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消えた友人
弐
しおりを挟む「まず、俺はお前からレコーダーを受け取り再生した時、真っ先にあのクソ教頭を疑った。わかりやす過ぎるしな。でも動機が見えなかったし、情報を提供した協力者、――まあ、実際は操っていただけだが。それもわからなかった。教頭の方は、その後お前が先輩の不良グループの話をしてくれたお陰で掴めたが、島の方は特定はできても動機がさっぱりだったんだ。――でも、そこでふと思い出した。――そういえば、事故にあった少女の名前は島命だったな、てな。名字が同じ島なんてそりゃ何か関係がある、て思うだろ。そっから調べて姪、てとこまで突き止めて、やっと動機が掴めたんだ」
……すごい。
僕がビデオを持ってきてその後集合した二十一時までの僅かな間に、そこまで調べられるなんて。
「ま、やっぱりただの“推測”を“確信”へ変えてくれたのはあのビデオのお陰だがな。ビデオには色々映りすぎてたんだよ。……わかるか?」
「いえ……佐竹の様子ばかり気にしてたので……」
そうでなくとも、あんな暗闇だったのだ。目を凝らしても殆んど何も見えなかった。
「確かに、一見ただ佐竹がパニくっただけの映像に見える。……でもな、ハッキリと映っていたんだよ。佐竹がビデオを落とす瞬間、――――窓に写った教頭の姿と、島の持ったビデオレンズの反射する光がな」
「……っえ、あんな一瞬でそこまで見えたんですか!?」
落とす瞬間って、あの景色がぐるんってなった時だろ!? どんな観察眼してるんだよ……。
「言っただろ。どこにヒントが落ちてるかわからない、て。……でもな、もう一つ映ってたんだよ。それが、恐らく最初に出た子供の噂の正体――――なあ、あの噂はお前なんだろ? 島、命」
――――え……?
時政が何もない空間に向かって問い掛ける。
――もう、存在する筈のない少女の名を。
しま、めい……?
「……なに、言ってるんですか……?」
そんな、そんな言い方……まるで――――
「島命はここにいる」
時政はハッキリと告げた。
「な、なに言ってるんですか……だって、島命はもう……!」
「……ああ。死んでるよ。だからここにいるんだ」
意味がわからない。頭がおかしくなってしまいそうだ。
「なん、ですか。それ。そんな……っ」
「……信じられねぇか?」
「……ッ当たり前じゃないですか! ふざけないでください! そんな急に、ここに幽霊がいるみたいな言い方して……!」
「ふざけてなんかねぇよ。――事実だ」
「な……っ!」
「いいから聞け。島命は事故にあった日、ある事を伝えたくて佐竹へと憑いていった。すると、佐竹の学校には自分の叔父と、あの日突き飛ばしてきた犯人がいるじゃねぇか。……たぶん、その強い念で縛られちまったんだな。ずっと、約一ヶ月前から命はこの学校に囚われていた。――それが、噂の出所だ」
「そんな……」
そんな、話……
あり得ない。あまりに非現実すぎる。信じられない。
……けれど、何故か否定しきれない自分がいる。
(さっきの感触……)
あれは確かに、――誰かの“手”だった。
「……ビデオには、何が映ってたんですか……?」
「佐竹を発見した教頭と、それを録っていた島と、――危機を伝えようとしていた命だ。でも自分の声は届かないから、教頭が佐竹を捕まえる前に、わざと足音を鳴らして佐竹を脅かし、逃がしたんだ」
「……じゃあ、佐竹の居場所は……」
「命が知っている」
「…………っ」
……こんなの――――
ッ信じるしか、ないじゃないかっ――――!
だって、
あの冷たい温もりを感じた時、無性に泣きたくなったんだ。
切なくて、苦しくて、たすけて、て言いたくなった。
あの背中に、――たすけて、て。
こんな気持ち、否定できるわけないじゃないか……っ
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