魔女っ子アイドルリリー

樫和 蓮

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リリーはアイドル

魔女っ子のパワーと秘密

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「ただいまー」
ユリは帰宅してすぐソファに身体を投げ出した。
「おかえり、ユリ。そんなところで寝ないで着替えてきなさい。……消臭スプレーもかけたほうがいいわね」
さっき行ってきた焼肉が臭うらしい。ユリの母、ミラは少し顔をしかめる。
「はあい」
ユリはのそのそと起き上がり、自分の部屋に向かう。

ステージ上では多くの人を魅了するユリだったが、その実、彼女はまだ小学六年生だ。公式プロフィールでは中学二年生。大人っぽく見えるユリはちょっとサバを読んでいる。
「やっぱりライブで力使うのは疲れちゃうなあ」
「だからやめときなって言ったんだよ」
「ロン!」
ユリのベッドの上で黒猫のロンがにゃあと鳴いた。
「大体ユリは魔法を使わなくても可愛いほうだよ。無理に魔法使ってたら疲れちゃうに決まってるじゃん」
「私より可愛い子はグループにいっぱいいるし、私の魔法でみんなを笑顔にできるなら、正しい魔法の使い方、って感じじゃない?」
「それで倒れても知らないんだからね」
ロンはにゃおにゃおと抗議する。
「あー、知らないとか言わないで!今日もお願いします」
ユリはロンの隣に座ってロンを拝むポーズをする。
「僕が優しい黒猫でよかったね、ほんとに。今日もちゃんと集めておいたから」
「ありがとうロン~!さすが私の相棒ね」
ガミガミ言う黒猫のロンは、ユリの相棒で魔法を操れる猫だ。魔法を使った分だけ疲労がたまる魔法使いは、相棒となる動物に、魔法の源になる実を集めてきてもらい、体力を回復させる。

ロンはユリの前に、魔法の実を差し出した。
「大事にしてよね」
どこで集めてきているのかは、魔法使い本人には知らされないことになっている。
「いつもありがとう、ロン」
魔法の実を口に放り込みながら、ユリはロンに抱き着く。うにゃあ、とロンは身をよじる。
「やめてよね、僕だってもう子どもじゃないんだから」
「でも、嫌いじゃないでしょ?」
ユリの上目遣いに、ロンはしょうがないなあとにゃあと鳴いた。
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