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119 頼もしい友人

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 私は扉を連打する。
 回りの人間が何事かと私を見ているが、関係ない。
 ナナの工房の扉を連打すると、可愛いクマのヌイグルミが挨拶してくる。


「あ、くまたん。緊急でナナを起して! なんだったら工房にいれて私が起すから」

 くまたんが扉を開けて招いてくれたので、ダッシュで階段を登る。
 物が散らばった部屋のはじっこで丸くなっている。


「ナナ。起きて!」
「ふええ、エルンさんがいますー夢ですーむぎゅう」


 ナナが私に抱きつくと、容赦なく胸を揉んでくる。
 暫くした後に揉む力が弱くなって、ゆっくりと顔を上げてきた。


「ご、ごめんなさい! ごめんなさい!!」
「ナナだったら別にいいわよ、友達なんだし……それよりも、直に顔洗ってきて!」

 手を引っ張って一階へと押し出す。
 精霊のくまたんが、既にタオルなどを用意しておりナナは顔を洗いに行った。



 ◇◇◇


「お待たせしました! でええっと、作りますけど……何が問題があったのでしょうか」
「あったもなにも……」


 私はナナに今朝あった事を説明した。

 朝一番で将来を決める大事な相談があるといわれ学園に行った事。
 ちょっとドキドキしながら行ったわよ。
 前の日は寝不足になるし、出かける前にノエになんども服装変じゃないよねって確認までしてもらってよ。
 ディーオの教員の部屋で二人っきりで告白されたこと。

 その告白が。


「ディーオがリュートと結婚したい! って言い出すとは思わなかったわよ!」
「それって……運命の赤い糸……」
「ぜったいいいそうよ……………………いや、ディーオもそうだって言っていたけど」
「はい?」


 そう、あの悪夢の部屋で私は問い詰めた。
 変なもの食べたんじゃないの!?
 リュートは何所!
 など。

 リュートはディーオに会いたいと言ったのをマギカに聞かれ、エレファントさんの協力の元、自宅謹慎されているらしい。

 ディーオ自身何故こんなにリュートが好きなのかわからない。と、言い出し。
 考えられる事といえばボクとリュート君に【運命の赤い糸】が結ばれている可能性が高いだろうという事を教えてくれた。
 しかし、ボクが今リュートを好きなのは変わらない! 変えたくない!
 と思う気持ちのほうが強く、自分自身ではどうしようもない、なんだったら、これから王に会って同性婚を直訴するつもりだ。
 ボクがおかしいと思ったのなら後は頼む。



「と、まで言うから、ぐるぐる巻きにして私の家に閉じ込めてきた。
 ガルドとノエが見張ってるから逃げれはしないと思うし、万が一にカー助にも手伝って貰ってる」
「なるほど……所でこれ何か知っていますか?」


 どこかで見覚えのある笛を見せられた。
 ノエはその笛を吹くと、私の耳に風が当たる。


「おひさしぶりです…………存在を忘れられてるサミダレです……」
「えっおひさ?」
「サミダレさん、エルンさんを捕まえてください」
「イエス……最愛の錬金術師」


 私の体が背後から固定される、前を向くといつの間にかナナが眼鏡をかけていて、何かを持っているそぶりを見せた。
 突進してくるのを、全力を使ってかわす。
 
 ナナの体が近くの椅子に当たると豹変した。


「素晴らしい椅子です。サミダレさん良い椅子と思いませんか」
「はい、サミダレもそう思います……、座って宜しいでしょうか」
「ああ、サミダレさんと椅子もう鼻血がでそうです」


 私は近くに落ちた眼鏡を拾うと、レンズ越しに二人と椅子を見る。
 ナナとサミダレ、ナナと椅子に赤い糸が繋がっているのが見えた。


「後でまた来るわっ!」

 急いで階段を降りて、外に飛び出た。
 ええと、次に相談する人は誰に!? 錬金術師のミーナに相談したいけど魔界から帰ってから会ってない。

 ちょっと、他に頼れる錬金術師なんて知らないんですけどー!

 ドン。

 何かにぶつかり足を止める。


「ごめんなさい。怪我はないっ」
「わたしは大丈夫ですが、ご主人様のひ弱な足が折れたかもしれません」
「ノリス人間にぶつかって折れるわけがない」
「でも、ご主人様は現在、力を封印して雑魚のなかの雑魚ですし」


 褐色肌の銀髪の女性と、それに従うメイド姿の少女。
 銀髪の女性なんて、耳が長い。


「リオ! それに、単眼のメイドさん!?」
「む。眼鏡をかけているのでわからなかったか……エルンか? よく私とわかったな、ノリスの目も偽造してるし、こう耳も隠しているのに」
「いや、見えてるけど」
「「………………」」

 リオとメイド少女が顔を見合わせていた。
 メイド少女のほうは魔界で見たときは単眼だったのに今は両目がちゃんとある。
 偽造といわれてもまったくわからない。


「なるほど、弱いが魔眼を持っているのかしれないな。そういう者には我々の変装も見破られる」
「そうなの? ってかなんでここに」
「いや、その……」
「ご主人様がヘタレなので、一度王子と話をつけましょうと地上に誘いました」
「それは、ノリスが地上の光もいいものですと、誘ったからだろ」
「ええ、ですから。この糸でご主人とあの男を強制的に繋げようと言ってますのに。
 大丈夫ですよー、手頃な人間で実験しましたので。
 それでは失礼します」
「こら、別に私はアイツに会いたいとかじゃなくてな……」


 二人が私の前から遠ざかっていく。
 


 んんんん?

 ノリスと言ったメイドの手には赤い糸が握られている。
 手頃な人間で実験したって。
 糸、実験、繋げる。


「ちょっとまってい!」
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