グラン王国の錬金術師 if 悪役錬金術師に転生してました!

えん水無月

文字の大きさ
上 下
63 / 209

62 甘い大人の深夜イベ!?

しおりを挟む
 軟禁生活二日目。
 天気雨
 特に何も変わらず、朝起きてご飯を食べ、夕食まで自由行動。
 私は本を読んで。ディーオも本を読んでいる、と思う。
 
 軟禁生活三日目
 天気雨
 前日と同じ…………しいて言えばディーオの機嫌が悪いようなきがする。
 助けが来るまで後五日。
 
 軟禁生活四日目
 天気雨
 ディーオが起きてこない、どうせ夜更かしだろうと思って声をかけなかったけど夕方まで起きてこなかった。
 流石に心配になりノックをして扉を開けようとすると、開かない。
 内側に何か置いている。


「ちょ、開かないんですけどお! ディーオ? 中で首つっているんじゃないんでしょうね」
「誰だっ……」
「誰だってエルンですけど?」
「………………ああ、把握した。体調が悪い、今日は一人にしてくれ」
「別にいいけど……看病ぐらいするわよ? それに部屋に入れないんですけど……」

 そういえば、前世の時。
 弟が急に部屋に鍵を掛け始めたわね、なんでもねーちゃんにみられたくない物だってあるんだよ! と言っていたっけ…………ぼんやりと思い出す。

「…………特に意味はない、いやある! ない! あるんだ」

 ディーオが壊れたラジヲのよう呟いているのが聞こえてくる。
 怖いわね……。

「何でもいいけど……夕食ここにおいて置くわよ」
「ああ、わかった。既に薬は飲んだ、明日には直る」
「そう? 無理しないでね」


 自室にもどり、部屋を明るくする。
 読みかけの本を手に取る、本のタイトルは『少女と王子と奴隷の子』と書かれていた。確か昨日までの話は――――。


 怪物に襲われている女の子が森の中二人の男性に助けられた。
 実はその男性は王子で、もう一人は王子の親友で元奴隷の騎士。

 その後は王子の手によって城勤めになり、そこで知り合った元奴隷の子『とも』禁断の恋に落ちる。

 元奴隷の子は王子によって助けられた身分もあるけど、少女を手放したくなく。
 王子のほうはそんな思いに気づかずに、少女の仲をいい関係にしようと元奴隷の騎士に頼む。

 私は昨日までの話を思い出し、ページに挟んでいたシオリをあけた。
 シーンは、夜中だ。
 メイド見習いを終えた少女は特別に作られた部屋へと帰る。
 城の人は皆いい人で、少女もこんなに幸せでいいのだろうかと考えていた。
 少女は王子と騎士どちらに答えればいいか悩んでいた。
 
 ふむふむ、これが逆だったらハーレムよね。

 ページをめくる。

 ◇◇◇

 外は雨が降っている、その音にかき消されるかと思うほどの小さなノックが少女の部屋へと木霊こだまする。

 『だれ?』
 『僕だ…………』
 『騎士様……』
 『呼び捨てでかまわない、話があるんだ』

 そして少女は扉をゆっくりと開ける。
 そこには思いつめた騎士が立っていた、離れに来る途中に濡れたのか、髪が少し濡れている。

 『ああ、お髪がこんなに濡れて……』
 『もう、もう沢山だ! 二人で逃げよう』
 『キャ』

 少女は腕を掴まれてベッドへと押し倒される。か弱い少女に力は無く、抵抗しようとしても……いや、騎士の悲痛な顔をみると抵抗する力が無くなって来た。

 『私は王子様を裏切れません……』
 『そういうと思った……だから僕が君を連れて逃げる』
 
 騎士の手が少女の顔に優しくふれ、二人の顔が――


 ◇◇◇

 トントン……
 トントン…………

 私は突然のノックの音で飛び起きた。
 開いていた本を枕の下へととっさに隠す。

「だ、だれ?」
「ボクだ……」
「ディーオ!?」
「夜にす……まな……い、少し話があるんだ」

 ええええ、いやこの展開って今読んだ本と一緒って、なんでやねん。
 謎のエセ訛りになってしまった。

「エルン君?」

 私が黙ったままだったので、再度ディーオの声が聞こえた。
 何にせよ用事を聞かないと!


「今開けるわ」

 私は鍵のかかっていない扉を開けた、良く考えれば変なディーオに変な気持ちがあれば勝手に扉開けるわよね。

 ドアノブを回した先に顔色が悪いディーオが無表情で立っている。

「ひぃっ!」
「どうした?」
「ご、ごめんゾンビみたいで思わず叫んだわ……」

 ディーオはぎこちない動きで首だけを動かした、狭い部屋をぐるっと
「なるほど……エルン君、逃げろ……体の自由が効かない……」
「はい?」

 視界と体のバランスが突然崩れた。
 背中に柔らかい感触があり、背中から倒れたのかなと言うのだけは認識できた。
 私の両腕を押さえつけているディーオの顔がうっすらと見える。うっすらというのはランプの光で見えないからだ。

「ディーオ?」
「すまない……体がいう事を聞かないんだ……逃げてくれ」

 逃げてくれって、お前が押さえつけてるんやんけーと、謎の突っ込みが脳内に響く。
 ディーオの口から溢れる吐息は、何所か薬品臭い。

 なるほどなるほど、女に興味まったくありませんよーっていう先生でも、実は女に飢えていたのね。
 その対称が私なのはどうかとも思うが、どうせ悪役令嬢だ。そういう事も何所かであるかもとは思っていた。

「エルン君逃げろ……にげ……」
「一晩だけよ?」

 さっきまで読んだ本の続きのように、いや感化されたのかもしれない。
 自分でも変な言葉を口に出していた。

 ディーオは驚いた顔をしたけど、その顔が近くに寄ってくる。
 ディーオの口が開くと、舌ではなく・・・・・触手のような・・・・・・ものがコンバンワ・・・・・・していた。

 思考が止まった後に、感情が爆発した。



「お前が寄生虫に感染してるんかーい!!!」



 渾身の力を入れてディーオのディーオに狙いをつけて蹴り飛ばす。このさい細かい事は簡便して貰おう。
 ヒザ・・にむにゅっとした嫌な感触が伝わる。
 腕の力が緩んだので起き上がると、ディーオ(寄生虫感染)がゆらゆらと立ち上がろうとしていた。

 逃げ場はどこ! と、打ち付けられた窓を見たとき、窓枠が吹っ飛んだ。
 
 大きな爆音と煙と衝撃と色々混乱する中、私がみたのは、壊れたホウキにまたがって頭を押さえているナナと、その下でピクピクと動くディーオ(寄生虫感染)の姿だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

【完結】22皇太子妃として必要ありませんね。なら、もう、、。

華蓮
恋愛
皇太子妃として、3ヶ月が経ったある日、皇太子の部屋に呼ばれて行くと隣には、女の人が、座っていた。 嫌な予感がした、、、、 皇太子妃の運命は、どうなるのでしょう? 指導係、教育係編Part1

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

第一王子は私(醜女姫)と婚姻解消したいらしい

麻竹
恋愛
第一王子は病に倒れた父王の命令で、隣国の第一王女と結婚させられることになっていた。 しかし第一王子には、幼馴染で将来を誓い合った恋人である侯爵令嬢がいた。 しかし父親である国王は、王子に「侯爵令嬢と、どうしても結婚したければ側妃にしろ」と突っぱねられてしまう。 第一王子は渋々この婚姻を承諾するのだが……しかし隣国から来た王女は、そんな王子の決断を後悔させるほどの人物だった。

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

処理中です...