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75 レッツ地下ダンジョンへ
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薄汚い飲食店にはいる。
いや、最初はもっと綺麗な所に入ったんだけど、狼族のコテツの顔を見たとたんに店主が嫌そうな顔をしたからだ。
店主曰く、他のお客が嫌がるからだそうな。
私は別に嫌がらないわよと、一言嫌味を言うといつの間にかコテツの姿がない。
そこで人悶着あったあと、コテツが入れそうな店を探したらここまでランクが下がったというわけだ。
「旅の者に嫌な思いをさせてすまない」
「硬いわねー」
「エルン殿、拙者も夜は固くなるでござるよっ」
「飲み物持って来たにゃーっと」
アマンダの持って来てくれた飲み物を四つ、それぞれの場所に置く。
アマンダの前に一つ、コテツの前へ一つ、最後に私の所に二つだ。
「ぬおお、それはいくら何でも酷いでござる、めちゃくちゃ汗かいて暑いでござるよ!」
「飲みたかったら自分で買う事ね」
「それも酷いでござる、拙者文無しなのを知っていて――――」
文無しと大きな声を出す物だから店主が、おいおい金は持ってねえのかと呟き始めた。
持ってるわよっ! と伝え、仕方がないのでコタロウの前にも飲み物を出すと一気に飲み干し、おかわり! と勝手に頼みだす。
用事終わったら何所かに捨ててこよう。
「で、ああ……いいわよ。彼方の飲み物代は奢るわよ無理に話を聞くんだもん、そのお代と思って」
「そうか、まずこの町の情勢から話したほうがいいだろう」
見ず知らずの私達に話してくれたのは、港町インフィについて。
グラン王国と違い、ガーランドの国は亜人にも協力的である。
と、いっても、それはここ数十年の間でそれまでは亜人は、ガーランドと同じく畏怖されていたと、それでも少しではあるが亜人も町に増え始め人々の意識と環境が整って来たと教えてくれた。
「へぇ」
「問題はここからだ、大人はそうでも子供達に罪はない。
亜人や人間と言っても子供たちは関係なく遊んでいる」
「いい事よね」
「ああ、いい事だ」
「ふーん……ってことはにゃ、子供同士の事で何がもんだいにゃ?」
アマンダの言葉にコテツは頷いた。
「この近くに、砂の遺跡がある。入り口はもちろん封鎖されているが、子供の遊び場になっているのは町の人間なら知っている。
数日前にそこに子供達が入ったのまでは解かっているのだが、ある子供が帰って来ないのだ」
「わーお……それって大変な事じゃないの」
コテツは頷くと、喉が渇いたのか飲み物を一気に飲んだ。
「子供は俺の娘、カトリーヌだ。一緒に遊んでいた貴族の息子……ジャンの話によると探検していた時に突如足場が崩れカトリーヌがジャンを庇って地下へと落ちた。
ジャンは真っ直ぐに俺の所に来た。カトリーヌを助けてあげてとな。
俺は俺は直ぐに捜索隊を出してくれとジャンの父親に頼んだ」
あ……これは私にもわかった。
「貴族のほうが捜索隊を出さなかったわけね」
私の言葉に、コテツは頷く。
「ああ、一日たっても、二日たっても動く気配はない。さらに魔物が這い出るといけないと娘が落ちた場所を封じると言った、亜人の子が……娘がジャンを引っ張ろうとしたから落ちた。罪人は埋めてもいいだろうと、までな。
本当は俺が直ぐに行けばいいのだが、場所がわからん……何度も潜ってはいるがアレ依頼ジャンとも会えなくて、穴の特定が出来ないでいる」
自虐なのか乾いた笑いをした後に、
「紅剣のアマンダっ! 君は亜人に育てられたと聞く、そのて…………いや、他国の騎士になったと風の噂で聞いた、ここにいるという事は何かの任務の途中なのだろう。
さて、俺の湿った話はこれでおしまいだ。
ガーランドは人には優しい国だ。首都に着いたらウミネコ亭のヒメツルを尋ねてくれ。妹が切り盛りしている宿だ、半額ぐらいにはなるだろう」
と喋り終え、コテツは突然立ち上がりテーブルを叩いた。
私が驚いた時には次の瞬間には店から出ていた。
「これって……」
コテツがテーブルを叩いた場所には銀貨数枚。
アマンダがカフェ代ねと私に手渡してくる。
アマンダが亜人に育てられたってのも初めて知った、だから猫っぽい喋りなのね。
なんで男ってこう意地っ張りが多いのか。
手伝ってって言えばいいじゃない。
ボロ店の扉が勢い良く開いた。
思わずそこを見ると小さな男の子が店内を見回している。
私と目が合うと、男の子の動きが止まった。
「おばさん! コテツおじさんはどこ!」
おば…………おばっ!
「おねーさんのほうが何所行ったのか知りたいわよっ!」
「ご、ごめんなさい。おねさーん……コテツおじさんはどこ!?」
私の隣で、腹を押さえているコタロウをテーブルの上のメニュー表の板で叩く。
私は子供の前へといき膝を折りたたんだ。
「僕、名前は?」
「僕の名はジャン……。父上がカトリーヌを助けないって言うから。
コテツおじさんに、助けて貰おうと別の入り口の場所を教えようとしたのに、父上が僕を部屋に閉じ込めるし、カトリーヌを閉じ込めるっていうから、それにそれに」
目の前で突然にジャンという子供が泣き出した。
「少年よ、このおば……お姉さんは優しいから話すでござるよ」
「ちょっと、怒るわよ?」
「いった、お腹の肉が千切れる、千切れるでござるよ!」
いや、最初はもっと綺麗な所に入ったんだけど、狼族のコテツの顔を見たとたんに店主が嫌そうな顔をしたからだ。
店主曰く、他のお客が嫌がるからだそうな。
私は別に嫌がらないわよと、一言嫌味を言うといつの間にかコテツの姿がない。
そこで人悶着あったあと、コテツが入れそうな店を探したらここまでランクが下がったというわけだ。
「旅の者に嫌な思いをさせてすまない」
「硬いわねー」
「エルン殿、拙者も夜は固くなるでござるよっ」
「飲み物持って来たにゃーっと」
アマンダの持って来てくれた飲み物を四つ、それぞれの場所に置く。
アマンダの前に一つ、コテツの前へ一つ、最後に私の所に二つだ。
「ぬおお、それはいくら何でも酷いでござる、めちゃくちゃ汗かいて暑いでござるよ!」
「飲みたかったら自分で買う事ね」
「それも酷いでござる、拙者文無しなのを知っていて――――」
文無しと大きな声を出す物だから店主が、おいおい金は持ってねえのかと呟き始めた。
持ってるわよっ! と伝え、仕方がないのでコタロウの前にも飲み物を出すと一気に飲み干し、おかわり! と勝手に頼みだす。
用事終わったら何所かに捨ててこよう。
「で、ああ……いいわよ。彼方の飲み物代は奢るわよ無理に話を聞くんだもん、そのお代と思って」
「そうか、まずこの町の情勢から話したほうがいいだろう」
見ず知らずの私達に話してくれたのは、港町インフィについて。
グラン王国と違い、ガーランドの国は亜人にも協力的である。
と、いっても、それはここ数十年の間でそれまでは亜人は、ガーランドと同じく畏怖されていたと、それでも少しではあるが亜人も町に増え始め人々の意識と環境が整って来たと教えてくれた。
「へぇ」
「問題はここからだ、大人はそうでも子供達に罪はない。
亜人や人間と言っても子供たちは関係なく遊んでいる」
「いい事よね」
「ああ、いい事だ」
「ふーん……ってことはにゃ、子供同士の事で何がもんだいにゃ?」
アマンダの言葉にコテツは頷いた。
「この近くに、砂の遺跡がある。入り口はもちろん封鎖されているが、子供の遊び場になっているのは町の人間なら知っている。
数日前にそこに子供達が入ったのまでは解かっているのだが、ある子供が帰って来ないのだ」
「わーお……それって大変な事じゃないの」
コテツは頷くと、喉が渇いたのか飲み物を一気に飲んだ。
「子供は俺の娘、カトリーヌだ。一緒に遊んでいた貴族の息子……ジャンの話によると探検していた時に突如足場が崩れカトリーヌがジャンを庇って地下へと落ちた。
ジャンは真っ直ぐに俺の所に来た。カトリーヌを助けてあげてとな。
俺は俺は直ぐに捜索隊を出してくれとジャンの父親に頼んだ」
あ……これは私にもわかった。
「貴族のほうが捜索隊を出さなかったわけね」
私の言葉に、コテツは頷く。
「ああ、一日たっても、二日たっても動く気配はない。さらに魔物が這い出るといけないと娘が落ちた場所を封じると言った、亜人の子が……娘がジャンを引っ張ろうとしたから落ちた。罪人は埋めてもいいだろうと、までな。
本当は俺が直ぐに行けばいいのだが、場所がわからん……何度も潜ってはいるがアレ依頼ジャンとも会えなくて、穴の特定が出来ないでいる」
自虐なのか乾いた笑いをした後に、
「紅剣のアマンダっ! 君は亜人に育てられたと聞く、そのて…………いや、他国の騎士になったと風の噂で聞いた、ここにいるという事は何かの任務の途中なのだろう。
さて、俺の湿った話はこれでおしまいだ。
ガーランドは人には優しい国だ。首都に着いたらウミネコ亭のヒメツルを尋ねてくれ。妹が切り盛りしている宿だ、半額ぐらいにはなるだろう」
と喋り終え、コテツは突然立ち上がりテーブルを叩いた。
私が驚いた時には次の瞬間には店から出ていた。
「これって……」
コテツがテーブルを叩いた場所には銀貨数枚。
アマンダがカフェ代ねと私に手渡してくる。
アマンダが亜人に育てられたってのも初めて知った、だから猫っぽい喋りなのね。
なんで男ってこう意地っ張りが多いのか。
手伝ってって言えばいいじゃない。
ボロ店の扉が勢い良く開いた。
思わずそこを見ると小さな男の子が店内を見回している。
私と目が合うと、男の子の動きが止まった。
「おばさん! コテツおじさんはどこ!」
おば…………おばっ!
「おねーさんのほうが何所行ったのか知りたいわよっ!」
「ご、ごめんなさい。おねさーん……コテツおじさんはどこ!?」
私の隣で、腹を押さえているコタロウをテーブルの上のメニュー表の板で叩く。
私は子供の前へといき膝を折りたたんだ。
「僕、名前は?」
「僕の名はジャン……。父上がカトリーヌを助けないって言うから。
コテツおじさんに、助けて貰おうと別の入り口の場所を教えようとしたのに、父上が僕を部屋に閉じ込めるし、カトリーヌを閉じ込めるっていうから、それにそれに」
目の前で突然にジャンという子供が泣き出した。
「少年よ、このおば……お姉さんは優しいから話すでござるよ」
「ちょっと、怒るわよ?」
「いった、お腹の肉が千切れる、千切れるでござるよ!」
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