グラン王国の錬金術師 if 悪役錬金術師に転生してました!

えん水無月

文字の大きさ
上 下
23 / 209

23 忘れていたパーティー

しおりを挟む
 豪華なソファーと磨かれたテーブル。
 私はその豪華なソファーへと体を横にして寝そべっている。
 場所は自宅の応接室。

 最近はここに居る事が多い。
 別に自宅なんだし寝室に篭ってもいいんだけど、そうするとノエの顔があまり見れない。
 それに篭っていると、何度もノエが様子を見に来る。

 今日もノエの入れてくれた紅茶とクッキーを食べながら借りてきた本を読んでいる。
 題名は『錬金術とは』『初級レシピの教え』『ゼロから作る錬金料理』『錬金術と武器』などなど。

「おじょうさま新しい紅茶とクッキーです」
「ありがと」

 どの本も似たような事しか書いていない。
 石鹸の作り方や、パンケーキの作り方、蒸留水の作り方など。

「こう、もっと上級のレシピが乗った本ってないのかしらね、それともこの本を書いた人間って錬金術師として無能なのかしら、錬金術師って誰でもなれるのよね」
「え……」
「ん?」

 驚くノエの言葉に私が振り向くと、しまったという顔になっている。

「ノエ何か知ってるの?」
「い、いえ……」

 怪しい。

「ノエ何か……」

 カンカンカンカンカン。

 ドアノッカーの音だ。
 私が喋りだすと同時に、誰かの来訪を知らせる。
 ノエはどうしたらいいかキョロキョロする。

「ま、いいわ。行って来て」
「は、はいっ」

 小さな音を立てて玄関へと走っていく。
 そして戻ってくると慌てた顔で報告しに来た。

「お、おじょうさまっ!」
「誰だった? 新聞なら間に合ってるわよ」

 新聞というのは最近流行りだした物で、日本でいう新聞とはかなり違う。
 王都で起こった事やお得な情報を一枚の紙へまとめている奴だ。
 七日に一度ほど発行されている。

「いえ、あのカイン様がおむかえに来られています。ど、どうしましょう」
「え、なんで?」

 何の用事だろう、特に約束もない。
 とりあえず、通してというとノエはカインを連れてきた。
 赤毛の髪を整え何時もより緊張した顔で入ってくる。

「…………」
「…………何か喋りなさいよ!」
「……用意、出来てないのか?」

 用意、なんの用意だろう。
 特に採取の予定もないし、約束した覚えも……。
 あ……断ったけど城の昼食会?

「もしかして、城の昼食会の事? あれなら断ったよ」
「……何の話だ? この件で来た」

 カインは黙って私に一枚の招待状を見せる。
 どこかの家紋が入っていて、私も最近同じのを受け取った。

「あああああっ! リュートの奴っ あったわね……」

 そうだ、断り損ねた。
 というか、今の今まで存在を忘れてた、最初から行かないつもりだったし。

「いやでもなんで、カインが持ってるのよっ!」
「…………リュートの家の招待状は俺の家にも来る。後は父がエルンを迎えに行けと、その父がエルンは嫌がるだろうからしっかりエスコートしなさいと受けた」
「ああそう……」

 あの狸め……。
 私に誘いが来てたのを知っていて嘘の昼食会を誘ったわね。
 でも別に、私がリュートのホームパーティーに行くか行かないか、王様には関係ないと思うんだけど。
 うーん、うーん……。

「…………何か言ったか?」
「なにもよ?」

 ここで断ったら、カインの事だからありのまま言うでしょうね。

 エスコートしにいったけど、面倒だから断られたので帰って来たと王様に。
 そうなると、私の噂はどこからかもれて王族のエスコートを断った女として、悪評が増えるでしょうし。
 ああ、もうっ! 仕方がない、私は時計を見る。

「カイン、後何分?」
「…………移動込みで一時間半、移動は一時間という所だ」
「って事は三十分ね。ノエ着替えるから手伝ってくれる? カインは適当に待っていて、そのクッキーでも食べてて」
「はいっ!」

 ノエが大きく返事をして私の後ろについてきた。


 ◇◇◇


 ぴったり三十分かけて用意を終えた。
 黒ベースで派手すぎないハーフドレスに身を包む。

 客間で待っていたカインは私を見て驚いた顔をしている。
 孫にも衣装って所でしょうね。

「何?」
「…………綺麗だと思って」
「そりゃどうも、じゃっノエ留守番よろしくね。後誰にでもお世辞言うと勘違いされるわよ」
「はいっ、言ってらっしゃいませ」
「…………俺は別に……」

 カインは何かもごもご言っているけど、良く聞こえない。
 待たせてある馬車に乗り込むと出発した。
 馬車の中は二人っきりだ。

「…………これを、もったほうがいい」

 円形の筒を私へと手渡した。
 見た事がある、ミニボムLV1で黒煙を撒き散らす爆弾だ。
 殺傷能力はないが、過去にこれで衣服と顔中を黒くされた。

「なにこれ」
「ミニボムLV1だ」
「知ってるわよ」
「…………君は大人びているが、女性だ。
 万が一の場合があるし、その……不意をついて逃げる用にと」
「ありがとう」
「っ」

 私は素直にお礼を言う。
 心配してくれるのは嬉しい、だた女だからってのはどうかと思うが。
 日本と違い、そういうのは仕方がない。
 それに実際そうだから、反論してもね。

「顔が赤いわよ? 馬車酔いしたのなら止めてもらうけど」
「大丈夫だ」
「ならいいけど……」

 貴族の馬車というのはどうも遅い。
 揺れを最小限に抑えるためとは言えしょうがないんだろうけど、それでも揺れるのは揺れる。

「で、何のパーティーだっけ?」
「…………エレファント様の快気祝いをかねてのパーティーだ」
「リュートの母親よね、じゃぁ、挨拶聞いて直ぐ帰れるわね」
「………………」
「何よ、言いたい事あるならいってくれた方が助かるんだけど」
「…………少なからず交流会もかねてる……貴族のパーティーの出席は?」
「自慢じゃないけど無いわ!」

 あるのは、日本にいた時に知り合いに強制的に連れて行かれた結活パーティーぐらいだ。
 似たようなもんでしょう。

「あ、あれ」

 私は馬車の中から外を見ていると、見知った人物を二人見かけた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい

春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。 そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか? 婚約者が不貞をしたのは私のせいで、 婚約破棄を命じられたのも私のせいですって? うふふ。面白いことを仰いますわね。 ※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。 ※カクヨムにも投稿しています。

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒― 私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。 「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」 その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。 ※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜

川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。 前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。 恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。 だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。 そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。 「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」 レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。 実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。 女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。 過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。 二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

【完結】婚約破棄されたので田舎に引きこもったら、冷酷宰相に執着されました

21時完結
恋愛
王太子の婚約者だった侯爵令嬢エリシアは、突然婚約破棄を言い渡された。 理由は「平凡すぎて、未来の王妃には相応しくない」から。 (……ええ、そうでしょうね。私もそう思います) 王太子は社交的な女性が好みで、私はひたすら目立たないように生きてきた。 当然、愛されるはずもなく――むしろ、やっと自由になれたとホッとするくらい。 「王都なんてもう嫌。田舎に引きこもります!」 貴族社会とも縁を切り、静かに暮らそうと田舎の領地へ向かった。 だけど―― 「こんなところに隠れるとは、随分と手こずらせてくれたな」 突然、冷酷無慈悲と噂される宰相レオンハルト公爵が目の前に現れた!? 彼は王国の実質的な支配者とも言われる、権力者中の権力者。 そんな人が、なぜか私に執着し、どこまでも追いかけてくる。 「……あの、何かご用でしょうか?」 「決まっている。お前を迎えに来た」 ――え? どういうこと? 「王太子は無能だな。手放すべきではないものを、手放した」 「……?」 「だから、その代わりに 私がもらう ことにした」 (いや、意味がわかりません!!) 婚約破棄されて平穏に暮らすはずが、 なぜか 冷酷宰相に執着されて逃げられません!?

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

【完結】転生したら少女漫画の悪役令嬢でした〜アホ王子との婚約フラグを壊したら義理の兄に溺愛されました〜

まほりろ
恋愛
ムーンライトノベルズで日間総合1位、週間総合2位になった作品です。 【完結】「ディアーナ・フォークト! 貴様との婚約を破棄する!!」見目麗しい第二王子にそう言い渡されたとき、ディアーナは騎士団長の子息に取り押さえられ膝をついていた。王子の側近により読み上げられるディアーナの罪状。第二王子の腕の中で幸せそうに微笑むヒロインのユリア。悪役令嬢のディアーナはユリアに斬りかかり、義理の兄で第二王子の近衛隊のフリードに斬り殺される。 三日月杏奈は漫画好きの普通の女の子、バナナの皮で滑って転んで死んだ。享年二十歳。 目を覚ました杏奈は少女漫画「クリンゲル学園の天使」悪役令嬢ディアーナ・フォークト転生していた。破滅フラグを壊す為に義理の兄と仲良くしようとしたら溺愛されました。 私の事を大切にしてくれるお義兄様と仲良く暮らします。王子殿下私のことは放っておいてください。 ムーンライトノベルズにも投稿しています。 「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

唯一平民の悪役令嬢は吸血鬼な従者がお気に入りなのである。

彩世幻夜
ファンタジー
※ 2019年ファンタジー小説大賞 148 位! 読者の皆様、ありがとうございました! 裕福な商家の生まれながら身分は平民の悪役令嬢に転生したアンリが、ユニークスキル「クリエイト」を駆使してシナリオ改変に挑む、恋と冒険から始まる成り上がりの物語。 ※2019年10月23日 完結

処理中です...