グラン王国の錬金術師 if 悪役錬金術師に転生してました!

えん水無月

文字の大きさ
上 下
25 / 209

25 小さな婚約者

しおりを挟む
 ホームパーティーと聞いていたから小さな食事会と思っていた。
 大きなホールに通される、ざっと五十人は入れそうな会場だ。

 食事は既に盛大に並んでおりビュッフェ式、好きなように好きなだけ食べる奴だ。
 エレファントさんが、一段高い場所に立つとパーティーの挨拶をする。

「本日はわたくしの快気祝いに集まりありがとうございます。
 わたくしの体調は、お招きした錬金術師の方々によって助けられました。
 今日はこの場を借りてお礼をお伝えします」

 私は慌てて頭を下げる。
 近くに居たナナも頭を下げるエレファントさんが舞台から降りた。

「薬を作ってくれたナナさん。その薬の作りを手助けしてくれたディーオさん。
 問題になる前に色々助言してくれた……カインさんのご家族の方。
 そして、遠くに居るのにわたくしの病気の事を推測、レシピを授けてくれたエルンさん。
 息子との婚約は破棄されましたけど、その点も含めてお話したかったのですよ。
 まずは食事ですね。時間はたっぷりとありますので、ごゆっくり食べてくださいね」

 エレファントさんの横に白髪のお爺さんが寄ってくる。

「こちらは執事の――」
「奥様、執事のご紹介はいりません、執事は執事で結構です。
 それよりも……お呼びしていないお客様が多数おられまして、奥様に一目会いたいと」
「あらあら、困ったわねぇ……どこで噂を聞いてきたのかしら誰?」
「はっ、叔父の……」

 エレファンとさんは、細目になり口元を手で隠した。
 その姿が綺麗で見とれてしまう。

「皆さんともっと話して起きたいのですけど……」
「ボクはら好きに食事を取らせてもらうさ。大事な来客ならどうぞ」
「そうです? リュートもまだ帰ってこないし悪いですわね」

 ディーオが提案すると、老執事とエレファントさんは部屋から出て行く。
 残された私達は思わず顔を見合わせた。

「エレフェントさんって綺麗な方なんですね」
「そうね、透き通る銀髪に、あっでも、特徴的な耳は今日は見えなかったわね」

 ガッシャーン!

「な、なに。やだディーオ、グラス落とさないでよ」
「いや……カイン君。グラスを割ってしまったと誰か呼んできてくれないか?
 ナナ君に頼むと途中で転ぶからな」

 ナナは否定できません……と小さくなる。
 カインはわかったと言うと、ホールから出ていった。
 大きなフロアにディーオとナナと私がいる。
 突然ディーオが小さい声で私達に話しかけた。

「ナナ君は、エレファント氏の耳はその……見えたか?」
「え、はい……変わっていますけど素敵と思います」
「エルン君は?」
「見えないわね」
「じゃぁ、なんで特徴的と言った!」
「え、いや。そうじゃないかなーって。そう、リュート、リュートに聞いた!
 ようなきがした」

 ゲームで見た!
 は、ないわよね。

「そうか……元彼女ならそういう事もあるのか……いいか二人とも、彼女の耳には触れるな。普通の耳と思え、事によっては打ち首だ。
 くそ、先に言っておくんだったな……説明はそうだな学園に来た時にでも話そう」

 ディーオが一方的に言うと、ホールの扉が大きく開いた。
 エレファントさんと同じく銀髪の少女が私達を見ていた。

 隣には老執事もおり、メイドに指示を出している。
 割れたグラスの回収だろう。
 それよりも早足で銀髪の少女が駆け寄ってくる。

「はじめまして、親愛なるリュートの婚約者でマギカと申しますわ」

 え? だれのだって。
 リュートの婚約者って聞こえたんだけど。
 あれ、これってよくある二股を掛けられた奴っていいのかしら。

「どちらが、エルンさんかしら?」
「わ、私だけど……」
「綺麗な顔……エルンさんあちらの料理が美味しいと評判なんですよ、いきませんか?」
「え? ええいいわよ」

 ぐいぐい来るなこの子。
 色々追いつかないけど、美味しい料理と聞かれると私も動かざる終えない。
 ディーオ達の集団と少しはなれる。

 確かに美味しそうな料理が並んでいた。

「エルンさん、あの料理取れます? 私はこちらのスープをよそいますね」

 マギカが言うのは、ピザに似た料理だ。
 いや、ピザなのか?
 私が手を伸ばして取ろうとすると、マギカの声がする。

「まぁ、噂通りの食い意地の張った女ですわね。男をとっかえひっかえ、王子や王にも賄賂を贈り。レアモンスターを探すのに兵団まで使う極悪人の顔ですわね」

 先ほどの可愛らしい声と違い、酷く黒い声を出された。
 は? まてまてまて、私はそんな事してないししようとも。

 バシャン。

 私が文句を言う前に、顔とドレスに液体がかかる。
 あっつ、熱い熱いっ。
 どんくさーい。
 マギカの楽しそうな呟きが聞こえると、慌てた声へと戻った。

「エルンさん、ごめんなさいごめんなさい。
 私が持っていたスープがかかるだなんで、これで拭いてくださいっ!」
「あ、ありがと? うわ臭いっ!」
「あっ、ごめんなさい。それ雑巾でした。まぁ折角のドレスも汚れて臭くなってますわ」

 まてまてまて、なんでナチュラルに雑巾があるのよ。え、何この流れ?

「待ってください!」

 私が取りあえず近くにあった、綺麗な布で顔を拭きなおす。
 ナナが駆け寄ってきた。

「見てましたけど、マギカさんですよね! エルンさんにスープかけたのを見ましたっ!」
「酷い……マギカぶつかっただけなのに、それにエルンさんのほうがぶつかって来たというか……もしかしてリュート様の婚約者であるマギカに嫉妬して意地悪をっ! そうに決まってますっ!!」


 心地よい音が響く。
 頬を打たれたマギカは信じられないような顔で、ナナを見つめていた。

「エ、エルンさんはそんな事しませんっ!」
「あなたはナナと言うんですよね。平民の癖に高貴なわたしに手を上げるだなんて……エレファント様の病気を治したの功績で呼ばれてる平民の癖に!」

「やぁ、エルン来てたみたいだね。どうやら、すれ違ったよう――――なんだい、この騒ぎは?」

 場違いな声が聞こえてきた。

「あらリュートごきげんよう」
「ご、ごきげんようってビショ濡れじゃないか。
 それに、珍しいなマギカまで居るだなんて。王都の空気は体に悪いからって言ってなかったか」
「リュート様っ! エルンさんがマギカにぶつかり水浸しに。
 そうしたら、この平民のナナって子がマギカを殴ってきて」
「殴ってません! 平手打ちですっ! それよりもエルンさんに謝ってくださいっ!」

 ほう、そうきましたか。

「リュートさんっ!!」
「リュート様っ!!」

 あらら詰め寄られているリュートが困った顔してるわね。
 見ようによっては両手には………っ。

「っくしょんっ! あら、失礼。くっしょん」
「っ! 直ぐに着替えるべきだ」

 リュートは私を見たかと思うと直ぐに視線を逸らした。
 私の肩に大きな衣服がかけられる。

「君は少し恥らったほうがいいな。着替えさせて貰え」
「あら……ありがとうディーオ先生」

 透けたドレスを上着で隠すと、溜め息を出している。
 まぁこの状況だったら出るわよね。
 後の事は任せた! と視線で送り私は着替えの為に別室へと向かう事になった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい

春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。 そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか? 婚約者が不貞をしたのは私のせいで、 婚約破棄を命じられたのも私のせいですって? うふふ。面白いことを仰いますわね。 ※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。 ※カクヨムにも投稿しています。

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒― 私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。 「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」 その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。 ※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

【完結】転生したら少女漫画の悪役令嬢でした〜アホ王子との婚約フラグを壊したら義理の兄に溺愛されました〜

まほりろ
恋愛
ムーンライトノベルズで日間総合1位、週間総合2位になった作品です。 【完結】「ディアーナ・フォークト! 貴様との婚約を破棄する!!」見目麗しい第二王子にそう言い渡されたとき、ディアーナは騎士団長の子息に取り押さえられ膝をついていた。王子の側近により読み上げられるディアーナの罪状。第二王子の腕の中で幸せそうに微笑むヒロインのユリア。悪役令嬢のディアーナはユリアに斬りかかり、義理の兄で第二王子の近衛隊のフリードに斬り殺される。 三日月杏奈は漫画好きの普通の女の子、バナナの皮で滑って転んで死んだ。享年二十歳。 目を覚ました杏奈は少女漫画「クリンゲル学園の天使」悪役令嬢ディアーナ・フォークト転生していた。破滅フラグを壊す為に義理の兄と仲良くしようとしたら溺愛されました。 私の事を大切にしてくれるお義兄様と仲良く暮らします。王子殿下私のことは放っておいてください。 ムーンライトノベルズにも投稿しています。 「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

夫から「余計なことをするな」と言われたので、後は自力で頑張ってください

今川幸乃
恋愛
アスカム公爵家の跡継ぎ、ベンの元に嫁入りしたアンナは、アスカム公爵から「息子を助けてやって欲しい」と頼まれていた。幼いころから政務についての教育を受けていたアンナはベンの手が回らないことや失敗をサポートするために様々な手助けを行っていた。 しかしベンは自分が何か失敗するたびにそれをアンナのせいだと思い込み、ついに「余計なことをするな」とアンナに宣言する。 ベンは周りの人がアンナばかりを称賛することにコンプレックスを抱えており、だんだん彼女を疎ましく思ってきていた。そしてアンナと違って何もしないクラリスという令嬢を愛するようになっていく。 しかしこれまでアンナがしていたことが全部ベンに回ってくると、次第にベンは首が回らなくなってくる。 最初は「これは何かの間違えだ」と思うベンだったが、次第にアンナのありがたみに気づき始めるのだった。 一方のアンナは空いた時間を楽しんでいたが、そこである出会いをする。

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜

川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。 前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。 恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。 だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。 そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。 「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」 レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。 実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。 女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。 過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。 二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

【完結】魔女令嬢はただ静かに生きていたいだけ

こな
恋愛
 公爵家の令嬢として傲慢に育った十歳の少女、エマ・ルソーネは、ちょっとした事故により前世の記憶を思い出し、今世が乙女ゲームの世界であることに気付く。しかも自分は、魔女の血を引く最低最悪の悪役令嬢だった。  待っているのはオールデスエンド。回避すべく動くも、何故だが攻略対象たちとの接点は増えるばかりで、あれよあれよという間に物語の筋書き通り、魔法研究機関に入所することになってしまう。  ひたすら静かに過ごすことに努めるエマを、研究所に集った癖のある者たちの脅威が襲う。日々の苦悩に、エマの胃痛はとどまる所を知らない……

転生ガチャで悪役令嬢になりました

みおな
恋愛
 前世で死んだと思ったら、乙女ゲームの中に転生してました。 なんていうのが、一般的だと思うのだけど。  気がついたら、神様の前に立っていました。 神様が言うには、転生先はガチャで決めるらしいです。  初めて聞きました、そんなこと。 で、なんで何度回しても、悪役令嬢としかでないんですか?

処理中です...