トロンボーン吹きの夏物語

樫和 蓮

文字の大きさ
上 下
13 / 17
夏の物語

夏の力

しおりを挟む
「わたしの力ってどういうこと……?」
安心した顔を見せる甲斐田くんを、怪訝な目で見つめるしかできない。
はしゃいでいたクロシロも、どことなく安堵した様子だった。

「突然こんなことを言ってごめんね、夏さんには、僕ととても相性のいい力があるんだ」
リュウは少し楽になったようで、いつものほがらかな表情が戻ってきた。
「龍平と話してくれる友人として来てくれたよね、初めて会ったとき、僕たち谷の住人と、夏さんに同じ波長があるなって気づいたんだ」
リュウの説明を聞いていても、いまいち要領を得ない。
「土田さん、全然わからないって顔をしてるね」
甲斐田くんもほっとしたのか、前みたいに笑ってくれる。
わたしは状況がつかめず、自分でもわかるくらい、怪訝な顔をしている。
「そりゃ……みんな納得した顔なのはなんでなの!?ちっともわからないんだけど……」
「僕も正直信じてなかったんだけどさ、リュウたちは、相性のいい人からだと、力をもらえるみたいなんだ。普段はそれがなくても、普通に、健康に生きていけるんだけど、どうも体調を崩すとだめらしい」
甲斐田くんがやんわりと説明を始める。

「リュウはとんでもない夏風邪をひいたんだよね!」
「まったくもう、心配しちゃうなあ!」
クロとシロも元気になってきて、飛び回りながら小言を言い始めた。
「ごめんごめん、夏さんが持ってる力のおかげもあって、夏さんと龍平と過ごす時間はとっても健康によかったみたいなんだ」

雰囲気はどんどんよくなっているけど、わたしはいまいちわからないままだ。

「えっと‥…その力って、初めて会ったときからわかってたの?リュウの力になるために、呼ばれてたの?」
竜の谷が楽しくなかったわけではない。なんだか嫌な言い方になってしまっただろうか。なんとなく、ただ友だちとして仲良くしていたと思ったのに、利用されている、とまで言いたいわけじゃないし、リュウが元気になってくれてもちろん嬉しい。

だけど、わたしの胸はなんだかもやもやしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

処理中です...