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#1 ああ、破門にしたい
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「お師匠♡ あなたのお尻に僕のコレをハメさせてください♡」
自分のすべてをこいつに授けると心に決めた弟子にまさか、(股間をふくらませながら)そんなことを言われる日がくるとは思わなかった。
***
曰く。
「お師匠、えっちすぎる……存在が性的ですよね。どうして腹筋を出してるんですか? 性的に犯されたいんですか?」
曰く。
「わきが見えてますよ! ああっ上腕三頭筋と上腕二頭筋のラインがすごく性的です! ハアハア、僕の高ぶる欲望をお師匠の脇でやさしくサンドしてもらいたいんですけどいいですか?」
また曰く。
「はあ……むっちりしたお尻と太ももが僕を誘う……。僕は蛾です。あなたという光にからめとられ、たとい死しかないとわかっていても誘われてしまう哀れな蛾なのです。ああ、師匠の太ももにこすりつけたらどんなに気持ちがいいだろう」
「あいつ、破門にしようかな……」
あいつというのはほかでもない、弟子のセレナのことだ。とある目的で弟子にとったはいいが、それまで品行方正な聞き分けのいい子どもだったのに、合格が決まったとたん化けの皮がはがれたように俺に求愛してくるようになった。
はっきり言って気持ち悪い。
気持ち悪いのだが、弟子を募るにあたってすべての課題をこなすことができたのはセレナだけだった。あいつは間違いなく天才だ。俺が力説したことで、国王は安心したようだった。俺も安心だ。4年後、俺は何の心配もなく国を発ってゆける。
そのときはそう思ったのだが。
「フウフウ、お師匠のにおい……(スゥ――――)」
「……」
飽きもせず、セレナは毎晩俺の寝所にもぐりこんでは枕だの寝具だののにおいを吸っている。油断すれば脱いだものももれなく対象だ。一度使用済みの下着を盗まれてからは厳重に管理するようになった。
かといって同性の性的対象になったことがないでもないのだ。俺は剣士だから体格もそこそこいいし、肩書つうか立場もちょっと特殊だ。恋慕と憧憬の区別がついてないような年頃の子どもや単純に俺の肉体が好みで欲情するからという求めもなくはない。もっとも、それに応えたことはないが。
はじめはセレナもそういう類だと思っていた。一時の気の迷いってやつ。
が、見ている感じ、どうも違うらしい。
「天才だからイカれてんのか、イカれてるから天才なのか?」
「ぐふふ、お師匠ったら……♡♡ もしかして一日中僕のこと考えてるんです? それってもう恋じゃないですか? 恋ですよね。いいですよ、僕はいつでもお師匠に挿入できます。むしろ今からでもっ」
バッと着ているものを自ら剥いで突進してきたセレナを正拳でしとめる。恐ろしいことにセレナのそこはすでにフル勃起だった。一瞬で戦闘態勢能力最大解放できるのすごくね? おまえのちんこはスイッチ式なの? つーか顔に似合わずえぐいもの持ってるよね……。そんなグロテスクな魔物を俺の尻につっこもうとしてるのおまえ。ちゃんと赤い血流れてる?
「あー……。破門にしてえ」
セレナはしあわせそうな顔でおてんとさんにその立派なちんこをさらしている。よかったなあ、セレナ。この道場には今俺とおまえしかいないぞ。弟子をこいつ一人しかとってないから当たり前なんだが。
「顔はいいのになあ、おまえ。なんで俺なんかに血迷っちゃったんだ?」
セレナは客観的に見てみてくれのいい方だと思う。こぎれいな格好をさせれば清潔そうな良家のおぼっちゃんに見える程度には。実際、国王に招待された夜会にセレナを連れて行ったら、綺麗なお嬢ちゃんたちがわらわらと寄ってきたものだ。修行が終わったらぜひセレナを婿にほしい、という申し出もいくつかもらっている。
ばかなやつだ。
俺はシーツを持ってきてセレナにかぶせてやる。勃起したちんこなんかいつまでも見ていたいものじゃない。
「ああっお師匠ったらそんな大胆な……♡♡」
へくしゅ、とセレナが気絶したままくしゃみをする。いったいどんなおぞましい夢を見ているのか。いっそ放置しておきたい気もするが化けて出られても面倒だ。
この国では、魂は循環するものであり、死後は次の肉体へ転生すると信じられている。が、前の生に未練がある場合、アンデッドという下級の魔物になって未練の対象にとりつくのだそうだ。
俺はアンデッドとなったセレナにとりつかれた自分を想像して震えた。邪竜は倒したことがあるが、アンデッドはない。というかアンデッドってやつはそもそも剣じゃ切れないって話だ。聖なる力を持つ聖職者の、それも限られた一部の人間にしか祓うことができないらしい。
腹の立つ話だ。
この馬鹿、俺が教えたことはすぐに覚えやがるんだ。ときどき俺もこいつの天性がおそろしくなる。おそらくこいつは将来、俺以上に強い剣士になるだろう。あるいは俺がこの国を発つころには、俺はこいつに追い抜かれているかもしれない。
俺はたぶん、セレナの才能に嫉妬している。
「やめよう」
声に出したのはわざとだ。そうすることで思考や感情の悪い流れを断つことができると、昔おそわった覚えがある。もっともそんなのはその場しのぎの小細工で、負の感情ってのは確実に積み重なっていくそうだが。
若い才能に嫉妬したところでどうなるんだ? そんなの犬も食わねえって話。だって世界ってのは常に代謝でなりたってんだ。生まれて衰えて朽ちる。人間も花も動物も全部同じだ。赤ん坊が成長する。そこそこ物のわかる年になってふと振り返るといつか自分のいた場所にかつて赤ん坊だったやつがいる。
そんで気づくんだよ。自分もまた、かつて自分の若さに嫉妬していた大人たちと同じ場所にきたんだってことに。時間という理不尽なベルトに乗せられて俺たちは常にどこかへ運ばれている。
俺はセレナをかつぎ、部屋に運んだ。
自分のすべてをこいつに授けると心に決めた弟子にまさか、(股間をふくらませながら)そんなことを言われる日がくるとは思わなかった。
***
曰く。
「お師匠、えっちすぎる……存在が性的ですよね。どうして腹筋を出してるんですか? 性的に犯されたいんですか?」
曰く。
「わきが見えてますよ! ああっ上腕三頭筋と上腕二頭筋のラインがすごく性的です! ハアハア、僕の高ぶる欲望をお師匠の脇でやさしくサンドしてもらいたいんですけどいいですか?」
また曰く。
「はあ……むっちりしたお尻と太ももが僕を誘う……。僕は蛾です。あなたという光にからめとられ、たとい死しかないとわかっていても誘われてしまう哀れな蛾なのです。ああ、師匠の太ももにこすりつけたらどんなに気持ちがいいだろう」
「あいつ、破門にしようかな……」
あいつというのはほかでもない、弟子のセレナのことだ。とある目的で弟子にとったはいいが、それまで品行方正な聞き分けのいい子どもだったのに、合格が決まったとたん化けの皮がはがれたように俺に求愛してくるようになった。
はっきり言って気持ち悪い。
気持ち悪いのだが、弟子を募るにあたってすべての課題をこなすことができたのはセレナだけだった。あいつは間違いなく天才だ。俺が力説したことで、国王は安心したようだった。俺も安心だ。4年後、俺は何の心配もなく国を発ってゆける。
そのときはそう思ったのだが。
「フウフウ、お師匠のにおい……(スゥ――――)」
「……」
飽きもせず、セレナは毎晩俺の寝所にもぐりこんでは枕だの寝具だののにおいを吸っている。油断すれば脱いだものももれなく対象だ。一度使用済みの下着を盗まれてからは厳重に管理するようになった。
かといって同性の性的対象になったことがないでもないのだ。俺は剣士だから体格もそこそこいいし、肩書つうか立場もちょっと特殊だ。恋慕と憧憬の区別がついてないような年頃の子どもや単純に俺の肉体が好みで欲情するからという求めもなくはない。もっとも、それに応えたことはないが。
はじめはセレナもそういう類だと思っていた。一時の気の迷いってやつ。
が、見ている感じ、どうも違うらしい。
「天才だからイカれてんのか、イカれてるから天才なのか?」
「ぐふふ、お師匠ったら……♡♡ もしかして一日中僕のこと考えてるんです? それってもう恋じゃないですか? 恋ですよね。いいですよ、僕はいつでもお師匠に挿入できます。むしろ今からでもっ」
バッと着ているものを自ら剥いで突進してきたセレナを正拳でしとめる。恐ろしいことにセレナのそこはすでにフル勃起だった。一瞬で戦闘態勢能力最大解放できるのすごくね? おまえのちんこはスイッチ式なの? つーか顔に似合わずえぐいもの持ってるよね……。そんなグロテスクな魔物を俺の尻につっこもうとしてるのおまえ。ちゃんと赤い血流れてる?
「あー……。破門にしてえ」
セレナはしあわせそうな顔でおてんとさんにその立派なちんこをさらしている。よかったなあ、セレナ。この道場には今俺とおまえしかいないぞ。弟子をこいつ一人しかとってないから当たり前なんだが。
「顔はいいのになあ、おまえ。なんで俺なんかに血迷っちゃったんだ?」
セレナは客観的に見てみてくれのいい方だと思う。こぎれいな格好をさせれば清潔そうな良家のおぼっちゃんに見える程度には。実際、国王に招待された夜会にセレナを連れて行ったら、綺麗なお嬢ちゃんたちがわらわらと寄ってきたものだ。修行が終わったらぜひセレナを婿にほしい、という申し出もいくつかもらっている。
ばかなやつだ。
俺はシーツを持ってきてセレナにかぶせてやる。勃起したちんこなんかいつまでも見ていたいものじゃない。
「ああっお師匠ったらそんな大胆な……♡♡」
へくしゅ、とセレナが気絶したままくしゃみをする。いったいどんなおぞましい夢を見ているのか。いっそ放置しておきたい気もするが化けて出られても面倒だ。
この国では、魂は循環するものであり、死後は次の肉体へ転生すると信じられている。が、前の生に未練がある場合、アンデッドという下級の魔物になって未練の対象にとりつくのだそうだ。
俺はアンデッドとなったセレナにとりつかれた自分を想像して震えた。邪竜は倒したことがあるが、アンデッドはない。というかアンデッドってやつはそもそも剣じゃ切れないって話だ。聖なる力を持つ聖職者の、それも限られた一部の人間にしか祓うことができないらしい。
腹の立つ話だ。
この馬鹿、俺が教えたことはすぐに覚えやがるんだ。ときどき俺もこいつの天性がおそろしくなる。おそらくこいつは将来、俺以上に強い剣士になるだろう。あるいは俺がこの国を発つころには、俺はこいつに追い抜かれているかもしれない。
俺はたぶん、セレナの才能に嫉妬している。
「やめよう」
声に出したのはわざとだ。そうすることで思考や感情の悪い流れを断つことができると、昔おそわった覚えがある。もっともそんなのはその場しのぎの小細工で、負の感情ってのは確実に積み重なっていくそうだが。
若い才能に嫉妬したところでどうなるんだ? そんなの犬も食わねえって話。だって世界ってのは常に代謝でなりたってんだ。生まれて衰えて朽ちる。人間も花も動物も全部同じだ。赤ん坊が成長する。そこそこ物のわかる年になってふと振り返るといつか自分のいた場所にかつて赤ん坊だったやつがいる。
そんで気づくんだよ。自分もまた、かつて自分の若さに嫉妬していた大人たちと同じ場所にきたんだってことに。時間という理不尽なベルトに乗せられて俺たちは常にどこかへ運ばれている。
俺はセレナをかつぎ、部屋に運んだ。
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