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epilogue-2
しおりを挟む瞬く星たちがいまにも降ってきそうに感じるのは、澄んだ冬の空気のせいだろうか。
「これと一緒だ」
そう言うと、環は左手を夜空にかざした。
薬指のリングには、おおぶりの石が嵌め込まれている。
群青に散らばる金いろ。
確かにそれは、夜空を切り取って閉じ込めたかのよう。
おなじように左手を挙げ、よこに並べてみる。健康的な恋人にくらべると、自分の肌はいかにもしろくて。
ぼんやりと眺めていたら、すぐ傍でふふ、と笑う声がした。
「婚約指輪みたいだね。あ、でもオレたち、もう結婚してるんだった」
その言葉に、莉音は何度も反芻した場面をもう一度思い浮かべる。
まさにこの場所で告げられたプロポーズと、礼拝堂での愛の儀式。
夢のようだったあの時間は、いまでもふんわりと包み込むように、莉音を幸福感で満たしてくれていた。
どちらからともなく下ろした手が、そのままお互いの背中にまわる。
外気に晒されてつめたくなった箇所を労るように、環の指がそっとくちびるに触れた。
ゆっくりと伏せたまぶたに感じるやわらかさ。
それは鼻先を掠め、頬を通り過ぎると次は顎のラインを辿っていく。
もどかしさに震えてしまう身体が浅ましく感じられて、莉音はどうしたらいいのかわからずにきゅっとくちびるを噛みしめる。
「りお、ダメだよ我慢しちゃ」
耳元で囁く声に反応して、ぞくぞくと背中を駆け抜ける感覚。
たまらずに自分からくちづけると、待ち受けていたかのように深く、激しく求められてしまう。
「ん、は、あ……っ、んん、」
縦横無尽に暴れまわる舌に翻弄されて、息をすることもままならない。
ようやく解放されると、莉音はちからの抜けた身体を環の腕のなかに投げ出した。
「さすがにこの季節だと、ここで続きは無理だなぁ」
とぼけたようなその言葉に反して、触れた肌は燃えるように火照っている。
莉音自身も、芯のほうから疼く感覚にどうにかなってしまいそうだった。
なんとか落ち着こうと、環の胸に額を押し付ける。
すると、不意にぽんぽん、と背中を軽くたたく感触がした。
あやすようにやさしく繰り返されるリズムは、不思議なほど簡単に莉音を安らいだ気持ちにさせる。
「今日は、泊まっていってもいい?」
ためらいがちに問う声が愛しくて。
肯定の意味を込めて、恋人の額に触れるだけのキスをした。
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