52 / 209
52 ぎゃふん
しおりを挟む
大きな扉の前で私は深呼吸を繰りかえす。
上に書いてある部屋の名前は『学園長室』と書かれている。
一般の店では新星花が売っていないと、ナナから聞いてからの翌日だ。
相変わらず私の顔を見ると、青くなる受付に学園長の部屋を聞いて来た。万が一、万が一だけど私が指輪に関わっているとバレた時には、校長いいえ国王の権限で打ち首があるかもしれない。
緊張しないほうがおかしい。
コンコン。
軽くノックをすると開いてますぞと、短い声がした。
「失礼しますーっと」
部屋の中には白髪の校長兼国王がハンモックで揺られている。
なぜにハンモック! ってか片手にはグラスも持って気持ち良さそうね。
こく……ここでは校長と呼んだほうがいいわよね、ハンモックから降りると私に向かって歩き出す。
「ふぉっふぉっふぉ、エルン君が尋ねてくるとは思いもよらなかったのう。
卒業単位でも買いに来たのじゃろうか?」
「あ、売ってくださるなら是非っ!」
「「……………………」」
校長は手で私を近くの席へと案内する。
あまりふかふかじゃないソファーへと座ると、向かえに座りだした。
「さて、冗談は置いておいて何用かのう?」
「そうですね、冗談は置いておきましょう」
冗談だったのか……。
売ってくれるなら売って欲しいと思ったんだけど。
案外ケチなのね。
「ケチな校長ですまんのう」
「っ!! やですわ、私何も言ってませんけどっ」
「そうかのう?」
「と、所で。新星花という花をお持ちでしたら一つ譲って欲しいんですけど」
「懐かしい名前だのう、して使い道は?」
あなたの息子が探しているし、私も罪になりたくないし、指輪の為よ! とは口が裂けてもいえない。
ごほん。
「病気の子が欲しがっていまして、その子は両親の喧嘩を収める為に小さな花を欲しいと願いました。私がそれをプレゼントする事で、両親の仲はよくなり、その子も元気になると思ってます」
よし、完璧だ。
昨日寝る前に何度も復唱した言葉だ。
小さな病気の子を助ける為。貴重な花を譲って欲しいという願いは断りにくいだろう。
私は畳み掛ける。
「しいては、小さい民はゆくゆくは国を育てる子。その小さい女の子の願いを叶えるのも…………錬金術師としての仕事かと思いますわ」
どうよ!
白髭もじゃもじゃの校長は、白髭を触り触りして考えている。
優しい目のまま私へ向かって口を開いた。
「指輪」
「ん?」
「新星花は、その子の持っているグリフォンの指輪と交換…………だったかのう」
なっばれてる!?
「急用を思い出したので、失礼します!」
私は急いで立ち上がりドアノブを回す。
カチャカチャ言うだけで開かない。
「ちょ、開かないんですけどー!」
「ふぉっふぉっふぉ」
背後から校長の声が聞こえる。
まずい、まずい、まずい、まず――――。
「いやーちょっと、こ、来ないで! 打ち首はいやああああああ」
私の肩に死刑宣告の手が背後から乗った。
逃げなないと、そうだ――!
「――校長なんて年寄りなんだし、いっそ殴ってっ!」
振り向くと校長が半歩後ろに居た。
その手には杖を持っている。
「ふぉっふぉっふぉ、殴られるわけにはいかないのう」
「はっ! 私ったら何時の間に口に!」
「まぁよいよい。打ち首なんてそんな事はするはずもない、座られよふぉっふぉっふぉ」
本当に? 私が何度も確認すると、疑い深いのうと校長のほうが先に座った。
◇◇◇
私が座りなおすと、校長のほうがから口を開いた。
「実はのう、指輪の行方は知っておったのじゃ」
「ええっと……?」
「ミーナ嬢がぶつかったのは黒い物体と聞いてのう、現場にはカラスの羽が一枚落ちていたしの。持ってたはずの袋が散らばっていたのも確認しとる」
「はぁ」
「そして、そのカラスがエルン嬢のカラスで、尚且つマリア嬢の家に良く行くのも報告があるのじゃ」
「じゃぁ……全部知っていて」
「わしはな」
わしはなって事は、私は校長を見ると静に頷く。
「息子達は知らぬぞよ」
やっぱり、知っていたらヘルンがあんな態度を私にするはずが無いものね。たぶん。
さっさと指輪を取り返しにいけばいいだけ出し。
「何がお望み…………は! もしかして十代ピチピチの体が目当てとかっ! だから鍵をかけて…………」
「ふぉっふぉっふぉ、面白い子じゃの。これがミーナ嬢であれば食べ物をくれたんだがのう」
む、あの能天気な人と比べられるのは嬉しくない。
「そもそも、あの人が指輪を持っていなければ私は巻き込まれずに」
「すんだと思うかね?」
私の前にいる校長の目が光った! 気がした。
顔は笑っているのに目が怖い、怖い。
「…………はい、すみません」
「よろしいのう、さて新星花じゃったな。残念ながら無い」
えっ、じゃぁ私がここに来た意味って無いじゃない。
ただ校長に弱みを見せて脅されてるだけ。
「そんな絶望した顔をしなくてもわかっておる、手元に無いだけじゃ。
息子のカインと共に取りに行ってくれれば取った分はエルン嬢に渡そう」
「え、本当? でも結構面倒だから代わりに人をやって取ってきたのを私に――――」
「ワシは何事も穏便に行きたいからのう。決して息子の婚約が破談になりかけているのと、もう一人の息子が婚約者に選んだ相手から振られたと知ったからではないのう」
「謹んでお受けします」
私が引き受けると、校長は白い髭を撫でながらふぉっふぉっふぉと笑う。
いつか見てなさいよ! ギャフンと言わせるんだから。
「ぎゃふん」
突然校長がギャフンと言った。
「………………」
「………………」
帰りたい…………。
上に書いてある部屋の名前は『学園長室』と書かれている。
一般の店では新星花が売っていないと、ナナから聞いてからの翌日だ。
相変わらず私の顔を見ると、青くなる受付に学園長の部屋を聞いて来た。万が一、万が一だけど私が指輪に関わっているとバレた時には、校長いいえ国王の権限で打ち首があるかもしれない。
緊張しないほうがおかしい。
コンコン。
軽くノックをすると開いてますぞと、短い声がした。
「失礼しますーっと」
部屋の中には白髪の校長兼国王がハンモックで揺られている。
なぜにハンモック! ってか片手にはグラスも持って気持ち良さそうね。
こく……ここでは校長と呼んだほうがいいわよね、ハンモックから降りると私に向かって歩き出す。
「ふぉっふぉっふぉ、エルン君が尋ねてくるとは思いもよらなかったのう。
卒業単位でも買いに来たのじゃろうか?」
「あ、売ってくださるなら是非っ!」
「「……………………」」
校長は手で私を近くの席へと案内する。
あまりふかふかじゃないソファーへと座ると、向かえに座りだした。
「さて、冗談は置いておいて何用かのう?」
「そうですね、冗談は置いておきましょう」
冗談だったのか……。
売ってくれるなら売って欲しいと思ったんだけど。
案外ケチなのね。
「ケチな校長ですまんのう」
「っ!! やですわ、私何も言ってませんけどっ」
「そうかのう?」
「と、所で。新星花という花をお持ちでしたら一つ譲って欲しいんですけど」
「懐かしい名前だのう、して使い道は?」
あなたの息子が探しているし、私も罪になりたくないし、指輪の為よ! とは口が裂けてもいえない。
ごほん。
「病気の子が欲しがっていまして、その子は両親の喧嘩を収める為に小さな花を欲しいと願いました。私がそれをプレゼントする事で、両親の仲はよくなり、その子も元気になると思ってます」
よし、完璧だ。
昨日寝る前に何度も復唱した言葉だ。
小さな病気の子を助ける為。貴重な花を譲って欲しいという願いは断りにくいだろう。
私は畳み掛ける。
「しいては、小さい民はゆくゆくは国を育てる子。その小さい女の子の願いを叶えるのも…………錬金術師としての仕事かと思いますわ」
どうよ!
白髭もじゃもじゃの校長は、白髭を触り触りして考えている。
優しい目のまま私へ向かって口を開いた。
「指輪」
「ん?」
「新星花は、その子の持っているグリフォンの指輪と交換…………だったかのう」
なっばれてる!?
「急用を思い出したので、失礼します!」
私は急いで立ち上がりドアノブを回す。
カチャカチャ言うだけで開かない。
「ちょ、開かないんですけどー!」
「ふぉっふぉっふぉ」
背後から校長の声が聞こえる。
まずい、まずい、まずい、まず――――。
「いやーちょっと、こ、来ないで! 打ち首はいやああああああ」
私の肩に死刑宣告の手が背後から乗った。
逃げなないと、そうだ――!
「――校長なんて年寄りなんだし、いっそ殴ってっ!」
振り向くと校長が半歩後ろに居た。
その手には杖を持っている。
「ふぉっふぉっふぉ、殴られるわけにはいかないのう」
「はっ! 私ったら何時の間に口に!」
「まぁよいよい。打ち首なんてそんな事はするはずもない、座られよふぉっふぉっふぉ」
本当に? 私が何度も確認すると、疑い深いのうと校長のほうが先に座った。
◇◇◇
私が座りなおすと、校長のほうがから口を開いた。
「実はのう、指輪の行方は知っておったのじゃ」
「ええっと……?」
「ミーナ嬢がぶつかったのは黒い物体と聞いてのう、現場にはカラスの羽が一枚落ちていたしの。持ってたはずの袋が散らばっていたのも確認しとる」
「はぁ」
「そして、そのカラスがエルン嬢のカラスで、尚且つマリア嬢の家に良く行くのも報告があるのじゃ」
「じゃぁ……全部知っていて」
「わしはな」
わしはなって事は、私は校長を見ると静に頷く。
「息子達は知らぬぞよ」
やっぱり、知っていたらヘルンがあんな態度を私にするはずが無いものね。たぶん。
さっさと指輪を取り返しにいけばいいだけ出し。
「何がお望み…………は! もしかして十代ピチピチの体が目当てとかっ! だから鍵をかけて…………」
「ふぉっふぉっふぉ、面白い子じゃの。これがミーナ嬢であれば食べ物をくれたんだがのう」
む、あの能天気な人と比べられるのは嬉しくない。
「そもそも、あの人が指輪を持っていなければ私は巻き込まれずに」
「すんだと思うかね?」
私の前にいる校長の目が光った! 気がした。
顔は笑っているのに目が怖い、怖い。
「…………はい、すみません」
「よろしいのう、さて新星花じゃったな。残念ながら無い」
えっ、じゃぁ私がここに来た意味って無いじゃない。
ただ校長に弱みを見せて脅されてるだけ。
「そんな絶望した顔をしなくてもわかっておる、手元に無いだけじゃ。
息子のカインと共に取りに行ってくれれば取った分はエルン嬢に渡そう」
「え、本当? でも結構面倒だから代わりに人をやって取ってきたのを私に――――」
「ワシは何事も穏便に行きたいからのう。決して息子の婚約が破談になりかけているのと、もう一人の息子が婚約者に選んだ相手から振られたと知ったからではないのう」
「謹んでお受けします」
私が引き受けると、校長は白い髭を撫でながらふぉっふぉっふぉと笑う。
いつか見てなさいよ! ギャフンと言わせるんだから。
「ぎゃふん」
突然校長がギャフンと言った。
「………………」
「………………」
帰りたい…………。
0
お気に入りに追加
69
あなたにおすすめの小説

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
されたのは、異世界召喚のはずなのに、なぜか猫になっちゃった!?
弥湖 夕來
ファンタジー
彼に別れを告げられた直後、異変を感じ気が付いた時には変わった衣服の人々に取り囲まれ、見知らぬ神殿に居たわたし。なぜか儀式を中断させた邪魔者として、神殿から放りだされてしまう。猫の姿になっていたことに気が付いたわたしは、元の世界に帰ろうと試みるが、どこに行っても追い立てられる。召喚された先は猫が毛嫌いされる世界だった。召喚物お決まりのギフトは小鳥の話を聞きとれることだけ。途方に暮れていたところを、とある王族のおねぇさんに拾われる。出だしに反し、裕福なお家でのイケメンさんに囲まれた猫ライフを満喫していると、

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜
川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。
前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。
恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。
だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。
そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。
「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」
レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。
実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。
女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。
過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。
二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした
犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。
思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。
何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる