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30 でぶ猫から貰いました

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 みーおうの部屋へと通された。
 部屋というよりはフロア。
 
 人間が十人は座れそうなソファーに私とナナは腰をかける。

「人間が飲める飲みのニャー」
「どうも」
「ありがとうございますっ!」
「で、みーおうが精霊ちゃんとして聞くけど何で居なかったのよ」
「態度悪いニャ……森が騒がしかったから見に行っただけニャ。
 今時精霊と契約しようという人間が来るとは思わなかっただけニャ」
「で、自称精霊王なのよね」


 そう、こんな巨大デブ猫の姿をしているが、自称精霊王と名乗っている。


「エルンさん、ちょっと失礼ですよ! こんなに可愛いのに」
「さすがは魂の綺麗にゃ子ニャ」
「触ってもいいですかっ」

 みーおうが両手を広げると、ナナはその体へと抱きついた。
 ふかふかで気持ちいいですよっ! エルンさんもどうですか? と言っているが、みーおうは私の顔を見ると露骨に嫌そうな顔をする。
 
 魂が腐ってるか濁っているか知らないが、酷い差別だ。

「話が進まないから進ませて貰うわよ。
 私達は精霊を捕まえに来た。小瓶と手袋と眼鏡、後必要なのはあるかしら?」
「後は契約料金ぐらいニャ。わかったニャ、着いて来るニャ」

 みーおうは、ナナが抱きついたまま腰を上げて歩き出す。
 あれで落ちないナナも、結構タフな女の子よね。

 廊下から階段へといき別なフロアへと連れて行かれる。
 毛の中から鍵を取り出すと一つの部屋を空けた。

「入るにゃ」

 言われるままに入ると、赤い液体が入った小瓶が大量に並べられている部屋へと連れて行かれた。
 流石にナナも抱きついた状態から離れ部屋の中を見渡した。

「みけおうさんっ! これって精霊の小瓶ですよね?」
「さすがニャ! 中に入っているのは精霊の一部にゃ」


 なんでも、精霊の世界では人間と関係を持つのか一種のステータスになっているらしい。
 で、時たま現れる精霊を扱える人間を小瓶を通して待っている。

「へえ…………全部連れて行っていいの?」
「軍隊でも作る気かニャ…………強欲すぎるニャ、一回に一瓶までにしてほしいニャ」

 私は赤い液体の入った瓶を手に取る。
 その赤色が強くなったきがしたので棚へと戻した。


「それよりも色を見るニャ。青は友好的、白は無関心、赤は敵対心ニャ」
「え、でも全部青色ですよ?」


 ん? ナナの言葉にもう一度回りを見る。
 やっぱり私の見渡す限り全部赤なんですけど!?
 みーおうは、ナナと私に説明を付け足していく。

「さすがニャ! でもやっぱり最初は一瓶にしてほしいニャ。一緒に持っていくと喧嘩するのもいるニャ」
「どれ持って行きましょうねエルンさん」
「え? そ、そうね」

 ナナが棚の奥へと見に行った。
 私はナナの後を歩き出そうとするみーおうの尻尾を、足で押さえつけた。

「にぎゃあああああ、な、何するニャ! 尻尾は大事ニャ!」
「大丈夫よ、尻尾が短くても生きてる猫見た事あるから、所で私の周りの小瓶全部赤色なんだけど?」
「顔が怖いニャ…………ミーに言われても、見える色は人によって違うニャ。ミーは殆どが透明ニャ」
「じゃぁ何よ? 私に仕えたい精霊は殆ど居ないって事でいいわけ?」
「そうにゃる。痛いにゃ! 尻尾、尻尾掴まないで欲しいニャ」

 私はこっそり胸元から出した指輪を見せる。
 髭がピンとなったみーおうが、その指輪を見ている。

「古いけど精霊王の指輪ニャ…………盗んだのかニャ?」
「怒るわよ? 譲り受けたのよっ、これで命令出きるのよね」
「もう怒ってるニャ。その指輪があれば命じれば赤でも従うとか思うニャ…………でも直ぐに逃げるにゃよ?」
「やっぱ駄目か」


 まぁいいわ。これだけ小瓶があれば赤色じゃない青色が一つぐらいはあるわよね。
 私はナナとは別の意味で精霊の一部が入っているという小瓶を探し始めた。


 ◇◇◇

 あの…………無いんですけど!
 回っても回っても小瓶は全部赤色。

 ナナは一つ一つ手にとっては棚へと戻して選んでいる。
 なんでも、一つを手に取ると他の青色が濃くなったり薄くなったりしてどれを選んでいいか悩んでいるらしい。

 私の場合は一つの赤色の小瓶をとると、周りの小瓶が一斉に青に変わる。
 で、小瓶を戻すと全部赤にもどる。

 お笑い芸人のどうぞどうぞ! かっ!
 べ、べつにいいけどさー……精霊ちゃんもそんなに欲しいわけじゃなかったしー。
 ウチには可愛いメイドのノエもいるしー。

「ナナー」
「なんでしょうかー!」
「私ちょっと上で休憩してくるから」
「ご、ごめんなさいー。直ぐ選びます!」

 ナナにゆっくり選びなさいと念押しをして私は部屋からでた。
 扉の前には巨大なデブ猫みーおうが丸くなっている。

「ニャ? 決まったかニャ?」
「決まるも何も全部赤よ」


 八本の髭を震わせて笑いを堪えているのが見える。


「しってる? 猫の耳って鍋に入れると美味しいらしいわよ」
「ニャニャニャ!!!」
「冗談よ」
「嫌な冗談は辞めてほしいニャ……。
 わかったニャ…………これを見るニャ」

 みーおうは体毛の中から小瓶をだした。
 中の液体は黄色だ。

「黄色?」
「にゃるほど、みーには黒色にみえるニャ」
「え、もしかして、くれるの?」
「そうニャ。鍋にはされたくないニャ」

 うわ、本当!? 言ってみるもんね。
 ただよただ! 精霊ちゃんをただで貰うとか。

「でもまって、私には黄色だけと黒って何よ?」

 耳をペータンとしたみーおうは、こちらを向かない。
 何も聞こえませんよーと、いうスタイルだ。

「ねぇ」
「……………………」
「髭きるわよ」
「ニャニャニャニャ!」
「聞こえてるじゃない」
「時たまいるんだニャ、いたずらが好きな精霊などが。
 それがこれニャ。主人の命令をあまり聞かないとかで戻される奴にゃ」
「へえ」

 それぐらいなら可愛いものね。

「エルンさーん。わたし、決まりましたー!」

 丁度ナナも決まったらしく走ってくる。
 そんなに走ってくるとまた、あっ転んだ。
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