5 / 15
合宿対決!(後)
しおりを挟む
それぞれに作ったカレーライスを食べ比べれるように大皿ではなく小皿に盛りテーブルに並べていきました。
カレーライス以外にもテーブルには帆並ちゃんが用意してくれた特性サラダやコーンスープもあります。
米野さんのカレーライスはレトルトだったけど、トッピングに春巻きの皮に板チョコを包み込み、衣を付けて揚げたチョコフライが乗せてある。見た目はフライだから美味しそうに見えるけど、かなり甘めになりそうだね。
「それではみなさん、いただきましょう」
帆並ちゃんの掛け声に合わせ、手を合せてからいただきますと言い、早速サラダへ手を伸ばそうとした時でした。
「ちょ、ちょっと待ちなさい。なんでいきなり食べようとしているの? さすがの帆並ちゃんも驚きよ」
いや、食べましょうって言ったのは帆並ちゃんなんだから、普通はここで食べていいタイミングだと思うでしょ。
「いい? これから食べ部と美食謳歌部の勝負をします」
あ~また、変な戦いをさせようとしているんですね。
「前半のカレー作りの時点では美食謳歌部にポイントリードされてしまっているのよ」
カレー冷めちゃうので、もう料理作りでのポイントだけで勝負を決してくれていいと思います。
「勝負方法はあなたたちが作ったカレーライスを帆並ちゃんに食べさせてあげてお母さんを思い出させてくれた方の勝ちとします。本当は別の方法で勝負したかったけど料理作りで大差をつけられているから食べ部が勝ちやすそうな方法にしました」
「・・・・・・分かりましたわ」
御堂先輩は怪訝そうな表情をしています。気持ち分かります。
対戦はなぜか私と鈴木先輩となりました。前回のみたらし団子と同じように適当というかどうにでもなれという感じで勝負すればいいのか~。まあ、考える時間も勿体ないし、お腹空いたから早く終わらせよう。
カレーライスをスプーンですくい私は迷いなく帆並ちゃんの口へと運んだ。
お泊りに来て、自分の家のカレーライスを先生に食べさせているという不思議さを感じつつも。
――いざ勝負――
膨大なスパイス、豊富な具材、そして家庭それぞれに違うレシピ。
他人が真似しても何かが違っていて簡単に作れない、無限に広がるトッピングや食べ方は決して誰の邪魔もされない己の世界を構築することが出来る場所・・・・・・て、これはまさに聖域。
ウスターソース、福神漬け、らっきょう。それがあれば大丈夫。
カレー? カリー? カレーライス? ライスカレー?
我が家は余ったカレーは翌日カレーうどんにしちゃうの~。
何者の意見を聞くことも無く、聖域は存在する。だけど、もしも聖域に救いを求めるのであれば遠慮なく食べさせてあげる。その代り本当の母の味を忘れなさい、今は私の味が母の味。
甘口、中辛、辛口、激辛どの辛さが好みかしら? いつでも辛さ調整してあげる、はちみつとリンゴでね。―― by 墨名 樹季
「・・・・・・(終わりましたよ)」
私はお母さんになった気持ちで子守唄のようにカレーの歌いながら帆並ちゃんにカレーライス食べさせてあげました。
悪ふざけにも近いことがバレたのでしょうか、帆並ちゃんは私の持っていたスプーンを急に払いのけました。
「お、お母さん。感動した。本当の母親より墨名ちゃんがお母さんに感じてしまったわ。もはや勝者は墨名ちゃんで結構よ」
感動したんかい。
対戦相手の鈴木先輩は何もやってもいないし降参もしてないんですけど。でもこんな茶番劇みたいなことするくらいならやらない方がいいのかもしれないね。やってて恥ずかしいから。
「これで、私たち食は人を幸せにする部は二勝目。リーチということですね」
米野さんは当たり前のように言っているけど、先に三勝したものが勝ちになるってルールだったんだね。
「ふふ、最初から私たちが不利なのは分かっていましたわ。なぜならここは完全なアウェー。露骨な贔屓ジャッジでも致し方ありません」
美食謳歌部、御堂先輩と鈴木先輩は哀愁を漂わせながら立ち上がり、カレーライスを食べることなく去って行きました・・・・・・直後にノックがあり来訪者が訪れました。そう、あの二人が戻って来たのです。
「いらっしゃい、さあ二人ともカレーライスが冷めちゃうわよ」
帆並ちゃんは笑顔で二人を歓迎している。同じく二人もさっきまで一緒にカレーライスを作ったり、勝負していたことがまるで無かったかのように入って来ました・・・・・・怖い怖い。
私たちは楽しくみんなでカレーライスを食べ、片付け、お風呂、恋バナをして合宿を謳歌しました。帆並ちゃんは人数分の布団を敷いてくれたけど、わざわざこの布団は合宿のために用意してくれたのだろうか。左から帆並ちゃん、米野さん、私、鈴木先輩、御堂先輩という並びで眠りました。
夜な夜な、しくしくとすすり泣く声とガチガチと大きく響く音が私の睡眠を妨害してきました。勝負に負けて後が無くなったことに御堂先輩か鈴木先輩が悔しくて泣いているのかもしれない。
すすり泣く声、ギシギシ軋むような音に次第に耐えられなくなり、私は身体を起こし確認した。
ガリガリ、ギシギシと音を発生させていたのは帆並ちゃんでした。歯医者でマウスピースを作ってもらうように明日、進言しよう。
御堂先輩や鈴木先輩はこの轟音の中、よく眠れるなと思えるほど快眠している。そう言えば、私の横で寝ているはずの米野さんが居ない。
キッチンの方から光が漏れていることに気付き、私はキッチンをそっと覗きました。
そこにはホームシックですすり泣く米野さんが居ましたとさ。
こうしてカレーライス合宿が終了したのでありました~。
カレーライス以外にもテーブルには帆並ちゃんが用意してくれた特性サラダやコーンスープもあります。
米野さんのカレーライスはレトルトだったけど、トッピングに春巻きの皮に板チョコを包み込み、衣を付けて揚げたチョコフライが乗せてある。見た目はフライだから美味しそうに見えるけど、かなり甘めになりそうだね。
「それではみなさん、いただきましょう」
帆並ちゃんの掛け声に合わせ、手を合せてからいただきますと言い、早速サラダへ手を伸ばそうとした時でした。
「ちょ、ちょっと待ちなさい。なんでいきなり食べようとしているの? さすがの帆並ちゃんも驚きよ」
いや、食べましょうって言ったのは帆並ちゃんなんだから、普通はここで食べていいタイミングだと思うでしょ。
「いい? これから食べ部と美食謳歌部の勝負をします」
あ~また、変な戦いをさせようとしているんですね。
「前半のカレー作りの時点では美食謳歌部にポイントリードされてしまっているのよ」
カレー冷めちゃうので、もう料理作りでのポイントだけで勝負を決してくれていいと思います。
「勝負方法はあなたたちが作ったカレーライスを帆並ちゃんに食べさせてあげてお母さんを思い出させてくれた方の勝ちとします。本当は別の方法で勝負したかったけど料理作りで大差をつけられているから食べ部が勝ちやすそうな方法にしました」
「・・・・・・分かりましたわ」
御堂先輩は怪訝そうな表情をしています。気持ち分かります。
対戦はなぜか私と鈴木先輩となりました。前回のみたらし団子と同じように適当というかどうにでもなれという感じで勝負すればいいのか~。まあ、考える時間も勿体ないし、お腹空いたから早く終わらせよう。
カレーライスをスプーンですくい私は迷いなく帆並ちゃんの口へと運んだ。
お泊りに来て、自分の家のカレーライスを先生に食べさせているという不思議さを感じつつも。
――いざ勝負――
膨大なスパイス、豊富な具材、そして家庭それぞれに違うレシピ。
他人が真似しても何かが違っていて簡単に作れない、無限に広がるトッピングや食べ方は決して誰の邪魔もされない己の世界を構築することが出来る場所・・・・・・て、これはまさに聖域。
ウスターソース、福神漬け、らっきょう。それがあれば大丈夫。
カレー? カリー? カレーライス? ライスカレー?
我が家は余ったカレーは翌日カレーうどんにしちゃうの~。
何者の意見を聞くことも無く、聖域は存在する。だけど、もしも聖域に救いを求めるのであれば遠慮なく食べさせてあげる。その代り本当の母の味を忘れなさい、今は私の味が母の味。
甘口、中辛、辛口、激辛どの辛さが好みかしら? いつでも辛さ調整してあげる、はちみつとリンゴでね。―― by 墨名 樹季
「・・・・・・(終わりましたよ)」
私はお母さんになった気持ちで子守唄のようにカレーの歌いながら帆並ちゃんにカレーライス食べさせてあげました。
悪ふざけにも近いことがバレたのでしょうか、帆並ちゃんは私の持っていたスプーンを急に払いのけました。
「お、お母さん。感動した。本当の母親より墨名ちゃんがお母さんに感じてしまったわ。もはや勝者は墨名ちゃんで結構よ」
感動したんかい。
対戦相手の鈴木先輩は何もやってもいないし降参もしてないんですけど。でもこんな茶番劇みたいなことするくらいならやらない方がいいのかもしれないね。やってて恥ずかしいから。
「これで、私たち食は人を幸せにする部は二勝目。リーチということですね」
米野さんは当たり前のように言っているけど、先に三勝したものが勝ちになるってルールだったんだね。
「ふふ、最初から私たちが不利なのは分かっていましたわ。なぜならここは完全なアウェー。露骨な贔屓ジャッジでも致し方ありません」
美食謳歌部、御堂先輩と鈴木先輩は哀愁を漂わせながら立ち上がり、カレーライスを食べることなく去って行きました・・・・・・直後にノックがあり来訪者が訪れました。そう、あの二人が戻って来たのです。
「いらっしゃい、さあ二人ともカレーライスが冷めちゃうわよ」
帆並ちゃんは笑顔で二人を歓迎している。同じく二人もさっきまで一緒にカレーライスを作ったり、勝負していたことがまるで無かったかのように入って来ました・・・・・・怖い怖い。
私たちは楽しくみんなでカレーライスを食べ、片付け、お風呂、恋バナをして合宿を謳歌しました。帆並ちゃんは人数分の布団を敷いてくれたけど、わざわざこの布団は合宿のために用意してくれたのだろうか。左から帆並ちゃん、米野さん、私、鈴木先輩、御堂先輩という並びで眠りました。
夜な夜な、しくしくとすすり泣く声とガチガチと大きく響く音が私の睡眠を妨害してきました。勝負に負けて後が無くなったことに御堂先輩か鈴木先輩が悔しくて泣いているのかもしれない。
すすり泣く声、ギシギシ軋むような音に次第に耐えられなくなり、私は身体を起こし確認した。
ガリガリ、ギシギシと音を発生させていたのは帆並ちゃんでした。歯医者でマウスピースを作ってもらうように明日、進言しよう。
御堂先輩や鈴木先輩はこの轟音の中、よく眠れるなと思えるほど快眠している。そう言えば、私の横で寝ているはずの米野さんが居ない。
キッチンの方から光が漏れていることに気付き、私はキッチンをそっと覗きました。
そこにはホームシックですすり泣く米野さんが居ましたとさ。
こうしてカレーライス合宿が終了したのでありました~。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
1 / 3
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる