干支乱勢(えとらんぜ)~12人のおじさん格闘家、ケモミミ少女に異世界転生しバトルトーナメントに挑みます!~

たかはた睦

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復活編

移民の歌

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 リング上で大暴れし、ブーイングを浴びながらバックステージへと引き揚げて来たチー ム・エトランゼの面々を待っていたのは、二人の男だった。

「お疲れさん」

「お帰り、星野」

 一人は長身に長い顎をした初老の男。もう一人はマスクを被った男。

「稲城会長!田山さん!」

「アントニウス稲城にライゲル・エンマスカラド!?」

 リンピオは世界的な伝説のレスラーを前に驚く。
 長身の男は真日本プロレス創始者、アントニウス稲城こと稲城寛造。マスクマンの方は “世界の獣王”の異名を持つライゲル・エンマスカラドこと田山聡一。

「星野、俺が10年前お前の意見も聞かずにクビにしたにも関わらず、真日《ウチ》に戻ってき てくれてありがとうよ」

 稲城は頭を深々と下げる。

「やめてくださいよ会長!俺の方こそ、お陰でメキシコやアメリカでいい体験といい仲間が出来ましたから」

 星野はリンピオ、マイケル、ピエール達を見る。
 今回のチーム・エトランゼによる乱入事件は、予め真日本と星野達の間で打ち合わせをし た上での仕掛けギミックである。格闘技ブームが下火となった今、WeWでスターとなった星野やリンピオ達をリングに上げる事で、海外のプロレスファンからの注目も集めて真日本プロレスを世界に売り出していこうという作戦なのだ。
 観客の殆どは本当に星野達が海外からいきなり殴り込んで来たと信じているに違いないが、実際には星野達も永西やテンカジにも事前に知らされた設定 (アングル)と物語(シナ リオ)の上で先ほどのやり取りは行われたのだ。客を騙したかのようにも思われるかもしれないが、これがプロレスというものなのだ。

「星野」

 稲城は神妙な面持ちで星野と目を合わせる。

「実は俺ァもう先が長くない」

 稲城はこの時点で持病が進行しており、5年ほど後にこの世を去る……それは星野が前回の人生で既に経験している事だ。

「……はい」

「オイオイ、何泣きそうな顔してやがるんだい。泣くのは俺が死んでからにしろよ」

 と、稲城は笑いながら星野の背を叩く。その威力たるや還暦を超え闘病中の身とは思えぬ力強さではないか。

「星野、俺が死ぬまでにもう一度真日本を、いやプロレスをお前達の手で爆発させてくれ!」

「オス!!」



─翌年1月4日
 ドームで永西青義を破りTJPW世界ヘビー級王座を獲得したアトラス星野。因みにこの日はライゲル・エンマスカラドの引退試合も行われ、その相手を務めたのはスペル・リンピオであった。

 メインイベント終了後、リンピオ・マイケル・ピエールに続き、リングに8人の男達が上がる。彼らは揃って同じチーム・エトランゼのTシャツを着ているではないか。

「ひ、ヒカルド ・マエダ・シウバだ!総合格闘技最強の男が何でプロレスのリングに!?」

「あっちは柔道金メダルのヴィクトールに、そっちは元横綱の旭宝山……ボクシング七階級王者のエリックまでいるじゃねえか!」

「全然知らないけど強そうな奴らまでいるぞ!一体何なんだあいつら!?」

 観客席からはどよめきが巻き起こる中、格闘技界のビッグネームから得体の知れない男達まで、同じTシャツ姿の男達12人はリング上に並ぶと、先頭に立つ星野がマイクを執る。

「我々の名は、超党派格闘集団エトランゼ!!プロレス、総合、ボクシング、相撲他、あらゆる格闘技の最強戦士で構成された団体である!!我々は日本の……いや、世界中の格闘技界に新たな時代を呼ぶ為に結成した最強集団だ!いつ何時、どこで、どんなルールで誰の挑戰をも受けて立つ!!最強の称号を求める者は我々の前に出てこい!」

 そう言い放った星野の前に一人の男が立ちはだかる。

「来たか……ジョニー!」

 
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