案件は変なのが多いのだ。
しょんぼりしたコタロウと別れて私は家に帰った。
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