干支乱勢(えとらんぜ)~12人のおじさん格闘家、ケモミミ少女に異世界転生しバトルトーナメントに挑みます!~

たかはた睦

文字の大きさ
上 下
40 / 60
決勝編

“AO”corner

しおりを挟む
『会場にお越しの皆様、中継をご覧の皆様、お待たせいたしました!これより干支乱勢大武繪決勝戦が始まります!!実況はわたくし申国のヨシ・ツジナリと』

『解説はヒナコ・ライマンでお送りするよ~』



 リングの中央にタキシード姿をしたカエルの獣人がマイクを持って立っていた。リングアナウンサーのケロン・タナカである。

「最強の獣は誰か!?今、それを決する時!!」

 観客達の歓声が響く。

「紅禽の門より、巳国・ヒカル選手の入場です!」

 鮮血のように、或いは業火のように赤く塗られたゲートから、ヒカルは姿を現した。緑と黄色のブラジル国旗を象った半袖のラッシュガードを上に、下は鱗の模様が刺繍された白いファイトショーツという出で立ちである。

『さあさあ決勝戦が行われようとしているリングに向かう一人目の干支乱勢はヒカル選手。堂々とした足取りです。蜥蜴のように素早く、亀のように慎重に、鰐のように力強く、そして蛇のように執念深いのが巳の干支乱勢。強豪達を丸呑みしてきた一人の大蛇が優勝へと、その牙を伸ばします!!」

 ヒカルはそのまま歩いてリングへと進み、トップとセカンド二つのロープの間をくぐり、リングイン。マットの中央辺りに立ち、落ち着き払った様子で対戦相手を待つ。

「続きまして、蒼竜の門より子国・テル選手の入場です!」

 空の如く、はたまた海の如く青く塗られたゲートから姿を現したテル。その服装は今までと同じ黒いシングレットにリングシューズだったが、頭部にはこれまでと違う装飾が施されていた。

『おっとテル選手、顔にリコ選手のマスクを着けての入場です!準決勝でヒカル選手に敗れた友の分まで共に闘おうという事でしょうか!!』

 テルはトップロープを両手で掴むと、両足で跳び、空中で脚を180度開き飛び越えた。リコのリングインを真似たパフォーマンスである。転生前、ヘビー級のレスラーだった頃は軽やかに飛ぶ事など出来なかったが、干支乱勢となった今の軽い体重ならジュニアヘビー級レスラーの真似事くらいは出来るのだ。
 リングインしたテルはリコのマスクを外すと、 8本あるコーナーポストの内、青い鉄柱にそれを被せた。

「相変わらず茶番と無駄だらけだ」

 リング中央からヒカルが言う。

「お前の言う無駄と茶番で客を楽しませるのが、プロレスなんだよ」

 テルはヒカルの方へと歩き出し、至近距離で対峙する。

「そのくだらねえ演出もここまでだ。そんなもんやらせる間もなく負かしてやる!」

「秒殺宣言か。いいねえ。因みにプロレスの最短決着記録は6秒だ。お前にそれを更新できるかな?」

 にぃっと笑い、余裕を見せるテル。

「二人とも、構えなさい」

 決勝戦を捌く審判ゴーレム、ジャガー・ハトリに促されると、テルとヒカルはそれぞれ構える。

 未練を残し命を落とした十二人の男達は、この異世界に転生し、獣の力を宿し、闘い、散った。最後に残るは鼠か蛇か。
 現世への復活を賭けた獣たちの闘いは、終わりを迎えようとしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...