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転生編
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─ゲッシ国ピカラバ町中央広場
テルの前に、3人のゲッシ人が並ぶ。
「改めまして、神官 (クラリック)のモルモです」
先ほどまでの軽装とは違い、修道服の様な衣装に鎚(メイス)を携えたモルモ。
「オレは盗賊(バンディット) のジャビルだ!」
「自分は同じく盗賊 (バンディット)のムスターっす!」
頭巾を被ったゲッシ人の若者2名が名乗る。
「………盗賊、二人も要るか?」
テルはジャビルとムスターを指さし、モルモに問う。
「お生僧ですが、ゲッシ人の殆どが盗賊の適性を持ってる以上、仕方ありません」
武闘家、神官、盗賊、盗賊。これがゲームのパーティーなら、かなりバランスが悪い。回復役が一人いるだけまだマシだろう。テルはそう考える事にした。
「干支乱勢どの、俺たちをみくびっちゃ困るぜ?」
「迷宮こそ我ら盗賊がその真価を発揮できる場所!大船に乗ったつもりで いてくださいっす!!」
胸を張るジャビルとムスター。
「そうか……頼りにしてるぜ、三人とも!!」
テルは3人のネズミ達が差し出した拳に、自らもグータッチで応えた。
─カの穴(パワー・ホール)
「ぬおりゃあ!!」
テルは自身の3倍はある巨大なサソリに、蠍固め(スコーピオン・デスロ ック)を仕掛けていた。ぶちんっという音とともに毒針の付いたサソリ尾のが千切れる。断末魔を上げ、大サソリが絶命した事を確認すると、テルは技を解き、千切った尾を壁に叩きつける様にブン投げた。
「 ふざけんなよ!あのクソネズミども!!」
怒鳴り散らすテルだが、その怒りの矛先である相手は既に此処には居ない。一行がパワーホールに入って5分ほどすると、先程テルが倒した大サソリと遭遇した。すると、モルモとジャビル、ムスターの3人は大サソリを見るなり、文字通り尻尾を巻いて逃げ出したのであった。
「ネズミなんぞに期待した俺がバカだったぜ!」
テルはピカラバの街に戻ったら、モルモ達に何の技を掛けてやろうかと考えながら一人で探索を続ける事にした。
どれだけ進んだだろうか。テルの体に生えた大きな耳は敵の足音を、顔に生えたヒゲは空気の流れを感じ取る。これにより敵の気配をいち早く察知し、戦闘に備えられるのはダンジョン探索に向いた能力である。出発前にムスターが言っていた通り、ネズミのこの特性は盗賊にとって最適な様だ。
「どうせならもっと強くてカッコイイ動物の能力が欲しかったぜ。 干支ならトラとかドラゴンとかよぉ……」
テルがそうぼやきながら探索を進めていたその時だった。
『グォアアアーーー!!!』
雄叫びを上げる、身の丈2メートルはある巨躯のモンスターがテルの視界に飛び込む。灰色の筋肉質な肌をした人型のそれは、額に1本の太い角が生えている。その姿は童話に登場する鬼そのもの。その名も巨鬼(オーガ)であった。オーガは右手に把持した木製の棍棒を 振りかぶる。その先にいたのは、テルと同じくらいの体格をした少女だった。
「Tranquilo!」
少女はオーガを挑発するように言うと、棍棒の一撃をかわして跳躍した。2メートル近い高さを飛び跳ねると、オーガの頭部を自らの大腿部で挟み込み、そのまま全身を捻ってオーガの巨体を投げ飛ばした。
「あれはフランケンシュタイナー?……いや違う、ティヘラだ!!」
ティヘラとは、別名をヘッドシザースホイップというプロレスの技である。そして、着地した少女は仰向けに転がったオーガの足を、胡座をかかせる様に器用に畳み、組んだ足の中心にオーガの両腕を差し込むと、更に横から腰を蹴って背中が天を仰ぐ様に反転させた。 オーガは手足を動かすも、自らの手足が知恵の輪の如く絡まり振り解くことが出来ずにもがいている。
「極楽固め……パラダイス・ロック!!」
テルが呼称したその名こそ、この不思議な関節技の名前である。身動きの取れなくなったオーガの顔面に、謎の少女は助走を付けた低空ドロップキックを炸裂させた。もがくことすら出来なくなったオーガから視線を外すと、少女はテルの姿に気付き、目が合った。
「Hola!!」
片手を挙げ、挨拶する彼女は目の周りから後頭部までを覆った覆面と、毛先を赤く染めた癖毛のセミロングヘア、そして褐色の肌に緑、白、赤のトリコロールカラーをした上下に分かれた水着の様なコスチュームを纏っていた。
「いや、後ろ後ろ!!」
テルは慌てて少女の後ろを指さす。
『グォアアアーーー!!!』
先ほど失神したはずのオーガが起き上がり、謎の少女を死角から襲う……
「どっせーい!!」
テルはオーガにドロップキックを食らわせると、仰け反ったオーガの股下に潜り込むと、肩車をする様に持ち上げた。
「今だ!コードブレイカーを掛けろ!!」
テルが謎の少女に言うと、彼女は頷き、オーガの顔面に両膝に押し付け、頭部を抱え込んで飛びつき、そのまま後方に勢いよく倒れる。
「「うおぉーー!!」」
テルと謎の少女のツープラトン攻撃によって頸椎を破壊されたオーガは、今度こそ絶命した。
「やったな!」
「グラシアス!」
謎の少女が差し出した拳にテルは自らの拳を当てる。
「ボクはリン。酉(ハルコン)の干支乱勢だよ。キミもそうなんだろ?」
マスク姿の少女、リンは覆面越しに爽やかな笑顔を浮かべるも、テルの顔色は強ばっていた。
「やっちまった……他国の干支乱勢に干渉しちまった……」
テルの前に、3人のゲッシ人が並ぶ。
「改めまして、神官 (クラリック)のモルモです」
先ほどまでの軽装とは違い、修道服の様な衣装に鎚(メイス)を携えたモルモ。
「オレは盗賊(バンディット) のジャビルだ!」
「自分は同じく盗賊 (バンディット)のムスターっす!」
頭巾を被ったゲッシ人の若者2名が名乗る。
「………盗賊、二人も要るか?」
テルはジャビルとムスターを指さし、モルモに問う。
「お生僧ですが、ゲッシ人の殆どが盗賊の適性を持ってる以上、仕方ありません」
武闘家、神官、盗賊、盗賊。これがゲームのパーティーなら、かなりバランスが悪い。回復役が一人いるだけまだマシだろう。テルはそう考える事にした。
「干支乱勢どの、俺たちをみくびっちゃ困るぜ?」
「迷宮こそ我ら盗賊がその真価を発揮できる場所!大船に乗ったつもりで いてくださいっす!!」
胸を張るジャビルとムスター。
「そうか……頼りにしてるぜ、三人とも!!」
テルは3人のネズミ達が差し出した拳に、自らもグータッチで応えた。
─カの穴(パワー・ホール)
「ぬおりゃあ!!」
テルは自身の3倍はある巨大なサソリに、蠍固め(スコーピオン・デスロ ック)を仕掛けていた。ぶちんっという音とともに毒針の付いたサソリ尾のが千切れる。断末魔を上げ、大サソリが絶命した事を確認すると、テルは技を解き、千切った尾を壁に叩きつける様にブン投げた。
「 ふざけんなよ!あのクソネズミども!!」
怒鳴り散らすテルだが、その怒りの矛先である相手は既に此処には居ない。一行がパワーホールに入って5分ほどすると、先程テルが倒した大サソリと遭遇した。すると、モルモとジャビル、ムスターの3人は大サソリを見るなり、文字通り尻尾を巻いて逃げ出したのであった。
「ネズミなんぞに期待した俺がバカだったぜ!」
テルはピカラバの街に戻ったら、モルモ達に何の技を掛けてやろうかと考えながら一人で探索を続ける事にした。
どれだけ進んだだろうか。テルの体に生えた大きな耳は敵の足音を、顔に生えたヒゲは空気の流れを感じ取る。これにより敵の気配をいち早く察知し、戦闘に備えられるのはダンジョン探索に向いた能力である。出発前にムスターが言っていた通り、ネズミのこの特性は盗賊にとって最適な様だ。
「どうせならもっと強くてカッコイイ動物の能力が欲しかったぜ。 干支ならトラとかドラゴンとかよぉ……」
テルがそうぼやきながら探索を進めていたその時だった。
『グォアアアーーー!!!』
雄叫びを上げる、身の丈2メートルはある巨躯のモンスターがテルの視界に飛び込む。灰色の筋肉質な肌をした人型のそれは、額に1本の太い角が生えている。その姿は童話に登場する鬼そのもの。その名も巨鬼(オーガ)であった。オーガは右手に把持した木製の棍棒を 振りかぶる。その先にいたのは、テルと同じくらいの体格をした少女だった。
「Tranquilo!」
少女はオーガを挑発するように言うと、棍棒の一撃をかわして跳躍した。2メートル近い高さを飛び跳ねると、オーガの頭部を自らの大腿部で挟み込み、そのまま全身を捻ってオーガの巨体を投げ飛ばした。
「あれはフランケンシュタイナー?……いや違う、ティヘラだ!!」
ティヘラとは、別名をヘッドシザースホイップというプロレスの技である。そして、着地した少女は仰向けに転がったオーガの足を、胡座をかかせる様に器用に畳み、組んだ足の中心にオーガの両腕を差し込むと、更に横から腰を蹴って背中が天を仰ぐ様に反転させた。 オーガは手足を動かすも、自らの手足が知恵の輪の如く絡まり振り解くことが出来ずにもがいている。
「極楽固め……パラダイス・ロック!!」
テルが呼称したその名こそ、この不思議な関節技の名前である。身動きの取れなくなったオーガの顔面に、謎の少女は助走を付けた低空ドロップキックを炸裂させた。もがくことすら出来なくなったオーガから視線を外すと、少女はテルの姿に気付き、目が合った。
「Hola!!」
片手を挙げ、挨拶する彼女は目の周りから後頭部までを覆った覆面と、毛先を赤く染めた癖毛のセミロングヘア、そして褐色の肌に緑、白、赤のトリコロールカラーをした上下に分かれた水着の様なコスチュームを纏っていた。
「いや、後ろ後ろ!!」
テルは慌てて少女の後ろを指さす。
『グォアアアーーー!!!』
先ほど失神したはずのオーガが起き上がり、謎の少女を死角から襲う……
「どっせーい!!」
テルはオーガにドロップキックを食らわせると、仰け反ったオーガの股下に潜り込むと、肩車をする様に持ち上げた。
「今だ!コードブレイカーを掛けろ!!」
テルが謎の少女に言うと、彼女は頷き、オーガの顔面に両膝に押し付け、頭部を抱え込んで飛びつき、そのまま後方に勢いよく倒れる。
「「うおぉーー!!」」
テルと謎の少女のツープラトン攻撃によって頸椎を破壊されたオーガは、今度こそ絶命した。
「やったな!」
「グラシアス!」
謎の少女が差し出した拳にテルは自らの拳を当てる。
「ボクはリン。酉(ハルコン)の干支乱勢だよ。キミもそうなんだろ?」
マスク姿の少女、リンは覆面越しに爽やかな笑顔を浮かべるも、テルの顔色は強ばっていた。
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