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第一章 異世界にて・・・
第八幕 日常と非日常
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sideケーマ
あの喧嘩祭りから一週間たった。
異世界に来て3日か4日でようやく集落という(小規模とはいえ)文化を持っている所に接触出来たのは幸運だろう。
ついでにいえば、彼女どころか美人な嫁が一気に二人も増えたのは、世の中の男どもに嫉妬でネットリと呪殺されてもおかしくはない、幸せだからな~(リア充死ねぇ~!)
そんな風に安心できる生活を手に入れて、ようやくこの世界の常識を調べる事が出来ると思ったんだけど・・・
龍人族はこの島から出れないらしい、理由はわからないがそういう仕組みらしい。
昔、マールの両親とレミィの母親が二人の病気を治す為に掟を破って薬の原料つまり薬草を採りに行ったらしい。
すると龍人族は島の外だと弱体化するらしく、三人とも重傷を負いながら島に帰って来たらしい。
その時の傷が原因で三人とも亡くなってしまったのだそうだ。
もう150年以上は前、マールもまだアルヴィスぐらい歳でレミィはそれよりも幼かったそうだ。
とりあえずわかったのが、1日が26時間で一月が30日で一年が12ヶ月あるらしい。
1日が26時間である以外は元の世界と一緒なので、覚えやすかった。
ちなみに一年12ヶ月なのは、この世界を管理する神様が12神いたからだと族長が言っていた。
一応、大陸はこの龍の聖域などの大きい小さいを含めて7大陸あるらしく、マールとレミィの親達はその中の一つに行って薬草を採ってきたそうだ。
そんな感じで、この集落で暮らし始めて3日でこの世界の事を調べる手立てが無くなってしまった俺は、集落の改革に手を出すことにした。
とりあえず狩りの手助けもかなりしたんだけど、この島(この世界?)で仕留めた獲物の死体を放置すると粒子みたいになって消えるんだよね。
それがどういう仕組みなのかは、まだわからないけど干し肉等に加工した物や野菜なんかは消えないで残っているからそこらへんの解明もかなりしたい(わかるだろう?)。
元々、化学反応とか理数系が大好きな俺は興味津々でこの謎に迫っていくつもりだ!
だからとりあえずその為にもステータスのチェックをしようとしたんだけど、ステータスの表示がまたおかしく(可笑しく?)なっている。
[(名前)新道 桂馬]
[(年齢)不明]
[(レベル)186]
[(その他ステータス)全ての能力値が30桁を越えたので全ての表記を∞で表示致します。詳細を確認したい場合はこの欄をタッチして下さい。]
「なんですと?」
俺は目を擦りながらもう一度ステータスパネルを見る。
「年齢不明ってどういう事よ?この前は普通に表示されてたじゃん!それにその他ステータスって元々表示不能だったから別に今さらそこまで驚きは・・・(ポチッ)しないけど・・さ・・・」
その他ステータスをタッチして開いたけど全ての表示が∞マークで表示されていた。
そして、一つだけ言葉で表示されている項目があった、それは・・・
[(魅力)全ての異性を音で魅了する魔性の男]
「どういう事だ~!」
音で魅了ってどうやんのよ!?そもそもそれって声とかじゃなくて?音?手を叩くと女の子が寄ってくるかメロメロになっちゃうの?
「いや、深く悩んではダメだ!」
どうにか心を立て直して、スキルの欄をチェックする。
「スキルは新しいのが何個かあるな、・・・名前からして嫌な予感しかしねぇ~(超嫌な顔)」
この世界に来る前の俺なら喜んだだろう(間違いない!)だが、実際に異世界に来てこのステータスになった今、普通の人間だったあの頃を思い出してしまう。
一歩間違えれば、いや半歩どころか三分の一でも間違えれば大陸の一つが簡単に消えると思う。
今の俺は殺される事はおろか、自殺するだけの力を使うだけで世界が滅びそうなそんなステータスになっている。
それに加えてスキルまで余計なチートが入れば、俺はこの世界に問いたくなる。
「この世界は俺に何を望んでいるんだ?」
そうボヤいてスキルをチェックする。
[創世術]
この世界の物質すべてを作り替え、無から有を作り出すスキル、この世界の管理神必須の能力、物質の合成も可!
「すぅ~~、はぁ~~」
動揺するな!俺(震え声)!
「無から有って完全に神様じゃん!」
しかも管理神ってなんだ?俺はまだ人間のはずだ!
「落ち着け~、俺よ!落ち着くのだ!」
種族の欄はあそこをタッチしないと出ないのをすっかり忘れていた。
「この事実を先に確認しなかったのは、俺のミスだ、だがここで焦ってその場所をチェックするとこの動揺を抑えられる自信は、俺にはない!」
俺は、入念に深呼吸をして次のスキルをチェックする。
[神の器]
・・・・・説明、必要?神様になれるだけだよ、おめでとう(拍手)!
「・・・・・・」
そのまま、外に出た俺は雄叫びをあげながら獣どもを狩り倒した。
「うおおぉぉぉ!!」
我慢の限界を越えた模様、獣たちが反応出来ない程の速さで全てを狩りとって行くケーマ君。
彼の心情を理解出来る者はこの場にはいなかった。
わずか一時間で集落を一週間賄える獲物を狩って来て、俺は再びステータスをチェックする。
「後のスキルは・・・変わってないな、よし!」
俺はギリギリで一個だけチェックした方がいいスキルを思い出す。
「全知の瞳の使用可能時間をチェックした方がいいからな、これからの活動の要になるし」
そう言って俺は、全知の瞳をタッチする。
[全知の瞳]
種族と能力値がリミットを突破した事により、使用可能時間が無制限になった事をお知らせ致します。
「俺は、俺は一体なにになったんだ?」
膝から崩れ落ちた俺は、耐え難い現実がある事を改めて知った。
そんな感じに自分のステータスやスキルに絶望していると、
「ケーマ、さっきから何してるの?」
「急に飛び出して狩りに行くとか、何か嫌な事でもありましたか?」
レミィとマールを心配させてしまったようだ。
「あ~、ごめん実はさ・・・」
今後の事を考えてステータスやスキルのチェックをしていた事を伝えるとレミィが不思議そうに、
「何でステータスやスキルをチェックするとショックを受けるの?」
首を可愛くひねりながら俺に聞いてくる。
すると一度は俺のステータスを見たことがあるマールが、
「レミィはケーマのステータスを見たことないですからね(苦笑)」
苦笑いしながら俺の悩みについてレミィに説明する。
すると、
「私も見たい!」
こうなった(うん、知ってた)
そんな感じで、二人に挟まれながらステータスパネルをオープンする。
「うわ~、凄すぎて現実感が全くないんだけど・・・」
「あの時よりも更に酷くなってますね。」
二人が危険物に触るような手つきでステータスパネルをポチポチしていく。
「一通り見たけど・・・人の領域どころか龍の領域もブッチ切ってんね!それに龍化のスキルがあったけどケーマって人間じゃなかったっけ?」
レミィがそう感想と疑問を述べると、マールが、
「この魅力の項目ですが、音で魅了するとはどういう意味なんでしょう?」
俺と同じ疑問を持ったようだが、それは後で試すことにする。
「それも気になるけど、先に種族の確認がしたいんだ。」
そう言って俺は名前の所をタッチする。
[(名前)新道 桂馬]
[(種族)龍神]
元は異世界の住人だが、神の陰謀によりこの世界 グリムノースに転生させられた。
その時から続く魔改造行為により人から龍へ、龍から神へと至った。
「魔改造って、人にも使うんだ・・・」
この沈黙がどれ程の時間この空間を支配していたかわからないが、まるで某ライダーのように魔改造されている俺はポツリと呟いた。
「で、でもケーマは、ケーマだから私達は全然気にしないよ!」
「そうですよ!ケーマは素敵で強くて最っ高にカッコいいし優しくて、知的でクールで大人な、私の、私達の好きな人です!」
レミィの優しさとマールの好きな気持ちが凄い心に染みる。
俺は大きく深呼吸して、二人に笑顔でこう言った。
「ありがとう、二人とも。」
すると二人の顔がみるみる内に紅くなった!
「二人とも大丈夫かい?」
そう言って二人に手を伸ばすと、ぎゅっと俺にしがみついて来た。
「さっきからケーマの声を聞くと心が疼くの」
俺に抱きつきながら熱に浮かされたように俺を見る。
するとマールも、
「声だけじゃなくて、仕草や息遣い、そこにいるだけで、まるで心を掌握されるようにあなたの事以外考えられなくなります。」
二人の潤んだ瞳に負けた俺は、二人にキスをしてこう話を切り出した。
「俺の魅力のステータスの効果の実験とそれ以外の実験も一緒にしようか?」
二人は頷いて俺にしがみついて、その日の夕方から俺たちは甘くて熱い魅力的な実験を日付が変わって日が昇る直前まで繰り返した。
昨夜は少々熱くなり過ぎてしまい二人はまだ起きられないようなので、軽く簡単な朝食の用意をしてから(スキルの効果も確認したよ)日が大分高くなって天気もいいので俺は集落のあちこちを見てまわる事にした。
「とりあえず創成術の効果は、集落の改革(改造)で試しながら把握するとして、後はどの辺りから手を加えていくかだよな~」
考えながら集落の中をあちこち見て回って行くと、広い広場のような場所に出る。
「こっちは確か、狩人達や子供たちの訓練場になっていたはず。」
見に行く途中で杖をついて歩いている子供を見つける。
「?アルヴィスに少し似てるな?」
ただ表情が暗い、今度アルヴィスに聞いて・・・
「やめろ~!」
みようか?などと考えようとしたら子供たちの声が聞こえてきて俺は一歩で広場に到着した。
「どうした!?」
するとアルヴィスがザッスに首を掴まれていた。
それを見てしまった俺は、ザッスの腕を思いっきり叩き折った。
「ぎゃあぁぁぁぁ!!?」
「アルヴィス!?しっかりしろ!」
そう言って俺は全知の瞳のスキルを全開にする。
「腕の筋が完全に切れてる!魔力と気を使って繋げて、くそっ!肋骨が全部折れてやがる!!てめえは後でぜってぇ殺す!!」
殺気をザッスの方に向けながら、アルヴィスの体の傷を一つずつ確実に治していく。
正直に言って生きてるのが不思議なくらいの重傷だった。
全部を治した所で族長たちが到着した。
「アルヴィスの容態は?」
「怪我は全部治したが、相当酷い真似をされたようだ。とりあえずベッド寝かせて一週間は絶対に安静だと彼の両親に伝えろ!」
族長は、怒りを隠しきれてない俺に驚いた表情を見せながら頷いた。
「わかった、テムシンに頼もう!」
「心得た!」
そう言ってテムシンにアルヴィスを預けた後、ヴォルグ殿は他の子供たちに話を聞く。
俺はその隙にザッスの奴をガルムの奴と一緒に問いただす。
「で?このふざけた事をやった理由は?」
俺は一生懸命に殺気を抑えているが、それでも漏れているのだろう。
ガルムも顔が青くなっている。
「ケーマ、少し、落ち着け。怒る気持ち、オレも一緒。」
顔を青くしながら俺を宥めるガルムの声を聞いて俺は、
「はぁ~~」
長々とため息をついて再び聞いた。
「で?何でこんな下らない事をしたんだ?」
未だに顔を青くしながら、やけくそになって吠え出した。
「そんなのてめえが気に入らねぇからに決まってんだろうが!!余所から来たどこの誰かもわからねぇ奴がよりによって!!」
奴はその先を言えなかった。
正確にはその前に俺がキレた!
「ふざけた事を言ってんじゃねぇぞ!!てめぇ!!」
そう言いながら俺は無意識の内に龍化のスキルを使ってしまった。
俺は白と黒の美しい鱗に包まれた龍に変身した。
俺は、俺の中の怒りを表すように吼えた
[グォアアァァァァァ!!!]
その圧倒的な存在感に失禁を禁じえなかった愚か者が一名。
「あ、あぁ、ひっ!!ひぃぃ!!」
「あの鱗の美しさは・・・間違いない!あれは我らの遠い先祖にあたる龍神帝と同じ姿だ!」
「お父様!!」
レミィ達が来たようだ。
「これは?ひょっとしてこの龍はケーマ?」
マールが質問してくる。
「あぁ、俺だ、ところでこれってどうやって戻るんだ?」
俺がそう聞くと、レミィが呆れながら
「とりあえず心を落ち着けて人の姿の自分を想像してみて」
言われた通りにやってみると、急に体が光だして収まったと思ったら元に戻った。
「それで何があったの?」
俺はマールとレミィにここで起きたことを説明した。
そこにザッスの親が来たらしい。
「息子がなにやらやらかしたと聞いたが?」
何と言うか、腐った目をした傲慢な豚が来た。
「なんにしてもどうせ子供のケンカだろう?親が手を出すなぞ・・・」
みっともない、そう言おうとしたのだろう。
だがその前に俺が誰よりも速くぶん殴った!
「舐めた事ぬかしてんじゃねぇ!!」
「ぶげはぁっ!!」
ゴロゴロとボールのように弾みながらぶっ飛ばした俺をレミィとマールが一生懸命に止める。
「手加減してもケーマの力じゃ死んじゃうから!!」
「あのゴミクズを消し飛ばしたいのは分かります!ですがここはお願いだから抑えて!」
必死にしがみついて止める二人を見て俺はとりあえずヴォルグ殿に任せる事にした。
「これ以上俺が動くと更にグタグタになりそうだからヴォルグ殿に任せるよ。」
「いいのか?」
「集落の掟があるのだろう?それが役に立たなかったら俺が実力行使する。」
そう言ってヴォルグ殿に頷くと、
「わかった、それでは族長として裁定を下す。」
そう言ってヴォルグ殿は豚を一瞥する。
「此度の件にそして前回の件を含めて、ザッス及びボーク親子は厳罰試合をしてもらう!」
それを聞いていつの間にか目を覚ましているザッスと顔を青くしている、豚親子。
「罰の内容は勝てばただの追放、負けたら片腕か片足を落とした上で追放だ!」
どちらにしても追放という判決に親子は、
「なっ!そんな判決はあんまりだ!」
「そうだ!俺が何をしたって言うんだ!?」
それを聞いたヴォルグ殿は、
「ふざけた事を抜かすな!!」
「「ひっ!」」
「集落の備品の私物化に幼き子供たちの虐待、これだけでも万死に値するというのに、うちの娘たちだけじゃなく集落の娘たちを毒牙にかけようというその根性!もう我慢ならん!叩き直してくれる!」
ヴォルグ殿があそこまで怒るとは、本当はとっとと追い出したかったんだろうけど、族長だからな怒りに任せてその手段だけは使いたくなかったんだろうな。
「異論は認めん!嫌なら・・・ケーマ殿にお主達の処理をしてもらう!」
それを聞いて豚が勘違いをしたようだ。
「ふんっ!そんな青二才に負けるものか!わしはこのガキとは違う!!」
「お、親父それは・・・」
ザッスはそれが悪手だと理解しているようだが、老害はそれが判断出来ないようだ。
ザッスが止める前に俺が答える。
「いいぞ。」
醜い笑みを洩らす老害と絶望した顔を見せる馬鹿に俺はスキルを使って怪我を回復してやった。
「時間が惜しい、今から始めるぞ!」
そう言った俺の体から魔力と気が漏れ出す。
「青二才が!あの世でこうか・・ぶげりょ!!」
不意打ちでもかまそうとしたのだろう。
その動きを察知してから普通に反応して殴る。
ゴロゴロと転がり心配して近づいてきた息子に
「余計な事しとらんで、お前も戦わんかい!」
口からボタボタと血を流しながら、喋る老害に対してザッスは、
「生身じゃ無理だ!龍に変化して隙をついて逃げるしかない!」
「ほう?」
ザッスの方が意外に冷静だな、まぁそれでも許す気はないが、
「仕方あるまい!」
「ぬぅらぁぁぁ」
そして、龍化が終わるのを待ってから攻撃しようとして思いつく。
「ついでに俺も二人になるか!」
そう言って俺は分身する。
[[グゥルォォォォ!!]]
ようやく変身が終わった二人は、増えた俺を見て(特にザッスが)狼狽えた。
「じゃ、そろそろ攻撃を再開するからギブアップは早めにな(ニッコリ)」
そう言って俺たちは同時に親子をボコボコにした。
[闘技 双龍豪連弾]
死なないように時折回復魔法(こっそり)を使いながらひたすら殴り続ける。
奴らの体は完全に浮いていて、ザッスは白目を向いている(けど、やめるつもりはない!)。
すると老害の体が光出した。
俺は、一応様子を見るために距離を取っていると、おもむろに老害がこう言った。
「わ、わしらが悪かったもう、許してくれ・・・」
老害がそう言ったら、俺は族長殿の方を見る。
「では、試合はそれまで!これから双方に処罰を下す!女たちは子供たちを連れて家に戻るように。」
そう言ったヴォルグ殿にレミィ達はムッとした顔をしたけど、結局はそれに従った。
女たちが子供を連れて行ったのを見送って、俺たち男衆はクズ親子を一瞥する。
「さて、では刑を執行する。言い残す事はあるか?」
俺はまずこの二人が二度とこの集落に近づけないように魔法をかける。
[幻罰魔法 邪心滅封]
この二人が本気で心を入れ替えて、集落の人たちに謝罪をしたいと思わない限りここに戻ってくる事は出来ない。
ここに来ようとすると転移が働き適当な所に飛ばされる。
その後、ザッスは腕を、老害は脚を落とす事になった。
俺は止血係だ、両手から炎をメラメラさせながら出番を待つ。
執行人はガルム殿だ、これまで止める事が出来なかった責任をとりたいと言っていた。
そうして、二人の腕と脚をそれぞれぶった切って、傷口を止血する。
「「ぎゃあぁぁぁぁ!!?」」
びくんびくんと、のたうちまわる二人を一瞥して俺は族長殿にこの後の事を聞く。
「この後は?」
「後は、この集落の反対側に捨ててくるだけだ、それは他の若い衆でやるからお主とガルム殿はもう帰ってよいぞ。」
そして、族長殿たちは龍化して飛んで行った。
「ガルム殿戻ろう?どうした?」
「オレ、ケーマに申し訳ない、オレが、もっとしっかりしていたら、こう、ならなかった。」
俺は頭を指でコリコリとかいてから、ガルム殿に克を入れる。
「自惚れるな!!自分一人で全てを解決する事などと出来ると思うな!」
ガルム殿は顔あげてこちらを見る。
「今回の件はガルム殿だけではなく、族長殿はもちろんテムシン殿、それに俺を含めた集落の男衆の責任だよ。」
俺は、自分に言い聞かせるように言う。
「ガルム殿の言った責任もあるかも知れないが、先程も言った通りガルム殿だけの責任ではない。」
「そうか・・・ケーマ殿に、頼みたい事ある。」
ガルム殿が言うのは、アルヴィスの兄の事らしい。
「レイヴィスの脚をどうか治して欲しい!」
「わかった、じゃあ案内してくれ!」
俺はその頼みに即座に了承した。
そして、俺はアルヴィスの家に着いた。
何故かレミィとマールがいた。
「あら?ケーマどうしたの?」
「アルヴィスの容態を見に来たのですか?」
「いや俺は、その兄のレイヴィスの方を見に来たんだよ。」
二人は驚いた表情をした。
「そっか、それでガルムがいるのね。」
「あぁ、レイヴィスはいたか?」
ガルムがそう訪ねると、
「えぇ、アルヴィスが運ばれてからしばらくして・・・どうやら嫌な予感がして訓練場に行ったみたいですね。」
マールが知っている事を教えてくれる。
「そうか、ならやっぱりあそこにいたのが・・・」
レイヴィスだったのだな。
そう言おうとした瞬間にアルヴィスの家の扉が開いた。
「ガルム先生こんな所で何を?レミィ姉さんにマール姉さんまで?後、そちらの方は?」
アルヴィスに比べて大人しそうな顔の少年が出てきた。
「あら、いいところに出てきたわね♪」
「えっ!?」
「さぁ、中に案内なさい!」
レイヴィスがレミィの脇に抱えられて拉致された。
「ちょっと~、レミィさ~ん!?」
アルヴィスと同じ部屋らしいので、その部屋のベッドにレイヴィスを寝かせる。
「あの、一体何を?」
「いいから、いいから♪」
レミィは説明する気がないようだ。
俺は全知の瞳を使ってレイヴィスの体を調べる。
「やはり背骨が、脊髄に傷がついてるな。」
元の世界の医学でも不可能だった治療を異世界の力を駆使して治療する。
「まずは背骨周辺に骨片を取り除いて、次に背骨のズレを矯正したら、回復魔法で完全回復!」
[回復魔法 リザレクション・ヒール]
条件付きで死者を生き返らせる事が出来る回復魔法。
攻撃しながら使っていた回復魔法はこれである。
今回は体の部位の欠損はないので、これで十分治るのである。
「よし!終わったぞ!!」
そう言って俺はレイヴィスの脚をくすぐると、
「わひゃっ、ちょっ、ちょっとやめてください!?」
勢いよく飛び起き脚を動かしながら俺の腕を手で抑える。
「あれ?今、僕動いて?」
そう言いながら自分の脚を見る。
実感が湧いてきたのだろう、徐々に笑顔になった彼は大きな声で、
「やった~~!!」
はしゃいだ。
そこを俺が落ち着けて、自分がどこにいるのか思い出して深呼吸をした。
俺はその隙にアルヴィスの様子を見に行くと、
「ん?アルヴィスお前・・・」
そうアルヴィスはもう起きていたのである。
それも俺が治療を始めたあたりから、そしてそれが成功した事で泣き出してしまったようだ。
「にーぢゃぁぁん、よかったよぉぉぉ!」
「うわ、ちょっとアル!?」
止める隙もなくレイヴィスに低空ダイブをかました。
他の三人の様子を見たら、全員号泣しててガルム殿なんかは滝のように涙を流していた(二番目にレミィが泣いてた)。
すると玄関の方に気配を感じたので、見に行くとアルヴィスとレイヴィスの両親がいてこの二人にもレイヴィスの体が治った事を伝えると、二人してぶっ飛んでレイヴィスの所に行った。
後はまぁ、族長殿が様子を見に来たんだけどそれまでみんなでボロボロ泣いてたから、俺以外全員目が真っ赤だった。
そんな形で長い1日は終わった。
もちろん次の日は1日中宴会だったのは言うまでもない。
あの喧嘩祭りから一週間たった。
異世界に来て3日か4日でようやく集落という(小規模とはいえ)文化を持っている所に接触出来たのは幸運だろう。
ついでにいえば、彼女どころか美人な嫁が一気に二人も増えたのは、世の中の男どもに嫉妬でネットリと呪殺されてもおかしくはない、幸せだからな~(リア充死ねぇ~!)
そんな風に安心できる生活を手に入れて、ようやくこの世界の常識を調べる事が出来ると思ったんだけど・・・
龍人族はこの島から出れないらしい、理由はわからないがそういう仕組みらしい。
昔、マールの両親とレミィの母親が二人の病気を治す為に掟を破って薬の原料つまり薬草を採りに行ったらしい。
すると龍人族は島の外だと弱体化するらしく、三人とも重傷を負いながら島に帰って来たらしい。
その時の傷が原因で三人とも亡くなってしまったのだそうだ。
もう150年以上は前、マールもまだアルヴィスぐらい歳でレミィはそれよりも幼かったそうだ。
とりあえずわかったのが、1日が26時間で一月が30日で一年が12ヶ月あるらしい。
1日が26時間である以外は元の世界と一緒なので、覚えやすかった。
ちなみに一年12ヶ月なのは、この世界を管理する神様が12神いたからだと族長が言っていた。
一応、大陸はこの龍の聖域などの大きい小さいを含めて7大陸あるらしく、マールとレミィの親達はその中の一つに行って薬草を採ってきたそうだ。
そんな感じで、この集落で暮らし始めて3日でこの世界の事を調べる手立てが無くなってしまった俺は、集落の改革に手を出すことにした。
とりあえず狩りの手助けもかなりしたんだけど、この島(この世界?)で仕留めた獲物の死体を放置すると粒子みたいになって消えるんだよね。
それがどういう仕組みなのかは、まだわからないけど干し肉等に加工した物や野菜なんかは消えないで残っているからそこらへんの解明もかなりしたい(わかるだろう?)。
元々、化学反応とか理数系が大好きな俺は興味津々でこの謎に迫っていくつもりだ!
だからとりあえずその為にもステータスのチェックをしようとしたんだけど、ステータスの表示がまたおかしく(可笑しく?)なっている。
[(名前)新道 桂馬]
[(年齢)不明]
[(レベル)186]
[(その他ステータス)全ての能力値が30桁を越えたので全ての表記を∞で表示致します。詳細を確認したい場合はこの欄をタッチして下さい。]
「なんですと?」
俺は目を擦りながらもう一度ステータスパネルを見る。
「年齢不明ってどういう事よ?この前は普通に表示されてたじゃん!それにその他ステータスって元々表示不能だったから別に今さらそこまで驚きは・・・(ポチッ)しないけど・・さ・・・」
その他ステータスをタッチして開いたけど全ての表示が∞マークで表示されていた。
そして、一つだけ言葉で表示されている項目があった、それは・・・
[(魅力)全ての異性を音で魅了する魔性の男]
「どういう事だ~!」
音で魅了ってどうやんのよ!?そもそもそれって声とかじゃなくて?音?手を叩くと女の子が寄ってくるかメロメロになっちゃうの?
「いや、深く悩んではダメだ!」
どうにか心を立て直して、スキルの欄をチェックする。
「スキルは新しいのが何個かあるな、・・・名前からして嫌な予感しかしねぇ~(超嫌な顔)」
この世界に来る前の俺なら喜んだだろう(間違いない!)だが、実際に異世界に来てこのステータスになった今、普通の人間だったあの頃を思い出してしまう。
一歩間違えれば、いや半歩どころか三分の一でも間違えれば大陸の一つが簡単に消えると思う。
今の俺は殺される事はおろか、自殺するだけの力を使うだけで世界が滅びそうなそんなステータスになっている。
それに加えてスキルまで余計なチートが入れば、俺はこの世界に問いたくなる。
「この世界は俺に何を望んでいるんだ?」
そうボヤいてスキルをチェックする。
[創世術]
この世界の物質すべてを作り替え、無から有を作り出すスキル、この世界の管理神必須の能力、物質の合成も可!
「すぅ~~、はぁ~~」
動揺するな!俺(震え声)!
「無から有って完全に神様じゃん!」
しかも管理神ってなんだ?俺はまだ人間のはずだ!
「落ち着け~、俺よ!落ち着くのだ!」
種族の欄はあそこをタッチしないと出ないのをすっかり忘れていた。
「この事実を先に確認しなかったのは、俺のミスだ、だがここで焦ってその場所をチェックするとこの動揺を抑えられる自信は、俺にはない!」
俺は、入念に深呼吸をして次のスキルをチェックする。
[神の器]
・・・・・説明、必要?神様になれるだけだよ、おめでとう(拍手)!
「・・・・・・」
そのまま、外に出た俺は雄叫びをあげながら獣どもを狩り倒した。
「うおおぉぉぉ!!」
我慢の限界を越えた模様、獣たちが反応出来ない程の速さで全てを狩りとって行くケーマ君。
彼の心情を理解出来る者はこの場にはいなかった。
わずか一時間で集落を一週間賄える獲物を狩って来て、俺は再びステータスをチェックする。
「後のスキルは・・・変わってないな、よし!」
俺はギリギリで一個だけチェックした方がいいスキルを思い出す。
「全知の瞳の使用可能時間をチェックした方がいいからな、これからの活動の要になるし」
そう言って俺は、全知の瞳をタッチする。
[全知の瞳]
種族と能力値がリミットを突破した事により、使用可能時間が無制限になった事をお知らせ致します。
「俺は、俺は一体なにになったんだ?」
膝から崩れ落ちた俺は、耐え難い現実がある事を改めて知った。
そんな感じに自分のステータスやスキルに絶望していると、
「ケーマ、さっきから何してるの?」
「急に飛び出して狩りに行くとか、何か嫌な事でもありましたか?」
レミィとマールを心配させてしまったようだ。
「あ~、ごめん実はさ・・・」
今後の事を考えてステータスやスキルのチェックをしていた事を伝えるとレミィが不思議そうに、
「何でステータスやスキルをチェックするとショックを受けるの?」
首を可愛くひねりながら俺に聞いてくる。
すると一度は俺のステータスを見たことがあるマールが、
「レミィはケーマのステータスを見たことないですからね(苦笑)」
苦笑いしながら俺の悩みについてレミィに説明する。
すると、
「私も見たい!」
こうなった(うん、知ってた)
そんな感じで、二人に挟まれながらステータスパネルをオープンする。
「うわ~、凄すぎて現実感が全くないんだけど・・・」
「あの時よりも更に酷くなってますね。」
二人が危険物に触るような手つきでステータスパネルをポチポチしていく。
「一通り見たけど・・・人の領域どころか龍の領域もブッチ切ってんね!それに龍化のスキルがあったけどケーマって人間じゃなかったっけ?」
レミィがそう感想と疑問を述べると、マールが、
「この魅力の項目ですが、音で魅了するとはどういう意味なんでしょう?」
俺と同じ疑問を持ったようだが、それは後で試すことにする。
「それも気になるけど、先に種族の確認がしたいんだ。」
そう言って俺は名前の所をタッチする。
[(名前)新道 桂馬]
[(種族)龍神]
元は異世界の住人だが、神の陰謀によりこの世界 グリムノースに転生させられた。
その時から続く魔改造行為により人から龍へ、龍から神へと至った。
「魔改造って、人にも使うんだ・・・」
この沈黙がどれ程の時間この空間を支配していたかわからないが、まるで某ライダーのように魔改造されている俺はポツリと呟いた。
「で、でもケーマは、ケーマだから私達は全然気にしないよ!」
「そうですよ!ケーマは素敵で強くて最っ高にカッコいいし優しくて、知的でクールで大人な、私の、私達の好きな人です!」
レミィの優しさとマールの好きな気持ちが凄い心に染みる。
俺は大きく深呼吸して、二人に笑顔でこう言った。
「ありがとう、二人とも。」
すると二人の顔がみるみる内に紅くなった!
「二人とも大丈夫かい?」
そう言って二人に手を伸ばすと、ぎゅっと俺にしがみついて来た。
「さっきからケーマの声を聞くと心が疼くの」
俺に抱きつきながら熱に浮かされたように俺を見る。
するとマールも、
「声だけじゃなくて、仕草や息遣い、そこにいるだけで、まるで心を掌握されるようにあなたの事以外考えられなくなります。」
二人の潤んだ瞳に負けた俺は、二人にキスをしてこう話を切り出した。
「俺の魅力のステータスの効果の実験とそれ以外の実験も一緒にしようか?」
二人は頷いて俺にしがみついて、その日の夕方から俺たちは甘くて熱い魅力的な実験を日付が変わって日が昇る直前まで繰り返した。
昨夜は少々熱くなり過ぎてしまい二人はまだ起きられないようなので、軽く簡単な朝食の用意をしてから(スキルの効果も確認したよ)日が大分高くなって天気もいいので俺は集落のあちこちを見てまわる事にした。
「とりあえず創成術の効果は、集落の改革(改造)で試しながら把握するとして、後はどの辺りから手を加えていくかだよな~」
考えながら集落の中をあちこち見て回って行くと、広い広場のような場所に出る。
「こっちは確か、狩人達や子供たちの訓練場になっていたはず。」
見に行く途中で杖をついて歩いている子供を見つける。
「?アルヴィスに少し似てるな?」
ただ表情が暗い、今度アルヴィスに聞いて・・・
「やめろ~!」
みようか?などと考えようとしたら子供たちの声が聞こえてきて俺は一歩で広場に到着した。
「どうした!?」
するとアルヴィスがザッスに首を掴まれていた。
それを見てしまった俺は、ザッスの腕を思いっきり叩き折った。
「ぎゃあぁぁぁぁ!!?」
「アルヴィス!?しっかりしろ!」
そう言って俺は全知の瞳のスキルを全開にする。
「腕の筋が完全に切れてる!魔力と気を使って繋げて、くそっ!肋骨が全部折れてやがる!!てめえは後でぜってぇ殺す!!」
殺気をザッスの方に向けながら、アルヴィスの体の傷を一つずつ確実に治していく。
正直に言って生きてるのが不思議なくらいの重傷だった。
全部を治した所で族長たちが到着した。
「アルヴィスの容態は?」
「怪我は全部治したが、相当酷い真似をされたようだ。とりあえずベッド寝かせて一週間は絶対に安静だと彼の両親に伝えろ!」
族長は、怒りを隠しきれてない俺に驚いた表情を見せながら頷いた。
「わかった、テムシンに頼もう!」
「心得た!」
そう言ってテムシンにアルヴィスを預けた後、ヴォルグ殿は他の子供たちに話を聞く。
俺はその隙にザッスの奴をガルムの奴と一緒に問いただす。
「で?このふざけた事をやった理由は?」
俺は一生懸命に殺気を抑えているが、それでも漏れているのだろう。
ガルムも顔が青くなっている。
「ケーマ、少し、落ち着け。怒る気持ち、オレも一緒。」
顔を青くしながら俺を宥めるガルムの声を聞いて俺は、
「はぁ~~」
長々とため息をついて再び聞いた。
「で?何でこんな下らない事をしたんだ?」
未だに顔を青くしながら、やけくそになって吠え出した。
「そんなのてめえが気に入らねぇからに決まってんだろうが!!余所から来たどこの誰かもわからねぇ奴がよりによって!!」
奴はその先を言えなかった。
正確にはその前に俺がキレた!
「ふざけた事を言ってんじゃねぇぞ!!てめぇ!!」
そう言いながら俺は無意識の内に龍化のスキルを使ってしまった。
俺は白と黒の美しい鱗に包まれた龍に変身した。
俺は、俺の中の怒りを表すように吼えた
[グォアアァァァァァ!!!]
その圧倒的な存在感に失禁を禁じえなかった愚か者が一名。
「あ、あぁ、ひっ!!ひぃぃ!!」
「あの鱗の美しさは・・・間違いない!あれは我らの遠い先祖にあたる龍神帝と同じ姿だ!」
「お父様!!」
レミィ達が来たようだ。
「これは?ひょっとしてこの龍はケーマ?」
マールが質問してくる。
「あぁ、俺だ、ところでこれってどうやって戻るんだ?」
俺がそう聞くと、レミィが呆れながら
「とりあえず心を落ち着けて人の姿の自分を想像してみて」
言われた通りにやってみると、急に体が光だして収まったと思ったら元に戻った。
「それで何があったの?」
俺はマールとレミィにここで起きたことを説明した。
そこにザッスの親が来たらしい。
「息子がなにやらやらかしたと聞いたが?」
何と言うか、腐った目をした傲慢な豚が来た。
「なんにしてもどうせ子供のケンカだろう?親が手を出すなぞ・・・」
みっともない、そう言おうとしたのだろう。
だがその前に俺が誰よりも速くぶん殴った!
「舐めた事ぬかしてんじゃねぇ!!」
「ぶげはぁっ!!」
ゴロゴロとボールのように弾みながらぶっ飛ばした俺をレミィとマールが一生懸命に止める。
「手加減してもケーマの力じゃ死んじゃうから!!」
「あのゴミクズを消し飛ばしたいのは分かります!ですがここはお願いだから抑えて!」
必死にしがみついて止める二人を見て俺はとりあえずヴォルグ殿に任せる事にした。
「これ以上俺が動くと更にグタグタになりそうだからヴォルグ殿に任せるよ。」
「いいのか?」
「集落の掟があるのだろう?それが役に立たなかったら俺が実力行使する。」
そう言ってヴォルグ殿に頷くと、
「わかった、それでは族長として裁定を下す。」
そう言ってヴォルグ殿は豚を一瞥する。
「此度の件にそして前回の件を含めて、ザッス及びボーク親子は厳罰試合をしてもらう!」
それを聞いていつの間にか目を覚ましているザッスと顔を青くしている、豚親子。
「罰の内容は勝てばただの追放、負けたら片腕か片足を落とした上で追放だ!」
どちらにしても追放という判決に親子は、
「なっ!そんな判決はあんまりだ!」
「そうだ!俺が何をしたって言うんだ!?」
それを聞いたヴォルグ殿は、
「ふざけた事を抜かすな!!」
「「ひっ!」」
「集落の備品の私物化に幼き子供たちの虐待、これだけでも万死に値するというのに、うちの娘たちだけじゃなく集落の娘たちを毒牙にかけようというその根性!もう我慢ならん!叩き直してくれる!」
ヴォルグ殿があそこまで怒るとは、本当はとっとと追い出したかったんだろうけど、族長だからな怒りに任せてその手段だけは使いたくなかったんだろうな。
「異論は認めん!嫌なら・・・ケーマ殿にお主達の処理をしてもらう!」
それを聞いて豚が勘違いをしたようだ。
「ふんっ!そんな青二才に負けるものか!わしはこのガキとは違う!!」
「お、親父それは・・・」
ザッスはそれが悪手だと理解しているようだが、老害はそれが判断出来ないようだ。
ザッスが止める前に俺が答える。
「いいぞ。」
醜い笑みを洩らす老害と絶望した顔を見せる馬鹿に俺はスキルを使って怪我を回復してやった。
「時間が惜しい、今から始めるぞ!」
そう言った俺の体から魔力と気が漏れ出す。
「青二才が!あの世でこうか・・ぶげりょ!!」
不意打ちでもかまそうとしたのだろう。
その動きを察知してから普通に反応して殴る。
ゴロゴロと転がり心配して近づいてきた息子に
「余計な事しとらんで、お前も戦わんかい!」
口からボタボタと血を流しながら、喋る老害に対してザッスは、
「生身じゃ無理だ!龍に変化して隙をついて逃げるしかない!」
「ほう?」
ザッスの方が意外に冷静だな、まぁそれでも許す気はないが、
「仕方あるまい!」
「ぬぅらぁぁぁ」
そして、龍化が終わるのを待ってから攻撃しようとして思いつく。
「ついでに俺も二人になるか!」
そう言って俺は分身する。
[[グゥルォォォォ!!]]
ようやく変身が終わった二人は、増えた俺を見て(特にザッスが)狼狽えた。
「じゃ、そろそろ攻撃を再開するからギブアップは早めにな(ニッコリ)」
そう言って俺たちは同時に親子をボコボコにした。
[闘技 双龍豪連弾]
死なないように時折回復魔法(こっそり)を使いながらひたすら殴り続ける。
奴らの体は完全に浮いていて、ザッスは白目を向いている(けど、やめるつもりはない!)。
すると老害の体が光出した。
俺は、一応様子を見るために距離を取っていると、おもむろに老害がこう言った。
「わ、わしらが悪かったもう、許してくれ・・・」
老害がそう言ったら、俺は族長殿の方を見る。
「では、試合はそれまで!これから双方に処罰を下す!女たちは子供たちを連れて家に戻るように。」
そう言ったヴォルグ殿にレミィ達はムッとした顔をしたけど、結局はそれに従った。
女たちが子供を連れて行ったのを見送って、俺たち男衆はクズ親子を一瞥する。
「さて、では刑を執行する。言い残す事はあるか?」
俺はまずこの二人が二度とこの集落に近づけないように魔法をかける。
[幻罰魔法 邪心滅封]
この二人が本気で心を入れ替えて、集落の人たちに謝罪をしたいと思わない限りここに戻ってくる事は出来ない。
ここに来ようとすると転移が働き適当な所に飛ばされる。
その後、ザッスは腕を、老害は脚を落とす事になった。
俺は止血係だ、両手から炎をメラメラさせながら出番を待つ。
執行人はガルム殿だ、これまで止める事が出来なかった責任をとりたいと言っていた。
そうして、二人の腕と脚をそれぞれぶった切って、傷口を止血する。
「「ぎゃあぁぁぁぁ!!?」」
びくんびくんと、のたうちまわる二人を一瞥して俺は族長殿にこの後の事を聞く。
「この後は?」
「後は、この集落の反対側に捨ててくるだけだ、それは他の若い衆でやるからお主とガルム殿はもう帰ってよいぞ。」
そして、族長殿たちは龍化して飛んで行った。
「ガルム殿戻ろう?どうした?」
「オレ、ケーマに申し訳ない、オレが、もっとしっかりしていたら、こう、ならなかった。」
俺は頭を指でコリコリとかいてから、ガルム殿に克を入れる。
「自惚れるな!!自分一人で全てを解決する事などと出来ると思うな!」
ガルム殿は顔あげてこちらを見る。
「今回の件はガルム殿だけではなく、族長殿はもちろんテムシン殿、それに俺を含めた集落の男衆の責任だよ。」
俺は、自分に言い聞かせるように言う。
「ガルム殿の言った責任もあるかも知れないが、先程も言った通りガルム殿だけの責任ではない。」
「そうか・・・ケーマ殿に、頼みたい事ある。」
ガルム殿が言うのは、アルヴィスの兄の事らしい。
「レイヴィスの脚をどうか治して欲しい!」
「わかった、じゃあ案内してくれ!」
俺はその頼みに即座に了承した。
そして、俺はアルヴィスの家に着いた。
何故かレミィとマールがいた。
「あら?ケーマどうしたの?」
「アルヴィスの容態を見に来たのですか?」
「いや俺は、その兄のレイヴィスの方を見に来たんだよ。」
二人は驚いた表情をした。
「そっか、それでガルムがいるのね。」
「あぁ、レイヴィスはいたか?」
ガルムがそう訪ねると、
「えぇ、アルヴィスが運ばれてからしばらくして・・・どうやら嫌な予感がして訓練場に行ったみたいですね。」
マールが知っている事を教えてくれる。
「そうか、ならやっぱりあそこにいたのが・・・」
レイヴィスだったのだな。
そう言おうとした瞬間にアルヴィスの家の扉が開いた。
「ガルム先生こんな所で何を?レミィ姉さんにマール姉さんまで?後、そちらの方は?」
アルヴィスに比べて大人しそうな顔の少年が出てきた。
「あら、いいところに出てきたわね♪」
「えっ!?」
「さぁ、中に案内なさい!」
レイヴィスがレミィの脇に抱えられて拉致された。
「ちょっと~、レミィさ~ん!?」
アルヴィスと同じ部屋らしいので、その部屋のベッドにレイヴィスを寝かせる。
「あの、一体何を?」
「いいから、いいから♪」
レミィは説明する気がないようだ。
俺は全知の瞳を使ってレイヴィスの体を調べる。
「やはり背骨が、脊髄に傷がついてるな。」
元の世界の医学でも不可能だった治療を異世界の力を駆使して治療する。
「まずは背骨周辺に骨片を取り除いて、次に背骨のズレを矯正したら、回復魔法で完全回復!」
[回復魔法 リザレクション・ヒール]
条件付きで死者を生き返らせる事が出来る回復魔法。
攻撃しながら使っていた回復魔法はこれである。
今回は体の部位の欠損はないので、これで十分治るのである。
「よし!終わったぞ!!」
そう言って俺はレイヴィスの脚をくすぐると、
「わひゃっ、ちょっ、ちょっとやめてください!?」
勢いよく飛び起き脚を動かしながら俺の腕を手で抑える。
「あれ?今、僕動いて?」
そう言いながら自分の脚を見る。
実感が湧いてきたのだろう、徐々に笑顔になった彼は大きな声で、
「やった~~!!」
はしゃいだ。
そこを俺が落ち着けて、自分がどこにいるのか思い出して深呼吸をした。
俺はその隙にアルヴィスの様子を見に行くと、
「ん?アルヴィスお前・・・」
そうアルヴィスはもう起きていたのである。
それも俺が治療を始めたあたりから、そしてそれが成功した事で泣き出してしまったようだ。
「にーぢゃぁぁん、よかったよぉぉぉ!」
「うわ、ちょっとアル!?」
止める隙もなくレイヴィスに低空ダイブをかました。
他の三人の様子を見たら、全員号泣しててガルム殿なんかは滝のように涙を流していた(二番目にレミィが泣いてた)。
すると玄関の方に気配を感じたので、見に行くとアルヴィスとレイヴィスの両親がいてこの二人にもレイヴィスの体が治った事を伝えると、二人してぶっ飛んでレイヴィスの所に行った。
後はまぁ、族長殿が様子を見に来たんだけどそれまでみんなでボロボロ泣いてたから、俺以外全員目が真っ赤だった。
そんな形で長い1日は終わった。
もちろん次の日は1日中宴会だったのは言うまでもない。
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