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59 夏の寄生イベ
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豪雨の中、ディーオは立ち止まった。
私も自然に立ち止まる。歩いてるジャンを呼び止めると、どういう事だ? と詰め寄った。
「え、ディーオ何怒ってるのよ」
「怒ってはいない、確認したいだけだここはミゲールの村じゃないな」
「そ、そうなの?」
私はジャンのほうへ振り向く。
悪びれた様子もなく当然のような顔をしていた。
「そりゃこっちだってミゲールまで行きたいぜ、でもこの豪雨だ。
危険な道よりは荷物を優先する。なに、最近出来た小さい村だが宿も飯屋もある、二人は適当に過ごしてくれ。こっちは馬車の中で一晩寝るからよ」
手でしっしとされては、私達も動くしかない。
「仕方がないか」
「仕方がないわね」
私達は近くの宿場まで歩く。
高齢のおばあさんが飯屋をしており、不味い乾燥肉を出してくれた。
顔に出ていたのだろう、私に対してディーオはその顔はやめて置けというと、無表情で乾燥肉と硬いパンを食べ終え会計をすます。
村にある唯一の宿泊施設。
王都に近いこの村に立ち止まる人間は少なく宿も古い集会所を改築したのしかないとの事、おばあさんから好きに使っていいと鍵を貰ってやっと着いた。
「いやー悪いわね。ご飯まで奢って貰って」
「後で払って貰おう、そもそも小さな宿場で白金貨しかもって無いとはどうなんだ」
「しょうがないじゃない、忘れたんだから」
支払いをしようと財布をあけたら白金貨しかなかったのだ。
一応、一枚出そうとした所でディーオに止められた。
「まぁいい。一晩泊まって帰るんだな」
二つ部屋が並んでいる所で片方に手をかけた、反対はディーオで私は部屋へと入ろうとする。
「はいはい、おやすみ」
ディーオが扉の前で唐突に立ち止まった。
驚いて私も立ち止まる。
「な、なにっ?」
「…………いいや。そうだなおやすみ」
バタンと閉まった扉を暫く見る。
なんだんろ、まぁいいわ、私も寝そびれた感じがしてぐっすりと眠った。
◇◇◇
部屋の明るさで目が覚める。
どうよ、ノエが居なくたってちゃんと起きれるのよ。
ほら、太陽だって私を祝福してくれる! 窓を開けると、顔面に大粒の雨が当たり出す。黙って閉めると着替えをした。
宿にしている集会所の休憩スペースに行くと既にディーオは起きていて腕を組んで誰かと話している。
頭の毛が薄い老人で、どこかで見た事あるようなどこにもでもいそうな老人だ。
「ええっと、おはよう?」
「ああ、おはよう。こっちの人は村長だ」
「どうも」
私が頭を下げると、丁寧に頭を下げてきた。
「お二人様は旅の冒険者って本当ですかな?」
「ああ、そうだ」
冒険者じゃなくて錬金術師と、その見習いよ! と言おうとしたけどディーオの目配せで私も会話を合わせる。
「こっちは知り合いの貴族の娘で、ボクの弟子みたいなものだ。変な態度を取るなら首が飛ぶ」
「飛んでもこざいません! 貴族様に逆らうなど…………と、いう事は貴方様も貴族様で?」
「いや、ボクは普通の人間だ。態度も普通でかまわない」
嘘付けと心のなかで突っ込む。いや、貴族がどうか確認はしてないけど普通の人間ではないわよね。
「ええっと、所でせんせい一体何の話?」
「君とボクに殺人容疑が掛かっている」
「え、だって部屋から一歩も出てないわよ、それに誰を殺すっていうのよ」
「ジャンだ」
貴族様には申し訳ありませんがと、言うと村長は口を開く。
「今朝ほど、移動馬車の中で死んでいる男性を発見しましてね。
どうも昨夜きたジャンという御者という事で」
「え。なんで!」
あれ。でもどこかで聞いた話よね…………。
「こちらもさっぱり、しかし村の人間は殺す理由がないですからのう」
「では、こちらが殺したといいたいのか?」
「そこまでは、ただ王国内に使いを出すにしてもこの雨。数日間はこの村に居て欲しいというだけです」
「どうする?」
「どうするっても、受けるしかないんじゃないの? でも、その間の宿泊費とか食べ物もないんだけど……」
「それでしたら、馬車に積んである食料をお持ちしましょう、腐っても悪いですし。それではくれぐれもこの建物から出ないようにお願いします」
村長は頭を下げて出て行く。
残されたのは私とディーオだ。
「ええっと……?」
「聞いた通りだ、数日はこの宿から出ないほうがいいだろう。幸いに集会所もかねてあるから本などの娯楽はあるし、調理場もある」
「いや、それはいいんだけど錬金術師って言わないの?」
「この状況で? 君は馬鹿とおもったがやっぱり馬鹿なんだな。ますます犯人扱いされるだろう。馬鹿な所はミーナと一緒で困る」
カチン。
「はい、そうですねー考えが至らないで、どうも、申し訳ございませんでしたー」
「別にそこまで言っていない」
「いえいえ、冒険者の先生なんですから正しいですよねー、部屋にいきますのでこれで!」
出てきた部屋へと戻り扉を閉める。
一応上品に閉めたので、音は立ててない……はず。
「それにしても……どうも、どこかで見た事あるのよね。雨で閉ざされた村に入る冒険者、そこで起こる殺人事件。容疑者に選ばれる。あっ」
ナナの錬金術師の夏イベじゃない――――たぶん。
ゲームでは、帰省するナナ一人、もしくは雇った仲間とおこる限定イベント。通称、寄生イベ。
その実態は寄生虫の一種で人間に寄生し仲間を増やす為に…………子供向けゲームにしてはグロイわよね。
でもまぁナナはこれを持ち前の錬金術師の力で解決した。濃密度エーテルの試作版だ。
なお、私がこの事件をゲームで解決したのは四周目である、最初はナナ以外の村人が全滅、全滅したら自宅のベッドで再開され、夢だったのね! で終わる。
二週目から三週目はイベそのものを発生させなかったし、四周目で攻略本を見てやっとクリアした。
だったら簡単だ。さっそくディーオに――。
私も自然に立ち止まる。歩いてるジャンを呼び止めると、どういう事だ? と詰め寄った。
「え、ディーオ何怒ってるのよ」
「怒ってはいない、確認したいだけだここはミゲールの村じゃないな」
「そ、そうなの?」
私はジャンのほうへ振り向く。
悪びれた様子もなく当然のような顔をしていた。
「そりゃこっちだってミゲールまで行きたいぜ、でもこの豪雨だ。
危険な道よりは荷物を優先する。なに、最近出来た小さい村だが宿も飯屋もある、二人は適当に過ごしてくれ。こっちは馬車の中で一晩寝るからよ」
手でしっしとされては、私達も動くしかない。
「仕方がないか」
「仕方がないわね」
私達は近くの宿場まで歩く。
高齢のおばあさんが飯屋をしており、不味い乾燥肉を出してくれた。
顔に出ていたのだろう、私に対してディーオはその顔はやめて置けというと、無表情で乾燥肉と硬いパンを食べ終え会計をすます。
村にある唯一の宿泊施設。
王都に近いこの村に立ち止まる人間は少なく宿も古い集会所を改築したのしかないとの事、おばあさんから好きに使っていいと鍵を貰ってやっと着いた。
「いやー悪いわね。ご飯まで奢って貰って」
「後で払って貰おう、そもそも小さな宿場で白金貨しかもって無いとはどうなんだ」
「しょうがないじゃない、忘れたんだから」
支払いをしようと財布をあけたら白金貨しかなかったのだ。
一応、一枚出そうとした所でディーオに止められた。
「まぁいい。一晩泊まって帰るんだな」
二つ部屋が並んでいる所で片方に手をかけた、反対はディーオで私は部屋へと入ろうとする。
「はいはい、おやすみ」
ディーオが扉の前で唐突に立ち止まった。
驚いて私も立ち止まる。
「な、なにっ?」
「…………いいや。そうだなおやすみ」
バタンと閉まった扉を暫く見る。
なんだんろ、まぁいいわ、私も寝そびれた感じがしてぐっすりと眠った。
◇◇◇
部屋の明るさで目が覚める。
どうよ、ノエが居なくたってちゃんと起きれるのよ。
ほら、太陽だって私を祝福してくれる! 窓を開けると、顔面に大粒の雨が当たり出す。黙って閉めると着替えをした。
宿にしている集会所の休憩スペースに行くと既にディーオは起きていて腕を組んで誰かと話している。
頭の毛が薄い老人で、どこかで見た事あるようなどこにもでもいそうな老人だ。
「ええっと、おはよう?」
「ああ、おはよう。こっちの人は村長だ」
「どうも」
私が頭を下げると、丁寧に頭を下げてきた。
「お二人様は旅の冒険者って本当ですかな?」
「ああ、そうだ」
冒険者じゃなくて錬金術師と、その見習いよ! と言おうとしたけどディーオの目配せで私も会話を合わせる。
「こっちは知り合いの貴族の娘で、ボクの弟子みたいなものだ。変な態度を取るなら首が飛ぶ」
「飛んでもこざいません! 貴族様に逆らうなど…………と、いう事は貴方様も貴族様で?」
「いや、ボクは普通の人間だ。態度も普通でかまわない」
嘘付けと心のなかで突っ込む。いや、貴族がどうか確認はしてないけど普通の人間ではないわよね。
「ええっと、所でせんせい一体何の話?」
「君とボクに殺人容疑が掛かっている」
「え、だって部屋から一歩も出てないわよ、それに誰を殺すっていうのよ」
「ジャンだ」
貴族様には申し訳ありませんがと、言うと村長は口を開く。
「今朝ほど、移動馬車の中で死んでいる男性を発見しましてね。
どうも昨夜きたジャンという御者という事で」
「え。なんで!」
あれ。でもどこかで聞いた話よね…………。
「こちらもさっぱり、しかし村の人間は殺す理由がないですからのう」
「では、こちらが殺したといいたいのか?」
「そこまでは、ただ王国内に使いを出すにしてもこの雨。数日間はこの村に居て欲しいというだけです」
「どうする?」
「どうするっても、受けるしかないんじゃないの? でも、その間の宿泊費とか食べ物もないんだけど……」
「それでしたら、馬車に積んである食料をお持ちしましょう、腐っても悪いですし。それではくれぐれもこの建物から出ないようにお願いします」
村長は頭を下げて出て行く。
残されたのは私とディーオだ。
「ええっと……?」
「聞いた通りだ、数日はこの宿から出ないほうがいいだろう。幸いに集会所もかねてあるから本などの娯楽はあるし、調理場もある」
「いや、それはいいんだけど錬金術師って言わないの?」
「この状況で? 君は馬鹿とおもったがやっぱり馬鹿なんだな。ますます犯人扱いされるだろう。馬鹿な所はミーナと一緒で困る」
カチン。
「はい、そうですねー考えが至らないで、どうも、申し訳ございませんでしたー」
「別にそこまで言っていない」
「いえいえ、冒険者の先生なんですから正しいですよねー、部屋にいきますのでこれで!」
出てきた部屋へと戻り扉を閉める。
一応上品に閉めたので、音は立ててない……はず。
「それにしても……どうも、どこかで見た事あるのよね。雨で閉ざされた村に入る冒険者、そこで起こる殺人事件。容疑者に選ばれる。あっ」
ナナの錬金術師の夏イベじゃない――――たぶん。
ゲームでは、帰省するナナ一人、もしくは雇った仲間とおこる限定イベント。通称、寄生イベ。
その実態は寄生虫の一種で人間に寄生し仲間を増やす為に…………子供向けゲームにしてはグロイわよね。
でもまぁナナはこれを持ち前の錬金術師の力で解決した。濃密度エーテルの試作版だ。
なお、私がこの事件をゲームで解決したのは四周目である、最初はナナ以外の村人が全滅、全滅したら自宅のベッドで再開され、夢だったのね! で終わる。
二週目から三週目はイベそのものを発生させなかったし、四周目で攻略本を見てやっとクリアした。
だったら簡単だ。さっそくディーオに――。
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