グラン王国の錬金術師 if 悪役錬金術師に転生してました!

えん水無月

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52 ぎゃふん

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 大きな扉の前で私は深呼吸を繰りかえす。
 上に書いてある部屋の名前は『学園長室』と書かれている。

 一般の店では新星花が売っていないと、ナナから聞いてからの翌日だ。
 相変わらず私の顔を見ると、青くなる受付に学園長の部屋を聞いて来た。万が一、万が一だけど私が指輪に関わっているとバレた時には、校長いいえ国王の権限で打ち首があるかもしれない。

 緊張しないほうがおかしい。


 コンコン。


 軽くノックをすると開いてますぞと、短い声がした。


「失礼しますーっと」


 部屋の中には白髪の校長兼国王がハンモックで揺られている。
 なぜにハンモック! ってか片手にはグラスも持って気持ち良さそうね。
 こく……ここでは校長と呼んだほうがいいわよね、ハンモックから降りると私に向かって歩き出す。


「ふぉっふぉっふぉ、エルン君が尋ねてくるとは思いもよらなかったのう。
 卒業単位でも買いに来たのじゃろうか?」
「あ、売ってくださるなら是非っ!」
「「……………………」」

 校長は手で私を近くの席へと案内する。
 あまりふかふかじゃないソファーへと座ると、向かえに座りだした。


「さて、冗談は置いておいて何用かのう?」
「そうですね、冗談は置いておきましょう」


 冗談だったのか……。
 売ってくれるなら売って欲しいと思ったんだけど。
 案外ケチなのね。


「ケチな校長ですまんのう」
「っ!! やですわ、私何も言ってませんけどっ」
「そうかのう?」
「と、所で。新星花という花をお持ちでしたら一つ譲って欲しいんですけど」
「懐かしい名前だのう、して使い道は?」


 あなたの息子が探しているし、私も罪になりたくないし、指輪の為よ! とは口が裂けてもいえない。


 ごほん。


「病気の子が欲しがっていまして、その子は両親の喧嘩を収める為に小さな花を欲しいと願いました。私がそれをプレゼント・・・・・する事で、両親の仲はよくなり、その子も元気になると思ってます」


 よし、完璧だ。
 昨日寝る前に何度も復唱した言葉だ。
 小さな病気の子を助ける為。貴重な花を譲って欲しいという願いは断りにくいだろう。
 私は畳み掛ける。

「しいては、小さい民はゆくゆくは国を育てる子。その小さい女の子の願いを叶えるのも…………錬金術師としての仕事かと思いますわ」


 どうよ!
 白髭もじゃもじゃの校長は、白髭を触り触りして考えている。
 優しい目のまま私へ向かって口を開いた。


「指輪」
「ん?」
「新星花は、その子の持っているグリフォンの指輪と交換…………だったかのう」

 なっばれてる!?

「急用を思い出したので、失礼します!」


 私は急いで立ち上がりドアノブを回す。
 カチャカチャ言うだけで開かない。

「ちょ、開かないんですけどー!」
「ふぉっふぉっふぉ」

 背後から校長の声が聞こえる。
 まずい、まずい、まずい、まず――――。

「いやーちょっと、こ、来ないで! 打ち首はいやああああああ」

 私の肩に死刑宣告の手が背後から乗った。
 逃げなないと、そうだ――!

「――校長なんて年寄りなんだし、いっそ殴ってっ!」

 振り向くと校長が半歩後ろに居た。
 その手には杖を持っている。

「ふぉっふぉっふぉ、殴られるわけにはいかないのう」
「はっ! 私ったら何時の間に口に!」
「まぁよいよい。打ち首なんてそんな事はするはずもない、座られよふぉっふぉっふぉ」

 本当に? 私が何度も確認すると、疑い深いのうと校長のほうが先に座った。


 ◇◇◇


 私が座りなおすと、校長のほうがから口を開いた。


「実はのう、指輪の行方は知っておったのじゃ」
「ええっと……?」
「ミーナ嬢がぶつかったのは黒い物体と聞いてのう、現場にはカラスの羽が一枚落ちていたしの。持ってたはずの袋が散らばっていたのも確認しとる」
「はぁ」
「そして、そのカラスがエルン嬢のカラスで、尚且つマリア嬢の家に良く行くのも報告があるのじゃ」
「じゃぁ……全部知っていて」
「わしはな」

 わしはなって事は、私は校長を見ると静に頷く。

「息子達は知らぬぞよ」

 やっぱり、知っていたらヘルンがあんな態度を私にするはずが無いものね。たぶん。
 さっさと指輪を取り返しにいけばいいだけ出し。

「何がお望み…………は! もしかして十代ピチピチの体が目当てとかっ! だから鍵をかけて…………」
「ふぉっふぉっふぉ、面白い子じゃの。これがミーナ嬢であれば食べ物をくれたんだがのう」

 む、あの能天気な人と比べられるのは嬉しくない。

「そもそも、あの人が指輪を持っていなければ私は巻き込まれずに」
「すんだと思うかね?」

 私の前にいる校長の目が光った! 気がした。
 顔は笑っているのに目が怖い、怖い。

「…………はい、すみません」
「よろしいのう、さて新星花じゃったな。残念ながら無い」

 えっ、じゃぁ私がここに来た意味って無いじゃない。
 ただ校長に弱みを見せて脅されてるだけ。

「そんな絶望した顔をしなくてもわかっておる、手元に無いだけじゃ。
 息子のカインと共に取りに行ってくれれば取った分はエルン嬢に渡そう」
「え、本当? でも結構面倒だから代わりに人をやって取ってきたのを私に――――」
「ワシは何事も穏便に行きたいからのう。決して息子の婚約が破談になりかけているのと、もう一人の息子が婚約者に選んだ相手から振られたと知ったからではないのう」
つつしんでお受けします」

 私が引き受けると、校長は白い髭を撫でながらふぉっふぉっふぉと笑う。
 いつか見てなさいよ! ギャフンと言わせるんだから。

「ぎゃふん」

 突然校長がギャフンと言った。

「………………」
「………………」

 帰りたい…………。
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