グラン王国の錬金術師 if 悪役錬金術師に転生してました!

えん水無月

文字の大きさ
上 下
39 / 209

39 太陽(ような明るさ)の女性

しおりを挟む
 私はリュートの近くへと行く。
 リュートは困った顔をして私に笑顔を見せる。

「ええっと」

 私は指を突きつける。

「彼方が悪い!」
「いや、待ってくれ、俺はエルンの事を思って」
「そうなんだろうけど、それでも彼方が悪い! 正座っ! そもそもなんで、あの子が学園にいるのよ」

 
 リュートは直ぐに正座をする。
 私の事がまだ好きと言ってくれたのは、少しだけ嬉しい。
 でもだ、私はもうそうでもない。
 その辺の事を何度も――。

「――伝えたのにリュートお前はロミオかっ!」


「すまない、ロミオというのは俺の知っている男だろうか?」
「うわっ! こ、心を読めるのっ!?」
「いや、エルンが声を出して」

 うう、また口に出してしまっていた。
 軽く咳払いをして説明をする。
 ロミオとは、カップルで男のほうがが原因で別れたのにも関わらず、俺の事がまだ好きなんだろ? や、君の真実の愛に気づいた待っていてくれ、など勘違いした男達の事である。

 それをやわらかーーーーーーーく、リュートへと説明した。


「素敵な男性の事だな、振られても彼女の事を思うとか」


 だめだ、この馬鹿リュートわかってない。

「とにかく、お友達としてはリュートは立派よ。それ以上を望むのであれば、パ……父の力を使っても拒絶するわ」


 私の一言に周りの野次馬から謎の声が出る。
 カミュラーヌ家の宝刀を抜いたぞ!
 あれ、エルンさんって極悪人って聞いていたのにかっこいい?
 リュートさまが可愛そう。
 あの人は学園に多額の寄付をしてるから回りは逆らえないのよね。
 などなど。
 

「と、言うか見世物ではないんですけど?」

 私は満面の笑みを回りへと向けた。
 一部始終を見ていた生徒達が一斉に、それこそ走って消えていく。



マギカあのこの味方はリュートだけだったのよ? 場を治めようとしたのはわかるけど、いきなり叩く者じゃないわ、大事な子なんでしょ」
「すまない……ああ、小さい頃から妹のように」
「私にじゃなくてあの子に謝ってあげてね」
「わ、わかった」
「はいはい、あと……私の家が学園に多額の寄付って話って何?」

 思わず聞いてみた。
 さっき私の周りに居た野次馬が言った声が届いていたからだ。

「俺達貴族は入学するさいに入学料を払う、しかし一定さえ払えば上限は決まってないんだ。エルンの家は金脈もあり入学料以外の多額の寄付を払ったって噂がある、それの事だろう」


 なんですとおおおおおおおおおおおおおおお。

 ああ、これで解かったわ。
 なぜ私が名前も顔も知らない生徒に悪役だ! とか後ろ指差されるわけが、そりゃ多額のお金で裏口入学入学料金したと噂にもなるわよね。

 しかもそれ、噂じゃなくて真実よね。


「ン? ――エルン? 別にそこまで悪い事ではない。
 僕らがそうしないと、学園の維持もあるし、それに入れる人間が増える」
「そ、そうなの?」

 少し言いにくそうに顔をゆがめた。
 貴族にも貧乏貴族も居るし、ナナみたいな子も居ると説明してくれた。
 なるほど。

 多く出せる人間は多く出しましょうという奴ね。
 そもそも、日本みたく強制で入る学校でもないので裏口入学も何もないと教えてくれた。

「それに俺の家も少なからずは多く出してる」
「そうなの!?」

 思わずもう一度聞くと、そうだよと、いとも普通に答えてくれた。
 リュートの家って貧乏貴族かと思っていたから、ちょっと意外だったわね。
 もっと色々聞きたいけど、時間をかけるべきじゃないのを思い出した。

「呼び止めて悪かったわ。急いで探してきて」
「…………ああ、わかった」

 私はリュートの背中を見送った。

 ……。

 ………………。

 そうゲームや漫画なら一気に会議室にでもシーンは移動するんでしょうけど。
 見送った後の事まで考えてなかった。
 この流れで先に家に帰る事も出来ないし、しようとも思わない。
 私も少し心配だし探しに行きたいけど、かける言葉もないのよね、ああいうのは主人公のナナ達に任せるわ。

 
「本当! 面倒よね…………」

 自然に声が出た。


 ◇◇◇

 私は誰も居なくなった廊下を歩くと久々に受付へ向かった。
 私の顔を見ると引きつった笑顔をみるも、どのような用事でしょうと言ってくる。

「怖がらなくていいわ、伝言だけ。
 錬金科のナナを見かけたらカフェに居るって伝えて」

 私は金貨を一枚カウンターへと置く。
 伝言だけならお金も何も要らないというのを、他の人とのオヤツに使ってと無理やり置いて来た。

 いつものカフェに入ろうとすると、入り口に折れたホウキがある。
 危ないなゴミはさっさと捨てれば良いのにと思いつつも中へ入った。

「いらっしゃ……」
「日替わりケーキと紅茶を場所は……九番の席空いてるみたいだからそこに」
「は、はいっ!」


 緊張した顔の店員に言うと私は少し日当たりが悪い九番の席へと座った。
 物の数分で出されたセットを食べながら外を見る。
 こんな事なら図書室で本を借りてくれば良かったかもしれない。

 ガラスに反射する店内では、一人二人と生徒がカフェから出て行くのか見える。
 そんな意地悪しないわよ、まったく……。


「すごいねー! 何か悪い事でもした人なの?」


 若い女性の声だ。耳元で聞こえるという事は私に言っているのかっ。
 振り返ると、赤いセミショートの髪が眩しい少女が私の顔を見ていた。
 歳は……いくつだろう。
 若くも見えるし年上ににも見える。
 粗末な布の服と、薄汚れたズボンをはいていて学園の生徒には見えない。

「失礼ですけど、第一声がそれっておかしいと思いません?」

 私は丁寧に返事をした。
 だって友達じゃないもん。

「ごめんごめん。いやだって、あなたがカフェに入ってから込んでた店内がご覧の通り、誰も居なくなったでしょ? だから皆にげたのかなーって」

 周りを見るように手を動かすと、うん。誰も居ない。
 つまり私が凶悪犯といいたいのかっ!?
 私が静でいいですわよねと、言おうと口を開くと、この少女は私の胸を揉んでいた。

「っ!!!」
「うわーやっぱ大きい。着痩せかなっておもったけど」
「ど、どこさわるのよっ!」
「どこって胸よ? 見てよアタシの胸。登る以前に下りもないのー」

 自虐する女性の胸を見る。
 Aカップぐらいかな、ナナといい勝負が出来そうね。

「ご、ご愁傷様。でも小さい丘も好きな殿方はいらっしゃいますわよ」

 適当に慰めるしかない、私は紅茶を飲むと気持ちをおちつか……。

「なのかなー、ねぇねぇ君の恋人は大きいのが好きなの? ごめん変な事聞いたかな」

 思わず飲んでいる紅茶を噴出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜

川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。 前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。 恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。 だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。 そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。 「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」 レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。 実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。 女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。 過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。 二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

婚約破棄されたショックですっ転び記憶喪失になったので、第二の人生を歩みたいと思います

ととせ
恋愛
「本日この時をもってアリシア・レンホルムとの婚約を解消する」 公爵令嬢アリシアは反論する気力もなくその場を立ち去ろうとするが…見事にすっ転び、記憶喪失になってしまう。 本当に思い出せないのよね。貴方たち、誰ですか? 元婚約者の王子? 私、婚約してたんですか? 義理の妹に取られた? 別にいいです。知ったこっちゃないので。 不遇な立場も過去も忘れてしまったので、心機一転新しい人生を歩みます! この作品は小説家になろうでも掲載しています

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

魔女と王都と金色の猫

鈴宮(すずみや)
恋愛
 ミシェルは14歳の魔女。  祖母の死により天涯孤独の身となったミシェルは、王都で王子・ルカに気に入られ、王室専属魔女として採用されることに。生まれて初めての仕事や外の世界に戸惑いつつも、奮闘していく。  そんなある日、ミシェルは幼馴染で侯爵家の一人息子であるクリスに結婚を持ち掛けられる。しかし、ミシェルは美しく自信に満ち溢れたルカに惹かれつつあった。けれど、彼女には人には言えないとある秘密を抱えていて。 『私ならばミシェルを受け入れられる』 そう言ってミシェルへと迫るクリスだったが、そこへルカが現れ――――?【第1章】  ミシェル達が働き始めてしばらくして、城では年に一度の騎士や政務官たちの採用試験が行われようとしていた。  自分に自信を付けるため、精力的に仕事に取り組むミシェルだったが、14年間引き籠っていたいたハンデは大きい。  そんなときミシェルは、今年の採用者たちと一緒に研修が受けられることに。喜ぶのも束の間、そこには何やらルカとわけありっぽい令嬢・アリソンも参加していて……。【第2章】  ようやくルカの想いを受け入れる決心をしたミシェル。未来の王妃教育を受けつつ、正式な婚約を目指していく。  そんなある日、ミシェルは城から忽然と姿を消してしまう。手がかりは彼女の出自にあって?果たして二人は、ロイヤルウェディングを果たせるのか……。【第3章】

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

処理中です...