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34 お金って私が払うんじゃなかったのっ!?
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城へと着くと、狭い一室へと通された。
既にヘルン王子、カイン第二王子。
それと、その二人を守るように数名の鎧を着た兵士二名と、これまた見たことの無い老人が居た。
そんな中、ヘルン王子が私を見ると声を上げる。
「やぁ。悪役令嬢の錬金術師さん」
余りにも爽やかに言うのだから聞き間違えたのかと思った。
「はい?」
「君の街での噂さ」
「私まだ何もしてませんですけど!」
私が大声を上げると、周りの兵士二人が一斉に剣の柄を持った。
え、なにこれ。
殺される空気かしら?
「カイン王子よ、冗談はほどほどに」
見たことの無い老人が仲裁をしてくれた。
カイン王子は頭をぽりぽりと掻く。
「場を和ませようとした冗談だったんだけど…………外したかな。
港のくだらない噂の事はいいとして、こっちは城の財務をしているファイアット大臣」
「財務大臣といわれてますが、ただの金に汚い爺さんで御座いますゆえ。ファイアットと呼んで下され、マイト殿にはよくして貰ってます」
財務大臣のファイアットさんが頭を下げるので、私も慌てて頭を下げる。
爺さんで御座いますゆえと、言っているけど物凄い人よね、それにパパの事も知ってるのか。
ヘルン王子が困った顔で小さく話す。
「あの事故は何ていうか非公式でね」
「非公式?」
「ああ、新米冒険者カインが錬金術師エルンとともに採取しにいき、レア魔物に襲われて怪我をした、それ以上でもそれ以下でもないんだよ」
回りくどい言い方に混乱する。
あっ。
「ようは、あの場所にカインが居た事がまずかったって事?」
「そう、冒険者カインは大丈夫なんだけど、第二王子カインが居たって事が問題でね。
弟は君を助けるのに身分を明かした。
明かしたっても知ってる人は知ってはいたんだけど…………それでも、冒険者と王族との違いはあってね」
なるほどなるほど。
ようは口封じに殺されなかったら金を払えって事の確認よね。
かー! 優しそうな顔してヘルン王子もカイン王子も、イケメンならぬインケンね!
それとも、ヘタレ王子って言った事まだ根に持ってるのかしら。
「では、これをご覧下さい」
私は鞄から書類一式を机に叩き付ける。
護衛の兵士がビクっとなったけど、それ以上は動かない。
「これは?」
「慰謝料…………迷惑料の書類です! 宝石類をいくつか売却にだしています。
売り切った分が白金貨三十枚ほど、残りの七十枚は既に買い手はついていますし、なんだったら個人の商人ですがミーティアが借金の肩代わりをするという書名です」
「…………で?」
で、とは何だ。でとはっ!
「ですから、これで私が払う迷惑料の白金貨百枚分です。
数日中に全額はそろえれませんけど…………これでギロチンや父の領土没収などはやめてほしいなぁ………………と」
段々と声が小さくなり最後は皆に聞こえたかどうか。
財務大臣のファイアットさんが書類を確認すると、本物ですな…………と呟く。
「ご、ごめん。ちょっと席を外すよ」
ヘルン王子は足早に扉から出ていった。
声だけであるけど、突然笑い声が聞こえてきた。
なぜ笑い出す?
私はカインとファイアットさんと、最後に証人であるディーオを見る。
全員が微妙な顔をしていた。
「もしかして、迷惑料は即金じゃないと駄目とか?」
「君は……くっ!」
今度はディーオが小さく笑い出した。
その笑いが広がって、表情の少ないカインも、すまないと、言いながら小さく笑う。
ファイアットさんも、ほうほうほうほうと笑っているし。
「えっと、何この空気…………?」
「カイン君説明してあげてくれ」
ディーオがカインへと話を振った。
「わかった…………。エルン」
「何?」
「慰謝料は君が払うのではなく貰うほうだ」
「はい?」
ファイアットさんが、代わりにと口を開けた。
「非公式でないゆえ、カイン第二王子が名乗り一貴族を怪我させたというのが問題ですな。
それゆえ、記録には残せませんが、記憶には残る、わかりますかな?」
「ええ。それは何度も聞きましたけど」
ファイアットさんはうんうんと頷くと、さらに付け足す。
「今回はそのカイン第二王子が身分を明かし、一般貴族すら守れなく大怪我を追わせたというのが困った事になったのですのじゃ。
それを成るべく拡散しないようにと、エルン・カリュラーヌ嬢に多額(・・)の慰謝料を払うという事になっておりますのじゃ」
「え? 私が払うんじゃないの?」
ファイアットさんは首を振ると続きを話す。
「ですが、ご要望の白金貨百枚というと、少なからずこの国にも影響があり、白金貨二十枚とエルン・カリュラーヌ嬢のお父上、マイト・カミュラーヌ殿の領地からの税を四年間半分にするという書類がこちらに」
そういうと、私が叩き付けた書類を横に置いて、新しい書類を机に出した。
「やぁ、話は終わったかい?」
「あ、ヘルン王子」
「いや、悪いね突然の事で外の空気を吸わせてもらったよ」
「外で笑ってたわよねっ!?」
「いい案と思うのだが、君の意見はどうだろう?」
あ、無視した。
いい案も何も、私が払わなくていいなら大賛成だし。
牢に繋がれる心配もないなら至れりつくせりだ。
「払わなくていいなら別に百枚も要らないわよ。いえ、要らないです」
ついタメ口になったので口の利き方を治す。
パパに内緒にしていたのに税率半分とか言うとバレる。
「では…………その分を上乗せして白金貨二十五枚で簡便してもらえるじゃろか?」
「はい、私の足の治療代も持ってもらった事ですし、なんだったら特に要らなかったんですけど…………」
「ヘルン王子、カイン王子そのようにしますけど良いですかな?」
ファイアットさんが二人に確認する。エルンもカインも頷いた。
こうして私は棚から牡丹餅感覚で白金貨二十五枚、すなわち日本円で二百五十万相当をただで貰った。
既にヘルン王子、カイン第二王子。
それと、その二人を守るように数名の鎧を着た兵士二名と、これまた見たことの無い老人が居た。
そんな中、ヘルン王子が私を見ると声を上げる。
「やぁ。悪役令嬢の錬金術師さん」
余りにも爽やかに言うのだから聞き間違えたのかと思った。
「はい?」
「君の街での噂さ」
「私まだ何もしてませんですけど!」
私が大声を上げると、周りの兵士二人が一斉に剣の柄を持った。
え、なにこれ。
殺される空気かしら?
「カイン王子よ、冗談はほどほどに」
見たことの無い老人が仲裁をしてくれた。
カイン王子は頭をぽりぽりと掻く。
「場を和ませようとした冗談だったんだけど…………外したかな。
港のくだらない噂の事はいいとして、こっちは城の財務をしているファイアット大臣」
「財務大臣といわれてますが、ただの金に汚い爺さんで御座いますゆえ。ファイアットと呼んで下され、マイト殿にはよくして貰ってます」
財務大臣のファイアットさんが頭を下げるので、私も慌てて頭を下げる。
爺さんで御座いますゆえと、言っているけど物凄い人よね、それにパパの事も知ってるのか。
ヘルン王子が困った顔で小さく話す。
「あの事故は何ていうか非公式でね」
「非公式?」
「ああ、新米冒険者カインが錬金術師エルンとともに採取しにいき、レア魔物に襲われて怪我をした、それ以上でもそれ以下でもないんだよ」
回りくどい言い方に混乱する。
あっ。
「ようは、あの場所にカインが居た事がまずかったって事?」
「そう、冒険者カインは大丈夫なんだけど、第二王子カインが居たって事が問題でね。
弟は君を助けるのに身分を明かした。
明かしたっても知ってる人は知ってはいたんだけど…………それでも、冒険者と王族との違いはあってね」
なるほどなるほど。
ようは口封じに殺されなかったら金を払えって事の確認よね。
かー! 優しそうな顔してヘルン王子もカイン王子も、イケメンならぬインケンね!
それとも、ヘタレ王子って言った事まだ根に持ってるのかしら。
「では、これをご覧下さい」
私は鞄から書類一式を机に叩き付ける。
護衛の兵士がビクっとなったけど、それ以上は動かない。
「これは?」
「慰謝料…………迷惑料の書類です! 宝石類をいくつか売却にだしています。
売り切った分が白金貨三十枚ほど、残りの七十枚は既に買い手はついていますし、なんだったら個人の商人ですがミーティアが借金の肩代わりをするという書名です」
「…………で?」
で、とは何だ。でとはっ!
「ですから、これで私が払う迷惑料の白金貨百枚分です。
数日中に全額はそろえれませんけど…………これでギロチンや父の領土没収などはやめてほしいなぁ………………と」
段々と声が小さくなり最後は皆に聞こえたかどうか。
財務大臣のファイアットさんが書類を確認すると、本物ですな…………と呟く。
「ご、ごめん。ちょっと席を外すよ」
ヘルン王子は足早に扉から出ていった。
声だけであるけど、突然笑い声が聞こえてきた。
なぜ笑い出す?
私はカインとファイアットさんと、最後に証人であるディーオを見る。
全員が微妙な顔をしていた。
「もしかして、迷惑料は即金じゃないと駄目とか?」
「君は……くっ!」
今度はディーオが小さく笑い出した。
その笑いが広がって、表情の少ないカインも、すまないと、言いながら小さく笑う。
ファイアットさんも、ほうほうほうほうと笑っているし。
「えっと、何この空気…………?」
「カイン君説明してあげてくれ」
ディーオがカインへと話を振った。
「わかった…………。エルン」
「何?」
「慰謝料は君が払うのではなく貰うほうだ」
「はい?」
ファイアットさんが、代わりにと口を開けた。
「非公式でないゆえ、カイン第二王子が名乗り一貴族を怪我させたというのが問題ですな。
それゆえ、記録には残せませんが、記憶には残る、わかりますかな?」
「ええ。それは何度も聞きましたけど」
ファイアットさんはうんうんと頷くと、さらに付け足す。
「今回はそのカイン第二王子が身分を明かし、一般貴族すら守れなく大怪我を追わせたというのが困った事になったのですのじゃ。
それを成るべく拡散しないようにと、エルン・カリュラーヌ嬢に多額(・・)の慰謝料を払うという事になっておりますのじゃ」
「え? 私が払うんじゃないの?」
ファイアットさんは首を振ると続きを話す。
「ですが、ご要望の白金貨百枚というと、少なからずこの国にも影響があり、白金貨二十枚とエルン・カリュラーヌ嬢のお父上、マイト・カミュラーヌ殿の領地からの税を四年間半分にするという書類がこちらに」
そういうと、私が叩き付けた書類を横に置いて、新しい書類を机に出した。
「やぁ、話は終わったかい?」
「あ、ヘルン王子」
「いや、悪いね突然の事で外の空気を吸わせてもらったよ」
「外で笑ってたわよねっ!?」
「いい案と思うのだが、君の意見はどうだろう?」
あ、無視した。
いい案も何も、私が払わなくていいなら大賛成だし。
牢に繋がれる心配もないなら至れりつくせりだ。
「払わなくていいなら別に百枚も要らないわよ。いえ、要らないです」
ついタメ口になったので口の利き方を治す。
パパに内緒にしていたのに税率半分とか言うとバレる。
「では…………その分を上乗せして白金貨二十五枚で簡便してもらえるじゃろか?」
「はい、私の足の治療代も持ってもらった事ですし、なんだったら特に要らなかったんですけど…………」
「ヘルン王子、カイン王子そのようにしますけど良いですかな?」
ファイアットさんが二人に確認する。エルンもカインも頷いた。
こうして私は棚から牡丹餅感覚で白金貨二十五枚、すなわち日本円で二百五十万相当をただで貰った。
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