干支乱勢(えとらんぜ)~12人のおじさん格闘家、ケモミミ少女に異世界転生しバトルトーナメントに挑みます!~

たかはた睦

文字の大きさ
上 下
44 / 60
決勝編

ハリケーンズ・バム

しおりを挟む
 “神”と呼ばれる者が口を開いた。

「やあやあ、子国の諸君、優勝おめでとう」

 拍手しながら微笑む神。しかし、その姿と動きは人間のそれにしか見えない。

「俺っちの名はヤンセ・ライマン!全ての宇宙を造りし者だ。“機鋼救星ムスメサイア”と“格ゲー転生”、“聖犬伝説”を読んだ皆にはお馴染みだな!何!?まだ読んでない?じゃあエピソードの最後の方にURLを貼っておいてやるから読みとうなれコラ!!」

「何だ?何を言ってやがるんだコイツは……?」

 テルは目の前でわけの解らない事を喋り始めたヤンセに初めて畏怖の念を抱く。

「よう、アトラス星野!俺っちはお前のファンなんだぜ?お前が真日プロの2006年島根県くにびきメッセ大会でコスチュームを滞在先のホテルに忘れて急遽ジャージで出た試合、アレには驚いたが大爆笑したぞ」

「何でそんなテレビ放送もしなかった地方巡業の試合を知ってやがる……」

「フフン、言ったろ?俺は全ての宇宙を造った者だ。お前のいた地球もな!」

 ヤンセの眼光が鋭くなる。そしてようやく目前の男が、ただ人の姿をしているだけの超次元的存在である事を実感した。

「さて、まずはウスマよ、汝をパントドンの覇者と認定するとともに、副特典として、何か願いを叶えてやろう!何がいい?」

 願いを叶えるなどと大それた事を、ましてや副賞などと平然と言ってのけるヤンセに戸惑いつつも、ウスマは口を開いた。

「では……ワシは、『パントドンにおける如何なる国家間の争いの禁止』を願います」

「ほーう、って事は……」

「干支乱勢大武繪も、今回で最後。次回以降は永遠に廃止でございます!」

 ウスマの発言に会場内がどよめく。

「待たれよウスマ老!おぬし、正気か!?」

 リングサイドで先ほど退場したはずのイルコ女王が吠える。

「無論じゃ。代理戦争とはいえ、争いがこのパントドンを狂わせる!ワシらネズミ達は常に争いの犠牲者だったのだ。これは数千年に及ぶ子国の悲願なんじゃあ!!」

 力説するウスマに対し、手を挙げる者がリングサイドに二人増えていた。

「ウスマ老、あなたの考えは解りましたわ。でも、その平和主義を他の十一国が素直に守ると思いますの?」

 と、辰国女王アンフィーは魚になったマイが入ったバケツを持ちながら言う。

「そうですぞ!仮に貴国以外の十一国が結託して貴国に攻め入ったらどうするおつもりですかな?」

 酉国首相ササミはヒヨコになったリコを抱えながら。

「ああ、それなら心配すんな。おい、ゴーレム達!」

「何でしょう、ヤンセ様」

 ジャガー・ハトリ、カッツェ・シバタ、ブルーソックス・ウミノの三体は揃ってヤンセの側に侍う。

「こいつら“護隷武”は調和と平定を目的にこさえた存在だ。故に大会の審判を任せてきた。だが、これからの任務はパントドンにおいて戦争を仕掛けた国と応えた国に対して実力を行使し止めさせる“喧嘩両成敗”の役目を負わせる。その気になればこいつら1体で国一つ簡単に滅ぼせるからな!」

 ヤンセはさらりと恐ろしい事を言ってのけると同時に、何千年と続いたとされる伝統行事にして国家間の取り決めをすんなりと終わらせる。地球で言えばオリンピックを終わらせるようなものである。

「さて、お次は星野輝臣。お前を元の世界に生き返らせる約束だったな」

 ヤンセがテルに向かって右手をかざし何らかの不思議パワーを発動させようとしたその時だった。

「待ってくれや、神さんよ」

「何だ?というか俺っちの事はヤンセでいいぜ」

 テルは続ける。

「ヤンセ、あんたは何だって出来る力があるみてえだな。じゃあ、俺だけでなく12人の干支乱勢全員を元の世界に生き返らせてくれよ」



───────────────────────
※本エピソードに登場したヤンセというキャラクターですが、筆者の別作品『機鋼救星ムスメサイア』等複数作品に跨いで登場するキャラクターです。
気になった方は詳細はそれらの作品を参照して下さい。

機鋼救世ムスメサイア
https://kakuyomu.jp/works/16816700429577434741

聖犬伝説(ひじりいぬレジェンズ)
https://kakuyomu.jp/works/16817330647531283486

人類最強格闘家、格ゲー最弱キャラに転生!?天才ゲーマー女子と一緒に最強を目指します! https://kakuyomu.jp/works/16817330659231403629

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...