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消えた友人
参
しおりを挟む「ちょっ、どうしたんですか急に……!」
抗議の意図を込めて時政の腕を掴んだ。
「あ? なにがだ」
「なにが、て、あんな態度はないでしょう! そんなに詳しい事も聞けてないし……」
鬱陶しげに振り返る時政に、負けじと睨みつける。
あれじゃあ紀美子さんが可哀想だ。
すると、そんな僕の様子を見た時政は、聞き分けのない子供を見るような目で心底疲れたように溜め息を吐いた。
「……お前な、あんな真っ青な顔した女性にあれ以上話なんか聞けるか? 無駄に不安を煽るだけだろうが」
「そ、れは、そうですけど……」
「それに、もうすぐ夕時だ。旦那が早く帰ってくるならもう飯の準備しなきゃなんねぇだろ」
至極当たり前のように言い退けた時政に、僕は目を丸くして思わず掴んでいた腕を放してしまった。
「えっ、なんでそんなのわかったんですか!? 佐竹ん家いっつもお父さんの帰り遅いのに……」
「……お前、もっと周りちゃんと見た方がいいぞ。奥さんしきりに時計気にしてたろうが。何より、電話ん所にメモが置いてあったしな。おそらく佐竹の事について話し合うんだろう」
「…………」
あまりの驚愕に声も上がらない。
ああ、やっぱり、どれだけ怠けていてもこの人は『探偵』なのだ。
改めて痛感した。
「よく見てますね……」
「どこにヒントが落ちてるかわかんねぇからな。ほら、もうすぐ電車が来る。ガキは帰ってさっさと寝な」
直後、本当に僕達が乗る方向の電車が来る。
……もしかしてこれも計算の内だったのかな?
何故だか僕には、時政が未来の全てを予期しているように見えた。
◆◆◆
「……あれ、乗らないんですか?」
「ああ。ちょっとまだ調べたい事があってな。大方学校から止められてるんだろうが、あの様子だと近いうちに佐竹さんが警察に届けを出すだろう。余計な手を入れられる前に調べておきたい。……ま、あんな曖昧な情報じゃ精々家出扱いで、滅多に動いたりなんかしないだろうけど」
「え、そうなんですか?」
「ああ。警察なんてそんなもんだ。だから“俺達”がいる」
ニイ、と挑戦的な笑みを浮かべる時政に、ぞくりと高揚し胸が高鳴る。
「じゃあ僕も……!」
「バァカ。子供はさっさと帰って寝ろ、つったろ? 明日なるべく校内で色々調べて、また放課後うちに来い。いいな?」
「…………、」
この後もまだ周囲への聞き込みを続けるのだろう。
僕がいても足手まといにしかならないことは事実なので、少々落ち込みながらも素直に頷いておく。
すると、従順な返事に気を良くしたのか、満足気に僕の頭を一撫でしては、
「ん。イイコだ。さすがに校内での情報は掴みにくいからな。……頼りにしてるぜ?」
「……っはい!」
頼り、だなんて。……ほんと、
――飴と鞭、巧いなあ。
「島……どっかで聞いた事ある名だな。なんだったか……。チッ、思い出せねえ。ちょっと調べてみるか……」
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