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13 図書室へいこう!

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 死刑は免れた。
 当然といえば当然、だって取り返しのつかない悪い事まだしてしてないもん。
 帰宅したのが日付が変わるちょっと前、ノエが出迎えてくれた。

「やだ、まだ寝てなかったのっ?」
「おじょうさまが帰るまでおきて……よ……」

 私に抱きつくような姿勢で、ノエは寝てしまった。
 ノエの部屋まで運ぼうと思ったが鍵がかかっていた。
 鍵を開けてまで部屋に入る気にはなれず、ノエを私のベッドに寝かす。

 私も着替えるとすぐに同じベッドへと入った。
 豪華なベッドは大人二人ぐらい余裕だ。
 寝ているノエに背後から抱きつく。
 昔を思い出して気持ちいい、弟が中学に入るまでこうして寝ていた気がする。
 もっとも、中学に入る時に弟の提案で部屋が分かれた、お姉ちゃんは悲しくて泣いたよ。

 翌朝目が覚めるとノエの姿はベッドになかった。
 物凄く謝られたが、私は手の平を向ける事で制止する。
 私が運んだし謝られても困るし。

 ノエが作ってくれた料理を食べ、今日の予定を考える。
 昨日の今日で、錬金術師を辞めるという選択肢はなくなった。
 王から頑張れと言われて、返事した翌日に、錬金術師をやめまーすは無いだろう。

 少しかじってみるのもいいかもしれない。
 少なくとも卒業ぐらいは視野に入れるべきか……。

「ノエ、お昼頃に馬車の用意をおねがい」
「は、はいっ!」

 ◇◇◇

 部屋の主は不機嫌そうに私を見る。
 鼠色の髪を掻き乱して溜め息をついている。

「で、なんでボクの所なんだ」
「いや、他に知り合いいないし」

 ディーオは食べかけのお弁当を置くと、私に向き直った。
 場所は学園にある教師の個室。
 受付に聞いたら、この時間はそこにいるかもと教えてくれたので訪ねたのだ。
 あと、ノエは本来は学園内は入ったらダメらしく、先に帰ってもらった。

「錬金術師になれって言われたけど、具体的に何をどうしたらいいかわからなくて」
「具体的な事は特にない」
「んんん? じゃぁ錬金術師ってなんなのよ」
「身近な物から便利な物を作るのに優れた人間、もしくは、身近な物から便利な物を作れる知識をもった人間と言うべきだろう」

 意味がわからない。
 それだったら誰でも錬金術師と名乗っていいんじゃ?

「誰でも錬金術師を名乗れる、そう思ったって顔してるな」
「別にしてませんしー」
「あながち間違いではない。だからこそ本物の錬金術師を、国は求めてる」
「わかった様なわからないような……」
「知識だけなら図書室へでもいけ」

 ていよく追い出されたので、図書室に行く事になった。
 受付で場所を聞いて向かう。
 誰も居ない大きな図書室。
 本棚が数十あり、本の数でいえば数万冊はあるだろう。

「誰も居ないわね……」

 無用心すぎる、受付からは司書がいるから後はその人に聞いてくれと、涙目で言われた。
 あの受付、別に苛めてないのに私に対していつも涙目なのよね。

「ん? これって『御用の方はハンドベルを鳴らしてください』か……ベルはこれね」

 チリン。

 チリン。

 チリリン。

 小さい音を奏でると、図書室の奥から人が走ってきた。
 緑の髪の小さい男の子。
 手には分厚そうな本を持っている。

「はいはいはーい。お待たせしましたっ」
「ええっと、子供?」
「子供です! 見た目の通り十一歳です! でも司書のフェルです!」
「そ、そう……」
「おねーさんなんの用ですか?」
「錬金科の生徒なんだけど、錬金術の本を見たくて」

 学生の証であるカードを見せると、下から笑みを向けてくる。
 可愛い、ナナとは違った可愛さでヌイグルミに近い。

「わっかりました! 棚は三十二番です! 図書室では騒がないようにお願いしますっ!」

 大きい声でペコリと頭を下げるフェル君。
 ちょっと、と問いかける前に、走って奥へと行くと見えなくなってしまった。

「いいのかしらあれで……」

 私は三十二番の棚へと歩く。
 初めての錬金術師、錬金術師とは、錬金術中級編、別冊実は怖い錬金術師などパラパラとページをめくっては棚へと戻す。

 どの本も、簡単なレシピしか書かれていてない。
 石鹸(せっけん)や蒸留ワイン、毒草と薬草の扱い方など。

 一冊だけボロボロの本があった、とても貴重そうで私はどきどきしながら棚から取り出す。
 真っ黒なカバーで裏表紙には貸し出し厳禁と書かれている。
 全体から何か黒いもやみたいのがあふれ出てるようにも見えた。
 とても凄い事が書かれているのかもしれない。
 ページをめくる。

 一ページ目には裸の女性が書いてあった。

 二ページ目も開く、ネコのポーズをした裸の女性の絵が描かれている。 

 三ページ……四ページ、どのページにも女性の裸の絵が描かれていた。
 私は本を床に叩き付ける。

「ったく、思わせぶりな所に置くんじゃないっ!」

 男ってこういうの好きよねぇ……。
 パタパタと子供の走る音が聞こえると、さっきのフェル君が私の前へと来た。

「おねーさん、図書室は静にお願いしますっ! 本を大切にっ!」
「ご、ごめんね」

 私が叩き付けた本を拾うと、手で埃を払って棚に戻そうとする。でも身長が低いから元の場所には届かない。
 私は司書の体を持ち上げる。

「おねーさん、ありがとうございますっ!」
「いいえ、フェル君この棚以外に錬金術の本はないの?」
「あると思うんですけどすけど……整理が出来てなくて、すみませんっ!」
「「…………」」
「あのっ!」
「なに?」
「降ろしてくださいです!」

 やっぱりか。
 小さくで可愛くてずっと抱っこしておきたかった。
 ゆっくりと降ろすと、こっちです! とパタパタと走る。
 私は付いていくと、地下室へと降りた。
 
 本が無造作に置かれている、その数数百冊、数千冊はあるかもしれない。
 ご自由に見てくださいと言われた。
 
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