6 / 116
第1部
act.6-晴斗
しおりを挟む「今日、例のコが訪ねてきてたよ」
部屋に入ってくるなり声をかけると、晶はぽかんとした顔で晴斗をみつめてきた。
そんな表情ひとつにも愛しさがこみ上げてきて、イライラしていた気持ちなどすぐどこかに吹き飛んでしまう。
「だから言ったでしょ?」
勝ち誇ったように、立ち尽くしたままの細い身体を抱きしめた。
「あの子が……おれに、会いに来たんですか?」
晶が、ようやく理解した、といった感じでつぶやく。
「ここにはいないって伝えたら、慌てて帰ったけどね」
異動させといて良かった、と思いながら、黙ったままの晶の額にキスを落とす。
あのあと、近くにいた従業員をつかまえて訊いてみたら、少年はどうやらこのところ毎日通ってきていたらしい。
晴斗は、とりあえずそのことは黙っておいた。
「ひかる、もう少し自覚しなきゃダメだよ」
「……なにを、ですか?」
困った顔で見上げられて、たまらずそのくちびるを塞ぐ。
「自分が、すっごく魅力的だってこと」
キスのせいで潤んだ瞳をそっと伏せると、晶はちいさく首を横に振る。
晴斗はその頬に手を当てて、優しく撫であげた。
「まっしろですべすべの肌も、カワイイくちびるも。見てると、触りたくてしょうがなくなる」
「それは……そんな風に思うのは、ハルトさんだけ、ですよ」
消え入りそうにか細い声でささやくと、晶は晴斗の胸に顔を埋めてしまった。
照れ屋ですぐ恥ずかしがる癖に、褒められると嬉しいのを隠しきれない。
そんな彼がいじらしくて、晴斗は抱いた腕にちからを込める。
「もう、誰にも渡さないよ。お前は、僕だけのものだから」
腕のなかの身体が身じろぎした。晴斗が名残惜しそうに解放してやると、自由になった晶がちいさく息をつく。
ベッドに移動する仕草がまるで誘っているように見えて、今度は後ろから抱きすくめた。
目の前の眩しいほどしろいうなじに舌を這わせ、しばらく反応が返ってくるのを楽しむ。
腕のなかの彼ごと身体を反転させてベッドに腰掛けると、必然的に、晶は晴斗の両脚の上に乗る格好になった。
「あ、あの」
ためらいがちな声が、すでに濡れて艶を帯びている。
「なぁに?」
「頼まれていた仕事が、もうすぐ締め切りで……出来れば、このあと仕上げをしたいんです」
アルバイトのかたわら音楽活動をしている晶は、時々こうして作曲などの依頼を受ける。たいていは知人からで、収入は微々たるものだったが。
「わかった。じゃあ、今日はひかるにぜんぶお任せしようかな」
そう言うと、晴斗は晶の身体にまわしていた腕を後ろにもっていき、ベッドの上に手をついた。
ゆっくりとした動作で、晶が覆いかぶさってくる。
そっと目を閉じると、全身が甘い香りに包み込まれるのを感じた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
赤ちゃんプレイの趣味が後輩にバレました
海野
BL
赤ちゃんプレイが性癖であるという秋月祐樹は周りには一切明かさないまま店でその欲求を晴らしていた。しかしある日、後輩に店から出る所を見られてしまう。泊まらせてくれたら誰にも言わないと言われ、渋々部屋に案内したがそこで赤ちゃんのように話しかけられ…?
くまさんのマッサージ♡
はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。
2024.03.06
閲覧、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。
2024.03.10
完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m
今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。
2024.03.19
https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy
イベントページになります。
25日0時より開始です!
※補足
サークルスペースが確定いたしました。
一次創作2: え5
にて出展させていただいてます!
2024.10.28
11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。
2024.11.01
https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2
本日22時より、イベントが開催されます。
よろしければ遊びに来てください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる