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07 ずぼらすぎる彼女

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 日も変わり私はノエが呼んでくれた馬車に乗り込む。
 ガチガチに緊張したノエとの二人乗りだ。
 昨日も思ったんだけど、一人で外に行こうとすると全力で止められた。

 私は子供かっ!。

 いや、子供なんだけどさ……。
 勝手に出てあるいて何かあったら困るもんね、数日であるが王都で自由に動いていたのはリュートが隣に居たおかげらしい。
 腐っても、腐ってはいないけど王立騎士、かっこ見習いだ。
 彼が護衛にいれば外出も平気だったのだろう。

 まぁ過保護すぎよね。

 窓から見える景色が高級な建物から、そうでない建物へと段々と変わっていく。
 通行人も増え始め、こちらの馬車を物珍しそうに見ているのがわかる。

 大きな扉のついた二階建ての建物の前で馬車は止まる。

「どうやら着いたみたいね」
「聞いてきますのでおまちくださいっ!」

 元気良く出て行くと、直ぐに戻ってきた。
 上品そうな御者と一緒に戻ってきた、どうやら合ってるらしい。
 帰りはどうするか? と聞かれて何時までかかるかわからないので馬車には先に帰ってもらった。

「じゃぁノエ、一応夕方までここにいるからその時に一度様子を見に来て、それまでは実家で休んできなさい」
「あの……本当によろしいのでしょうか?」

 ノエは不安顔で聞いてくる。
 いいも悪いも雇い主がいいって言っているんだらと言うと慌てて謝ってくる。
 それに、私も少し羽を伸ばしたい、仕事の依頼が早く終わればこの近所を散歩しよう。
 何度も振り返るノエを見送ると、私はドアノッカーを数度叩く。

 わかるように手には紹介状を持ち、扉が開くのを待つ。
 扉の向こうから人の気配と足音が聞こえると、直ぐに扉が開いた。

「はい、ナナの工房です! 御用のほうなんで……しょう……」

 最後まで言葉が出ないまま私を見ている。
 私も、ナナの顔をまじまじとみるしかない。
 身長は百五十ぐらいだろう、可愛い顔で、耳が隠れるほどのショートの金髪。
 目は大きくで小さなリスみたいな可愛さだ。

 『ナナの錬金術師』の主人公で、なんにでもなれる才能をもった子。

 一方私のほうも何て言っていいか言葉が出ない。
 振り絞って声を出す。

「げ、元気かしら?」
「は、はい」
「「…………」」

 どういうつもりが知らないけど、あのディーオはナナの工房を推薦して来た。
 私への嫌がらせかっ! いや、この子の嫌がらせ?

「あの、ご用件はなんで……あ、紹介状……」

 ナナは私が握っている紙を見て、
「工房を使いたいってエルンさんだったんですね……」
 と、落ちこんだ顔になった。

「別に、嫌だったらいいわよ」
「え?」

 私としても、ナナに借りる事もない。
 パパには悪いけど、『もっと魔よけの香』は諦めて貰おう。
 一瞬笑顔になったナナは頭を振って私を見た。

「いえ、どうぞ」
「いいの? 私の事嫌いなんでしょ?」
「はい、ディーオ先生からの試練と思います。
 ここで工房を続ける以上嫌な相手でも仕事は請けないと思いますし、あっあのエルンさんが嫌ってわけじゃ無くてですねっ」

 なるほど、天然な所あるわね。

「別にいいわよ、無理して好きにならなくても。
 じゃぁお邪魔するわね」
「ど、どうぞ」

 住居兼工房へと足を踏み入れる。
 ゲームの世界と同じで一階は大きな釜が置かれていて奥には階段が見える。
 二階が移住スペースだろう。
 棚には様々な器具が並ぶはずなんだけど今は何も無い。

「適当に座ってください」
「ナナ」
「なんでしょう」
「この工房に住んで何日目?」
「え? ええっと十日目ぐらいでしょうか」
「座る場所ないじゃない」

 足の踏み場も無いとはこの事だ。
 衣服にカゴ、色の変わった草や空き瓶などが散乱している。
 座れといわれても椅子すらない。

 そういえばゲームのナナも掃除が苦手だったわね。
 はいよるゴミ箱や、精霊ちゃんにお金払って部屋を掃除してもらっていたっけ。

「ええっとええっと……、この服を退けるとですね。ご覧の通り椅子が出てきて」
「カゴよね」
「そ、そうでした。カゴの下に椅子があるんです!」

 ナナは中身の詰まったカゴを持ち上げる。
 カゴの隙間から何やら液体が染みでておりナナは慌てて手を離す。
 落下した表紙にカゴの中身が飛び散り、私の顔や衣服に謎の液体がかかった。

「わああああ、すみませんっ! だ、大丈夫です。
 ぽよぽよ液なはずなので大丈夫です!」

 何が大丈夫なのか教えて欲しい。
 慌てるナナは何かを踏んだ。
 部屋の中が一瞬光で輝いた。

 気づいたらナナの顔は真っ黒になっており、私の衣服も黒くなっている。

「これは?」
「す、すみませんミニボムを踏んだらしく……」

 ミニボム、爆発石と炭を混ぜた小型の爆弾。
 錬金術レベルが低くても作れて学園でそこそこ買い取ってくれる。
 今なら言える。
 売ったらだめだし、買い取る学園もだめでしょ。

「すすみままませんん」

 そういうナナは何かにつまづき盛大に転ぶ。
 グシャっと嫌な音がなる。
 起き上がるナナの服には、大量の卵が潰れていた。
 ああ、初めて学園であった時もこの子転んでいたっけ……。

「ナナ」
「はい……あの、わざとじゃないんです」

 わざとじゃなければいいってわけじゃない。と言いたいけど、過去の自分が居るので言い掛けて辞めた。

「掃除よ」

 私の提案に、さっきよりも表情を曇らせる。
 目なんて泣きそうだ。

「その、あの、掃除しなくても人って生きていけると思いませんか?」
「手伝うから掃除しましょう」
「あ、そうだ! エルンさんって大貴族なんですよね、その人に掃除を手伝わせるわけには……」
「いいから、代えの服と水受け、それと雑巾はどこ」

 きつめの私の言葉に下を向くナナ。
 その声が小さい。

「ないん…………です……」
「無いって掃除道具が?」
「いえ、全部……」

 話を聞いてみると、服の予備も無かった。
 詳しく聞くと昔から掃除は得意じゃないらしく、特にいまは学園に入った手前掃除よりも錬金術が楽しくてしょうがない。
 そうなると、採取しに行く事が多くなり衣服も汚れる。
 どうせ汚れるし洗濯する暇があるなら採取してと、今日も工房を借りるっても釜があれば大丈夫だろうと思っていたと。
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