グラン王国の錬金術師 if 悪役錬金術師に転生してました!

えん水無月

文字の大きさ
上 下
103 / 209

99 物的証拠は無かった!

しおりを挟む
 心配そうな顔をしたリュートの前に戻ってきた。

「待たせたわね」
「本当に大丈夫かい」
「大丈夫よ」
「ならいいんだけど、マギカも顔が赤いな……熱でも」
「無いですわ!」


 大声で言うマギカの声にリュートはちょっと下がった。
 そう、何とかマギカを説得し終わった。

 私は女性に興味ない! と説得する事と学園からの特別な任務を受けて盗撮犯を探していると説明した。
 本当は学園というかディーオからだけど別に嘘は言っていない。

 個室を出た瞬間に入ってきた女生徒が、私達を見て驚いていたけど目が合ったら、顔を真っ赤にして逃げて行った。

 いや、本当に違うからね! 私もノーマルだからね!?

 マギカも盗撮は許せないと怒り出し、協力してくれることになった。
 もちろん、ものがものだけにリュートには内緒。
 選択肢としてリュートも巻き込む事も出来たんだけど、となるとだ、この写真を見せないといけないし、カメラ……じゃなかった遠見の水晶や転写のカードが見つかった時に、それも見せなくてはならない。
 
 被害者だって男性に見られたくないでしょ。


「じゃぁ行こうか。エルンどこか寄りたい所はあるかな」
「そうねぇ……女子更衣室?」

 ボソっと呟くと、リュートも困惑した顔で返事をしてくれた。

「…………見ても面白くないと思うけどな」
「リュートお兄さま、マギカも見に行きたいです!」

 私達のお願いにリュートは真面目な顔になる。

「マギカもか、案内ぐらいは出きるけど理由を知りたい。エルンがそういうには何かあると思う、エルン……少しでも力になりたいんだ」

 げ、変な所で鋭い!
 あ、そうだ。確かリュートが出る騎士科の試合って明日だったわよね。


「別に、明日の試合で応援するのに着替えたいじゃない」
「なっ…………応援してくれるのか」
「時間が空けばね。それまでにこっちの屋台が売り切れればだけど」


 今日のノルマが売り切ったとしても、残り三千本近くはある。
 売り切る頃には試合も終わってそうな気もするけど、約束だけはしておこう。


「リュートお兄さま! マギカもチアガールの格好して応援します」


 リュートは、エルンがチアに……とか呟いているけど、着替えないわよ?
 時間が合えばだからね。


「案内しよう」
「ちょ、リュート早く歩きすぎよ」
「はっはっは、こういう事は早くするべきと思うんだ」


 何かキャラ変わってない?
 私もマギカも小走りに付いていく。



 ◇◇◇


 案内された女子更衣室に二人ではいる。
 時間帯が丁度よかったのか、部屋の中には誰も居なかった。
 鍵の付いたロッカーが並んでおり、生徒は誰でも使えるタイプの更衣室である。


「ええっと、何所を調べれば……」
「こういうのはロッカーの上や足元の箱とかが定番なのよ」
「…………もしかして、やった事あるんじゃ。そういえばお手洗い所でも的確に場所を」
「ば、違うわよ! そういうのが決まっているのよ。ほら床を探して! 私は上を探すから」


 下はマギカに任せて棚の上などを調べる。
 用具入れと書かれた箱があった。あやしい……それに、良く見ると不自然に穴が開いてある。

 箱を掴んで中身を確認する。

「びんごっ!」

 大きさは野球ボールぐらいの丸い水晶玉が入っていた。
 手に取ってみると思ったよりも軽い。あとは本物がどうかよね。

 こう見えても、私だって錬金術師。こういう道具の使い方はわかるのだ!
 …………ナナから教えて貰っただけだけど、錬金術師が作るアイテムというのは万人でも使えるように作るとかなんとか。
 適当に触れば何かあるでしょ、ほら、この水晶だってちょっと凹む場所あるし。

 適当にカチカチと連打する。

 突然映像が始まった、チアガールの服を着た女性数人が服を脱いで再生で制服へと着替えていく。

 なるほど逆再生ね。

 もしかしたら、犯人の顔も映っているんじゃないかな。

 カチカチカチカチ。

 巻き戻しが早くなった、チアガールから制服に、水着から制服に着替えていく女生徒が高速で写し出されている。


 もっと早くならないかしらね。


 カチカチカチカチカチカチカチ。


 凄い勢いで逆再生され最後に顔を隠した人間が映ると、水晶にヒビが入った。
 一瞬であるけど、剣をクロスさせた模様が入ったカフスボタン袖にあるボタンが見えたようなきがした。

「やば」
「どうしたのですか。あ、あなた! 壊しもごもごもご」
「壊したのじゃなくて、何もしなくて壊れたのよ! それにこういう馬鹿みたいなアイテムは壊したほうがいいのよ」


 ワタシナニモシテナーイ。
 サイショカラコワレテマシターネー。


「知ってます?」
「何がよ」
「遠見の水晶って、その性能から白金貨二十枚はくだりませんのよ……」
「…………」


 私は壊れた遠見の水晶を箱に戻して、その箱もロッカーの上へと戻した。
 何をしているのかと、マギカが言うけど私はそれを無視する。

「ふー、怪しい所にはナニモ無かったわね」
「ちょ」
「無かったわね!」
「ひぃ。そ、そうですわね! ですから、目力がこわっ怖いです」


 よし、押し切った。
 私が壊したってばれて、何かの拍子に弁償ってなったら面倒すぎる。
 ってか、白金貨二十枚ってこの学園祭での私の取り分と一緒じゃないのよ、お金が無いわけじゃないけど変なのには払いたくないわよ。

「じゃ、次の場所にいきましょ」
「わ、わかりましたからマギカの腕を引っ張らないで取れます!」


 更衣室前にでると、少し離れた場所に女生徒に囲まれたリュートが居た。
 呆気に取られて、マギカの腕を放すとマギカがその集団へと突進していく。

「リュートお兄さまー!」

 リュートはタックルに見えるマギカの突進を、綺麗に受け止めるとマギカの頭をなでなでし始める。
 それを見た周りの女性達が私も私もと手を上げていく。


「エルン!」
「お待たせしましたわーっと」

 周りの女性達が私を見ると小さくささやき出す。ってかささやくと言うよりは声大きいわよね。
 げ、元カノ。悪人面。あの顔の何所がいいのかしら。
 お金で釣ってるのよ! とか小さい声が聞こえる聞こえる。


 ドン!


「他人の悪口、それも集団で攻撃する女性には興味ない! 離れてくれ!」

 リュートが珍しく怒ると、周りの女性達が青ざめていく。
 うーん、正義感多いわよね。
 別にこんなの気にしていたら仕方がないのに、いや、言われるのはしゃくに触るわよ?
 でも、実際転生前に悪い事していたしなー、なんだったら聞こえるように言う勇気も認めてあげれば良いのに。

 スタスタと腰にマギカを着けたまま私の近くへと歩いてくるリュート。

「ごめん、嫌な気分にさせた」
「別に……」
「何の騒ぎだ!」


 真っ白な制服を着た子豚もとい、男子が私達の前に現れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

されたのは、異世界召喚のはずなのに、なぜか猫になっちゃった!?

弥湖 夕來
ファンタジー
彼に別れを告げられた直後、異変を感じ気が付いた時には変わった衣服の人々に取り囲まれ、見知らぬ神殿に居たわたし。なぜか儀式を中断させた邪魔者として、神殿から放りだされてしまう。猫の姿になっていたことに気が付いたわたしは、元の世界に帰ろうと試みるが、どこに行っても追い立てられる。召喚された先は猫が毛嫌いされる世界だった。召喚物お決まりのギフトは小鳥の話を聞きとれることだけ。途方に暮れていたところを、とある王族のおねぇさんに拾われる。出だしに反し、裕福なお家でのイケメンさんに囲まれた猫ライフを満喫していると、

魔女と王都と金色の猫

鈴宮(すずみや)
恋愛
 ミシェルは14歳の魔女。  祖母の死により天涯孤独の身となったミシェルは、王都で王子・ルカに気に入られ、王室専属魔女として採用されることに。生まれて初めての仕事や外の世界に戸惑いつつも、奮闘していく。  そんなある日、ミシェルは幼馴染で侯爵家の一人息子であるクリスに結婚を持ち掛けられる。しかし、ミシェルは美しく自信に満ち溢れたルカに惹かれつつあった。けれど、彼女には人には言えないとある秘密を抱えていて。 『私ならばミシェルを受け入れられる』 そう言ってミシェルへと迫るクリスだったが、そこへルカが現れ――――?【第1章】  ミシェル達が働き始めてしばらくして、城では年に一度の騎士や政務官たちの採用試験が行われようとしていた。  自分に自信を付けるため、精力的に仕事に取り組むミシェルだったが、14年間引き籠っていたいたハンデは大きい。  そんなときミシェルは、今年の採用者たちと一緒に研修が受けられることに。喜ぶのも束の間、そこには何やらルカとわけありっぽい令嬢・アリソンも参加していて……。【第2章】  ようやくルカの想いを受け入れる決心をしたミシェル。未来の王妃教育を受けつつ、正式な婚約を目指していく。  そんなある日、ミシェルは城から忽然と姿を消してしまう。手がかりは彼女の出自にあって?果たして二人は、ロイヤルウェディングを果たせるのか……。【第3章】

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世
恋愛
 異世界転生キタコレー! と、テンションアゲアゲのリアーヌだったが、なんとその世界は乙女ゲームの舞台となった世界だった⁉︎  えっあの『ギフト』⁉︎  えっ物語のスタートは来年⁉︎  ……ってことはつまり、攻略対象たちと同じ学園ライフを送れる……⁉︎  これも全て、ある日突然、貴族になってくれた両親のおかげねっ!  ーー……でもあのゲームに『リアーヌ・ボスハウト』なんてキャラが出てた記憶ないから……きっとキャラデザも無いようなモブ令嬢なんだろうな……  これは、ある日突然、貴族の仲間入りを果たしてしまった元日本人が、大好きなゲームの世界で元日本人かつ庶民ムーブをぶちかまし、知らず知らずのうちに周りの人間も巻き込んで騒動を起こしていく物語であるーー  果たしてリアーヌはこの世界で幸せになれるのか?  周りの人間たちは無事でいられるのかーー⁉︎

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

処理中です...