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夏の物語
力が合わさって
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「力が強くなるとね、空を飛べるんだ」
人間ならどや顔になるんだろうか、胸を張ってリュウが言った。
わたしは思考が追いつかず、絵に描いたようなぽかん顔をしていたに違いない。
「空を、飛べる……?」
「そう、空を飛べるんだ」
「空を、飛べる……?」
驚きすぎて思わず甲斐田くんを見る。
甲斐田くんはにこにこしている。
いや、リュウの存在が既に驚きの世界なんだけど、確かに空を飛べそうな見た目ではあるけど!
「さ、行こう、夏さん。背中に乗って。ほら、龍平も」
「うん、土田さん、ここから上りやすいよ」
甲斐田くんはリュウの背中に乗ったことがあるのか、慣れた様子でリュウの背にまたがる。
「ほら」
自然に差し出される甲斐田くんの手を借りて、わたしもリュウの背中にまたがった。
クロとシロもうきうきとついてくる。
「夏さん、心の準備はいい?」
リュウは背中に乗るわたしたちを軽く振り返って尋ねた。
「うん!」
どきどきしながらわたしが答えると、リュウは前を向いて、ゆっくりと翼を動かし始めた。
ふわっ
ジェットコースターともまた違った浮遊感がわたしを包んだ。
みるみるうちに高く、高く空に近づいていく。
「わあ……」
思わず息を飲む。いつも暮らしている街が、小さく、小さく見える。
「あ、見て、中学が見えるよ」
甲斐田くんがわたしの後ろで楽しそうな声を上げる。
「ほんとだ……」
小さく見える中学校は、どこか知らない場所のようで、でも馴染みのある光景だった。
「たかーい!」
「すごーい!」
クロとシロは高度があっても同じ調子らしい。なんなら地上よりもテンションが上がっている。
「夏さんは!」
「怖いの?」
「大丈夫?」
「楽しいよ!」
高所恐怖症というわけではないが、わたしはあまりの高さに口数が減っていた。クロとシロはそんなわたしの周りにぴょんぴょんとやってきた。
「こ、怖いわけではないんだけど、こんなふうに街を上から見ることがなかったから、ちょっと、驚いてるだけ」
わたしはなんとか答える。
「それならよかった!」
「僕たちはちょっとだけなら飛べるんだけど」
「こんなには高く飛べないから」
「いつもリュウの背中は楽しみなんだ!」
「久々のリュウ飛行!」
「万歳!」
浮いて移動するクロシロが飛ばされないのかこっちが不安になるくらい、ぴょんぴょん飛び回っている。
「土田さん、クロシロは大丈夫だよ。僕も何回かリュウに乗せてもらってるけど、あいつら毎回飛び回ってて、落ちたことないから」
「そっか、それならよかった」
リュウの背中に少し慣れてきたわたしは、やっとほっぺのこわばりが収まってきた。
こんなにのびのびとした気持ちになったのはいつぶりだろう。
小さく見える街を見下ろしていると、すかっとした気持ちになってきた。
よし、落ち着いて、がんばろう。部活も、友だちも、大切にしよう。
高い空で深呼吸したわたしは、自然にそう思えた。
「ありがとう、リュウ」
こっそりつぶやいたわたしに、リュウは軽く振り返って微笑んだ。
人間ならどや顔になるんだろうか、胸を張ってリュウが言った。
わたしは思考が追いつかず、絵に描いたようなぽかん顔をしていたに違いない。
「空を、飛べる……?」
「そう、空を飛べるんだ」
「空を、飛べる……?」
驚きすぎて思わず甲斐田くんを見る。
甲斐田くんはにこにこしている。
いや、リュウの存在が既に驚きの世界なんだけど、確かに空を飛べそうな見た目ではあるけど!
「さ、行こう、夏さん。背中に乗って。ほら、龍平も」
「うん、土田さん、ここから上りやすいよ」
甲斐田くんはリュウの背中に乗ったことがあるのか、慣れた様子でリュウの背にまたがる。
「ほら」
自然に差し出される甲斐田くんの手を借りて、わたしもリュウの背中にまたがった。
クロとシロもうきうきとついてくる。
「夏さん、心の準備はいい?」
リュウは背中に乗るわたしたちを軽く振り返って尋ねた。
「うん!」
どきどきしながらわたしが答えると、リュウは前を向いて、ゆっくりと翼を動かし始めた。
ふわっ
ジェットコースターともまた違った浮遊感がわたしを包んだ。
みるみるうちに高く、高く空に近づいていく。
「わあ……」
思わず息を飲む。いつも暮らしている街が、小さく、小さく見える。
「あ、見て、中学が見えるよ」
甲斐田くんがわたしの後ろで楽しそうな声を上げる。
「ほんとだ……」
小さく見える中学校は、どこか知らない場所のようで、でも馴染みのある光景だった。
「たかーい!」
「すごーい!」
クロとシロは高度があっても同じ調子らしい。なんなら地上よりもテンションが上がっている。
「夏さんは!」
「怖いの?」
「大丈夫?」
「楽しいよ!」
高所恐怖症というわけではないが、わたしはあまりの高さに口数が減っていた。クロとシロはそんなわたしの周りにぴょんぴょんとやってきた。
「こ、怖いわけではないんだけど、こんなふうに街を上から見ることがなかったから、ちょっと、驚いてるだけ」
わたしはなんとか答える。
「それならよかった!」
「僕たちはちょっとだけなら飛べるんだけど」
「こんなには高く飛べないから」
「いつもリュウの背中は楽しみなんだ!」
「久々のリュウ飛行!」
「万歳!」
浮いて移動するクロシロが飛ばされないのかこっちが不安になるくらい、ぴょんぴょん飛び回っている。
「土田さん、クロシロは大丈夫だよ。僕も何回かリュウに乗せてもらってるけど、あいつら毎回飛び回ってて、落ちたことないから」
「そっか、それならよかった」
リュウの背中に少し慣れてきたわたしは、やっとほっぺのこわばりが収まってきた。
こんなにのびのびとした気持ちになったのはいつぶりだろう。
小さく見える街を見下ろしていると、すかっとした気持ちになってきた。
よし、落ち着いて、がんばろう。部活も、友だちも、大切にしよう。
高い空で深呼吸したわたしは、自然にそう思えた。
「ありがとう、リュウ」
こっそりつぶやいたわたしに、リュウは軽く振り返って微笑んだ。
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