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117 騎士といっても女性ですから

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 騎士科のエリアに行こうとする。
 外庭から校舎には入らないで、外庭の森の中を歩く。
 何故かっていうと、校舎を通るより地図上では遠回りになるけど、障害物が無く早そうだから。
 既にナナは正気に戻っていて隣を歩いている、そのナナが私の顔を見てきた。


「そのコタロウさんって悪い人なんでしょうか? 捕まるというのは」
「そうね、平たく言えば性犯罪者よ」
「ぶふぉ。酷いでござる」
「「………………」」


 私とナナは立ち止まる。
 だって二人で会話してるのに、変な声が聞こえたから。
 周りは木々だらけ。


「ナナ、小さいボムを貸して」
「はい」


 ナナからもらったミニボムの導火線を抜いてあちこちに投げる。
 爆竹のようなバチバチバチとした音が広がり、木々に止まっていた鳥が飛んでいった。


「あ、あぶないでござるよ!」


 あちらこちら、コゲの匂いをついたコタロウがのそっと出てきた。
 手にはタオルを持っており、汗を拭いている。


「出たわね人間にふんしたオークのコタロウ!
 ちょ、汗が匂うから寄らないで、ってか、そんな醜いシャツをナナに見せない事。
 あと、騎士科に突き出すから黙ってついてきなさい!」
「あ、あのーわたしは大丈夫です。
 ナナと言います、ええっと……コタロウさん。
 あのっ人間にふんするアイテムの作り方を知りたいんですけど……よければ教えて欲しいんですけど」
「ぶっふぉ、見かけによらず、この子も毒舌でござる。
 拙者、こう見えても正真正銘の人間でござる」
「ご、ごめんなさい! エルンさんが言うのでてっきり本当にオークから人間になった人かと」


 匂いは今着替えるから少し待って欲しいでござると、言うと木の影に隠れていった。


「暑いでござるねー。おっとこんな裏側にも汗が、いやー見せられないのが残念でござるよ」
「殺されないだけ良いと思わない?」
「おや、急に涼しく」


 ガサガサと影から出てきたコタロウはさっぱりしていた。
 汗をかいた服は袋にいれて縛ってある。


「で、何のようよ。用件を聞いて突き出すからさっさと言って頂戴」
「酷いでござるよ……拙者何もしてなく、エルン殿に合わせて欲しいと尋ねた所、ここで待ってくださいと牢に入れられてござるよ?」
「聞いた相手が悪かったわね……黙って牢に入っとけばいいのに。
 予行練習と思って」
「それはどういう意味でござるかっ」


 くすくすと小さな笑いが起きた。
 私もコタロウも笑いのほうを見ると当然ナナである、いや、こんな森で違う人の笑いが聞こえるほうが怖いんだけどさ。


「ご、ごめんなさい。面白い方なんですね。
 エルンさんも楽しそうで」
「「楽し」」くないわよ」いでこざるよ」


 コタロウを連れて外庭の森の中を歩く。
 私が居れば捕まる事もないだろうし、事情を説明するためだ。
 騎士科の建物が見えて来た。
 何人かの生徒が私達を見るとぎょっとした顔になる、そりゃそうよね。普段は人が行かない外森から出てきたんだもの。

 リュート・ランバードを見かけたら教えてと言付けをして、庭にある椅子に勝手に座る。
 隣にはナナが座り、地べたにはコタロウが座った。
 何故に地べたとおもったら、その先の視線は女性騎士の訓練を見ていた。
 あ、そうね座っていたほうがシャツやお尻を下から凝視できるもんね。


「エルン!」


 っと、リュートの声が聞こえた。
 振り向くと息を切らしたリュートが立っていた。


「無事かっ」
「普通に無事だけど」
「よかった……手配中の男と森から出てきたと聞いて走ってきた」
「ん。ありがとう、確認したけど一応知り合いのコタロウ・コンタルで間違いないわ。
 これでも、港町アクアの町のコンタル家の次男らしいわよ」
「へぇ……」


 リュートが呆れたような声を出した時だった。
 それまで剣の練習をしていた騎士科の女性達が一斉に走ってきた。
 コタロウの周りに集まりだして、コタロウを無理やり立たせる。


「きもちわ……いいえ、真剣な目で見ていたの解ってました。そのお茶なんてどうでしょうか?」
「ちょ、先輩に譲りなさいよ。きも……コタロウ様私と一緒に訓練しませんか? 少しお痩せになると思いますの」
「いいえ、コタロウちゃんは太った姿もいいですわよ、でも少しだけ肉を落としたほうが、豚みたいですし」


 普段女性大スキーなコタロウでも、怯えたままに、あれよあれよというまに連れて行かれた。


「ええっと……」
「悪い、騎士科の女性達ってその出会いが少ないんだ。彼女らも女性というか」


 あー…………周りは剣に、いや国を守るための男が多いし。いくら剣に命をかけた女性だって安定は欲しいわよね。
 港町を治める貴族の次男坊。
 それに金回りも良さそうだし、結婚…………は嫌だろうな、彼女達も。
 でも、パトロンとしてなら良物件である。


 コタロウが剣を握らされて女性達と訓練をしている。
 あ、転んだ表紙に騎士科の女性の胸をもんだわね、女性がいやですわーといいながらコタロウを吹っ飛ばした。

 あの、巨漢をではある。
 飛ばされて信じられないような顔をしてるコタロウに何か飲ませたわね。


「あれはなに?」
「低級ポーションと思う……生傷が耐えない訓練だからね外傷や骨折はあれでなんとかなるんだ。
 俺は数回しか使った事無いが、中々のものらしい。今ので折れたアバラを治したようにもみえる」


 さすがリュート、遠くからでもそこまでわかるとは。
 ってか、アバラ折れるってやばいんじゃ。


「あ、起されて引っ張られてる。コタロウの顔がちょっと引きつってるわね。
 あ、太ももに顔を埋めた。
 あの馬鹿ってあの女性、顔が笑顔のまま足でコタロウの首を締めてるわよね」
「流石に殺しはしないと思うが、部隊長と話をして解放するように伝えてくる」
「まって下さいエルンさん、リュートさん。コタロウさんの顔が幸せそうです」


 タップしながらもコタロウの顔は幸せそうだ、そうか、モテ期が来たのね。
 骨を犠牲にする幸せか、邪魔するのも悪いかもしれないし、暫くは待ってみましょうか。


 結局コタロウの事は、騎士科の女性に好きにしてもらうことにした。
 待っていたけど終わらないし、止めるのも怖いし。

 ふらふらになりながらも、ポーションを無理やり飲まされてゾンビのように起き上がるコタロウと、それに抱きついたり吹っ飛ばしたりするのも見ていて飽きてきたし。

 リュートが騎士科の女性先生に連絡してくれて、彼女達の遊びが終わったら自宅に行くように手配してもらう事になった。


「と、いうわけで酒の美味しそうな打ち上げはまた今度ね。軽く食事して帰りましょう」
「ふう、どこかでそうなると思っていたよ」

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