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53 氷結の墓
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秘密の密会から翌日、私は待ち合わせの場所に立つ。
エルン。
内容は居たって簡単、カインと新星花を取ってきてほしいとの事、それだけで私の今回の秘密を帳消しにしてくれるのだから、飲むしかない。
私の格好は、作業服に近い服装だ。日帰りとは言えスカートで行くほど馬鹿じゃない。
長い髪も三つ網にしてお団子にしてある。
…………エルン?
「にしても、遅いわね」
門前にある大きな時計は既に昼を回っている。
エル……。
約束の時間は昼丁度だ。
私の肩にポンと手が置かれる。
「のわっ!」
「す、すまない。そんなに驚かれるとは……」
目の下にクマが出来たカインが私を見ている。
「居るなら居るって言いなさいよ…………」
「…………さっきから声はかけていた」
確かに小さい声であるけど、私を呼んでいたような。
「わ、悪かったわね」
「いや、大丈夫だ」
「ならいいんだけど……」
街を守る詰所で出国の手続きをする。出国といっても日帰りだ。
隣のカインを見ると大きな荷物を背負っている、うん。どうみても日帰り……だ……?
私の疑問もよそにカインは外に出ると御者が居ない馬車へと歩き出す。
慌てて近くにいきカインの手を引っ張った。
不思議そうな顔で私を見る。
「ちょっと、日帰りよね?」
「…………ああ」
「その荷物はなんなのよ」
「食料だ。兄に持たされた」
私の質問に答えると、カインはテキパキと荷物を開いている馬車へと積み込んでいく。
「持たされたって、うわ全部食べ物じゃないの。酒もあるわねってか、私そんなに大食いじゃないんですけどっ!」
「…………飲みたかったら飲んでも大丈夫だ。出発する」
「あ、こら。人の話をっ」
御者の代わりにホロ馬車へと座るカイン。
ゆっくりであるけど馬車が動き出すので私は慌てて荷台へと乗った。
少し揺れるかもしれないから気をつけてくれと、珍しく長い台詞で注意され荷馬車へ体を預けた。
荷台から御者のカインの場所へと顔をだす。
一瞬こっちを見て驚いた顔をしたけど、また前をむき出した。
完全なお通夜の空気だ。
やっぱりこれ、前回の振ったのが尾を引いてるわよね。
「飲む?」
私は口の開いたワイン瓶を一本差し出す。
カインは無言で受け取ると口を付けて横に置いた。
「「その」」
私とカインの言葉がかぶった。
「「お先に」」
「「………………」」
私は溜め息をついて、カインの横に座った。
「こないだは悪かったわよ。その、いきなり断って」
「…………オレのほうも悪かった…………では」
「あ、ごめん。それはないわ」
「…………そうか」
お通夜再びである。
「ってか、もう暗いわよ! たかが振られたぐらいで落ち込みすぎ!」
「…………振った本人が……言うのか」
「言うわよ」
カインが呆れ顔で笑う。
それが切っ掛けで周りの空気も和みだした。
「わかった、今は諦める」
金輪際ないけどねーとまでは流石に言えないわね。
それに、私も考えが変わるかもしれないし。
カインに暫く掛かるから中で休んでいてくれと言われ私は荷台へと引っ込んだ。
カタン。
コトン。
カタン。
――ン。
――――――ルン、エルン!
「はっ! な、なに!?」
目の前にカインが居る、あれ。さっきまで御者してたわよね。ワープした?
手にはハンカチを持ち私に差し出している。これを使えと?
口元からよだれが落ちる感覚がわかった。
「寝てた?」
「……ああ」
急いで涎を拭くと立ち上がる。
カインが持ってきた荷物から毛皮を取り出した。気ぐるみ見たいのを着ながら私へと別の毛皮を渡してくる。
「え。着るの?」
「凍死する」
季節は日本でいう所六月だ。初夏に近い。
いきなり凍死するって言われても訳がわからない。
カインは全身に毛皮を着込むと地図を指差す。
「ええっと、氷結の洞窟?」
無言で頷くと再度毛皮を手渡してくる。
ってか、だったら最初から説明しろって奴よね。なるほど、これを着ないと生命が危ないのか。
◇◇◇
入り口である鉄の門を開けてもらいカインと共に地下へと歩く。
氷結洞窟は下れば下るほど気温が下がっていき、とうとう吐く息が白くなってきた。
カインの背中には相変わらず大きなリュックを背負っており、それに花を入れて帰るんだとか。
ってか、説明しなさいよ! とカインの背中に心の中の文句を無言でぶつける。
当然返ってはこない。
「へくちっ」
「…………寒いか?」
「寒いわね。まだかしら?」
「もうすぐだ」
「それ、もう七回目」
「…………もう直ぐだ」
「はいはい」
ひたすらに歩く。
鍋が食べたいなーと考えていたら、カインが立ち止まった。
着いたと、言うので私はその横から奥をみた。
「うわー大きい広場ね…………って、棺おけみたいのが沢山あるんですけど?」
カインは当たり前だろという顔でこっちを見る。
「氷結の洞窟は王家の墓だ。王族と関係者しか入れない」
「そうなの!?」
「…………だから俺が来た」
あ、そうなのね。
棺おけの周りに綺麗な花が沢山咲いている。
何かお盆の墓参りにした時に、隣の墓にささっている菊の花を勝手に持っていくみたいで複雑な気分ね。
やだなー、あの中に死体が入ってるとか…………。
とりあえず拝んでおけば罰は当たらないわよね。
数本引き抜くとカインへと手渡す、カインは透明なガラス箱にその花を詰めていった。
「こんなものかしらね」
「…………意外だな」
「何が?」
「父や兄の話では、ここの新星花が無くなるほど取ると聞かされた……だから、苗は残すように…………」
「………………怒るわよ?」
「すまない……」
私が取ったのは四本だけだ。
確かに何百もの花が咲いているが、これは死者に贈られた管理された花。
一本は小さな女の子マリアちゃんに、一本は校長に、残った二本は私とナナの分だ。
帰りも居たって順調。
カインとの気まずい関係も少しだけ緩和されたと思う。
マリアちゃんの家には明日行くとして、先に校長に花を持っていこうと、カインと別れ学園へと向かった。
何時もの受付嬢が居るカウンターへと肘を置く。
「ええっと、校長はいる?」
「は、はい! 本日は留守でございます」
ちっ居ないのか。
「そう」
「あ、あの!」
「何?」
「ご結婚おめでとうございます」
「はいいい!?」
私は持っていた花を落としそうになった。
エルン。
内容は居たって簡単、カインと新星花を取ってきてほしいとの事、それだけで私の今回の秘密を帳消しにしてくれるのだから、飲むしかない。
私の格好は、作業服に近い服装だ。日帰りとは言えスカートで行くほど馬鹿じゃない。
長い髪も三つ網にしてお団子にしてある。
…………エルン?
「にしても、遅いわね」
門前にある大きな時計は既に昼を回っている。
エル……。
約束の時間は昼丁度だ。
私の肩にポンと手が置かれる。
「のわっ!」
「す、すまない。そんなに驚かれるとは……」
目の下にクマが出来たカインが私を見ている。
「居るなら居るって言いなさいよ…………」
「…………さっきから声はかけていた」
確かに小さい声であるけど、私を呼んでいたような。
「わ、悪かったわね」
「いや、大丈夫だ」
「ならいいんだけど……」
街を守る詰所で出国の手続きをする。出国といっても日帰りだ。
隣のカインを見ると大きな荷物を背負っている、うん。どうみても日帰り……だ……?
私の疑問もよそにカインは外に出ると御者が居ない馬車へと歩き出す。
慌てて近くにいきカインの手を引っ張った。
不思議そうな顔で私を見る。
「ちょっと、日帰りよね?」
「…………ああ」
「その荷物はなんなのよ」
「食料だ。兄に持たされた」
私の質問に答えると、カインはテキパキと荷物を開いている馬車へと積み込んでいく。
「持たされたって、うわ全部食べ物じゃないの。酒もあるわねってか、私そんなに大食いじゃないんですけどっ!」
「…………飲みたかったら飲んでも大丈夫だ。出発する」
「あ、こら。人の話をっ」
御者の代わりにホロ馬車へと座るカイン。
ゆっくりであるけど馬車が動き出すので私は慌てて荷台へと乗った。
少し揺れるかもしれないから気をつけてくれと、珍しく長い台詞で注意され荷馬車へ体を預けた。
荷台から御者のカインの場所へと顔をだす。
一瞬こっちを見て驚いた顔をしたけど、また前をむき出した。
完全なお通夜の空気だ。
やっぱりこれ、前回の振ったのが尾を引いてるわよね。
「飲む?」
私は口の開いたワイン瓶を一本差し出す。
カインは無言で受け取ると口を付けて横に置いた。
「「その」」
私とカインの言葉がかぶった。
「「お先に」」
「「………………」」
私は溜め息をついて、カインの横に座った。
「こないだは悪かったわよ。その、いきなり断って」
「…………オレのほうも悪かった…………では」
「あ、ごめん。それはないわ」
「…………そうか」
お通夜再びである。
「ってか、もう暗いわよ! たかが振られたぐらいで落ち込みすぎ!」
「…………振った本人が……言うのか」
「言うわよ」
カインが呆れ顔で笑う。
それが切っ掛けで周りの空気も和みだした。
「わかった、今は諦める」
金輪際ないけどねーとまでは流石に言えないわね。
それに、私も考えが変わるかもしれないし。
カインに暫く掛かるから中で休んでいてくれと言われ私は荷台へと引っ込んだ。
カタン。
コトン。
カタン。
――ン。
――――――ルン、エルン!
「はっ! な、なに!?」
目の前にカインが居る、あれ。さっきまで御者してたわよね。ワープした?
手にはハンカチを持ち私に差し出している。これを使えと?
口元からよだれが落ちる感覚がわかった。
「寝てた?」
「……ああ」
急いで涎を拭くと立ち上がる。
カインが持ってきた荷物から毛皮を取り出した。気ぐるみ見たいのを着ながら私へと別の毛皮を渡してくる。
「え。着るの?」
「凍死する」
季節は日本でいう所六月だ。初夏に近い。
いきなり凍死するって言われても訳がわからない。
カインは全身に毛皮を着込むと地図を指差す。
「ええっと、氷結の洞窟?」
無言で頷くと再度毛皮を手渡してくる。
ってか、だったら最初から説明しろって奴よね。なるほど、これを着ないと生命が危ないのか。
◇◇◇
入り口である鉄の門を開けてもらいカインと共に地下へと歩く。
氷結洞窟は下れば下るほど気温が下がっていき、とうとう吐く息が白くなってきた。
カインの背中には相変わらず大きなリュックを背負っており、それに花を入れて帰るんだとか。
ってか、説明しなさいよ! とカインの背中に心の中の文句を無言でぶつける。
当然返ってはこない。
「へくちっ」
「…………寒いか?」
「寒いわね。まだかしら?」
「もうすぐだ」
「それ、もう七回目」
「…………もう直ぐだ」
「はいはい」
ひたすらに歩く。
鍋が食べたいなーと考えていたら、カインが立ち止まった。
着いたと、言うので私はその横から奥をみた。
「うわー大きい広場ね…………って、棺おけみたいのが沢山あるんですけど?」
カインは当たり前だろという顔でこっちを見る。
「氷結の洞窟は王家の墓だ。王族と関係者しか入れない」
「そうなの!?」
「…………だから俺が来た」
あ、そうなのね。
棺おけの周りに綺麗な花が沢山咲いている。
何かお盆の墓参りにした時に、隣の墓にささっている菊の花を勝手に持っていくみたいで複雑な気分ね。
やだなー、あの中に死体が入ってるとか…………。
とりあえず拝んでおけば罰は当たらないわよね。
数本引き抜くとカインへと手渡す、カインは透明なガラス箱にその花を詰めていった。
「こんなものかしらね」
「…………意外だな」
「何が?」
「父や兄の話では、ここの新星花が無くなるほど取ると聞かされた……だから、苗は残すように…………」
「………………怒るわよ?」
「すまない……」
私が取ったのは四本だけだ。
確かに何百もの花が咲いているが、これは死者に贈られた管理された花。
一本は小さな女の子マリアちゃんに、一本は校長に、残った二本は私とナナの分だ。
帰りも居たって順調。
カインとの気まずい関係も少しだけ緩和されたと思う。
マリアちゃんの家には明日行くとして、先に校長に花を持っていこうと、カインと別れ学園へと向かった。
何時もの受付嬢が居るカウンターへと肘を置く。
「ええっと、校長はいる?」
「は、はい! 本日は留守でございます」
ちっ居ないのか。
「そう」
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「何?」
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