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同棲生活
悪戯-悠音
しおりを挟む久し振りの凛玖との外食は、なぜか居酒屋だった。
「ここ、一度センパイと来てみたかったんです!」
ニカッ、とくちを四角にした満面の笑み。これを見ると、悠音はつい大抵のことは許してやろうという気になってしまう。
「フルーツ焼酎、ね……確かにお前が好きそうな感じだな」
「ちゃんと生の果物を使ってるから、すごく美味しいんですよ!!」
嬉しそうに説明する姿が可愛くて、悠音は「なんでも好きなもん頼めよ」などと兄貴ぶってみせた。
どうせ会計は自分持ちなのだ。もちろん年下の恋人のためなら、惜しくない散財だった。
「うわ、なんだコレ。量多すぎじゃね?」
運ばれてきた品物を見て、思わず呟く。
なかをくり抜いたスイカの器になみなみと焼酎が注がれている姿は、確かに抜群のインパクトだ。しかし、二人で呑むにはいかにも量が多い。
「それが、意外とあっさりしてるから大丈夫なんです。はい、どうぞ」
凛玖から渡されたグラスの中味は、うつくしい緋色をしている。
ひとくち呑んでみると、確かに果汁のおかげで爽やかな口当たりだった。
「意外とウマい」
「よかった~」
目の前でにこにこと笑っている凛玖を眺めていると、こちらまで幸せな気分になってくるから不思議だ。
たわいない話をしながら、美味しいつまみと酒を味わう。
ささやかながらも幸福な時間は、あっという間に過ぎていった。
「あ~、結構呑んだな……」
「さすが、センパイ相変わらずお酒強いですね」
そう言う凛玖は、おそらくグラス一杯程度しか呑んでいないはずだ。ということはつまり、スイカ焼酎の三分の二は悠音の腹に収まったことになる。
軽めのテイストについ呑みすぎてしまったが、やはりそこは焼酎なので、それなりにアルコール度数は高いのだろう。
それでも多少ふわふわとした感じがするだけで、悠音の足取りはしっかりしていた。
「大丈夫ですか?」
覗き込んでくる凛玖の表情は、いかにもなにかを期待している感じである。
「あー……、ちょっとだけ、ふらつく、かも」
言葉を選びながら返事をすると、じっと悠音をみつめていた綺麗な瞳が輝いた。
「じゃあ、オレが家までおぶっていきますね!」
嬉しそうにそう言った凛玖は、くるりと身体を反転させてしゃがみ込む。
「いや、さすがに歩けないほどじゃないから……」
次の瞬間、捨てられた子犬のような顔をした凛玖を見てしまったばかりに、悠音は仕方なくその背中を借りることになったのだった。
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