7 / 12
男子校との始まらない恋
しおりを挟む
「他校の生徒と付き合うのってなんかかっこよくない?」
「どうしたんまた急に」
今日も相変わらず放課後の教室。いつもと違うのは、千紗と亜依の前にノートと教科書が広げられていることだ。テスト1週間前になり、一応課題を片付けるか、くらいの熱で始めた勉強である。
「あ、あの人?バスで会うっていう」
「あー、ちゃうちゃう、またちゃうくてな」
「テスト勉強はいいん?」
◆◆◆
男子校の生徒で彼女がいる、というのは、共学の生徒とはまた違ったレベルのステータスになるらしい。
だがしかし。
千紗の周りでは、男子校の生徒との出会いなど皆無である。
確かにバスで会う佐藤くん(仮)など知り合う前のレベルの人ならいる。
塾では学校ごとにクラスが違うし、そもそも偏差値のレベルが釣り合わないから講習でも会わない。
近くにある男子校は軒並み超がつく進学校。なんちゃって進学校の千紗には会う機会がない。
そんな千紗にも、合コンめいた話が入ることもある。
◆◆◆
「ちょっと待った、聞いてない」
「あれ、言わんかったっけ?」
「いつよ、知らん知らん」
「あれか、亜依がピアノ行く日」
「あー、それなら知らんくてもしょうがないな…言ってよ!」
「ごめんごめん、すっかり忘れてた、今から話すから、聞いて?」
◆◆◆
クラスメイトの友理子ちゃんから誘われたのは急な話だった。
「ごめん千紗、今日の放課後空いてない??」
「あー、今日は部活も行かないし空いてるよー」
部活についてはかれこれ数か月行った記憶もないのだが、亜依との談笑の時間は千紗にとっては部活の時間、ということになっている。
「埋め合わせ、みたいな形になっちゃって申し訳ないんやけど、今日合コンみたいなのがあってさ、急に一人来れんくなってさ」
友理子ちゃんはクラスでも群を抜いて可愛いチア部のエースである。
「え、私でいいん?私でいいならいいけど…」
亜依がいない放課後は結局暇なので、予定が入るなら歓迎だ。
「来てくれるん?ありがとう!」
友理子ちゃんに笑顔を向けられ、「あ、好き」となる千紗。
友理子ちゃんに連れられ、初めて合コンなるものに参加することになった。
「T高ってあの頭いい男子校やん、誰か知り合いなん?」
待ち合わせは近くのファミレスらしい。道すがら、千紗は友理子ちゃんに経緯を聞く。
「美佳の彼氏がT高なんやって、それで誰か紹介してーってなったらしい!」
美佳ちゃん、隣のクラスのチア部の子だ。周りの子もチアやテニスや華やかな部活の子ばかりである。
この可愛い子たちにも彼氏がいないのか……。千紗は自分に彼氏ができる想像が一気にできなくなる。
「あ、もう来てるみたい!」
美佳ちゃんが先頭で手を振ってくれる。
美佳ちゃんの彼氏は背が高くて少女漫画に出てきそうなイケメンだった。
そしてその友だちも揃いも揃って爽やかなイケメン揃い。スクールカースト最上位といった風貌だ。
そんなこと、ある!?
◆◆◆
「でも話してたらみんな明るく彼女が欲しいみたいで、爽やかだけではないなーと思ったりした」
「……」
「ん?」
「あれ?いや、終わり?」
「うん」
「いやいや、始まったところちゃうん?」
「うーん、端的に言うと、ほんとに私にはなんもなかった」
「お、おう」
「友理子ちゃんと亜希ちゃんはそれぞれお茶しに行ったみたいやけど、特に誰とも連絡先交換せず帰ってもた」
「えー、なんでなん、もったいない」
「いやー、『共学の女子と付き合いたい』っていうモチベーションに引いたわ」
「あー……」
「恋に恋するお年頃が一番楽しいわー、たぶん」
「……話してまたへこんでるやん」
「テスト勉強するわ……」
課題の山がちょっとだけ救いに感じた。
「どうしたんまた急に」
今日も相変わらず放課後の教室。いつもと違うのは、千紗と亜依の前にノートと教科書が広げられていることだ。テスト1週間前になり、一応課題を片付けるか、くらいの熱で始めた勉強である。
「あ、あの人?バスで会うっていう」
「あー、ちゃうちゃう、またちゃうくてな」
「テスト勉強はいいん?」
◆◆◆
男子校の生徒で彼女がいる、というのは、共学の生徒とはまた違ったレベルのステータスになるらしい。
だがしかし。
千紗の周りでは、男子校の生徒との出会いなど皆無である。
確かにバスで会う佐藤くん(仮)など知り合う前のレベルの人ならいる。
塾では学校ごとにクラスが違うし、そもそも偏差値のレベルが釣り合わないから講習でも会わない。
近くにある男子校は軒並み超がつく進学校。なんちゃって進学校の千紗には会う機会がない。
そんな千紗にも、合コンめいた話が入ることもある。
◆◆◆
「ちょっと待った、聞いてない」
「あれ、言わんかったっけ?」
「いつよ、知らん知らん」
「あれか、亜依がピアノ行く日」
「あー、それなら知らんくてもしょうがないな…言ってよ!」
「ごめんごめん、すっかり忘れてた、今から話すから、聞いて?」
◆◆◆
クラスメイトの友理子ちゃんから誘われたのは急な話だった。
「ごめん千紗、今日の放課後空いてない??」
「あー、今日は部活も行かないし空いてるよー」
部活についてはかれこれ数か月行った記憶もないのだが、亜依との談笑の時間は千紗にとっては部活の時間、ということになっている。
「埋め合わせ、みたいな形になっちゃって申し訳ないんやけど、今日合コンみたいなのがあってさ、急に一人来れんくなってさ」
友理子ちゃんはクラスでも群を抜いて可愛いチア部のエースである。
「え、私でいいん?私でいいならいいけど…」
亜依がいない放課後は結局暇なので、予定が入るなら歓迎だ。
「来てくれるん?ありがとう!」
友理子ちゃんに笑顔を向けられ、「あ、好き」となる千紗。
友理子ちゃんに連れられ、初めて合コンなるものに参加することになった。
「T高ってあの頭いい男子校やん、誰か知り合いなん?」
待ち合わせは近くのファミレスらしい。道すがら、千紗は友理子ちゃんに経緯を聞く。
「美佳の彼氏がT高なんやって、それで誰か紹介してーってなったらしい!」
美佳ちゃん、隣のクラスのチア部の子だ。周りの子もチアやテニスや華やかな部活の子ばかりである。
この可愛い子たちにも彼氏がいないのか……。千紗は自分に彼氏ができる想像が一気にできなくなる。
「あ、もう来てるみたい!」
美佳ちゃんが先頭で手を振ってくれる。
美佳ちゃんの彼氏は背が高くて少女漫画に出てきそうなイケメンだった。
そしてその友だちも揃いも揃って爽やかなイケメン揃い。スクールカースト最上位といった風貌だ。
そんなこと、ある!?
◆◆◆
「でも話してたらみんな明るく彼女が欲しいみたいで、爽やかだけではないなーと思ったりした」
「……」
「ん?」
「あれ?いや、終わり?」
「うん」
「いやいや、始まったところちゃうん?」
「うーん、端的に言うと、ほんとに私にはなんもなかった」
「お、おう」
「友理子ちゃんと亜希ちゃんはそれぞれお茶しに行ったみたいやけど、特に誰とも連絡先交換せず帰ってもた」
「えー、なんでなん、もったいない」
「いやー、『共学の女子と付き合いたい』っていうモチベーションに引いたわ」
「あー……」
「恋に恋するお年頃が一番楽しいわー、たぶん」
「……話してまたへこんでるやん」
「テスト勉強するわ……」
課題の山がちょっとだけ救いに感じた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…
ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。
しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。
気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる