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85 女王の願いと、えちえち衣装の子

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 薄暗い広間のソファーへそれぞれ座る。
 気分でも入れ替えましょうにゃと、アマンダが紅茶を入れてくれた。
 私達の前へと置くと、自らも近くの席へと座った。

「ええっと、シンシアとガルドを助けて欲しいって……どこに居るかも知らないのに」
「場所は解かりませんが、襲った人間であればサミダレが知っていますわ」

 また新しい名前で混乱する。
 パトラ女王が、どこからか小笛を出し口へと咥える。
 音は聞こえないけど天井から女性が降ってきた。


「ひえっ!」
「特殊な笛で音はなりませんの」


 口元を隠した獣耳の亜人がパトラ女王の横に座りだす。
 いや、天井を見ても穴は開いていない。
 じゃぁどこから出てきたんだこの人は!?


「…………サミダレです」
「にゃはー、さみちゃんお久しぶり」
「エルン殿、忍者でござる! お話の中でしか見た事ないでござるが忍者でござるよ!」
「え、忍者っ!?」

 確かに忍び衣装に見えなくも無いが、それにしては体のラインが強調されている。
 いや、でも私も漫画で見た忍者は、もといクノイチはもっとえちえちな衣装だったわね、それに比べると少しは露出少ないのかな?

「アマンダ知ってるの?」
「友達って奴かにゃ」
「…………恐れ多いです……アマンダ先輩に育てられた……者です」
「へぇーで」

 サミダレってやっぱり漢字で書くと五月雨なのかしら?

「はい…………異国はで漢字という文字で…………書くらしいです」
「っ!!」
読唇どくしんの術で……心を読んだわけではありません」
「ほう、さすがエルン殿、サミダレ殿の名前を異国に照らし合わせるとは、博識でござる」
「サミダレは副隊長をしております、そのサミダレが昨夜襲われたガルドとシンシアを見たのです」
「はい」


 サミダレは私達に説明してくれた。
 相手はこの国の第二王女マーズと、隣にいた不審な男。
 不審な男は黒い霧を辺りにだすと、霧が晴れた時には既に居なかったと教えてくれた。

「不審な男って……」
「はい、マーズさんの客人であるパペットという錬金術師でしょう」
「げっ」


 思わず、下品な声を出してしまった。
 錬金術師ほど胡散臭い者はいないと思っている、だれでもかれでも名乗れるのだ。
 
「兵を出すのは簡単です。
 しかし、動かした瞬間二人がどうなるか、しかも確証たる証拠がありません。
 どうか助けてくれませんか?」


 いやいやいやいや……一般素人がどうやって助けに、そりゃ私だって助けてあげたいわよ? ノリと勢いで返事していいのか判断に迷う。

「わかります、エレンさんには情報を集め陽動をお願いしたいのです」
「あ。そっち」
「はい、実際に助けに行くのはサミダレと、アマンダさん手を貸して貰えますか?」
「乗りかかった船だしおーけーにゃ」
「それだったら、私もするわ。
 で、何をすればいいの」
「はい、さらったという事は暫くの間は大丈夫と思います。その間に何としても……まずは、相手の錬金術師を調べて欲しいのです。
 もちろん私共|《わたくしども》でも調べますが、相手に顔がばれている可能性も、それにマーズさんだって悪いわけじゃないのです。きっと何かしらの訳が」


 うおーい博愛主義も何とかしないと、足元すくわれるぞー!
 と、思っても口には出さない事にする、だって怒りを買って捕らえられたら困るし。


「なるほど、それだったら顔のばれていない私、それに同じ錬金術師という事で話を集めやすいと言うわけね。…………もとい、わけですね」
「ぐふふ、地がでているでござる」

 無視無視。

「はい、お願いいたします」

 パトラ女王は私達にお願いした後に、サミダレと一緒に秘密の階段から城へと帰っていった。
 残されたのはサミダレを呼ぶための笛。
 何か解かれば情報を伝えて欲しいと呼び笛を借りたのだ。

 犬笛みたいな物よね。音が鳴らないって本当に大丈夫かしら?
 口に加えて息を吹きかける。

 フシュー……空気が漏れる。


「……何の御用でしょう」
「ひぃ!」

 突然背後から声がかかり、思わず飛んだ。

「い、いま! パトラ女王一緒に地下室に消えたわよね!?」
「……はい、しかし呼ばれましたので」

 まずい、面白半分で呼んだ! なんて言えないわね。
 えっと……そうだっ!


「アレ、アレよ。万が一私達が役にたたなかったら、どうなるのかなーって」
「詳しい事は言えませんが……」


 サミダレは自らの首へ親指をあてて真横にスライドさせる。

 ザッ死刑。

 打ち首の合図だ。

「ぶほっ! エルン殿、拙者まだ死にたくないでござる」
「男性の方…………大丈夫。異国の錬金術師だけが責任を取る。と、聞いています。
 あっ……そしたらアマンダ先輩と何時も一緒にいれますね……」
「にゃはは」
「ふぅーなら安心でござるね」
「なわけあるかーっ!」

 私はコタロウの頭を叩こうとして、空ぶった。

「何時も何時も叩かれるわけにはいかないでござるよ」
「…………他に御用件は?」
「あ、ありがとう。大変興味深い話を聞けたわ……」

 では失礼します……とサミダレはもう一度、棚のスイッチを押すと秘密の階段へと消えていった。

 優しそうな顔して、パトラ女王って鬼畜過ぎじゃないのっ。
 私が思っていた最悪なシナリオじゃないのよっ。
 何でこんな目に合わないといけないの、誰よ旅なんてして来いって言った馬鹿はっ!



 ◇◇◇

【86.5】 お節介な大人達の昼下がり

「校長よ嬉しそうだな」


 ボクがまとめた報告書を読む校長は、何か可笑しいのかふぉっふぉっふぉと笑いだす。
 何かある度に笑う癖は辞めたほうがいいだろうに。


「嬉しいのじゃよ、国を代表するような錬金術師が育ちつつある。なんせ数年前に手塩に育てた錬金術師は二人とも国外へ行ってしまったからのう」
「うぐ……こうして命令通り戻ってきて教師をしているだけ良いと思わないか?
 国外といえば、アレは大丈夫だろうか」
「命令とは侵害じゃのう。お願いしただけなのじゃか。
 ほむ、心配なら着いて行けば良いだろうに、君の発案を伝えたまでじゃよ?」
「ボクが着いて行ってどうする、錬金術師として彼女はナナ君より劣っている。
 いや、他の資格だけ取りたいと来た中途半端な錬金科の生徒よりも不真面目だ。
 しかし、何か引っかかるというか……それで、その分国外で見聞を広めたほうがいいかもしれないと、報告したまだでだ。
 何も本当に国外の使者へ出すとは……」


 確かに、この何考えているがわからない校長にボクはそう伝えた。

「何、エルンちゃんは今頃泣いてよろんでるじゃろな。それと旅行の話じゃったかの? 君とは仲がいい、いっそ婚前りょ……」
「頭を叩き割られたいかな?」
「王っいや。こ、校長を脅すきか」

 まったく、どいつもこいつもボクとアレは別にそんな関係では…………。
 不意に魔物に操られた時を思い出した、  クソ。
 校長よ、何を笑っている、どうやら本当に怪我をしたいようだな。

「まてっ! 剣はいかんのじゃ剣は! 君も錬金術師だろ剣は危ない」
「生きる為に覚えた剣だ、そうそう狙いは外さない」
 
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