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第二章 神と人と
第二幕 準備期間その二
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sideケーマ
あれから更に時間が経ちついにマールの出産予定日がいよいよ近づいてきた。
「事前の準備は考えられるだけ済ませたし、病院の設立に医師の育成は時間が足りないのは仕方ない、まだ一年経って無いしな。それでもどうにかなるように俺がいた世界の医学とこの世界の魔法を駆使すれば、神医を量産する事は可能なはずだ。」
俺は自分が駆使した裏技を思い返す。
「生存率が上がるのは良いことだ。だが、人が増える事によって出てくる問題も存在する。その問題をどうするか、そこが悩みどころだな。」
俺が悩んでいるのは、自分がいた世界でも問題になっていたエネルギー問題や雇用の問題、環境問題について考える。
「エネルギー問題に関しては、魔力というモノがある以上起こりようがない問題に見えるが、どこぞのゲームみたいに大量破壊兵器を造って魔力を過剰消費したらどうなるかわからんな。」
そう初代Tのゲームのようにレーザー一発ぶっぱなすだけで世界の寿命が減っていく兵器の存在を彼は想定している。
「神の眼なんてそこまで万能ではない、なら最初から兵器の取り扱いに関する取り決めを王族や貴族どもに教えておくか?」
地上にレーザーを放って空に大地を作るという考えに逆に行き着いてしまう可能性がある為にこの案は保留にする。
「結局、どの問題もなにかしらのリスクが存在しているな~、とりあえず今現在の問題である人種差別と異世界召喚か・・・」
そう呟く彼の眼は鋭い、おまけに相当面白くないのだろう、魔力が少し漏れている。
すると、
「ケーマ殿、先程から魔力が漏れてますが、何かありましたか?」
いつの間にか、俺の横をレミィの父で龍人族の族長、そしてこの龍の街の街長を勤めるヴォルグ殿が隣を歩いていた。
「すみません、少々先の事を考えてました。」
そう、何故か敬語になるくらいに今俺は揺れている。
「そこまで、動揺せんとも大丈夫じゃよ」
苦笑しながら、族長殿に宥められながら俺は新設した産婦人科の病棟に足を踏み入れる。
前の世界のこういった産婦人科等の病室は男が入れない場所もあって女性用の通路なんかもあった。
そういう所も全部参考にして作ったが、女性陣の評価は概ね好評で、そこら辺に対する理解が低い男性陣からの評価が低いっと言った形になっている。
そして、医者の育成にはとびっきりの反則技を使ってバーチャルトレーニングルームを病院と産婦人科の病棟と、まだ建設途中ではあるが小児科の病棟、計3つの建物の地下にスキルを駆使して造ってしまったバーチャルトレーニングルームが存在している。
しかもこのバーチャルトレーニングルーム、今回は学ぶ対象が主に医学であった為専用のゴーグルと手袋を着用して訓練をするんだけど、五感があるんだよね・・・困った事に・・・
だから医者志望の人達はかなりいたのだけれど、この手術する時の血の匂いとか内臓とかがダメで脱落した人がかなりいる。
その為に医師として訓練に継続してやりたいという人は三十人程しかいない。
「ここら辺の育成もこれからの課題か」
俺は産婦人科の病棟の中の様子を見ながら、マールがいる病室に一人で行く。
族長殿は一人、出産室の前で待っている。
出産直前は旦那しか会えない事になっている。
「入るぞ?マール、体調の方は大丈夫か?」
移動する事が出来るベッドの上に身を起こしているマールに声をかける。
「ケーマ!ええ、体調はかなりいいわ。」
嬉しそうに顔をこちらに向けてベッドの上に身を起こしているけどがいた。
「もうそろそろ、横になっていた方がいいと思うぞ?」
出産前のあれがそろそろくるはずである。
「うっ、やっぱり痛いのかな?」
やっぱり落ち着かないようだ。
「同じ龍人族の女たちに話を聞いているのだろう?俺もスキルを使って調べているからその辺りは普通の人族と変わらないようだしな。」
俺がそう遠回しに諦めて横になるように告げる。
「う~、はぁ~い」
渋々、本当に渋々とベッドを動かしてゆっくりと横になるマール。
「不安になるのはわかるけど、何かあっても全部俺がどうにかしてやるから、だから信じてくれ!お前とこれから生まれてくる子の安全は絶対だから!」
俺はマールを安心させる為に、そう言ってキスをする。
「んっ、わかった。」
嬉しそうにはにかんだ表情でマールは頷いた。
話が一段落した瞬間、それは来た。
「うっ、くぅぅぅっ!?」
マールが急にうめきだした。
「始まったか!」
俺はすぐさま、ベッドの横にあるスイッチ、ナースコールを使い医師の皆さんを呼ぶ。
何故看護師がいないかと言うと、そちらの教育は間に合わなかったのだ。
主に医者のサポートをこなす看護師は必要だと思うのだが、医者を育てるだけで時間的に手一杯でそちらの方に手が回らなかったのだ。
だが、既に医者としては彼らは実績をあげていて、特に今回の医者達は全員女性だ。
「よし、俺もサポートに回るから頼むぞ!」
「お任せください!」
静かに俺にそう返した女性、彼女の強い覚悟と決意の眼を見て頷く。
「あぁ、信用してるからなウリスラ!」
そうして、陣痛に苛まれるマールと一緒に出産室に俺は入っていった。
結論から言うと、無事子供を生むことが出来た。
約二時間の長丁場だったが、最終的には帝王切開をして終わったら俺が回復魔法で切った跡が残らないように綺麗に塞いだ。
生まれて来た子は女の子で、マールと二人で話あったが女の子だと俺が名前を考えて、男の子だとマールが考えると言う話になっていた。
そうして今、俺はこの子の名前をみんなに伝える。
「ソラって名前にしようかなって思うんだ。」
俺はマールの横で、この子の顔を見ながらそう告げた。
「どうしてその名前にしたの?」
幸せそうにマールが俺に問う。
「スケールがデカイ子になって欲しいからかな、後は大空のように器の広い子になって欲しい、天気や季節のように表情豊かな子になって欲しいそう言う気持ちを込めてシンプルにソラって名前にした。まぁこっちでの意味とかじゃなくて向こうの意味で名前を決めたから若干浮いてしまうかも知れないが」
この子の名前はこれがいい、そう言ったらマールが、
「ふふっ、いい名前だと思うわよ、ね?ソラ?」
まだ目も開かないソラにそう語りかけた。
「そうね、何回か話を聞いているけれどケーマの故郷の考え方って素敵よね。」
レミィが族長殿と一緒にソラを撫でる。
「うむ、確か神道という宗教の考え方だったか?」
そう同意しながら、娘同然のマールが生んだソラを爺バカの表情で撫でる。
「八百万の神、この世界の全てが神様の欠片で出来ているっていう考え方でしたっけ?」
マールもその話に乗る。
「あぁ、どんなモノにも神様は宿り見守ってくれてますよっていう考え方だな、宗教までいくとどこまでディープな考えなのかわからないけどな、ただ俺は八百万の神って考え方が好きなんだよ。命は等しく平等であるっていう考え方がな。」
優しい顔しながらレミィと族長殿がソラを撫でているのを見ていると、
「申し訳ありません、そろそろお時間です。」
先程の出産に立ち会った医者の一人であるウリスラが病室に入ってくる。
「あぁわかった、今日はありがとうウリスラ、お前のおかげで無事、ソラと会うことが出来た。」
病室から出た所でウリスラにそう言うと、
「ケーマさんは後、何人いると思っているんですか?私達にこのような知識と技術を与えてくださった恩人に報いるのは当然です!」
彼女は俺が神だと知っても今のままだ。
「私がマール姉の出産に立ち会えた事に感謝はする事があってもお礼は平気です!」
そう言ってくる彼女の頭を俺はつい撫でてしまった。
「それでも、だよ。ウリスラがいたから安全に出産出来たんだ、お礼を言うのは当然だろう?」
そう言って顔を覗き込むと、
「ありっ?」
ウリスラがなんとも言えない表情をしていた。
「・・・はっ!?と、とにかくもう夜も遅くていい時間ですから!族長様とレミィちゃんを連れて帰ってください!」
先程の表情をなかった事にして、静かに俺たちは追い出された。
「さっきのあれなんだったんだ?」
俺がそうレミィに聞くと、
「知らな~い、そういうのは本人に聞くものだよ、ケーマ。」
レミィは呆れ顔で家に向かって歩いて行った。
「まぁ、何はともあれ、ご苦労様だなケーマ殿。」
そう言いながら族長殿は俺の肩を叩く。
「今日は少し飲みましょうか、レミィを送ったらそちらに伺いますよ。」
俺の態度に族長殿は、
「もっと軽い感じでいいのじゃぞ?」
「全員の出産が終わるまで勘弁してください。」
そうして俺たち新たな命の誕生に立ち会い、この日の帰路についた。
sideマール
ついに来てしまった出産予定日。
ケーマがみんなの為に、私達の為に育てられた医師の一人でエルの妹分であるウリスラがいる。
「マール姉、体調の方はどう?」
私が病院と産婦人科を設立してから第一号の妊婦だ。
「平気よ、体調はかなりいいわ。」
だからって訳ではないが、昨日からかなり緊張している。
「初めてだから仕方ないかも知れないけど、あまり力み過ぎないようにね。」
手慣れた手つきでしっかりと私の体を診察していくウリスラ。
でも、私は見逃さなかった。
「ウリスラもね、目の下にクマができてるわよ?」
ピタッと止まったウリスラを見ながら、ウリスラはゆっくりとこちらを見て、
「マール姉にはかなわないなぁ~」
と苦笑いをした。
「ケーマさんの予想だと午後に入ってから始まると予想されているので、それまではゆっくりとしててください。なんなら私が話し相手になってもいいですし。」
それを聞いた私はここ最近の気になる事をウリスラに聞く。
「最近ケーマとは、どんな感じなのかしら?」
我ながら意地悪な顔をしていると思う。
顔を真っ赤にして固まってしまったウリスラを見て、
「このまま私達がかまわないって思っている事を伝えたらどうなるのかしら?」
と更に言うと、
「うぇぇぇぇ!?い、いきなり過ぎます!?い、今は他のみんなの赤ちゃんの出産があるのだから無理ですよう!?」
わたわたっと、動揺するウリスラの声が聞こえたのか、他の医師達が来て、
「ウリスラ?どうしたの?」
「な、何でもない!」
そこで私は爆弾を落とす。
「最近のうちの人とウリスラについて聞いて見たの(ニコニコ)」
「あ~、ついにその答えが聞ける時が来たか!」
すると、他の医師達が来て、全員女性だからか、
「さぁ~、ウリスラちゃん年貢の納め時よ~?」
「我慢しないで、お姉さん達に打ち明けなさい?」
「夜の勝負に持っていくまでの手解きをしてあげる(ハート)」
「そしてウリスラちゃんの赤ちゃんを私達が担当するの!」
もはや収拾は不可能となった。
「ふぇぇぇぇぇぇ!?」
アワアワするウリスラを眺めながら私はあの人が来るのを待つ。
みんなが一通りウリスラを弄って満足して戻った直後にケーマが来た。
「調子はどうだ?」
この人も大分緊張している。
まぁ私も人の事を言えないけど、
「名前決まった?」
診断によるとどうやら女の子らしいので、ケーマが名前を決めることにした。
「ソラって名前にしようと思うんだ。」
そうして外を指さす。
気持ちのいい青空が広がっていた。
「男の子だった時の名前は考えたか?」
「ええ、マークにしようって考えてたの。」
「ひょっとして俺たちの名前から?」
「うん、私とあなたの子だから」
嬉しそうに優しく私を抱きしめた。
「ありがとう。」
キスをしながらお礼言う彼に私も返した。
「ありがとう、ケーマ。私にこの子を産ませてくれて」
そうして見つめあってる時にそれは来た。
「うっ、くぅぅぅっ!」
ちょっ!?聞いてたのより洒落にならないんですけど!
ケーマがナースコールを使って医師のみんなを呼んで私は出産室にベッドごと連れていかれた。
その後はあまりよく覚えていない。
とりあえずめちゃくちゃって言葉が易しいくらいに痛かった事ぐらいしか・・・
その後、叔父様とレミィ、ケーマにソラと顔合わせをしてから赤ちゃんに母乳をあげて私は横になった。
sideケーマ
あれから更に半年、あっという間に過ぎて行った。
全員の出産を四苦八苦しながら無事に終えて、今は子供たちも含めて全員家にいる。
彼女達も母親になったせいか食欲がかなり旺盛になった。
後は変わった変化というと、全員の出産が終わって少ししたらウリスラから告白を受けた。
皆は事前に知っていたのか、先に手回しされる始末。
その為、俺とウリスラは一緒に街を回ったりとデートを数回こなした結果、まぁそういう事になりました。
彼女はエルやマールのように格闘戦が得意ではないらしいのだけれど、これが魔法を使わせだすと龍人族の中でも族長殿よりも強いとレミィ達三人は口をそろえて言う。
狩猟の女神としての性質を持つリーヴァはともかく知識と魔法の探求を司るイリスは、ウリスラを見て一目で気に入る程の才能の持ち主みたいだ。
まぁそんな感じにフルコースのデートをこなして彼女の事を知った上に、彼女の気持ちを聞いて、周りからの後押しもあり・・・彼女も俺たちと一緒に住む事になりました。
そうなると家族が一気に増えた影響で家が狭いと思われたので屋敷を作りました。
スキルの力を自重せずに1日で終わらせたら、ウリスラも含めた全員からやり過ぎとお叱りを受けました。
まぁ豪邸どころの話ではないからな。
もちろん例によって祭りもありました、喧嘩祭りではないけど。
とりあえず今は赤ちゃんの面倒もあるので、夜の生活はウリスラを中心にみんなでローテーションを組んで俺の寝込みを襲うスタイルに変更した模様。
私達の事をいつでも押し倒していいんですよ?ってみんなから言われました。
そんな事があったが、そろそろ準備を整えてみんなと相談しながら他の大陸の調査に行く予定だ。
あれから更に時間が経ちついにマールの出産予定日がいよいよ近づいてきた。
「事前の準備は考えられるだけ済ませたし、病院の設立に医師の育成は時間が足りないのは仕方ない、まだ一年経って無いしな。それでもどうにかなるように俺がいた世界の医学とこの世界の魔法を駆使すれば、神医を量産する事は可能なはずだ。」
俺は自分が駆使した裏技を思い返す。
「生存率が上がるのは良いことだ。だが、人が増える事によって出てくる問題も存在する。その問題をどうするか、そこが悩みどころだな。」
俺が悩んでいるのは、自分がいた世界でも問題になっていたエネルギー問題や雇用の問題、環境問題について考える。
「エネルギー問題に関しては、魔力というモノがある以上起こりようがない問題に見えるが、どこぞのゲームみたいに大量破壊兵器を造って魔力を過剰消費したらどうなるかわからんな。」
そう初代Tのゲームのようにレーザー一発ぶっぱなすだけで世界の寿命が減っていく兵器の存在を彼は想定している。
「神の眼なんてそこまで万能ではない、なら最初から兵器の取り扱いに関する取り決めを王族や貴族どもに教えておくか?」
地上にレーザーを放って空に大地を作るという考えに逆に行き着いてしまう可能性がある為にこの案は保留にする。
「結局、どの問題もなにかしらのリスクが存在しているな~、とりあえず今現在の問題である人種差別と異世界召喚か・・・」
そう呟く彼の眼は鋭い、おまけに相当面白くないのだろう、魔力が少し漏れている。
すると、
「ケーマ殿、先程から魔力が漏れてますが、何かありましたか?」
いつの間にか、俺の横をレミィの父で龍人族の族長、そしてこの龍の街の街長を勤めるヴォルグ殿が隣を歩いていた。
「すみません、少々先の事を考えてました。」
そう、何故か敬語になるくらいに今俺は揺れている。
「そこまで、動揺せんとも大丈夫じゃよ」
苦笑しながら、族長殿に宥められながら俺は新設した産婦人科の病棟に足を踏み入れる。
前の世界のこういった産婦人科等の病室は男が入れない場所もあって女性用の通路なんかもあった。
そういう所も全部参考にして作ったが、女性陣の評価は概ね好評で、そこら辺に対する理解が低い男性陣からの評価が低いっと言った形になっている。
そして、医者の育成にはとびっきりの反則技を使ってバーチャルトレーニングルームを病院と産婦人科の病棟と、まだ建設途中ではあるが小児科の病棟、計3つの建物の地下にスキルを駆使して造ってしまったバーチャルトレーニングルームが存在している。
しかもこのバーチャルトレーニングルーム、今回は学ぶ対象が主に医学であった為専用のゴーグルと手袋を着用して訓練をするんだけど、五感があるんだよね・・・困った事に・・・
だから医者志望の人達はかなりいたのだけれど、この手術する時の血の匂いとか内臓とかがダメで脱落した人がかなりいる。
その為に医師として訓練に継続してやりたいという人は三十人程しかいない。
「ここら辺の育成もこれからの課題か」
俺は産婦人科の病棟の中の様子を見ながら、マールがいる病室に一人で行く。
族長殿は一人、出産室の前で待っている。
出産直前は旦那しか会えない事になっている。
「入るぞ?マール、体調の方は大丈夫か?」
移動する事が出来るベッドの上に身を起こしているマールに声をかける。
「ケーマ!ええ、体調はかなりいいわ。」
嬉しそうに顔をこちらに向けてベッドの上に身を起こしているけどがいた。
「もうそろそろ、横になっていた方がいいと思うぞ?」
出産前のあれがそろそろくるはずである。
「うっ、やっぱり痛いのかな?」
やっぱり落ち着かないようだ。
「同じ龍人族の女たちに話を聞いているのだろう?俺もスキルを使って調べているからその辺りは普通の人族と変わらないようだしな。」
俺がそう遠回しに諦めて横になるように告げる。
「う~、はぁ~い」
渋々、本当に渋々とベッドを動かしてゆっくりと横になるマール。
「不安になるのはわかるけど、何かあっても全部俺がどうにかしてやるから、だから信じてくれ!お前とこれから生まれてくる子の安全は絶対だから!」
俺はマールを安心させる為に、そう言ってキスをする。
「んっ、わかった。」
嬉しそうにはにかんだ表情でマールは頷いた。
話が一段落した瞬間、それは来た。
「うっ、くぅぅぅっ!?」
マールが急にうめきだした。
「始まったか!」
俺はすぐさま、ベッドの横にあるスイッチ、ナースコールを使い医師の皆さんを呼ぶ。
何故看護師がいないかと言うと、そちらの教育は間に合わなかったのだ。
主に医者のサポートをこなす看護師は必要だと思うのだが、医者を育てるだけで時間的に手一杯でそちらの方に手が回らなかったのだ。
だが、既に医者としては彼らは実績をあげていて、特に今回の医者達は全員女性だ。
「よし、俺もサポートに回るから頼むぞ!」
「お任せください!」
静かに俺にそう返した女性、彼女の強い覚悟と決意の眼を見て頷く。
「あぁ、信用してるからなウリスラ!」
そうして、陣痛に苛まれるマールと一緒に出産室に俺は入っていった。
結論から言うと、無事子供を生むことが出来た。
約二時間の長丁場だったが、最終的には帝王切開をして終わったら俺が回復魔法で切った跡が残らないように綺麗に塞いだ。
生まれて来た子は女の子で、マールと二人で話あったが女の子だと俺が名前を考えて、男の子だとマールが考えると言う話になっていた。
そうして今、俺はこの子の名前をみんなに伝える。
「ソラって名前にしようかなって思うんだ。」
俺はマールの横で、この子の顔を見ながらそう告げた。
「どうしてその名前にしたの?」
幸せそうにマールが俺に問う。
「スケールがデカイ子になって欲しいからかな、後は大空のように器の広い子になって欲しい、天気や季節のように表情豊かな子になって欲しいそう言う気持ちを込めてシンプルにソラって名前にした。まぁこっちでの意味とかじゃなくて向こうの意味で名前を決めたから若干浮いてしまうかも知れないが」
この子の名前はこれがいい、そう言ったらマールが、
「ふふっ、いい名前だと思うわよ、ね?ソラ?」
まだ目も開かないソラにそう語りかけた。
「そうね、何回か話を聞いているけれどケーマの故郷の考え方って素敵よね。」
レミィが族長殿と一緒にソラを撫でる。
「うむ、確か神道という宗教の考え方だったか?」
そう同意しながら、娘同然のマールが生んだソラを爺バカの表情で撫でる。
「八百万の神、この世界の全てが神様の欠片で出来ているっていう考え方でしたっけ?」
マールもその話に乗る。
「あぁ、どんなモノにも神様は宿り見守ってくれてますよっていう考え方だな、宗教までいくとどこまでディープな考えなのかわからないけどな、ただ俺は八百万の神って考え方が好きなんだよ。命は等しく平等であるっていう考え方がな。」
優しい顔しながらレミィと族長殿がソラを撫でているのを見ていると、
「申し訳ありません、そろそろお時間です。」
先程の出産に立ち会った医者の一人であるウリスラが病室に入ってくる。
「あぁわかった、今日はありがとうウリスラ、お前のおかげで無事、ソラと会うことが出来た。」
病室から出た所でウリスラにそう言うと、
「ケーマさんは後、何人いると思っているんですか?私達にこのような知識と技術を与えてくださった恩人に報いるのは当然です!」
彼女は俺が神だと知っても今のままだ。
「私がマール姉の出産に立ち会えた事に感謝はする事があってもお礼は平気です!」
そう言ってくる彼女の頭を俺はつい撫でてしまった。
「それでも、だよ。ウリスラがいたから安全に出産出来たんだ、お礼を言うのは当然だろう?」
そう言って顔を覗き込むと、
「ありっ?」
ウリスラがなんとも言えない表情をしていた。
「・・・はっ!?と、とにかくもう夜も遅くていい時間ですから!族長様とレミィちゃんを連れて帰ってください!」
先程の表情をなかった事にして、静かに俺たちは追い出された。
「さっきのあれなんだったんだ?」
俺がそうレミィに聞くと、
「知らな~い、そういうのは本人に聞くものだよ、ケーマ。」
レミィは呆れ顔で家に向かって歩いて行った。
「まぁ、何はともあれ、ご苦労様だなケーマ殿。」
そう言いながら族長殿は俺の肩を叩く。
「今日は少し飲みましょうか、レミィを送ったらそちらに伺いますよ。」
俺の態度に族長殿は、
「もっと軽い感じでいいのじゃぞ?」
「全員の出産が終わるまで勘弁してください。」
そうして俺たち新たな命の誕生に立ち会い、この日の帰路についた。
sideマール
ついに来てしまった出産予定日。
ケーマがみんなの為に、私達の為に育てられた医師の一人でエルの妹分であるウリスラがいる。
「マール姉、体調の方はどう?」
私が病院と産婦人科を設立してから第一号の妊婦だ。
「平気よ、体調はかなりいいわ。」
だからって訳ではないが、昨日からかなり緊張している。
「初めてだから仕方ないかも知れないけど、あまり力み過ぎないようにね。」
手慣れた手つきでしっかりと私の体を診察していくウリスラ。
でも、私は見逃さなかった。
「ウリスラもね、目の下にクマができてるわよ?」
ピタッと止まったウリスラを見ながら、ウリスラはゆっくりとこちらを見て、
「マール姉にはかなわないなぁ~」
と苦笑いをした。
「ケーマさんの予想だと午後に入ってから始まると予想されているので、それまではゆっくりとしててください。なんなら私が話し相手になってもいいですし。」
それを聞いた私はここ最近の気になる事をウリスラに聞く。
「最近ケーマとは、どんな感じなのかしら?」
我ながら意地悪な顔をしていると思う。
顔を真っ赤にして固まってしまったウリスラを見て、
「このまま私達がかまわないって思っている事を伝えたらどうなるのかしら?」
と更に言うと、
「うぇぇぇぇ!?い、いきなり過ぎます!?い、今は他のみんなの赤ちゃんの出産があるのだから無理ですよう!?」
わたわたっと、動揺するウリスラの声が聞こえたのか、他の医師達が来て、
「ウリスラ?どうしたの?」
「な、何でもない!」
そこで私は爆弾を落とす。
「最近のうちの人とウリスラについて聞いて見たの(ニコニコ)」
「あ~、ついにその答えが聞ける時が来たか!」
すると、他の医師達が来て、全員女性だからか、
「さぁ~、ウリスラちゃん年貢の納め時よ~?」
「我慢しないで、お姉さん達に打ち明けなさい?」
「夜の勝負に持っていくまでの手解きをしてあげる(ハート)」
「そしてウリスラちゃんの赤ちゃんを私達が担当するの!」
もはや収拾は不可能となった。
「ふぇぇぇぇぇぇ!?」
アワアワするウリスラを眺めながら私はあの人が来るのを待つ。
みんなが一通りウリスラを弄って満足して戻った直後にケーマが来た。
「調子はどうだ?」
この人も大分緊張している。
まぁ私も人の事を言えないけど、
「名前決まった?」
診断によるとどうやら女の子らしいので、ケーマが名前を決めることにした。
「ソラって名前にしようと思うんだ。」
そうして外を指さす。
気持ちのいい青空が広がっていた。
「男の子だった時の名前は考えたか?」
「ええ、マークにしようって考えてたの。」
「ひょっとして俺たちの名前から?」
「うん、私とあなたの子だから」
嬉しそうに優しく私を抱きしめた。
「ありがとう。」
キスをしながらお礼言う彼に私も返した。
「ありがとう、ケーマ。私にこの子を産ませてくれて」
そうして見つめあってる時にそれは来た。
「うっ、くぅぅぅっ!」
ちょっ!?聞いてたのより洒落にならないんですけど!
ケーマがナースコールを使って医師のみんなを呼んで私は出産室にベッドごと連れていかれた。
その後はあまりよく覚えていない。
とりあえずめちゃくちゃって言葉が易しいくらいに痛かった事ぐらいしか・・・
その後、叔父様とレミィ、ケーマにソラと顔合わせをしてから赤ちゃんに母乳をあげて私は横になった。
sideケーマ
あれから更に半年、あっという間に過ぎて行った。
全員の出産を四苦八苦しながら無事に終えて、今は子供たちも含めて全員家にいる。
彼女達も母親になったせいか食欲がかなり旺盛になった。
後は変わった変化というと、全員の出産が終わって少ししたらウリスラから告白を受けた。
皆は事前に知っていたのか、先に手回しされる始末。
その為、俺とウリスラは一緒に街を回ったりとデートを数回こなした結果、まぁそういう事になりました。
彼女はエルやマールのように格闘戦が得意ではないらしいのだけれど、これが魔法を使わせだすと龍人族の中でも族長殿よりも強いとレミィ達三人は口をそろえて言う。
狩猟の女神としての性質を持つリーヴァはともかく知識と魔法の探求を司るイリスは、ウリスラを見て一目で気に入る程の才能の持ち主みたいだ。
まぁそんな感じにフルコースのデートをこなして彼女の事を知った上に、彼女の気持ちを聞いて、周りからの後押しもあり・・・彼女も俺たちと一緒に住む事になりました。
そうなると家族が一気に増えた影響で家が狭いと思われたので屋敷を作りました。
スキルの力を自重せずに1日で終わらせたら、ウリスラも含めた全員からやり過ぎとお叱りを受けました。
まぁ豪邸どころの話ではないからな。
もちろん例によって祭りもありました、喧嘩祭りではないけど。
とりあえず今は赤ちゃんの面倒もあるので、夜の生活はウリスラを中心にみんなでローテーションを組んで俺の寝込みを襲うスタイルに変更した模様。
私達の事をいつでも押し倒していいんですよ?ってみんなから言われました。
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洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
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この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
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