Fragaria

石蜜みかん

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過去編

初夜-3 晶

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 気付けば晶は勧められるままに風呂を借り、なぜか晴斗と同じベッドに入っていた。

 異を唱える隙もなかったのは、相変わらず晴斗が機嫌を損ねたままだったからだ。

 普段は年上ぶってあれこれ忠告してくる癖に、こと翠春が絡むと子供のように拗ねてしまう。

 嫉妬心を隠そうともしない態度はなぜか憎めない上に、晶をなんだかくすぐったいような、不思議な気持ちにさせた。

「やっぱり、僕のパジャマだとひかるには大きいね」

 ようやく普段通りに戻ったらしい晴斗は、そう言って満足そうに微笑む。

「寝るだけなら大丈夫ですよ」

 普段はTシャツに短パンなので多少の落ち着かなさはあるが、隣で横になる気まずさに比べたらどうということはなかった。

「長いこと一緒にいるけど、お風呂上がりのひかるを見るのは初めてだなぁ」

 こちらを向いて頬杖をついた晴斗が送ってくる、無遠慮なまでの視線。
 意識しないように努めているつもりなのだが、いかんせん距離がなさすぎてどうしようもない。

「あの……、」

「ん?」

 困り果てて声をかけたものの、無邪気な笑顔で返されて何も言えなくなってしまう。

 おそらく晴斗のことだから、戸惑っている自分を見て楽しんでいるのだ。

「前に、言ってましたよね。おれのこと……その……」
 
 これ以上躊躇っていても埒が明かない。
 晶は半ば仕方なく、自ら核心に触れることを決めた。

「なんの話だったっけ?」

 とぼけたフリをしている割には、あからさまに嬉しそうな晴斗の表情。
 こっちはこんなに悩んでいるのに、なんだか素直に伝えるのが馬鹿馬鹿しくなってしまう。

「もういいですよ。いっつも、そーやってはぐらかすんだから」
 
 晶は我ながら気分屋が過ぎるな、と感じながらも思ったことをそのまま口にした。

 結局、こうしてすぐにつむじを曲げるのはお互い様で。

 思えば自分たちは、昔からこんなやり取りと些細な喧嘩を繰り返して、いつの間にか上手く誤魔化すことを覚えていったのだ。

「ぷふっ、」

 背中を向けた途端に吹き出す声がして、晶は少しほっとする。
 どうやら今回の意地の張り合いは、晴斗が先に折れることにしたようだった。

「ホントに、ひかるはカワイイね」

 苦笑交じりの呟きとともに後ろから抱き込まれる。
 それでも黙ったままでいると、晴斗の手がパジャマの裾を割って潜り込んできた。

「ちょ、っと、いきなり!?」

 慌てて離れようとするが、無駄な抵抗なのはわかりきっている。

「今更なに言ってんの。誘ってきたのはそっちでしょ」

「誘導したのはハルトさんの方……って、しれっとボタン外してんなよ!」

 気付けば上半身はとっくにはだけた状態になっていて、あまりの手際の良さに逃げることも出来ない。

「いいからこっち向いて」

 いつの間にか覆いかぶさってきていた晴斗が、思いのほか強いちからで晶の身体を反転させる。

「……後は、自分で脱ぎます」

 あまり往生際が悪いのも好きじゃないし、と自身を納得させるように起き上がり、晶は迷いを吹っ切るように着衣を脱ぎ捨てた。
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